D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズの第7戦となる第59回MFJ-GPモトクロス大会は、前戦から2週間後の10月23日(土)~24日(日)に、宮城県のスポーツランドSUGOで開催されました。今大会が、最終戦を前にしたシーズン5戦目となります。
ふたつの丘にまたがるように設けられたコースは、アップダウンの豊富なレイアウトが特徴。今季第4戦でも使われ、今大会はこのときの仕様をベースに見直されたレイアウトとなっていました。
各クラスの予選やIBオープンクラスの決勝ヒート1などが実施された土曜日は、目まぐるしく天候が変化。午前中は晴れベースながら一時的に強い雨が降り、午後は雨の時間が長くなりました。それでも路面はほぼ荒れることなく終了。晴れ時々曇りとなった日曜日は、入念な整備で柔らかめの路面に改善され、粘土質の路面には走行によって深いワダチが刻まれました。最高気温は18度。朝晩はかなり冷え込んだものの、日中は快適な陽気となりました。
【IA1 決勝ヒート1】
山本鯨が巧みなレースコントロールで今季5勝目!
ホンダのマシンを駆る山本鯨(#1)がホールショット。ポイントリーダーとして今大会を迎えた渡辺祐介(#3)は、スタート直後に激しくクラッシュして大きく出遅れました。1周目から、山本とヤマハファクトリーチームの富田俊樹(#2)とカワサキファクトリーチームの能塚智寛(#5)が、激しいトップ争いを展開。2周目に富田を抜いた能塚が、4周目に山本をパスして先頭に立ちました。
すぐに山本も反撃に転じましたが、ここは能塚が抑え、山本はしばらく能塚の背後でマークする作戦にチェンジ。そしてレースが間もなく終盤を迎える10周目、満を持して山本が再逆転を果たしました。抜かれた能塚は一気にペースが落ち、翌周には富田が2番手。その後、富田は1~2秒差で山本を追いましたが、最後まで逃げ切った山本が優勝、富田が2位、能塚が3位でした。渡辺は8位でゴールしました。
【IA1 決勝ヒート2】
富田俊樹が優勝。山本鯨と富田が1点差!
ヒート1に続き山本鯨(#1)がホールショットを奪い、渡辺祐介(#3)がスタート直後に転倒して出遅れ。1周目、能塚智寛(#5)が山本をパスして先頭に立ちました。2周目には富田俊樹(#2)が3番手浮上。一方で能塚は転倒を喫し、山本がトップに返り咲きました。しかし3周目、再び能塚が逆転。4周目あたりには能塚と山本と富田のトップ3となり、能塚が3秒ほどのリードを確保しました。
ここからトップ争いは膠着状態でしたが、8周目に富田が山本に近づき、翌周には攻略成功。10周目、能塚のミスで3台が接近し、次の周に富田が能塚を抜いて先頭に立ちました。レース終盤、富田は数秒のリードをキープ。能塚と山本は接戦を繰り広げましたが、最後まで能塚が順位を守りました。そして富田が優勝、能塚が2位、山本が3位。渡辺は4位まで追い上げました。ランキングは山本226点、富田225点、渡辺208点となっています。
【IA2 決勝ヒート1】
スポット参戦のジェイ・ウィルソンが余裕の勝利!
ホールショットを奪った鳥谷部晃太(#35)を、ヤマハの要請でオーストラリアから来日スポット参戦したジェイ・ウィルソン(#106)が1周目にパス。鳥谷部は、昨年のオーストラリアトレーニング時に練習パートナーだったウィルソンを必死に追いましたが、3~4秒先行された状態をキープされてしまいました。3番手に浮上したのは大倉由揮(#6)。さらに、大城魁之輔(#2)が4番手で続きました。
レース中盤、大城までの上位4台は縦に長くなり、ウィルソンは5秒ほどにリードを拡大。鳥谷部も必死で粘りましたが、レースはウィルソンのコントロール下にありました。そして16周のレースでウィルソンが勝利、鳥谷部が2位となりました。大倉は、レース終盤に鳥谷部の背後に迫ってゴールしましたが、レース後の車検で音量規定オーバーにより失格扱い。これで大城が繰り上げ3位となりました。
【IA2 決勝ヒート2】
ジェイ・ウィルソンに大倉由揮が果敢に挑む
ホールショットを奪ったのは大倉由揮(#6)。西條悠人(#5)と鳥谷部晃太(#35)が続き、やや出遅れたジェイ・ウィルソン(#106)が、まずは鳥谷部を抜いて1周目をクリアしました。2周目、ウィルソンは西條をパスして2番手。大倉に迫りましたが、3周目途中まで大倉が抑えました。しかしウィルソンが先行し、大倉と西條が追う展開。4番手を走る鳥谷部は、4周目あたりから大きく遅れていきました。
レース中盤、トップのウィルソンが数秒のリードを奪う一方で、大倉と西條は激しい2番手争い。しかしここでは大倉が競り勝つと、10周目から西條のラップタイムが少し落ち、両者の差は拡大しました。そして西條には、前戦に続いてスポット参戦した平田優(#51)が接近。レース終盤には、何度も順位が入れ替わるバトルに発展しました。レースは、再びウィルソンが勝利。大倉が2位でゴールし、最後は平田を退けた西條が3位、平田が4位でした。
【レディースクラス 決勝】
転倒から再逆転して川井麻央が今季5勝目!
久保まな(#3)がホールショット。スポット参戦した現役オートレーサーの高橋絵莉子(#47)らを抜いて、川井麻央(#1)が1周目に2番手へ浮上しました。さらに、本田七海(#2)も3番手に浮上。その後方では、箕浦未夢(#13)と高橋と楠本菜月(#5)が4番手争いを繰り広げ、2周目に楠本がここから抜け出しました。3周目、トップを守っていた久保が転倒。川井がトップに立ちました。
ところが4周目、今度は川井が転倒。これで先頭は本田に代わりましたが、すぐに復帰した川井が5周目に再びトップの座を得ました。その後、本田は1~2秒後方で川井をマーク。しかし最後まで川井が後続の本田を寄せ付けず、今季5勝目を挙げました。本田が2位、楠本が全日本初表彰台となる3位。久保は4位まで追い上げてチェッカーを受けました。箕浦が5位、高橋が6位でした。
10月23日(土)~24日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催される2021年のD.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ第7戦。ここでは、今大会の注目ポイントやコースの特徴、各クラス注目の選手など、観戦に役立つ情報をまとめて紹介します!
【1】タイトル争いの行方を占う重要な1戦
今季の2021 D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズは、第5戦近畿大会が新型コロナウイルスの感染拡大による影響で中止となり全6戦に。第2戦中国大会が、同じくコロナの影響で11月下旬に開催を延期したことから、本来は今季最終戦だった10月23日(土)~24日(日)の第7戦第59回MFJ-GPモトクロス大会は、シーズン決着の場ではなくなりました。一方で、チャンピオン争いに加わっているライダーにとっては、この大会終了後に有利な立場にいることが非常に重要となるため、もしかしたら最終戦以上にアグレッシブなライディングとし烈なバトルが観られるかもしれません。
そんな第7戦第59回MFJ-GPモトクロス大会の舞台となるのは、宮城県のスポーツランドSUGO。かつてスーパーバイク世界選手権が開催されたこともあるオンロードサーキットや、現在でも全日本スーパーモト選手権などが実施されているカートコースも有し、全日本トライアル選手権や全日本エンデューロ選手権まで実施される広大な複合モータースポーツ施設です。全日本モトクロス選手権では、今季第4戦でも会場となりました。
【2】万全の新型コロナウイルス対策で
施設とスタッフが充実し、オンロードとオフロードのさまざまなレースを開催することなどで、コロナ禍におけるイベント実施のノウハウも蓄積してきたスポーツランドSUGO。全国的な新規感染者数が激減している状況での開催とはいえ、今大会でも新型コロナウイルス対策を徹底しています。
大会前の情報によると、第4戦と同じくパドックには観客の立ち入り制限エリアを設ける予定とのこと。これは、ライダーやチーム関係者と観客の接触機会を大幅に減らすことで、感染リスクを下げるという考えに基づいています。選手との距離が近いのが、本来の全日本モトクロスが持つ魅力ですが、コロナの現状を踏まえてご理解いただけますようお願いいたします。
またSUGOの入場時には、選手や関係者や観客などに対して、状況に応じて検温や体調チェックシートの提出などが求められます。また、飲食時以外のマスク着用や観戦時の密集回避(ソーシャルディスタンス確保)なども呼びかけられています。ご協力よろしくお願いいたします。
【3】コースはアップダウンも豊富でダイナミック
かつてモトクロス世界選手権を誘致したこともあるスポーツランドSUGOのインターナショナルモトクロスコースは、ふたつの丘にまたがるようにレイアウトされ、その斜面や谷地といった自然の地形を生かした豊富なアップダウンも特徴としています。コースの序盤には、斜度が約30度で長さが約70mもある上りの「大坂」、メインエリアから見ると “丘の向こう”となるエリアにはハイスピードな「ヨーロピアンセクション」もあります。
比較的頻繁にコースの仕様が変更されるSUGOですが、「アップダウンが豊富でダイナミック」という基本コンセプトは踏襲。現地で観戦できないファンのためにYoutubeライブ動画配信チャンネルの「MFJ Live Channel」を展開していますが、豪快なアップダウンはなかなか映像では伝わりづらく、ぜひとも会場で生観戦してもらいたいところです。
SUGOライダーズカフェ
ちなみに、SUGOには昔からスターティングエリア左側にコンクリートスタンド席が設けられていましたが、近年はそれに加えて大坂の横など複数ヵ所に観客席の整備が進められました。飲食店ブースも複数ヵ所に分散され、ヨーロピアンセクションにはバイク来場者無料(一般利用500円)の「SUGOライダーズカフェ」が設けられるなど、観戦環境の向上が進められています。メインエリアのトイレはきれいで、公共交通機関のみを利用した来場は難易度が高めな立地とはいえ、初めての全日本モトクロス観戦にも最適なコースのひとつです。
【4】最高峰クラスのIA1で注目の選手は?
山本鯨選手(#1) 山本鯨選手(#1) 渡辺祐介選手(#3) 渡辺祐介選手(#3)
排気量450ccの4ストマシンが参戦する最高峰クラスのIA1は、第6戦でホンダサポートライダーの山本鯨選手(#1)が両ヒート制覇を達成。ランキングトップにつけているヤマハファクトリーチームの渡辺祐介選手(#3)が3-4位だったことから、ポイント差が2点に詰まりました。さらに、渡辺選手と同じくヤマハファクトリーチームから参戦する富田俊樹選手は2-3位となり、こちらも渡辺選手とのポイント差を削減。渡辺選手が181点、山本選手が179点、富田選手が174点と、上位3選手が7点差の大接戦となっています。
このクラスは今季、カワサキファクトリーチームの能塚智寛選手(#5)とホンダサポートライダーの小方誠選手(#4)までが5強状態。能塚選手と小方選手は、ポイントランキングでは3番手の富田選手から22~30点差で、逆転チャンピオンにはやや厳しい状況ですが、レースでのヒート優勝は十分に狙える存在です。
今季はポイントスケールが変更され、優勝25点、2位20点、3位16点、4位13点、5位11点……と、これまでよりも上位のポイント間隔が大きめ。優勝と5位では14点も違います。渡辺選手と山本選手と富田選手の7点差というのは、もはや差が無いのと同じ。この大会でどの選手が有利な立場に持ち込むのか、あるいは大混戦のまま最終戦に臨むことになるのか、3選手だけでなく能塚選手と小方選手の順位を合わせて注目です。
【5】IA2はスポット参戦ライダーに注目
内田篤基選手(#4) 大城魁之輔選手(#2)
4スト250ccと2スト125ccのマシンが使われるIA2は、前戦の決勝ヒート1で、カワサキのマシンを駆りランキングトップを独走していた内田篤基選手(#4)が負傷リタイア。内田選手はその後のレースに出走できず3ヒートともノーポイントとなり、ホンダに乗るランキング2番手の大城魁之輔選手(#2)が、わずか1ポイント差に迫りました。内田選手は、第7戦の出場あるいはポイント獲得が厳しい状況で、アクシデントがなければ大城選手がランキングトップに浮上することが予想されます。
このIA2には今回、ヤマハの招待により、オーストラリア選手権やニュージーランド選手権のモトクロスやスーパークロスで計6度のチャンピオンに輝き、米国AMAスーパークロスの250SXでも2020年にランキング19位という成績を残したジェイ・ウィルソン選手(#106)がスポット参戦。その実力は全日本IA2ライダーを圧倒的に上回っていると思われますが、ウィルソン選手にとっては慣れない日本のコースでのレースとなるため、日本人ライダーとのバトルにも期待が集まります。また、第6戦に続いて平田優選手(#51)、第4戦以来となる田中雅己選手(#48)といったベテランライダーもエントリーしていて、こちらも注目です。
川井麻央選手(#1) 川井麻央選手(#1) 久保まな選手(#3) 久保まな選手(#3)
レディースクラスは、昨年の開幕戦から全日本負けなしだった川井麻央選手(#1)の連勝が、川井選手の転倒により前戦でストップ。これで久保まな選手(#3)が今季初優勝を挙げました。しかし前戦でも、決勝中のベストラップタイムでは川井選手がライバルを完全に圧倒していて、このSUGOでも川井選手が優勝候補の筆頭であることは間違いありません。久保選手や川井選手のチームメイトでもある小野彩葉選手(#4)、インターバルで負傷した膝の状況が気になる本田七海選手(#2)らが、川井選手に挑みます。
【6】会場での観戦にはアプリの活用を!
全日本モトクロス選手権シリーズでは今季、全戦で動画配信アプリ「Grooview(グルービュー)」を展開しています。これは、来場者がスマホやタブレットでレースや関連イベントなどの動画やタイミングモニター、タイムスケジュール、選手リスト、場内案内などの情報を閲覧できる、場内限定の無料サービス。これを活用すれば、会場内のどこで観戦していても、レースの順位や今後のタイムスケジュールなどをチェックできます。
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