山本鯨、内田篤基、川井麻央がいずれも両ヒート制覇!!
D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズは、5月1日(土)~2日(日)に予定していた第2戦中国大会が、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で延期となり、5月15日(土)~16日(日)に埼玉県のウエストポイント オフロードヴィレッジで開催された第3戦関東大会埼玉トヨペットCUPが、シーズン2戦目となった。
土日とも曇り空が基本で、各クラスの決勝が実施された日曜日は曇り時々雨。しかし午後には一時薄日が差すなど、目まぐるしく空模様が変化した。
今大会前にコースは大幅な仕様変更が施され、これまで以上に多彩なジャンプが配された、スーパークロステイストが強いレイアウトとなった。ただし、踏み切り側の角度が急な減速方向に作用するジャンプが多めで、スタート直後のジャンプとリズムセクションを除けば、なるべくリスクを避ける仕様とされた。路面をかなり掘り起こしてから念入りに散水したことで、乾くと固く締まるオフロードヴィレッジとは思えない柔らかな土質。強風だったが、ホコリもほとんど舞うことはなかった。
決勝日の最高気温は21度。観客数は2日間で4,000名となった。
【IA1】昨年度王者・山本鯨が今季初優勝&両ヒート制覇
決勝ヒート1では、ホンダサポートライダーの山本鯨(#1)がホールショット。1コーナーでは、ヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#3)ら3台がクラッシュして、渡辺は1周目20番手と大きく出遅れた。オープニングラップをトップでクリアしたのは山本。カワサキに乗る安原志(#19)や、これが地元大会となるヤマハユーザーの星野優位(#8)らが続いた。2~3周目、安原は山本のハイペースについていけず、しかし星野以下も安原を攻略できず、結果的に安原が蓋をするカタチとなり、この間に山本が約9秒もの大量リードを築いた。4周目に星野が安原をパスして2番手に浮上したが、なおも山本のほうがハイペース。6周目には、ヤマハファクトリーチームの富田俊樹(#2)が星野を抜いた。
富田は山本より1秒ほどペースが速く、少しずつ差を詰めたが、富田が2番手に浮上した段階で山本のリードは10秒以上。かなりの余裕がある山本は、10~11周目に少しペースを上げるなどしながら、完全にレースをコントロールした。そしてレースは20周で終了。山本が今季初優勝を挙げ、富田が2位となった。一方で3番手争いは、レース終盤に再び接戦となった。富田に抜かれて以降は単独走行となっていた星野に追いついたのは、ホンダサポートの小方誠(#4)。スタートで完全に出遅れ、1周目を11番手で通過した小方は、8周目に5番手まで順位を回復すると、その後はカワサキファクトリーチームの能塚智寛(#5)に肉迫していた。しかし逆転のチャンスをなかなか得られず、14周目にようやくパッシングに成功。そこから一気に前との距離を詰め、星野を攻め続けた。星野は必死に守り続けたが、最終ラップの残りあとわずかというところで転倒。これで小方が3位、星野が4位となった。5位には能塚、6位にはスタート直後の転倒から追い上げた渡辺が入った。
決勝ヒート2でも、再び山本がホールショット。小方と渡辺が続くとオープニングラップで順位を入れ替えた。2周目にはトップの山本が後続をわずかに引き離したが、すぐに渡辺と小方が対応し、3周目には山本、渡辺、小方がそれぞれ約1秒間隔に。そこから4秒ほど離れた混戦の4番手争いでは、富田が先頭に立った。4~6周目にかけ、トップ4台の差はほぼ膠着状態だったが、7周目に入ったあたりから渡辺が山本に近づき、僅差のトップ争いが勃発。これに加わりたい小方だったが、9周目にミスしてラップタイムを落とし、富田に次ぐ4番手に後退した。
これにより、山本と渡辺がトップ争い、3秒ほど遅れて富田と小方が3番手争いという構図に。しかし13周目あたりから、渡辺と富田の距離が縮まりはじめた。そして14周目、大きなジャンプの区間で転倒者が発生したことから黄旗振動となり、これで一度スローダウンしたことで4台の距離は完全になくなった。ここから4台による優勝争いがスタート。しかし17周目、富田はミスで集団から脱落した。トップの山本は、渡辺の猛攻を巧みにかわして走行。後ろに小方を従える渡辺も、大胆なトライができずにいた。そしてレースは、20周を逃げ切った山本が勝利。渡辺が2位、小方が3位、富田が4位となった。レース中盤から順位を守った能塚が5位、星野が6位でチェッカーを受けている。
【IA2】内田篤基がライバルを圧倒する速さで両ヒート優勝
決勝ヒート1では内田篤基(#4)がホールショット。鴨田翔(#17)がこれを追い、序盤は2秒ほど後方でマークを続けた。鴨田の背後は混戦で、西條悠人(#5)が3番手を守っていたが、3周目に大城魁之輔(#2)、4周目に中島漱也(#10)、5周目に大倉由揮(#6)と池田凌(#9)がこれを抜いた。そして、大城が鴨田との距離を詰めると、6周目に逆転した。この段階で、トップの内田は大城を約3秒先行。すると、7~8周目にかけて大城はそのギャップを1秒ほど削った。
しかし9~10周目には、再び内田がリードを1秒ほど拡大。その後も内田と大城はほぼ互角のラップタイムを刻み続け、ラスト4周となった17周目にはその差が4秒ほどだった。18周目、大城がこの周だけで1秒ほど差を縮めて最後の勝負を狙ったが、19周目には内田が冷静にペースアップ。20周のレースは内田が勝利を収め、大城が2位となった。3番手は、レース中盤から中島がキープしていたが、16周目に転倒して7秒ほどタイムロス。この間に大倉が先行し、大倉が3位、中島が4位となった。鴨田は粘り強く走って5位。1周目10番手と出遅れた岸桐我(#8)が、6位まで追い上げてゴールした。
決勝ヒート2は、鳥谷部晃太(#35)がホールショット。内田、大倉、中島、岸がこれに続くと、まずは内田が鳥谷部を抜いてトップに立った。ヒート1で2位となった大城はスタートで出遅れ、大混戦の中でストップしかけたところに後ろから追突されて転倒。1周目23番手とさらに遅れた。2周目、大倉と岸が鳥谷部をパス。中島はこれに続けず、その後ろには鈴村英喜(#15)らが数珠つなぎとなった。レース序盤、上位勢は縦に長い展開となり、5周目あたりにはすでに、各ライダーが3~5秒ほど離れた状態となった。
その中で、トップを守り続けたのは内田。2番手の大倉に対してそのラップタイムは1秒前後速く、徐々にアドバンテージを拡大していった。結局、レース中盤から内田は完全に独走状態。再び20周でチェッカーとなったレースを危なげなく走破して、自身初の両ヒート制覇と、開幕戦ヒート2からの3連勝を達成した。レース終盤、岸が大倉との距離を少し詰めたが、大倉が2位を守ってフィニッシュ。岸は3位で表彰台に登壇した。4位に入賞したのは小川孝平(#11)。1周目18番手と出遅れながら、粘り強く追い上げた。この小川にラスト3周で抜かれた鳥谷部が5位。大城は6位でレースを終えた。
【IBオープン】伊藤晃が安定感あるレースで総合優勝
土曜日の最終レースとして実施された決勝ヒート1で、ホールショットを奪ったのは伊藤晃(#48)。これに大西力靖(#38)や鈴木龍星(#47)らが続くと、鈴木が大西を抜いて2番手に浮上した。1周目は伊藤、鈴木、大西、笹島克久(#4)、有山大輝(#2)町田勘太(#53)のトップ6。2周目になると、伊藤と鈴木が後続を一気に引き離し、トップ2を形成した。後方では町田が5番手、村野昴弥(#50)が6番手に浮上したが、ミスで止まりかけた町田に村野が追突して、村野のみ転倒後退。笹島、大西、町田、有山が3~6番手集団となった。3周目の段階で、トップ2台は10秒以上もリード。そして、伊藤のペースが落ちて鈴木が逆転した。
トップに立った鈴木も4周目以降はペースダウンしたが、ラップタイムの落ち幅は伊藤のほうが大きく、これで鈴木は1周につきコンマ数秒から2秒ほどリードを広げ、徐々に独走態勢となった。一方、3番手争いでは4周目に町田が集団から一気に抜け出し、こちらも単独走行に。さらに、6周目には有山が笹島を抜いて4番手に浮上し、抜かれた笹島はその後に後退していった。レース後半、トップ4はそれぞれ単独走行を継続。レースは13周でチェッカーとなり、鈴木が全日本初優勝、伊藤が2位、町田が3位、有山が4位となった。5位には1周目12番手から追い上げた堀越秀鷹(#7)、6位にはラスト2周でひとつ順位を上げた平塚豪(#10)が入賞した。
日曜日に実施された決勝ヒート2は、オープニングのアクシデントで赤旗再スタートに。これがヒート1の勝者と2位の明暗を分けた。ヒート1で優勝した鈴木は、最初のスタートでは直後に5番手あたりを走っていたが、赤旗再スタート後は1周目25番手と出遅れ、その後に転倒してリタイヤ。一方、ヒート1で2位となった伊藤は19番手と出遅れていたところで赤旗再スタートとなり、今度は4番手あたりを確保すると、1周目に有山に次ぐ2番手まで浮上した。大混戦が少し落ち着いた3周目の段階で、トップは有山。僅差で伊藤と町田が追い、3秒ほど間隔を開けて山田康介(#28)と関根凌太(#12)と堀越がセカンドグループを形成した。
4周目、トップ争いが激化してそれまで以上の接近戦となり、町田が伊藤を抜いて2番手に浮上。4番手以下を引き離しながら、5周目もこのバトルは続いた。セカンドグループでは、この周に堀越が2台を次々に抜いて先頭に。しかも山田と関根を数秒離した。3番手の伊藤はラップタイムが安定せず、これで有山と町田がやや抜け出したが、7周目から町田のペースが突然落ち、町田と伊藤の2番手争いとなった。8周目、伊藤が町田をパス。抜かれた町田は引き離された。この段階で、有山は3~4秒のリードを奪っていたが、10周目に単独転倒。これでトップに浮上した伊藤は、そのまま逃げ切って今季2勝目を挙げた。町田が2位、堀越が3位で表彰台に登壇。山田が4位、一時は10番手まで後退した藤井一輝(#57)が5位、関根が6位に入賞した。
【レディース】クラス初の1大会2ヒート制は川井麻央の独壇場に
全日本選手権では初めて、1大会2ヒート制が導入されたレディースクラス。決勝はいずれも日曜日に実施され、そのヒート1は小野彩葉(#4)のホールショットで幕を開けた。これに本田七海(#2)が続き、さらに昨年度チャンピオンの川井麻央(#1)が3番手浮上。小野がシフトミスで一旦停止する間に本田と川井が先行し、川井が本田をパスしたことから、1周目は川井、本田、小野、木村綾希(#8)、楠本菜月(#5)、久保まな(#3)のトップ6となった。2周目、川井に迫ろうとした本田がミスで遅れ、小野が再逆転。7番手以下は大きく遅れた。
3周目、小野と本田は僅差の2番手争いを展開。4番手争いでは楠本が木村を抜いたが、3番手の本田とはすでに5秒ほど離れていた。この段階で、トップの川井は4秒近いリードを確保。後続との距離を測りながら、安定したペースで周回を重ねた。レース中盤、本田は小野から一度は2~3秒遅れたが、レース終盤にかけ再び接近。ラスト2周となる9周目を迎えるころには、再びテール・トゥ・ノーズとなった。一方、4番手の楠本は単独走行となり、5番手争いでは7周目に久保が木村を逆転した。そしてレースは、終始安定した走行を続けた川井が勝利。最終ラップの残りわずかというところで本田が逆転に成功し、本田が2位、小野が3位となった。楠本は大きく離されて4位。久保が5位、木村が6位となった。
決勝ヒート2は、本田がホールショット。これに小野が迫り、混戦の中で順位を上げた川井も近づいた。オープニングラップだけで、この3台が4番手以下を4~5秒も引き離す展開。2周目、本田と小野と川井による三つ巴のバトルは激しさを増し、この中で川井が小野を抜いた。大きく遅れた4番手争いでは久保が先行。3周目、小野はミスでタイムロスし、これでトップ2台から3秒ほど遅れると、その後はペースが上がらずさらに引き離されていったが、4番手を走る久保よりは速いラップタイムを維持した。
注目のトップ争いは、本田と川井の接近戦がしばらく続いたが、4周目に川井が逆転に成功。5~7周目にかけ、川井が粘る本田を1周につきコンマ数秒ずつ引き離していった。そしてラスト3周となった8周目、それまでよりさらに1秒以上もペースアップ。この周だけで2秒以上もアドバンテージを拡大した川井が逃げ切り、両ヒート優勝と昨年開幕戦からの全日本7連勝を達成した。本田は2位、小野は単独走行の3位で表彰台に登壇。レース後半、久保の背後には楠本が僅差で迫ったが、意地をみせた久保が逃げ切って4位。楠本が5位、終盤になってこのふたりに急接近した穗苅愛香(#7)が6位に入賞した。
【チャイルドクロス】松本剛が危なげない走りで総合優勝
キッズライダーが参加するチャイルドクロスは、国内メーカー製マシンで参加できるAクラスに10台、海外ブランドの2ストマシンでエントリーできるBクラスに5台が参戦。レースは、ベストラップタイムが1分ほどにショートカットされたコースで、8分+1周により競われた。ホールショットを奪ったのは松本剛(#50)。これに上野琥楠(#23)と望月光規(#31)が続き、パワーに勝るBクラス勢のトップ3独占で幕を開けた。4番手争いはこの3台から大きく遅れ、Aクラスの安藤龍太郎(#24)が先頭。さらに、同じくAクラスの熊谷夏空(#2)が続いた。
トップの松本は、序盤からじわじわとリードを拡大。3周で約4秒のリードを奪った。4周目には2番手の上野が1秒近く差を詰めたが、その上野は5周目に転倒して後退。代わりに望月が2番手に浮上した。上野の転倒により松本は大きくリードを拡大。そのまま9周を独走して総合優勝を獲得した。レース後半、望月と上野は接近戦を続けたが、最終ラップに望月が転倒。これで上野が総合2位、望月が同3位となった。Aクラス勢は、トップの安藤を数秒差でマークしていた熊谷が、5周目にミスで7番手まで後退。これで目黒結翔(#823)がAクラス勢2番手となったが、その後に熊谷が追い上げた。そして安藤がAクラス優勝、熊谷が同2位、目黒が同3位となった。