黒山健一とTY-E、3年目の初優勝 R3もてぎ大会

2025年6月8日 栃木県芳賀郡茂木町モビリティリゾートもてぎ 動員数:2,100人 愛知・岡崎大会、大分・玖珠大会と転戦した全日本トライアル選手権は、「モビリティリゾートもてぎ」を舞台とする第3戦を迎えた。2週間前にトライアルGPが開催されたばかりの会場だが、大雨と泥でたいへんだったトライアルGPに対して、今回はずいぶんコンディションがいい。 国際A級スーパー 世界選手権の素材をそのまま使ったセクション群は、高さのあるダイナミックな設定だった。舗装路を移動することですべての観戦が完了する、観戦者にはたいへん手厚いおもてなしがもてぎのトライアル大会の特徴。斜面に配置された大岩やブロック資材などがライダーを待ち受けた。 序盤、好調を競ったのは開幕戦、第2戦を連続2位としている黒山健一(ヤマハ)と絶対王者の小川友幸(ホンダ)。小川は古傷に加え、練習中の負傷もあって満身創痍。しかし減点を押えて試合をまとめる技はいまだ日本一。その底力には敬服するしかない。 小川友幸、もてぎ大会で2位小川は第5、第6と連続して5点となって黒山、野﨑史高(ヤマハ)に逆転を許すも、1ラップ目終盤には再び野﨑を逆転。黒山にわずか1点差で1ラップ目を終了した。手術明けでまだ本調子ではない野﨑は小川に遅れること3点で3位。 第2戦で勝利してランキングトップに出た氏川政哉(ヤマハ)は、中盤の3連続5点で1ラップ目5位。4位の柴田暁(TRRS)を5点差で追う苦しい展開となっている。 昨年のもてぎ大会で優勝している氏川、今大会は4位2ラップ目、1ラップ目の感触でライディングを修正してきたライダーが減点を減らしてくる。1ラップ目が不本意に過ぎた氏川は2ラップ目に減点を半分にまで減らして、柴田を逆転。3位野﨑と同点にまで追いついた。野﨑、小川は1ラップ目のペースをほぼ維持することになった。二人とも、2ラップ目終盤までは1ラップ目をしのぐ走りを見せていたのだが終盤に連続して5点を喫して、1ラップ目の走りを超えることができなかった。 そんな中、氏川同様に減点を半分近くまで減らしてきたのが黒山だった。黒山は、第3セクションでの5点以外、2ラップ目には5点なし、1ラップ目の自身のベストスコアを8点も減らして好調のままゴールした。 SSを前に優勝を確定していた黒山健一とTY-E3.010セクション2ラップのゴール時点で、黒山のリードは11点。黒山の勝利は確定的だ。2位小川は減点39点で、3位野﨑とは6点差、野﨑と4位氏川は同点で、この3人はSSでの逆転があり得る。 電動による3位表彰台。野﨑史高5位柴田は6位小川毅士(ベータ)と1点差。さらに小川に5点差で、前回初めて表彰台に乗った久岡孝二(ホンダ)、久岡に2点差の武田呼人(ホンダ)も、SS次第で5位までポジションを上げる可能性は残していた。 残るSS進出ライダーは、ベテラン田中善弘(ホンダ)と、IASにコマを進めてまだ3戦目の宮澤陽斗(ベータ)。宮澤の第1セクションのクリーンは素晴らしかった。 SSは、トップグループにとってはクリーンの出る設定で、確実に最少減点でそうはしながらライバルの失敗を待つ展開となった。真っ先にクリーンを出して逆転を狙った武田がSS第2で5点、久岡は両SSをクリーンして、徐々にポジションが確定していく。 1点差で5位を争う柴田と小川毅士は、その順位争いのプレッシャーが減点に直結したトライを見せた。先を走る小川が1点をつけば、直後の柴田も1点を失い、さらにSS第2でも同じように1点ずつを失って、結果両者の減点差は変わらず。柴田は開幕2戦の不調を、少し取り戻しての5位獲得となった。 5位の柴田暁6位になった小川毅士は、柴田と1点差そして同点の野﨑と氏川は、両者一歩も譲らずクリーン合戦。となると、クリーン数の多い野﨑が3位入賞となって決着。小川友幸も、ここは確実に両SSをクリーンして、上出来の結果という2位入賞の戦いを締めくくった。 5点を取ろうとも勝利が決まっている黒山だったが、SS第1で1点をついたのがちょっと悔しい。最後のSS第2は、眼下で見守っているお客さんに笑顔と華麗なクリーンを披露して勝利のゴールに飛び込んだ。 黒山の勝利は2022年シティトライアルジャパン大会以来。そして2023年以来のTY-Eでの参戦で、黒山の初勝利となった。 ランキングは黒山が10ポイントリード。小川友幸と氏川は1ポイント差でランキング2位を争っている。 国際A級スーパークラス表彰式。左より、2位小川友幸、優勝黒山健一、3位野﨑史高国際A級スーパー_SS_結果表ダウンロード国際A級 第1セクションからいきなり渋滞と、セクションの厳しさにも増してむずかしい戦いを強いられたこのクラスだが、開幕戦で勝利、そして九州と今回のインターバルでSSDTに出場してきた高橋寛冴(シェルコ)が見事2勝目を飾った。高橋は4点のタイムオーバー減点をとりながも、2位平田貴裕(スコルパ)に1点差で逃げ切った。 国際A級、今季2勝目をあげた高橋寛冴前回勝利の小野貴史(ホンダ)は今回4位で、高橋を6ポイント差で追うランキング2位につけている。 中学生ライダーの対決、前回初表彰台を獲得した永久保圭(ベータ)は今回は8位、黒山太陽(シェルコ)は10位だった。 国際A級表彰式。左から2位平田貴裕、優勝高橋寛冴、3位本多元治、4位小野貴史、5位砂田真彦、6位村田慎示国際A級_2Laps_結果表ダウンロード レディース 9名が参加。いつものレディースクラスのモノサシからすると高い高い岩がレディースラインに現れるなどして、なかなか厳しい戦いとなった。 1ラップ目、唯一20点を切ってまとめてきたのが2連勝している中川瑠菜(ベータ)。中川の減点が12点で、2位小玉絵里加(TRRS)が20点。そして3位には、小学生の寺澤心結(ベータ)が小玉に4点差で迫っていた。 レディースクラス3連勝、中川瑠菜2ラップ目、中川は1ラップ目と同じ12点。しかしこれにわずか1点差の13点で2ラップ目をまとめてきたのが小玉。1ラップ目の点差があるので優勝争いとはならなかったが、1ラップでクリーン3を記録したのは小玉だけだった。 2位の小玉絵里加寺澤はわずか1点差ながら3位を守って初めての表彰台獲得。4位は齋藤由美(ベータ)、2ラップ目に19点の好スコアをマークした兼田歩佳(TRRS)が齋藤と同点ながらの5位となった。 小学生の寺澤心結が3位にLadies_2Laps_結果表ダウンロード国際B級 開幕戦5位、第2戦で2位となっている寺澤迪志(ベータ)が、他をまったく寄せ付けずの快勝。寺澤は1ラップ目がたったの1点、2ラップ目が2点で、トータル3点。2位の大内朋幸(ヴェルティゴ)が減点10点、3位の西村健志(TRRS)が減点20点だから、寺澤の快調ぶりがわかる。 国際B級は、寺澤迪志が圧勝する寺澤はこれでランキングトップにも進出。開幕3戦にして、3人の勝者が出たこのクラス、シーズンの行方が楽しみだ。 国際B級表彰式。左から、2位大内朋幸、優勝寺澤迪志、3位西村健志国際B級_2Laps_結果表ダウンロード

氏川政哉、今シーズン初勝利 R2大分・玖珠大会

2025年4月27日 大分県玖珠町玖珠トライアルヒルズ 動員数:800人 愛知県岡崎市で開幕を迎えた後、全日本選手権第2戦はその2週間後に九州での開催。昨年同様、大分県玖珠町での開催だ。開幕戦は狙い定めたような悪天候だったが、今回は土曜・日曜といいお天気で、翌日月曜日が雨になったという。 国際A級スーパー 下見をしての予想は神経戦。セクションのポイント、ひとつひとつはそれほど難度は高くないが、2025年ルール特有、ループができる、あるいはループをしなければ走れないセクション設営がしてあって、セクション走破は時間がかかるようなむずかしさがあった。他クラスのゲートマーカーに進入してはいけないというルールも、走行ラインをより限定して、最短距離を走らせてもらえない。 勝負どころは第4、第5、第8ということで、その他セクションはクリーンが必須か、少なくとも5点になってはいけないという緊迫感のもと、IASの10セクション2ラップは進んでいく。 しかしそれでも、ミスは出るものだ。1ラップ目、一つの5点もなく10セクションを走り終えたのは、黒山健一(ヤマハ)ただ一人だった。黒山の減点は第3セクションでのイージーな1点と、鬼門の第8セクションでの3点、合計4点だった。 電動TY-E 3.0でトップ争いをした黒山健一黒山とトップを争うべき面々は、いくつかの5点を献上している。小川毅士(ベータ)の5点は一つだけだったが、氏川政哉(ヤマハ)、小川友幸(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)はふたつずつ、武田呼人(ホンダ)と久岡孝二(ホンダ)は3つ、柴田暁(TRRS)に5つもの5点があった。 黒山がぶっちぎりの好成績らしい、との情報が流れてきた2ラップ目後半、黒山が第7と第9で、立て続けにゲート接触の5点をとられた。1個ならともかく2個となると、1ラップ目に7点のリードをとっている黒山にしても、戦い方が厳しくなってくる。 さらに、1ラップ目に3個の5点で6位につけていた久岡が、2ラップ目に驚異的な走りを見せた。10セクションのうち、減点したのはたったの2ヶ所だけ、久岡の2ラップ目の減点3は、この日のIASベストスコアとなった。 ベストスコアをだした久岡孝二は3位しかしさらにクリーンをたたき出しまくって追い上げを見せたのが氏川だった。氏川は2ラップ目、鬼門第8セクションで5点になった以外、9つのセクションでクリーンした。 2ラップを終えて集計を見ると、近来まれに見る接戦となっていた。優勝争いは氏川が逆転トップに出ていて、これを黒山が1点差で追う。 さらに3位争いがまた熾烈だった。3位には驚異の追い上げを見せた久岡が入っていて、久岡と同点で小川毅士、さらに1点差で野﨑、野﨑に1点差で小川友幸と続いた。久岡から小川友幸までの4人が2点差の中にひしめき合う。 4位の小川毅士SSは、どちらも建築資材を斜面に配置した人工セクション。SS第1は4つ並んだポイントを攻めて、同じところを戻ってきて隣のポイントに挑戦するという、新ルールならではの設定になっていた。トップバッターの武井誠也(ベータ)が5点、しかし次の柴田がクリーンをし、どうやらこのSSはクリーンが必須ということになった。自力で上位を逆転するのは難しいが、ミスをおかして順位を下げるのは簡単にできる。田中善弘が2点、武田呼人が1点。彼らの順位に変動はないが、僅差のトップ争い、3位争いの誰かが1点2点の減点をすれば、順位は変動する可能性がある。 ヤマハの電動TY-E 2.0の野﨑史高失敗をしたのは、チャンピオンの小川友幸だった。この日の小川は負傷して動きの悪いひざをだましながら、さっぱり練習できていない状態での大会参加だったから、苦戦するのはやむを得ない。ただその状態で前回の開幕戦では優勝していたのも事実。チャンピオンの底力、というやつだ。  不調だった小川友幸は6位小川の失敗で小川の6位は確定的となったが、その後の面々も、SS第1はきれいにクリーンを決めていく。SS第1での順位変動はなかった。 SS第2は、アウトのブロックからブロックへの飛び移りが鬼門だった。しかしトップバッターの武井がクリーン、2番手の柴田は前転をしたものの、すでにセクションを出ているということでクリーン。田中が2点を失ったが、柴田に順位を奪われることなく8位決定。 7位武田呼人以降は、様々なプレッシャーと戦いながら、それぞれ美しいクリーンを見せて試合は終わった。優勝は氏川政哉、氏川の今シーズン初勝利、TY-E3.0にとっても初勝利だ。 TY-E 3.0での優勝は初。氏川政哉またしても勝てなかった黒山は、しかしランキングでは氏川にわずか1点差の2位。小川友幸は今回の6位で黒山に5点差のランキング3位に後退している。 今シーズンのランキング争いも、厳しいものになりそうだ。 ルーキーの宮澤陽斗(ベータ)は13位で初ポイント獲得。今年はランキング10位までが翌年のIASに残留できるという厳しいルールが発表されているが、去年のルーキーの浦山瑞希(ホンダ)は現在ボーダーラインのランキング11位につけている。 IAS表彰式。左より2位黒山健一、優勝氏川政哉、3位久岡孝二、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位小川友幸2025r2_IASダウンロード国際A級 このクラスも神経戦とは目されていたが、どれもクリーンして当然というセクションでもない。そんな中、1ラップ目のトップ3は3人が1点の中で争った。トップはルーキーの永久保圭(ベータ)、13歳! 減点は12点だった。これにベテラン平田貴裕(スコルパ)と小野貴史(ホンダ)が12点で続く。なかなかの接戦だ。 2ラップ目、永久保は1ラップ目にクリーンしていた第7セクションで5点。対して小野と平田は2ラップ目を一ケタ減点にまとめて、ベテラン勢による優勝争いとなっていった。 勝利は小野貴史。約2年ぶりの勝利だった。前回勝利の高橋寛冴(シェルコ)は6位。ランキングトップは小野が6ポイント差でトップに立っている。 小野貴史の勝利1ラップ目にトップだった永久保は、2ラップ目に原点を減らしきれず、それでも3位と、初めてのIA表彰台を獲得した。 国際A級表彰式。左より2位平田貴裕、優勝小野貴史、3位永久保圭、4位中里侑、5位黒山太陽、6位高橋寛冴2025r2_IAダウンロード レディース 5名が参戦。前回リタイヤして心配された米澤ジェシカ(TRRS)も、ちょっとひざを気にしつつ、元気な笑顔を見せてくれた。 中川瑠菜(ベータ)の強さは安定的かと思われていたが、今回光ったのは兼田歩佳(TRRS)だった。1ラップ目こそミスがあって4位に甘んじていたが、2ラップ目はただ一人一ケタ減点をマークして、このラップは中川に3点差のトップ。トータルでは中川に3点差で2位に甘んじることになったが、今後が楽しみになってきた。 中川瑠菜、今シーズン2連勝レディース表彰式。左より2位兼田歩佳、優勝中川瑠菜、3位小玉絵里加、4位米澤ジェシカ、5位齋藤由美2025r2_LTRダウンロード国際B級 前回、2位で悔しかった木村倭(シェルコ)だが、今回は会心の勝利。1ラップ目から2位の1/4の2点で他を圧倒し、2ラップ目もベストスコアタイの6点でトップを守った。…

小川友幸、奇跡の2年連続開幕戦勝利 R1愛知・岡崎大会

2025年4月13日 愛知県キョウセイドライバーランド 動員数:1,500人 2025年全日本選手権開幕戦は、今年も愛知県岡崎市キョウセイドライバーランドでの開催。土曜日午前中はいいお天気だったが、狙いすましたように日曜日は朝から雨が降り、表彰式の頃に止んでくるという意地悪なお天気となった。 国際A級スーパー ルーキーは2024年国際A級でランキング2位となった宮澤陽斗(ベータ)のみ。今回の参加は16名だった。ゼッケン5をつける権利もある藤波貴久はヨーロッパでの監督業に戻り、10番黒山陣は世界戦T3に出場中、14野本佳章と19藤原慎也はそれぞれオートレースやラリーに向けて欠場となっている。 雨は確実に降るということで雨設定とはなっていたが、それでもいつもよりセクションは辛口。参加人数が多いことでの時間配分と、抜けられるセクションと確実にクリーンできるセクションをしっかり走ることが必要だと、下見を終えたライダーは口々に語っていた。 第1セクションから3点か5点の攻防となった。そんな中、唯一2点でここを抜けたのが小川友幸(ホンダ)。14回の全日本チャンピオンの幸先はいい。しかし小川は負傷を抱えていて、それがまだ完治していない。どこまで走れるか、そんな状況で戦っていた。 悪条件のなか、1点差で優勝を決めた小川友幸小川と氏川政哉(ヤマハ)以外全員5点の第2セクションの後、第3では、久岡孝二(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)、黒山健一(ヤマハ)がクリーンをたたき出した。雨で泥々ながら、クリーンが出せるとなると、戦い方もまた複雑になる。 今回、最もクリーンが出やすかったのは第9セクションだった。けわしい崖に点在する大岩を攻略していくもので、けっして簡単ではないのだが、雨の影響をそれほど受けないのが幸いしたようだ。 黒山健一自身の電動初勝利にあとわずか。2位しかしそれでもミスは出るもので、氏川はここで1点を失う。1点はそれほど悪い結果ではないが、氏川はここまで一つもクリーンがない。その後の終盤セクションでも3連続5点を取って、さらに2点のタイムオーバー減点もあって、氏川の1ラップ目は5位。今年から黒山と同じくヤマハファクトリーレーシングチーム入り、最新型のTY-E3.0を託された氏川だが、ちょっとむずかしい戦いになっている。 2ラップ目にはトップスコアを出している。氏川政哉は3位昨シーズン、相次いでひざに大けがを負った二人、野﨑と武田呼人(ホンダ)は、対照的だった。野﨑はシーズンの半分を欠場することになるなど負傷もより深刻だったが、1ラップ目は3位だった。対して武田は、チーム三谷ホンダのメンバーとなり、小川と同じツインプラグのファクトリーマシンを手にしたものの、思うような走りができずに1ラップ目を9位としてしまった。 結局トップは小川友幸だったが、2位黒山にはわずか1点差。小川に10点差で3位野﨑、野﨑と同点で小川毅士(ベータ)、さらに1点差で氏川、さらにさらに氏川に1点差で柴田暁(TRRS)、その氏川に2点差で武田と田中善弘(ホンダ)が同点で並ぶという悪天候の中、1点を争う戦いが続いていく。 野﨑史高は4位。2、3、4位とヤマハ電動が並ぶ2ラップ目、わだちが深くなったり泥がこなれたり、あるいは現れたりと、コンディションにも変化が出る。調子を上げてきたのが氏川。クリーンは第1と第9、第11の3つだけだったが、確実に原点を減らして、2ラップ目だけならトップスコアをマークした。 小川友幸は、第10セクションでクラッシュ、フロントフォークのスタビライザーがちぎれて、前輪がふらふらするトラブルを抱えてしまった。それでも第11をクリーンして、やるべきことをやって結果の集計を待った。 実はこの頃、悪天候を考慮して、SSの中止が発表されていた。接戦だから逆転劇は期待できたものの、SSの性格上、ライダーのリスクも高いし、お客さんも最後の戦いを見たい半面、冷えきったからだを早く温めたい相反する思いがあったにちがいない。SSの中止は、会場のみんなにとって、まず安堵の結果となったはずだ。 黒山は最終12セクションをただ一人クリーン。もしかしたら、という思いで、やはり結果の集計を待った。2ラップ目のトップは氏川の25点だったが、続くは3人が同点の31点。小川友幸、野﨑、黒山が並んでいた。 結果、わずか1点差で、小川友幸の開幕戦勝利が決まった。開幕前の負傷、悪天候、厳しいセクション、終盤のマシントラブルなど、小川を襲ったさまざまな逆境を思うと、この結果は奇跡に近い。もともと開幕戦ではなかなか勝利できない小川だった。去年に続き、ジンクス破りのニュー小川友幸、誕生か。 5位の小川毅士ホンダに乗る武田呼人の初戦は6位2位黒山、3位氏川、4位野﨑とヤマハトリオがゼッケン順に並び、5位は小川毅士、小川毅士に同点クリーン数差で武田呼人が6位となった。 7位に田中、8位に今回は調子をくずしたままで終わってしまった柴田、9位にマシンを乗り換えた武井誠也(ベータ)、10位が久岡だった。 今回は16名の参加で、初めてのIAS参加でペース配分に戸惑ったか、1ラップ目に5点のタイムオーバー減点をとった宮澤が最下位となって、デビュー戦でのポイント獲得を逃している。 IAS表彰式。左より2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位野﨑史高、5位小川毅士、6位武田呼人2025r1_iasダウンロード国際A級 この日の各クラスの中では、この国際A級が優勝減点の最も少ないクラスとなった。厳しいコンディションの戦いであることには変わりはなかったが、それでも1回の足つきにこだわるトライアルらしい戦いができたのが、このクラスのトップ争いだったようだ。 こういった悪天候、厳しいコンディション、しかもむずかしい時間配分などが必要な大会では、ベテラン勢が強い。ただのベテランではない。IASを戦ってきた猛者やこのクラスのチャンピオン経験者もいるのだから、若手はよほど高い技術を発揮しなければ、経験者の試合運びにかなわない。 IA初優勝。22歳の高橋寛冴そんな中、1ラップ目のトップは22歳、若手の高橋寛冴(シェルコ)だった。2位小野貴史(ホンダ)に4点差たった。高橋は2020年にIBランキング3位でIAに昇格してきた。今年は5年目のIAシーズンになる。昨年の九州で3位表彰台に上がったが、まだ優勝経験はない。 2ラップ目、大ベテラン、本多元治(ホンダ)が追い上げてきた。対して高橋はミスが出た。1ラップ目は見事なスコアだったが、2ラップ目は倍以上に減点を増やしてしまった。 2ラップ目、トップスコアをマークしたのは本多で、高橋は4位だった。1ラップ2ラップ目の減点をトーするすると、高橋は本多と同点、クリーン数差の勝負で、高橋の初優勝が決まった。 高橋はこの後九州大会を走ったあと、イギリスはスコットランドの伝統イベント、SSDTに参加する。自身にとって大きなトライのシーズンに、自らはずみをつけた印象だ。 IBから昇格したばかりのルーキーは、02番の永久保圭が12位に入る大金星。永久保と同い年の13歳ながらIAの先輩である黒山太陽は、2ラップ目のクラッシュでマシントラブルを起こしながら完走、8位に入っている。若いパワーの台頭も楽しみだ。 IA表彰式。左より2位本多元治、優勝高橋寛冴、3位小野貴史、4位平田貴裕、5位村田慎示、6位中里侑2025r1_iaダウンロードレディース 今回は9名が参戦。初出場は小学生の寺澤心結(ベータ)と清水さやか(ホンダ)。 優勝は、やはり実力が一枚上手か、中川瑠菜(ベータ)。2位に14点離して減点52でつかんだ勝利だった。小玉絵里加(TRRS)は兼田歩佳(TRRS)が初参戦を2点差で下して久々に2位を得た。兼田は初の3位入賞になる。 レディースクラス優勝、中川瑠菜2位争いからは10点ほど離されたが、4位争いも接戦だった。齋藤由美(ベータ)と寺澤は1点差で齋藤の勝ち。11歳のデビュー戦は堂々たる5位入賞。第1セクションのクリーンは見事だった。 6位寺田智恵子(TRRS)と7位中澤瑛真(ベータ)、8位清水さやかも1点差ずつの勝負。それぞれの戦いがおもしろい。 レディース表彰式。左より2位小玉絵里加、優勝中川瑠菜、3位兼田歩佳、4位齋藤由美、5位寺澤心結、6位寺田智恵子2025r1_ltrダウンロード国際B級 ベテラン勢がひしめくこのクラスにあって、未知の才能も毎年登場してくる。2025年は、開幕から新勢力が表彰台のワンツーを占めた。優勝は12歳の岡直樹、そして2位が15歳の木村倭。二人とも去年のトライアルGC大会でIBに昇格してきたエリートだ。GCでは木村が優勝、岡は3位だった。 岡は選手権に出るようになって3年目、木村は2年目ということで、将来が楽しみ。木村はIB昇格1年生にして、世界戦T3にスポット参戦の予定だということだ。 3位山口太一を含め、表彰台の3人は3人とも、2024年実績がない選手達となった。新しい才能は、確実に育っている。…

R8 City Trial Japan最終戦、小川友幸が緊張の接戦を2位でまとめてV14達成。藤波貴久は3連勝

2024年11月3日 大阪府大阪市中央公会堂・中之島通り 動員数:7,000人 2024年全日本選手権は、今年もシティ・トライアル・ジャパン大会が最終戦となった。第7戦SUGO大会が終わった時点でランキング10位までに入った選手に参加の資格がある。ランキング11位以降の選手は、第7戦時点でランキングが決定する。トップ10、そしてチャンピオン争いは、この大会が最後の勝負となる。 昨年は突然の雨で、セクション部材とした無垢の丸太がツルツルに滑り、その対処に難儀をした。今年も土曜日は台風の余波で大雨になり、昨年の二の舞いが心配されたが、しかし当日は朝から晴れ渡って、多少のグリップの悪さは残ったものの、コンディションはなかなか良好となった。今大会は、有料の観客席が設けられ、熱心なファンにはありがたい観戦環境となった。無料の立ち見席は健在だ。 セミ・ファイナル 試合のプロローグはセミ・ファイナルから。設営された4セクションを往復して全8セクションをトライしてファイナルへの進出権を争う。このスタート順は、第7戦終了時点のランキングによっている。 第7戦でシティ・トライアル・ジャパン大会への出場権を得た黒山陣、久岡孝二、そして藤波貴久の3人が最初にトライする。黒山は過去2回、少年ライダーのデモンストレーションとしてこの大会に彩りを添えていたが、今回はきっちり選手として登場となった。ファイナル進出はならなかったが、果敢なトライに観客から大きな声援が飛んでいた。 15才の中学生、黒山陣の果敢なトライ藤波はさすがのトライ。しかしその実、足のつけない戦況になることを予想して、緊張に包まれつつのトライだった。 ホンダの電動トライアルマシン、RTL ELECTRICで3連勝した藤波貴久セミファイナルは往路の4セクション、復路の4セクションで争われたが、前半のトップは藤波の1点、これを2点で小川友幸、氏川政哉、小川毅士が追う展開。しかし復路の4セクションで小川友幸と氏川が5点を喫し、小川毅士はふたつの5点で順位を落とした。代わって黒山健一が4セクションをオールクリーンして順位を上げてきた。 セミ・ファイナルの8セクションを終えて、トップ6が決まった。ファイナル進出がならなかったのは久岡孝二、黒山陣、そして華麗なライディングを披露しながら、4つの5点でスコアをまとめられなかった柴田暁。柴田はこのセミ・ファイナル敗退でランキングも6位と逆転を許した。なお、本来この大会に出場しているはずの野﨑史高は、ひざの負傷で療養中につき欠場。会場ではライディング解説役として活躍した。 レディースレース お昼休みには、山森あゆ菜、中川瑠菜、米澤ジェシカ、小玉絵里加の4人による、レディースライダーのデモンストレーション・レースが行われた。本来なら、土曜日に行われるはずだったが、悪天候の影響でこの日におこなうことになったもの。第1セクションの一部を使ってのトライは、いつもとは異なる難度の高さだったが、4人の女性陣は果敢にこれに挑戦し、熱心な観衆をわかせていた。 レディースレースに出場した4選手。左から小玉絵里加、米澤ジェシカ、中川瑠菜、山森あゆ菜2023-2024レディースチャンピオン、山森あゆ菜のライディングファイナル ファイナルは第1と第2、その逆走の第7、第8の4セクションで競われた。セクションはセミ・ファイナルから変更がなし。すでにクリーンの出ているセクションだが、足が出せない勝負にもなった。そしてまた、少しのミスで5点にもなれる設定ゆえ、まったく油断ができないファイナルの戦いとなった。 藤波が2点、小川友幸と氏川政哉が同点の7点、セミ・ファイナル後半をオールクリーンした黒山健一が8点でこれに続く。藤波に続いて、チャンピオン争いの3人がきれいに2位から4位までに並んでのファイナル開始だ。ファイナルはセミ・ファイナルの順位にしたがってトライ順が決められている。 必勝を目指す藤波、V14目前の小川友幸、そしてタイトル奪還を目指す黒山健一の集中力は見事だった。両者とも、是が非でも足をつかない気迫のトライが続く。たいして武田呼人、小川毅士、氏川にはミスが出た。武田は第1、第2を連続5点、氏川は第7で足が出て、第8ではタイムオーバーで5点となり、かろうじて可能性の残っていたタイトル争いに自ら終止符を打ってしまった。小川毅士に5点はなかったが、1点、3点と減点を重ねた。小川毅士は第8で唯一高い丸太から高い丸太に一気に飛んで会場をわかせたが、順位は5位となった。しかし小川は、これでランキング4位を獲得している。 氏川政哉は4位。シリーズランキング3位果敢なトライを見せ続けた小川毅士は5位。シリーズランキング4位勝負の焦点は、藤波とホンダの電動RTLの全日本3連覇なるか、小川友幸と黒山健一、タイトルを得るのか。先行してトライを終えた黒山は、ファイナルの4セクションをオールクリーンした。点差は1点。セミ・ファイナル終了時点でクリーン数も同一なので、小川が1回でも足をつけば、2位黒山、3位小川となる。ランキングポイントは小川が黒山に3点リード。黒山が2位、小川が3位となれば、2024年全日本チャンピオンが黒山に渡ることを意味していた。 1回も足をつけない尋常ではない緊張感の中、小川がトライする。確実、正確が身上の小川だが、さすがに乱れが出た。しかしその乱れを、足をつくことなく修正して、ファイナル4セクションをオールクリーン。小川友幸、12連覇、14回目の全日本タイトルを獲得だ。 小川友幸がIASチャンピオンを獲得最後にトライした藤波は、小川のタイトル獲得に喧騒に動じることなく、自らのトライに集中。藤波のトライも完璧ではなかったが、ライディングの乱れを足をつくことなく修正して、ついに出場3戦の全日本を全勝としてその仕事を終えた。 ホンダの電動マシンのデビューを最高のかたちで飾った藤波、1点を争うチャンピオン争いを制した小川友幸。大ベテランの集中力が、最後の最後まで客席を引きつけた最終戦となった。 左から2位小川友幸、優勝藤波貴久、3位黒山建一、4位氏川政哉、5位小川毅士、6位武田呼人小川友幸のV14を祝うチームメイトたち優勝を喜ぶ藤波貴久2024r8_ias_resultsダウンロード

藤波貴久が2連勝、レディースは山森あゆ菜、IBは髙橋淳が勝利でタイトル獲得の R7宮城・SUGO大会

2024年10月27日 宮城県柴田郡村田町スポーツランドSUGO 動員数:1,500人 2024年全日本選手権第7戦SUGO大会。トップカテゴリーのIASはこのあとシティ・トライアル・ジャパン大会が控えているが、その他のクラスはこれが最終戦となる。例年、最終戦のこの時期は寒さに震えることが多いのだが、今年は絶好のトライアル日和。体を使ってライディングするライダーには、ちょっと暑いくらいの陽気になった。 前回、和歌山・湯浅大会に続いて、今回も元世界チャンピオンの藤波貴久(Honda)が参戦。インターバルの2週間で、さらに乗り込みとセッティングを進めてきたということで、終盤戦のスポット参戦とはいえ、必勝の体制だ。ちなみに藤波が最後に全日本選手権に参戦したのは2003年最終戦のSUGO大会。21年ぶりに、藤波が世界チャンピオンとなってSUGOに戻ってきた、ということになる。 セクションは例年とほとんど変わらず。各クラスともトップライダーにとっては減点を最小限に抑えなければいけない神経戦の様相で、前回大会とはずいぶん性格が違う戦いを強いられたと、藤波も語った。IB・LTRは第5と第8を除く8セクション2ラップ、IAは10セクション2ラップ、そしてIASがこれにふたつのSSを加えての戦いとなった。 参加はIASが17名、IAが36名、LTRが9名、IBが63名、そして来日していて出場を希望したイタリアのレディースGPクラスのライダー、アレシア・ババケッタが賞典外でレディースクラスのセクションにトライする。スタートはIBとそれに続くバチェッタまでが1分に2台、それ以降は1台ずつ1分間でスタートとなった。 国際A級スーパー 神経戦の戦いと想定してのスタートだったが、開始早々の第3セクションで藤波が1点を失った。小さな石にタイヤをとられてのホッピングの失敗。これに藤波は大きな危機感を覚えていた。しかしスタート以降全セクションをクリーンしていた小川友幸(Honda)、氏川政哉(ヤマハ)が第6セクションで5点になって形勢は逆転、以後、最小限の減点でセクションを走破していく藤波には、誰もついていくことができなかった。藤波の2連勝で、ランキングポイントも50ポイントとなり、ここまでのランキングを8位として、次戦、ランキング10位までが出場権を持つシティ・トライアル・ジャパン大会にも出場が決まった。 電動トライアルバイクRTL ELECTRICで二連勝した藤波貴久一方、全日本チャンピオンを争う日本勢は、なかなかの接戦を演じた。1ラップ目、5点なしの黒山健一(ヤマハ)がトータル7点、これに小川友幸と氏川が10点で続く。小川毅士(ベータ)が12点と僅差で追うが、タイトルを争う3人は手堅い。ランキングでは黒山がトップで、これを小川友幸と氏川が4点差で追っている。今大会の勝負もランキングも、どちらも大接戦だ。この大会、黒山は新型マシンを持ち込んだ。これまでのTY-E2.2から一気に進化したTY-E3.0。詳細は明らかにされないが、モーターなどの作動音が格段に静かになったのが大きな変化。もちろん性能的にもそれ以上の変革が施されているにちがいない。 電動ヤマハTY-E3.0を走らせる黒山健一2ラップ目、3人は揃って、難関の第6セクションまではクリーンした。藤波を上回るスコアをたたき出すのはむずかしいものの、2番手を誰が奪うかでタイトル争いの流れが変わってくる。大きな勝負の分かれ目は、第9、第10だった。このふたつを、黒山、氏川ともに5点。小川友幸は両方を1点ずつで抜けた。 2ラップを終えて、小川友幸は15点、黒山が20点、氏川が25点。きっちり5点差ずつ。しかし黒山と氏川の間には、23点の小川毅士が割って入っていた。小川毅士は、第9をクリーン、第10を3点で抜けて、表彰台争いに加わってきた。 ベータの小川毅士が3位獲得SSは、建築素材のコンクリートブロックを絶妙に並べたもの。同じセクションを往復することで、SS1とSS2としてトライする。高さがあるだけでなく、セクションがコンクリートブロックの幅しかないから、ちょっとラインを乱すとセクションから飛び出してしまうリスクもある。 SSに進出する10位までには、ここまでに登場した5人の他、久岡孝二(Honda)、武田呼人(ガスガス)、黒山陣(シェルコ)、武井誠也(Honda)、そして柴田暁(TRRS)。柴田は1ラップ目後半にマシントラブルに見舞われ、そのまま修復はならず、なんとかコースを一回りして申告5点のパンチをもらってゴール。2ラップ目はオール5点だが、それでも10位に入っていた。しかしSSはトライできず。柴田のSSのスコアは5点ふたつ、ということになる。 電動ヤマハTY-E2.2の氏川政哉は5位になりランキング3番手SS1を最初に抜けたのは武田だった。武田と久岡は6位争いの渦中にいたが、負けじと久岡もSS1を3点で抜け、両者の点差は変わらず。その後、氏川が5点、小川毅士が初めて1点で抜けたあと、黒山も5点。これで黒山は小川毅士に逆転を許して4位となった。黒山のあと、小川友幸は確実に2点で走破、2位が決まった。 最後の藤波は、すでに勝利は決まっている。SSをふたつとも5点でも優勝できるのだが、藤波には課題があった。前回、SSをふたつとも5点となったのが、大きな心残りであり、悔しかった。この日は念入りに下見をし、慎重の上にも慎重に、そして渾身の集中を注いでSS1をトライした。クリーンだ。 小川友幸は今大会2位へ、ランキングトップに立った残りSS2一つとなり、順位がおおかた確定してきたものの、小川毅士と黒山の3位争いはまだ決着がついていない。その差1点で小川毅士が上位につける。まず小川毅士がトライ。クリーンすれば毅士の3位が決まる。しかしむずかしいポイントで、毅士は確実に足をついてマシンを送り出した。1点。さぁ黒山のトライだ。氏川はSS2も5点だったので、黒山の4位以上は決まっている。失うものはない。クリーンが出れば、毅士と同点、クリーン数差で黒山が3位となる。しかし黒山もまた、小川同様に足が出た。安全にマシンを運ぶにはいたしかたなかったが、それは黒山から表彰台を奪う結果となった。 残る二人、現役全日本チャンピオンと、元世界チャンピオン。二人は共に、1回の足つきもなく、この難セクションを走破した。藤波にすれば、前回大会の借りを返しての完全制覇。そして小川にすれば、中盤以降苦しんだタイトル争いで、僅差ではあるがランキングトップを取り戻した渾身のトライとなった。 泣いても笑っても残りは次週のシティ・トライアル・ジャパン1戦。最終戦は、ここまでの自然地形を相手にしたトライアルとは異なり、人工物を相手となる。そこにはまた、未知数の波乱も待ち受けている。 IAS表彰式、左から2位小川友幸、優勝藤波貴久、3位小川毅士、4位黒山健一、5位氏川政哉、6位久岡孝二2024r7_ias_resultsダウンロード国際A級 前回和歌山・湯浅大会で、成田匠(EM)のシリーズタイトルは決まっている。ホンダとヤマハの電動マシンの対決で話題沸騰の全日本トライアルだが、このクラスではフランス製EMがひと足早く栄冠をものにしている。 しかし成田は、1ラップ目に3つの5点で苦戦を強いられた。1ラップ目、トップに立ったのが、砂田真彦(Honda)だった。砂田を2点差で追うのが、今シーズンの若手のホープ、宮澤陽斗(ベータ)。表彰台の常連となって、あとはいつ初優勝を遂げるかがテーマだった。 10年ぶりの優勝。砂田真彦神経戦の中、二人の争いは接戦。2ラップ目、今度は宮澤が砂田の減点を上回った。しかしわずか1点差。トータルでは、1点差で砂田の勝ちとなった。砂田は元IASライダーだが、それ以前にIAクラスを走っていた際に1勝して以来、今回は10年ぶりの2勝目となる。 宮澤に次ぐ3位は長くIAの中堅を続けている中里侑(TRRS)が、初の3位表彰台を獲得した。成田は4位となった。 国際A級表彰式、左より2位宮澤陽斗、優勝砂田真彦、3位中里侑、4位成田匠、5位高橋寛冴、6位小野貴史国際A級の成田匠。電動トライアルバイクで初の全日本チャンピオン獲得。2024r7_ia_resultsダウンロードレディース 1ポイント差で最終戦を迎えたチャンピオン争い。中川瑠菜(ベータ)と山森あゆ菜(モンテッサ)のタイトル争いは激戦だった。序盤、試合をリードしたのは中川だった。1ラップ目、中川のリードは5点。山森は2ラップ目の巻き返しにかけた。 しかし2ラップ目、中川に異変。マシントラブルで動けない。ピットまで押して戻り、再びコースに出たときには、すでに持ち時間はぎりぎりだった。残る4セクションをすべて申告5点として、さらに6点のタイムオーバーを喫してゴール。勝利は山森のものとなったが、それでも中川は2点差で2位を確保した。 レディースクラス2連覇、山森あゆ菜同い年で地域も近く、ずっといっしょに切磋琢磨してきた二人。タイトル争いも一進一退で最終戦まで争ってきた。それが意外な結末で決着を見た。山森は、タイトル獲得の喜びを聞かれ、ライバルの脱落によるくやしい勝利だった今回を踏まえ、ちゃんと勝って、すっきりした3連覇を目指すと誓った。 3位は 齋藤由美(ベータ)だったが、ランキング3位は米澤ジェシカ(TRRS)が獲得した。 賞典外で走ったアレシア・バケッタはやはり別格の強さを見せた。レディースのマーカーを通りながら、他クラスのマーカーにもトライして、山森の1/3のスコアで全セクションを走破した。女子T2クラスのチャンピオンにして、女子GPのデビューイヤーを堅実に走って来年以降の飛躍が期待されるイタリアの新星は、やはり実力者だった。 賞典外だったが、女子GPクラスの実力を見せたイタリアのアレシア・バケッタレディース表彰式、左から2位中川瑠菜、優勝山森あゆ菜、3位齋藤由美、4位米澤ジェシカ、5位小玉絵里加、6位中澤瑛真レディースチャンピオン獲得、山森あゆ菜2024r7_ltr_resultsダウンロード国際B級 永久保圭(ベータ)が2連勝したことで、高橋淳(TRRS)に5ポイント差まで迫った最終戦。永久保が優勝すれば、高橋が2位でもタイトルは永久保となる。しかし戦況は高橋に有利だ。 国際B級は高橋淳の勝利ここ2戦、テープを切ったりの5点で勝利を逃していた高橋だが、今回は改心のトライ。2ラップ目2点、2ラップ目3点はほぼベストといっていいだろう。永久保は地元の長谷川一樹(モンテッサ)に1点差で敗れて3位。しかし堂々、ランキング2位で国際A級への昇格切符を手中にした。 国際A級への昇格を決めたのは、高橋、永久保、台湾のChen(Honda)、袋井就介(EM)、そして田上拓(モンテッサ)の5名だった。 高橋淳はシリーズチャンピオンを獲得2024r7_ib_resultsダウンロード

藤波貴久21年ぶりの全日本、ホンダの電動マシンのデビューウィン R6和歌山・湯浅大会

2024年10月13日 和歌山県有田郡湯浅町・湯浅トライアルパーク 動員数:1,274人 2024年全日本選手権は、第5戦広島・三次灰塚大会が台風の直撃の恐れで中止となり、今回は2ヶ月ぶりの大会開催となった。和歌山県、湯浅トライアルパークでの第6戦は、天気もよく日中は久々の暑さに体力を消耗する選手も少なくなかった。 今回の大きな注目は、藤波貴久。ホンダの新しい電動マシンRTL ELECTRICを初めて実戦に投入してきた藤波だが、2021年に世界選手権で引退を宣言した藤波は、今回はテストライダーとしての参戦となる。とはいえ、全日本に参戦するのは2003年のSUGO大会以来。コロナ禍により日本では公式大会で引退試合などのセレモニーができなかったから、今回の参戦は日本のトライアルファン、フジガスファンへの素晴らしいプレゼントにもなった。 セクションはすべてが登り斜面含みだが、第1から第3までが岩盤も含む土メインで、第4から第7が岩ごろごろの沢、IB・LTRのみの第8を経て、第9、第10が再びふかふかの土、最終第11が大岩をメインとしたアクロバチックなものになっていた。 参加はIASが16名、IAが35名、LTRが9名、IBが71名、併催のオープントロフィー・オーバー50が1名、全部で132名の大盛況。スタートは第1スタートからIAまでが1分に2台ずつ、その後IASは1分1台、持ち時間はIASが30分短い設定となっていた。IAの時間設定が厳しかったが、その他のクラスはぎりぎりながら、持ち時間内になんとか走りきれていたようだ。 SSは、第10、第11を手直しして設定された。なお北海道・和寒大会で靭帯を負傷した野﨑史高(ヤマハ)は手術を受けて欠場。来シーズンの復帰に向けてリハビリ中だ。 国際A級スーパー 元世界チャンピオンの藤波だが、全日本での実績がないこともあって、スタートはIASの誰よりも早い。ざくざくの登り斜面が多いこの会場では、早いスタートはかなりの難易度アップを伴う。ライバルに追いつかれないよう、さっさと走ると宣言していた藤波だが、いざとなれば念入りな下見を繰り返し、藤波のトライをIAS全員が見守るシーンがたびたびあった。 RTL ELECTRICをデビューウィンさせた藤波貴久藤波が初めて5点となったのは第7セクションだったが、第6セクションまでの点数を見ると、藤波は7点、この時点で2位につける小川毅士(ベータ)が14点、小川友幸(ホンダ)15点、黒山健一(ヤマハ)19点と続き、ランキングトップの氏川政哉(ヤマハ)は21点で苦戦している。 しかし第7で5点を取った藤波は、ここから3連続で5点。最終第11セクションはぎりぎりのタイミングで2点をもぎとったが、小川友幸がよく追い上げていて、この1ラップ目、藤波のリードは2点まで縮まった。3位は黒山で藤波とは8点差。柴田暁(TRRS)、小川毅士、氏川らは、藤波から遅れること10点以上となってた。 1ラップ目は2位に僅差に迫られた藤波だが、2ラップ目はさすがの修正ぶりを見せた。3つの5点を献上した1ラップ目から、2ラップ目はたったの一つ。1ラップ目に5点になった3ヶ所は3点、2点、クリーンと、この3セクションだけで10点も減点を減らしてきた。 久しぶりの全日本ということもあって、全日本には全日本なりのむずかしさがある、そこが藤波の不安でもあり、ライバルにとっては一矢を報いるチャンスでもあったのだが、さすがフジガス、そのスキはほぼ見せることなく10セクション2ラップを走りきった。 電動TY-Eに乗る黒山健一、IASランキングトップに立った2ラップを終えて2位は黒山。黒山も1ラップ目より減点を10点減らしてきたが、この時点で藤波には15点離されていて、優勝争いは決着してしまっていた。しかし残るSSでどんな華麗なライディングをするか、彼らには最後の戦いが残った。 体調に不安があった小川友幸は黒山に7点差。計算上は逆転のチャンスもあるが、コンディションを考えれば3位も上々の結果とのこと。 体調に問題があった小川友幸だが、3位を守ったSSで逆転の可能性があったのは同点の柴田と氏川、1点差の小川毅士と黒山陣(シェルコ)だった。今年は世界選手権、トライアル・デ・ナシオン日本代表と貴重な経験をしてきた黒山が、いよいよトップ6入り目前までポジションを上げてきた。 SSは、第1も第2も難度は高かった。SS第1は最後の崖登りが最大の難関。そこまでも、ブロックやダニエルで運ぶ岩飛びで失敗する選手は多かった。 SS第1を抜けたのは二人だけ。小川毅士の1点に続いて黒山健一がクリーン。藤波も、最後の崖登りで失敗を喫した。 SS第2は巨大大岩をモチーフとしたセクションだが、走行ラインが限定されていて、何度は極めて高い。4番目にトライした黒山陣が、最初にここをアウト。これは大喝采だった。 急成長する中学生、黒山陣は7位ところがその後、トップ陣が次々に5点。最後のポイントまでたどりついたライダーは、黒山陣ただ一人だった。 SSでは黒山健一がトップスコアとなったが、それでも藤波の圧勝には変わりはなかった。大きなプレッシャーと戦いながら、まったくのニューマシンを勝利に導いた藤波だったが、最後にSSを走破できなかったことで、自信を情けないと責めながらのゴールとなった。 藤波はこのあと、第7戦SUGO大会にも出場。この結果次第で、ランキング10位までに出場権のあるシティ・トライアル・ジャパンにも出場の可能性が大だ。 今回、ランキングトップの氏川が5位に沈んだことでタイトル争いにも異変が。黒山健一が4ポイント差でトップに立ち、これを小川友幸と氏川が同点で追うことになった。 5位になった氏川政哉は黒山健一と4ポイント差、小川友幸と同ポイントで並んだIAS表彰式。左より2位黒山健一、優勝した藤波貴久、3位小川友幸、4位柴田暁、5位氏川政哉、6位小川毅士2024r6_ias_resultsダウンロード国際A級 広島・三次灰塚大会が中止となったことで全6戦で争われることになったIA以下の全日本選手権。第2戦から3連勝をしている成田匠(EM)は、ここで電動トライアルマシンでタイトルを決める可能性も大。 しかしそこに現れたのが伏兵というか、このクラスの常勝ライダー、本多元治(ホンダ)だった。今シーズン3戦目の出場となる本多は、ここまで2位2回。あと一歩、勝ちきれていない。それだけに今回は必勝を期してトレーニングを重ねてきたという。 国際A級の優勝は本多元治このクラスは、全体にタイムコントロールがむずかしかった。本多も、1ラップ目の最終セクションを申告5点で抜けてタイムオーバーを免れたが、ここをトライした2ラップ目は2点のタイムオーバー減点を喫している。成田は1ラップ目も2ラップ目も、2点ずつのタイムオーバーがあった。 勝利は、勝利に向かってきっちり試合を進めた本多だった。5点は申告した最終セクションの1回だけ。2位に7点差は、まず大きな勝利だった。 最終戦を前に、電動のEMでIAチャンピオンを決定した成田匠2位は小野貴史(ホンダ)。最終セクションでの5点以外、5点なしで、小野も堅実なトライを重ねた。成田は3位。しかしタイトル争いのライバル平田貴裕(スコルパ)が6位となり、今回チャンピオンシップポイントをさらに6ポイント離すことに成功、成田のポイントリードが32点となり、最終戦を待たずして、IAクラス(IASができて以降)2回目のチャンピオンを獲得した。 若手最上位は宮澤陽斗(ベータ)の5位。高橋寛冴(シェルコ)の9位、黒山太陽(シェルコ)の11位、小椋陽(TRRS)の13位と続いた。 国際A級表彰式。左から2位小野貴史、優勝本多元治、3位成田匠、4位砂田真彦、5位宮澤陽斗、6位平田貴裕 2024r6_ia_resultsダウンロードレディース 今回は9名が出場で盛況となったレディースクラス。ランキングのトップ争い、3位争いがそれぞれ接戦となっている中での、最終戦を目前とした一戦となった。…

氏川政哉2連勝、ヤマハTY-E、今回はワンツーフィニッシュ R4 北海道・和寒

2024年7月14日 北海道上川郡和寒町わっさむサーキット 動員数:680人 2024年全日本選手権第4戦は、恒例の海の日の連休に北の大地で開催される。ここ数年、北海道での戦いといえば、どこかで雨にたたられてつるつるの泥地獄と戦っていたものだが、今回は天気予報にも雨の心配はなく、そのとおり、当日もいいお天気となった。日差しが強く照りつけてかなり厳しいコンディションにはなったが、本州各地から遠征してきたライダーには、湿度の低いからっとした空気が新鮮だったようだ。 下見を終えての選手は、セクションについて全体的に神経戦との感想を語った。必ずしも簡単というばかりでなく、大きな岩やブロックを越えなければいけないポイントは多々あり、小さなミスが5点につながる。そこを越えてくるトップ争いにとっては、慎重に1点を削っていくメンタル勝負の大会が予想された。 参加者は98名。北海道大会としてはなかなかの盛況になった。IASが17名、IAが26,レディースが7、IBが42、そして全日本選手権に併催のオープントロフィーNAに6名のエントリーがあった。 用意されたのは10セクションとSSがひとつ。SS第2は第10セクションを手直しして設定される。 国際A級スーパー 第1セクションはウォーミングアップのような設定で、下見もそこそこにトライして、各ライダーはあっという間にクリーンしていった。第2セクションは、誰もが走破不可能ではないかと思われる急斜面へのトライとなったが、これもトップグループはあぶなげなくクリーンしていった。ところがここで、小川友幸(ホンダ)が失敗。チャンピオンの波乱の幕開けだった。 細かい減点をしながら、5点なしで1ラップを走りきったのは氏川政哉(ヤマハ)だった。今回、鬼門は第3から第5あたりと目されていた。その3セクションを、氏川は1点、2点、2点で切り抜けた。1ラップ目、氏川の減点は5点。しかしある意味、氏川以上に好調だったのが柴田暁(TRRS)だ。柴田は第3で1点、第4で5点をとるも、それ以外の8セクションをすべてクリーンした。氏川とは1点差で暫定2位だが、クリーン数では勝っている。 全日本2連勝は初めてという氏川政哉3位に野﨑史高(ヤマハ)。野﨑までが、1ラップ目を一桁減点でまとめたライダーとなった。4位の小川毅士(ベータ)は12点、黒山健一(ヤマハ)が19点で5位、同じく19点の武田呼人(ガスガス)が6位。小川友幸は22点で、なんと7位から追い上げを余儀なくされた。そして小川に1点差で武井誠也(ホンダ)、4点差で黒山陣(シェルコ)がつけている。 ヤマハTY-Eを走らせる野﨑史高は2位2ラップ目、氏川は堂々たる走りっぷりを見せた。1ラップ目にクリーンしていた第6と第7を、それぞれ1点と6点と、悔しい減点があったものの、それでも氏川のこのスコアを上回ったライダーは皆無だった。2ラップを終えて、氏川の減点は11点。2位には引き続き野﨑がつけていたが、野﨑とはちょうど10点差があり、クリーンや1点の数を数えると、この時点で氏川の勝利は決まった。 1ラップ目に5位と7位、不本意な順位に甘んじた二人のチャンピオン、黒山建一と小川友幸は、それぞれ2ラップ目に追い上げを見せた。黒山は9点でこのラップ2位。小川は11点でラップ3位をマークしたが、僅差の戦いの中、順位の逆転はならず、黒山5位、小川7位で2ラップを終えた。 3位を確保した小川毅士3位には小川毅士。1ラップ目に好調だった柴田は2ラップ目に3つの5点で後退して4位。しかし小川毅士とは1点差だから、まだ逆転のチャンスはある。SSで逆転がないのはトップの氏川のみで、2位から10位までは、いずれもSSの減点次第で順位が入れ替わる可能性があった。 1ラップ目から好調だった柴田暁SS第1は、出口が超難関。しかし3番手でトライした黒山陣がここを1点で通過して場を沸かせる。次にトライするのが小川友幸で、小川もまた、黒山とは若干ラインを変えながら1点で通過。このあとトライした武田が5点となって、ここで小川と順位が入れ替わった。そして黒山、柴田とついにこの難関をクリーン。小川毅士、野﨑が続けて5点となったことで、まず柴田が一気に2位まで浮上した。SS第2の結果次第で、さらに順位が大きく入れ替わる感じになってきた。 第3戦までポイントリードしていた小川友幸だったが、今回は6位へ最後にトライした氏川は、ここで5点。優勝を決めたあとのSSは美しくクリーンしたいところだったが、もちろんこれでも結果は変わらない。 そしてSS第2。最初にトライした久岡孝二(ホンダ)が完璧なトライでクリーン。このクリーンで、久岡は武井を逆転して9位に浮上した。黒山陣はちょっとばたばたしたが3点で抜けて8位をキープ。自己最高位を更新した。 2位から7位までの争いはまだ続いている。まず6位争い。武田はここでも5点となって、武田の7位が決まった。小川友幸は1点。トライは悪くなかったが、6位はワースト順位を更新。ランキングトップも氏川に譲り渡すことになった。 黒山のSSは見事だった。最後のSSでは足が出たものの、その1点のみで切り抜けた。しかし残念ながら、5位以上に進出することはできなかった。 5位になった黒山健一表彰台争いは、柴田のトライから始まる。きっちり走ればクリーンできるこのSS第2。無難に走れば表彰台は確実。クリーンすれば2位も決まる。ところが柴田は、難関の手前の飛び石でまさかの前転。これでまた表彰台争いは混とんとしてきた。 続く小川毅士。減点は小川が1点優位なので、減点を1点におさめれば表彰台ゲット。野﨑の結果次第で2位も狙える情況だ。難所を無事に通過し、クリーン目前というところで、しかし小川も失敗。あわや5点、あわやタイムオーバーというところで、ぎりぎり1点で走りきった。これで柴田とは同点ながら、クリーン数の差で3位以上を獲得。柴田は4位以上が確定して、野﨑のトライを待つことになった。 野﨑は2ラップ目の第4セクションで足を負傷して手負いの状態だったが、そんな気配は感じさせず、トライを進めていく。しかしわずかにバランスを崩して失点。1回、2回、3回、いや2回だ。減点2。なんと2位から4位までが1点差で、野﨑2位、小川毅士3位、柴田4位の並びが決まった。 最後のトライとなった氏川は1点。氏川はこれで自身初めての全日本2連勝だが、この2戦、SSでのクリーンがない。勝者がSSで華麗にクリーンするシーンは、次回のお楽しみ、ということになる。 逆転ランキングトップにたった氏川は、2位に5ポイント差。2位には小川友幸と黒山、ふたりのチャンピオンが鎮座している。 IAS表彰式。左より2位野﨑史高、1位氏川政哉、3位小川毅士、4位柴田暁、5位黒山建一、6位小川友幸2024_R4_IAS_resultsダウンロード国際A級 1点の減点が勝敗に直結する神経戦となった。1ラップ目、わずか1点でトップに立ったのが成田匠(EM)。成田のEMは、トライアルGPでデビューした4速ミッション付きの新型。全日本は、今回が初登場になる。2ラップ目、成田は3つのセクションで減点、トータル減点を6点として結果を待ったのだが、そのスコアを上回るライバルは現れず。3連勝が決まった。 EMの成田匠が三連覇2位は開幕戦の勝利以来の表彰台獲得となった平田貴裕(スコルパ)。2ラップ目の5点が痛い失点となった。 平田と同点、クリーン数差で3位表彰台に上がったのが成田亮(EM)。IASはヤマハTY-Eがワンツーとなったが、こちらは1位と3位。国際A級の6つの表彰台のうち、4つまでを電動マシンが占めることになった。 若手ではランキング2位の宮澤陽斗が5位、高橋寛冴が11位、12歳の黒山太陽が15位で初めてのポイント獲得となった。 IA表彰式。左より2位平田貴裕、1位成田匠、3位成田亮、4位小野貴史、5位宮澤陽斗、6位高橋健啓2024_R4_IA_resultsダウンロードレディース 7名が出場のレディースクラス。若手の二人、中川瑠菜(ベータ)と山森あゆ菜(モンテッサ)の1ラップ目は接戦だった。中川が11点、山森が12点で、どちらが勝ってもおかしくない。3位の小玉絵里加(TRRS)は19点で、ややスコアが開いていた。 中川瑠菜の勝利。2位の山森に10点差でまとめた。2ラップ目、中川ががぜん調子を上げてきた。1ラップ目と同じように、13点で2ラップ目をまとめた山森に対し、中川の減点はたった4点。2ラップを終えると、1位と2位には10点差がついていた。 3位は小玉を逆転して、1点差で米澤ジェシカが入った。ランキング争いでも、山森と中川は4ポイント差、小玉と米澤は1ポイント差と、大接戦になってきた。 レディース表彰式。左より2位山森あゆ菜、1位中川瑠菜(代理)、3位米澤ジェシカ、4位小玉絵里加、6位加藤里沙2024_R4_LTR_resultsダウンロード国際B級 開幕から3連勝してきた高橋淳(TRRS)に、ついに土がついた。1ラップ目の高橋は1点で、12歳の永久保圭(ベータ)と同点トップ。しかし2ラップ目に高橋が5点を喫して、永久保が3点差で初優勝となった。 国際B級は永久保圭が初優勝3位はシーズン3度目の表彰台を獲得したチェン・ウェンマオ(ホンダ)。今シーズン、この3人で表彰台の9割を独占している。 IB表彰式。左より2位高橋淳、1位永久保圭、3位チェン・ウェンマオ、4位田上拓、5位袋井就介、6位寺澤迪志2024_R4_IB_resultsダウンロード

ヤマハTY-E、ついに初優勝、そして表彰台を独占 R3 もてぎ

2024年6月2日 栃木県芳賀郡茂木町 モビリティリゾートもてぎ 動員数:3,000人 2024年全日本選手権第3戦は、トライアルGP日本大会の余韻もさめやらぬ栃木県モビリティリゾートもてぎでの「もてぎ大会」として開催された。前日の土曜日は暑いくらいの陽気だったが、当日の天気予報は雨。しかし夜半から降り始めた雨は朝方には止んで、昼間は日差しも出るほどになった。とはいえ、午後の降雨は避けられそうにない。 セクションは、基本的にトライアルGPで使われた部材を利用していて、厳しさもトライアルGP並か。朝まで雨が降っていたから、滑る滑ると評判のもてぎの地形ゆえ、その難度はGPを超えていたかもしれない。GPを走ることがないクラスは、一目瞭然にむずかし目の設定となった。 スタートは全日本の通常より30分遅い8時ちょうど。国際A級と国際B級は1分に2台ずつ、国際A級スーパーとレディースは1分ずつスタートで、レディースと国際A級の間に1時間15分ほどのインターバルが置かれていた。国際A級スーパーと国際A級は第1セクションと第9セクションをのぞく10セクション2ラップ、レディースと国際B級は第6と第11をのぞく10セクション2ラップ、これを4時間半で回る戦いが始まった。 国際A級スーパー 今回も参加は17名。ここまで2連勝を飾っているディフェンディングチャンピオンの小川友幸(ホンダ)は、最初のトライとなる第2セクションで失敗。いつもの小川なら、ここから建て直してきっちり優勝するか、せめて表彰台まで順位を戻してくるのだが、今回はなかなかペースが戻らない。 1ラップ目から不調だったチャンピオン小川友幸こんな中、2週間前に2日間にわたって2ラップを走っているライバルは、難セクションに果敢にチャレンジしていく。1ラップ目、2位以下に5点差をつけてトップに立ったのは今年から体制をがらりと変えて全日本を戦う氏川政哉(ヤマハ)。氏川も小川同様に第2セクションで5点となっているが、その後の巻き返しが見事にきいた。 1ラップ目からリードし、優勝した氏川政哉2位は同点で二人。野崎史高と黒山健一、氏川と同じヤマハTY-Eに乗るベテランが並んだ。この二人に2点差で小川毅士(ベータ)、小川友幸は小川毅士に4点差の5位で試合を折り返した。 EVを走らせる黒山健一は2位2ラップ目、氏川の好調は変わらない。1ラップ目の失敗を修正したり、細かいミスを出したりしながら、トータル減点は1ラップ目と変わらず21点。2ラップのトータルを42点とした。これに続くは黒山。しかしその差は7点に開いていて、SSで逆転劇を演出するには、ちょっと点差が大きい。 EVで3位表彰台を決めた野崎史高野崎も2ラップ目に少し減点を増やしていて、クリーン数で勝ってはいるものの、減点53点、小川毅士と同点でSSを迎えた。小川友幸は59点と、計算上は逆転の目はあるが、上位進出はむずかしそうだ。 SSは、これもトライアルGPの最終セクションを使って行われた。2ラップ目の終盤から、予定通り雨が降り始めて、SSが始まる頃には本降りに。濡れた丸太の安全性が危惧されて、一部設定を変更してSSが始まった。この変更もあいまってSSの難度は若干さがり、大きな逆転劇の可能性も下がった。 SS第1、最後にトライした氏川が1点を失ったものの、トップグループはおおむねクリーン。この時点で、氏川のリードは7点となり、氏川の今シーズン初優勝、そしてヤマハTY-Eの初優勝が決まった。 SS第2は終盤の高い板への飛びつきとそこからどうやって降りるかが難関。久岡孝二(ホンダ)が前輪から落ちて肝を冷やすこととなったが、トップ5は上手に足を着きながらこの難関を克服していく。 小川友幸は3点で5位をキープ、小川毅士はここで2点を失って、表彰台争いのライバルの野崎のトライを待つことになった。果たして野崎は1点。これで黒山のトライを待つことなく、ヤマハTY-Eの表彰台独占が決まった。第2戦で、国際A級の成田匠とEMによる、全日本選手権初のEV勝利があったが、今回はトップカテゴリーでのEV勝利。それも1位2位3位独占の快挙となった。 ランキングでは、開幕2連勝を飾った小川友幸が依然としてトップをキープした。しかし3戦連続で2位入賞を果たした黒山が1ポイント差でこれに続く。ランキングでもヤマハ勢の巻き返しが始まっている。 国際A級スーパー表彰式。左より2位黒山建一、優勝氏川政哉、3位野崎史高、4位小川毅士、5位小川友幸、6位柴田暁2024r3_ias_resultsダウンロード国際A級 第2戦で勝利したEMの成田匠が、今回も好調。ほぼ全員が5点となった第3と第12以外を最小限点にまとめて、全日本2連勝を飾った。IASの表彰台独占とともに、全日本でも一気にEV化の波が押し寄せてきた印象だ。 電動トライアルバイクを走らせる国際A級、成田匠成田に遅れること9点で2位となったのが、これもベテランの本多元治(ホンダ)。奇しくも、成田も本多も世界選手権のセクションづくりに奔走した重要スタッフだが、成田は自分で構成したセクション群を、参加者として走るのはこれが初めてだった。 3位に、第2戦に続いて連続表彰台となった宮澤陽斗(ベータ)。ランキングでも、成田と、去年までIASだった平田貴裕(スコルパ)に続き、3位をキープしている。平田は今回4位、5位に、成田の弟で、やはりGPのセクション設営に尽力した亮が入っている。 今回はベテラン勢が上位を独占していて、若手は3位の宮澤が一人気を吐いた結果となった。 国際A級表彰式。左より2位本多元治、優勝成田匠、3位宮澤陽斗、4位平田貴裕、5位成田亮、6位小野貴史2024r3_ia_resultsダウンロードレディース 参加は8名。第1戦第2戦と1位2位をわけあった山森あゆ菜(モンテッサ)と中川瑠菜(ベータ)の勝負の行方が注目される。 今回は難度も高め。大岩を越えていかなければ先に行けない設定のセクションも多く、加えて2ラップ目はIASやIAの1ラップ目の大群に追いついて、先の見えない渋滞と闘わなければいけなかった。 それでも、タイムコントロールはトライアルの戦いのエッセンスの一つ。申告5点も視野に入れながら、減点を少しでも減らしてゴールすべく、戦いは続いた。 チャンピオン山森あゆ菜が、ランキングトップ結果は7点差で山森の勝利。山森はこれでランキングトップの座を確固たるものにした。2位はソアレス米澤・ジェシカ(TRRS)。日本人離れしたライディングが魅力の米澤が、ついに女子大生コンビの間に割って入った。中川は米澤に1点差の3位だった。 2ラップ目に2位で追い上げた小玉絵里加(TRRS)が4位、清水忍(TRRS)、齋藤由美(ベータ)が5位、6位となった。 レディース表彰式。左より2位米澤ジェシカ、優勝山森あゆ菜、3位中川瑠菜、4位小玉絵里加、5位清水忍、6位齋藤由美2024r3_ltr_resultsダウンロード国際B級 開幕2連勝を飾っている髙橋淳(TRRS)が、今回も勝利を飾った。絶好調。高橋は、1ラップ目をクリーン6の減点6でまとめて2位の中学生、永久保圭(ベータ)にダブルスコア以上の差をつけた。 国際B級で連勝する高橋淳ところが2ラップ目、髙橋が戦わなければいけなかったのは渋滞だった。申告5点で先を急がざるを得ず、1ラップ目の減点6から一気に減点22まで増やしてしまった。それでも、2位のチェン・ウェンマオ(今回からホンダに乗る)に5点差で、開幕3連勝を飾ったのだった。 ランキングは、上位3人が安泰。髙橋、永久保、チェンの順に並ぶ。髙橋と永久保のポイントギャップは、すでに19ポイントまで広がっている。 国際B級表彰式。左より2位chen wenmao、優勝高橋淳、3位永久保圭、4位小倉功太郎、5位小倉功太郎、6位大櫃千明2024r3_ib_resultsダウンロード

強い小川友幸、開幕2連勝 R2 大分・玖珠

2024年4月14日 大分県玖珠町玖珠トライアルヒルズ 動員数:750人 2024年全日本選手権は、大分県玖珠町で第2戦を迎えた。会場は5年ぶりの開催となる玖珠トライアルヒルズ。春の陽気を少しだけ通り越して、日中は暑いくらいのいいお天気での全日本選手権となった。 国際A級スーパー ルーキーにして開幕戦で9位となった黒山陣(シェルコ)がエントリーを忘れるというハプニングがあり、今回の参加は17名。 セクションは滑る斜面をベースに作られていて難度はとても高かった。加えてポイントが多く、1分間の持ち時間がぎりぎりとなりそう。なかなか厳しい戦いとなりそうだ。 そんな中でも、第1〜第4、第10は比較的減点数を抑えられそうな設定で、ここをいかに最小減点で抜けられるかが勝負となる。試合が始まると、しかしこの最初の数セクションで減点を出すライダーが続出。開幕戦勝利者の王者小川友幸(ホンダ)は、第4までで6点を失って、苦境に立たされる。 1ラップ目の第6までは、6点を失っていた小川友幸 前半から1ラップ目にかけて好調だったのは武田呼人(ガスガス)。武田は開幕戦を7位で終えているが、2戦目のIAS参戦でいよいよ本領発揮というところ。ただし武田は、前回開幕戦で右ひざに重症をかかえていて、逆境の中の戦いとなっている。 武田はよく減点を抑えて1ラップ目を回ったが、タイムオーバーが3点あって、1ラップ目の順位は4位。トップはやはり小川で、2位には、そろそろEVのTY-Eの初優勝の声を聞かせたい黒山健一(ヤマハ)、3位にEV1年生の氏川政哉(ヤマハ)が入って、2ラップ明光の逆転を期す。1ラップ目は、1位から8位までが10点の中にひしめく接戦だった。 4年間スペインでトライアルを学んできた武田呼人2ラップ目、トップの小川はいよいよ好調。本人は必ずしも乗れているわけじゃないというが、小川しか抜けられないセクションがあったり、ライバルが3点で抜けることを目指す中でクリーンを出したり、なにより5点を最小限に抑える試合運びはさすが。 2ラップ目、2位のスコアをマークしたのは野崎史高(ヤマハ)だった。野崎は開幕戦同様に、1ラップ目に多くの減点を喫してしまったが、2ラップ目に修正してスコアを大幅に改善してきた。 黒山と武田の2ラップ目は同スコア。安定感はあるが、これでは優勝争いにはちょっと届かない。 2ラップを終えて、トップの小川は40点、2位の黒山に5点差。クリーンは小川が多いので、SSで小川がふたつとも5点となり、黒山がたとえばクリーンと3点ならば逆転劇となるが、SSはこれがまた難度の高い設定で、はたしてクリーンなど出るのか、いやいや走破するものが出るのかと天を仰ぎたくなる。 2位の黒山健一しかしIASのトップ10の実力はさすがだ。まず最初のSS。2番手の野本佳章(ベータ)が3点で抜け、野崎も3点、小川毅士(ベータ)が2点と、トライが進むに従い、減点が減ってきた。そしてついに柴田暁(TRRS)がクリーンをたたき出す。しかしこのあたりから、大岩への加速ポイントの路面が崩れてきた。 柴田の次にトライした武田が5点。柴田と同点だった3位争いからいったん脱落してしまった。黒山はコンディションの悪化したこのセクションを、なんとか1点でおさめる。最後にトライした小川はあっぱれだった。むずかしいのは、滑る斜面から斜めの岩を攻略するポイントだが、9人が走って荒れた今、簡単なポイントなどどこにもない。しかし小川は、見事にここをクリーン。チャンピオンの貫録を見せつけたと同時に、黒山との点差を6点として、ここで黒山の逆転優勝の芽を摘むにいたった。小川の勝利が確定だ。 SS第2。ここはさらに厳しさを増した。3個の大岩をすべてきれいに超えていくなど、人間業ではないと思われる。しかしそれもIASの手にかかると、どこかに攻略法があるようだ。野本、久岡、野崎が3点、小川毅士がクリーンして、一転、この難セクションがクリーン必須のセクションとなった。 SS第1をクリーンして、相手次第では2位表彰台まで可能性のある柴田は、美しいライディングを披露して出口へ。しかし出口でわずかにラインを乱して5点。このあと武田がクリーンして、柴田と武田は再び同点に。クリーン数も同じで、1点の数の差で柴田は表彰台を逃すことになった。武田はIAS参戦2戦目にして3位表彰台獲得の快挙。 すでに2位が確定した黒山が1点、そして最後に登場した小川もまた、優勝が決まっている。開幕戦では、こういう情況でSSを失敗して、優勝しながら悔しい思いをひきずることになった。今回は、見事なクリーン。開幕2連勝を飾るとともに、今度こそSSで有終の美を飾り、まず完璧な勝利となった。 国際A級スーパー表彰式。左より2位黒山建一、優勝小川友幸、3位武田呼人、4位柴田暁、5位小川毅士、6位氏川政哉2024_R2_IAS_resultsダウンロード国際A級 開幕戦で勝利した平田貴裕(スコルパ)が第1セクションで3点、第2セクションで5点と意外な滑り出し。こんな中、1ラップ目にトップとなったのは若い宮澤陽斗(ベータ)だった。大ベテランの全日本チャンピオン、成田匠(EM)を3点引き離す堂々たるスコアだった。さらに宮澤、成田に続いて、3位につけたのが髙橋寛冴(シェルコ)。関東の若手が、いよいよトップ争いに駒を進めてきた。 2ラップ目、戦況はほとんど変わらず、減点15点から20点少々の間での接戦の優勝争いだ。こんな中、減点14で2ラップ目のトップスコアをマークしたのが成田だった。 成田匠により、全日本EV初勝利。 成田が乗るのはフランス製のEM。トライアルEVのパイオニアだ。全日本でのEV初勝利記録は、ヤマハに先んじて、成田とEMが刻むことになった。弟の成田亮も4位に入賞、二人は開幕戦でも好調だったが、今回は人車それぞれの実力を遺憾なく披露した。 …

小川友幸、安定の開幕戦勝利!R1愛知・岡崎

2024年3月31日 愛知県岡崎市キョウセイドライバーランド 動員数:2,631人 2024年全日本トライアル選手権開幕戦。会場は昨年同様キョウセイドライバーランド。いいお天気で、たいへん快適なトライアル日和となった。 国際A級スーパー 黒山陣(シェルコ)、浦山瑞希(ホンダ)の2名の10代ライダーのIAS入り、スペイン修業から帰ってきた武田呼人(ガスガス)のIAS初登場と、新しい顔ぶれでにぎわう今年の全日本選手権、そして大トピックは、氏川政哉(ヤマハ)がメーカーとチームを変えての登場だった。 ホンダのワークスマシンに乗るのは、昨年に続き小川友幸(ホンダ)。13回の全日本チャンピオンは、今年もこのマシンで連覇更新を狙う。そして氏川が加入したヤマハは、黒山健一、野﨑史高の先輩を含めて3人が電動マシン、TY-E2.2に乗る布陣。18人の参加者中、3人が電動という新時代の幕開けとなった。TY-Eのデビューは昨年のここでの開幕戦だったから、この1年間の真価が発揮されることになる。 シーズン初戦から強さを見せつけた小川友幸 最年長王者は、開幕戦は勝てないというジンクスがある。しかし今回は、序盤から試合の主導権を握った。ミスはあった。一瞬リードを奪われることもあった。しかし5点がない戦いぶりは圧巻。1ラップ目の減点はわずか5点で、最も大きな減点が第4セクションでの2点と、その安定感は圧巻だった。 小川にはやや離されたが、1ラップ目に2位につけたのが氏川。エンジンマシンから電動マシンへ、チームもなにもまったく環境が変わった開幕戦で、堂々たる優勝争いをするのは、若さゆえの順能力か。 ヤマハへ移籍、初めての電動。新しいチャレンジをする氏川政哉の初戦は3位電動での全日本挑戦プロジェクトを推進してきた黒山は、勝利は自分の手でつかみたい。1ラップ目は氏川に1点差の3位につける。 2ラップ目、小川の好調は変わらない。6つのセクションで減点をしたものの、減点はいずれも1点で、このラップを6点で終えた。クリーン数こそ最多とはならなかったが、2ラップを11点で終えて、SSを待つ。 小川を追いつめ、逆転を図りたかった氏川は、逆に減点を増やしてしまって黒山に逆転され、2ラップトータル24点。SSでの逆転勝利の可能性もなくなっていた。2ラップ目の黒山は5点なしで追い上げたが、小川には届かず。2ラップトータル20点で、小川とは11点差の2位。残るSSで、かろうじて逆転勝利の可能性が残るという戦況だ。 電動マシンを操る黒山健一は2位4位の小川毅士は、すでにそのポジションが確定的となっている。5位と6位は同点で野﨑史高と武田呼人が並んだ。スペインから帰ってきて初のIAS参戦となった武田だが、トップ6に混ざっての戦いを演じる実力を証明した。7位は、らしくない失敗が相次いだ柴田暁となっている。 SSに進出するのは、8位の久岡孝二(ホンダ)、デビュー戦で堂々9位に入ってきた黒山陣、そして10位は武井誠也(ホンダ)。武井は1ラップ目の第10セクションで足を痛めていて、苦戦の中のSS進出だった。 SS進出を果たせず、ここで順位が決定するのが11位以降。オートレースの開催スケジュールと調整しながら全日本に参戦する野本佳章(ベータ)が11位、1点差で北陸の怪童、田中善弘(ホンダ)が12位、ヤマハのエンジンマシンを走らせる唯一の存在の濵邉伶が13位。平田雅裕(スコルパ)14位、岡村将敏(シェルコ)15位で、ここまでがポイント獲得圏。古傷のひざを痛めた磯谷玲(ベータ)16位、デビュー戦でIASの高い壁の洗礼を受けた浦山瑞希(ホンダ)が17位、1ラップ目第5セクションで足首を痛めた磯谷郁(ベータ)が完走を果たして18位となっている。 そしてSS。今回のSSは、ダイナミックかつ難易度も高め。SS第1は終盤に配置された180cmの真直角ステアが鬼門。その鬼門に最初に到達したのが久岡だった。次の柴田はその手前で5点となり、野﨑、武田と次々に5点。高さだけでなく、時間もぎりぎりで、余裕を持ってトライすることができない。結局黒山まで全員が5点で、最後のトライとなったのが小川。しかし小川は序盤の飛びつきで5点となってちょっと小川らしくない結末。結局このSS第1は全員が減点5となった。 SS第2は最終第12セクションを改変したものだが、距離も延び、ポイントも増えてハードな設定。沢を走り、泥斜面の登って降りるのが最初の関門、次にそびえる大岩が次の鬼門。高さはそれほどでもないが、精度が要求される3つの岩飛び、そして巨大なタンクに登って、最後は石垣を登ってフィニッシュ。最も難度が高かったのは大岩だが、どこでも失敗ができる難ポイントばかりだ。 最初に大岩を越えたのが柴田。柴田はここを1点で抜け、ようやく柴田らしいキレを見せた。続く武田は大岩の後の岩飛びで転倒。これで武田は柴田の逆転を許して7位となった。5点になれば柴田に逆転される計算の野﨑は、きっちり3点でここを抜けて5位の座をキープ。 小川毅士は大岩で2点。それ以外はスムーズにアウト。この流れだと、あるいはクリーンが見られるのではないかという期待も出てきた。氏川が3点で3位を確定した後、黒山は初めて大岩を完璧に攻略。しかしその後1点を失ってクリーンはならず。やはり期待は、最後にトライする小川に集まった。小川も、しかしクリーンはできなかった。このままきっちり走りきって勝利のゴールへ向かうと思われた矢先の巨大タンク登り。なんと登った瞬間にリヤを跳ねさせ、そのまま前転するように転倒。なんと優勝を決めてからの小川は、連続5点で試合を終了。しかし何年ぶりかという開幕戦勝利で、新しいシーズンに幸先のいいスタートを切った。 IAS表彰式。左から2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位柴田暁2024r1_iasダウンロード国際A級 昨年1年、負傷療養で全日本参戦をお休みしていたIASの平田貴裕(スコルパ)が今年はこのクラスに参戦。実力のある大ベテランがずらりと揃った激戦クラスとなった。 1ラップ目のトップは、ゼッケン1番の砂田真彦(ホンダ)。砂田もおととしまでIASを走っていた。砂田の減点は3点で、勝利をつかむには減点を最小限におさえる必要がある。 2ラップ目、砂田が第6セクションで3点、1点を争う展開でこの3点は厳しかったが、さらに第11セクションで5点をとって万事休す。砂田は3位に落ち着いた。 1ラップ目の3位から砂田を逆転して2位となったのが本多元治(ホンダ)。砂田とはかつて同じチームにいた先輩格の本多は最多クリーンもたたき出しての表彰台獲得となった。…