2024年3月31日
愛知県岡崎市キョウセイドライバーランド
動員数:2,631人

2024年全日本トライアル選手権開幕戦。会場は昨年同様キョウセイドライバーランド。いいお天気で、たいへん快適なトライアル日和となった。

国際A級スーパー

黒山陣(シェルコ)、浦山瑞希(ホンダ)の2名の10代ライダーのIAS入り、スペイン修業から帰ってきた武田呼人(ガスガス)のIAS初登場と、新しい顔ぶれでにぎわう今年の全日本選手権、そして大トピックは、氏川政哉(ヤマハ)がメーカーとチームを変えての登場だった。

ホンダのワークスマシンに乗るのは、昨年に続き小川友幸(ホンダ)。13回の全日本チャンピオンは、今年もこのマシンで連覇更新を狙う。そして氏川が加入したヤマハは、黒山健一、野﨑史高の先輩を含めて3人が電動マシン、TY-E2.2に乗る布陣。18人の参加者中、3人が電動という新時代の幕開けとなった。TY-Eのデビューは昨年のここでの開幕戦だったから、この1年間の真価が発揮されることになる。

シーズン初戦から強さを見せつけた小川友幸


最年長王者は、開幕戦は勝てないというジンクスがある。しかし今回は、序盤から試合の主導権を握った。ミスはあった。一瞬リードを奪われることもあった。しかし5点がない戦いぶりは圧巻。1ラップ目の減点はわずか5点で、最も大きな減点が第4セクションでの2点と、その安定感は圧巻だった。

小川にはやや離されたが、1ラップ目に2位につけたのが氏川。エンジンマシンから電動マシンへ、チームもなにもまったく環境が変わった開幕戦で、堂々たる優勝争いをするのは、若さゆえの順能力か。

ヤマハへ移籍、初めての電動。新しいチャレンジをする氏川政哉の初戦は3位

電動での全日本挑戦プロジェクトを推進してきた黒山は、勝利は自分の手でつかみたい。1ラップ目は氏川に1点差の3位につける。

2ラップ目、小川の好調は変わらない。6つのセクションで減点をしたものの、減点はいずれも1点で、このラップを6点で終えた。クリーン数こそ最多とはならなかったが、2ラップを11点で終えて、SSを待つ。

小川を追いつめ、逆転を図りたかった氏川は、逆に減点を増やしてしまって黒山に逆転され、2ラップトータル24点。SSでの逆転勝利の可能性もなくなっていた。2ラップ目の黒山は5点なしで追い上げたが、小川には届かず。2ラップトータル20点で、小川とは11点差の2位。残るSSで、かろうじて逆転勝利の可能性が残るという戦況だ。

電動マシンを操る黒山健一は2位

4位の小川毅士は、すでにそのポジションが確定的となっている。5位と6位は同点で野﨑史高と武田呼人が並んだ。スペインから帰ってきて初のIAS参戦となった武田だが、トップ6に混ざっての戦いを演じる実力を証明した。7位は、らしくない失敗が相次いだ柴田暁となっている。

SSに進出するのは、8位の久岡孝二(ホンダ)、デビュー戦で堂々9位に入ってきた黒山陣、そして10位は武井誠也(ホンダ)。武井は1ラップ目の第10セクションで足を痛めていて、苦戦の中のSS進出だった。

SS進出を果たせず、ここで順位が決定するのが11位以降。オートレースの開催スケジュールと調整しながら全日本に参戦する野本佳章(ベータ)が11位、1点差で北陸の怪童、田中善弘(ホンダ)が12位、ヤマハのエンジンマシンを走らせる唯一の存在の濵邉伶が13位。平田雅裕(スコルパ)14位、岡村将敏(シェルコ)15位で、ここまでがポイント獲得圏。古傷のひざを痛めた磯谷玲(ベータ)16位、デビュー戦でIASの高い壁の洗礼を受けた浦山瑞希(ホンダ)が17位、1ラップ目第5セクションで足首を痛めた磯谷郁(ベータ)が完走を果たして18位となっている。

そしてSS。今回のSSは、ダイナミックかつ難易度も高め。SS第1は終盤に配置された180cmの真直角ステアが鬼門。その鬼門に最初に到達したのが久岡だった。次の柴田はその手前で5点となり、野﨑、武田と次々に5点。高さだけでなく、時間もぎりぎりで、余裕を持ってトライすることができない。結局黒山まで全員が5点で、最後のトライとなったのが小川。しかし小川は序盤の飛びつきで5点となってちょっと小川らしくない結末。結局このSS第1は全員が減点5となった。

SS第2は最終第12セクションを改変したものだが、距離も延び、ポイントも増えてハードな設定。沢を走り、泥斜面の登って降りるのが最初の関門、次にそびえる大岩が次の鬼門。高さはそれほどでもないが、精度が要求される3つの岩飛び、そして巨大なタンクに登って、最後は石垣を登ってフィニッシュ。最も難度が高かったのは大岩だが、どこでも失敗ができる難ポイントばかりだ。

最初に大岩を越えたのが柴田。柴田はここを1点で抜け、ようやく柴田らしいキレを見せた。続く武田は大岩の後の岩飛びで転倒。これで武田は柴田の逆転を許して7位となった。5点になれば柴田に逆転される計算の野﨑は、きっちり3点でここを抜けて5位の座をキープ。

小川毅士は大岩で2点。それ以外はスムーズにアウト。この流れだと、あるいはクリーンが見られるのではないかという期待も出てきた。氏川が3点で3位を確定した後、黒山は初めて大岩を完璧に攻略。しかしその後1点を失ってクリーンはならず。やはり期待は、最後にトライする小川に集まった。小川も、しかしクリーンはできなかった。このままきっちり走りきって勝利のゴールへ向かうと思われた矢先の巨大タンク登り。なんと登った瞬間にリヤを跳ねさせ、そのまま前転するように転倒。なんと優勝を決めてからの小川は、連続5点で試合を終了。しかし何年ぶりかという開幕戦勝利で、新しいシーズンに幸先のいいスタートを切った。

IAS表彰式。左から2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位柴田暁
国際A級

昨年1年、負傷療養で全日本参戦をお休みしていたIASの平田貴裕(スコルパ)が今年はこのクラスに参戦。実力のある大ベテランがずらりと揃った激戦クラスとなった。

1ラップ目のトップは、ゼッケン1番の砂田真彦(ホンダ)。砂田もおととしまでIASを走っていた。砂田の減点は3点で、勝利をつかむには減点を最小限におさえる必要がある。

2ラップ目、砂田が第6セクションで3点、1点を争う展開でこの3点は厳しかったが、さらに第11セクションで5点をとって万事休す。砂田は3位に落ち着いた。

1ラップ目の3位から砂田を逆転して2位となったのが本多元治(ホンダ)。砂田とはかつて同じチームにいた先輩格の本多は最多クリーンもたたき出しての表彰台獲得となった。

優勝は平田。2ラップ目は減点1がふたつだけの2点と、これがこの日のベストスコアとなった。

IASだったが昨シーズンは負傷療養した平田貴裕。今年はIAで復帰して優勝
国際A級2位、本多元治

今回は、このクラスにも電動マシンが登場。こちらはフランス製のEMで、輸入元である成田匠と、弟の亮が参戦。匠が4位、亮が9位と、ヤマハばかりが電動でないところを見せつけた。

4位まではすべてIAS経験者で、成田はそのチャンピオンでもある。成長段階のライダーとしては、20歳の宮澤陽斗が5位に入った。九州は宮崎から遠征の徳丸新伍が宮澤と1点差の6位となった。

国際A級表彰式、左から2位本多元治、優勝平田貴裕、3位砂田真彦、4位成田匠、5位宮澤陽斗、6位徳丸新伍
レディース

今回は8名が参戦。大学生のNB中澤瑛真(TRRS)と中学生のNA兼田歩佳(かねだほのか・TRRS)が初参戦となった。

優勝争いはチャンピオンの山森あゆ菜(モンテッサ)、昨年3戦出場して2勝した中川瑠菜(ベータ)、そしてレディースクラス設立以来全戦参加の小玉絵里加(TRRS)の3人による接戦となった。今回はIBクラスなどに参加者が多く、レディースの面々も時間配分に苦慮しながらの戦いとなったようだ。

開幕戦で優勝した中川瑠菜

中川は最初のセクションで3点を失ったものの、5点を一つに抑えて好調。1ラップ目にして、2位に8点差とリードをとった。2位争いは僅差で、山森が28点、小玉が30点。優勝争いを含め、2ラップ目次第ではまだまだ結果は見えない。

2023全日本レディースクラスチャンピオン、山森あゆ菜は2位


このトップグループにやや離されて齋藤由美(ベータ)が36点、地元米澤ジェシカ(TRRS)はなんと第12セクションを見落とし(存在に気がつかず)40点。本来なら斉藤と接戦を演じながらトップグループに食い込むべき存在だった。

初出場の兼田は転倒によるダメージもあって、第4セクションまで走ってリタイヤ。この時点での順位は4位タイだったから、今後に期待だ。

2ラップ目、渋滞やタイムオーバー減点などあって、それぞれ減点は増やしているが、戦況は変わらず。中川は2位に12点差で開幕戦を勝利した。今シーズンは全戦参加をするということで、チャンピオン防衛を目指す山森との戦いが注目される。

2位は3点差で山森が逃げ切った。大会が3月31日ということで、すでに卒業式を終えた中川と山森は、この日が高校生としての最後の戦い。JK最後のワンツーとお互いの健闘をたたえあった。

逆転は可能ながら、最後まで高校生を追いつめられずの小玉が3位、小玉に9点差で斉藤、5位に寺田智恵子(TRRS)、第12のほか、第6セクションでもパンチを受け忘れた米澤が6位、初出場の中澤はその米澤に3点差で7位となった。

左より、2位山森あゆ菜、優勝中川瑠菜、3位小玉絵里加、4位齋藤由美、5位寺田智恵子、6位米澤ジェシカ
国際B級

新しい才能が次々に登場するIBクラスだが、今年は強力な本命が何人もいた。まずゼッケン1番、小学生の永久保圭(ベータ)、そして台湾からトライアル留学のチェン・ウェンマオ(TRRS)。マオは昨年のトライアルGC大会でもぶっちぎり勝利で、強さには太鼓判。

しかしさらに大本命の伏兵がいた。高橋淳(TRRS)。かつてIAライダーで、現在IAで活躍する本多や砂田のチームメイトでもあった。結果、1ラップ目は減点1点。2位に10点差のぶっちぎり。2ラップ目の高橋はややミスが出たが、それでもラップ2位をキープして、2位にダブルスコアに近い差をつけて勝利をつかんだ。

かつてIAを走っていたベテラン、高橋淳がIB勝利
小学生の永久保圭が2位


2位に入ったのは永久保。2ラップ目の減点12は2ラップ目のベストスコアだった。

マオは永久保に7点差の3位。4位に電動EMに乗る袋井就介、袋井の1ラップ目の11点はラップ2位のスコアだった。

今回がデビュー戦のやはり小学生寺澤迪志(ベータ)は、10位に入って見事デビュー戦でポイント獲得となった。

国際B級表彰式、左から2位永久保圭、優勝高橋淳、3位チェン・ウェンマオ、4位袋井就介、5位小倉功太郎、6位田上拓

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