強い小川友幸、開幕2連勝 R2 大分・玖珠

2024年4月14日 大分県玖珠町玖珠トライアルヒルズ 動員数:750人 2024年全日本選手権は、大分県玖珠町で第2戦を迎えた。会場は5年ぶりの開催となる玖珠トライアルヒルズ。春の陽気を少しだけ通り越して、日中は暑いくらいのいいお天気での全日本選手権となった。 国際A級スーパー ルーキーにして開幕戦で9位となった黒山陣(シェルコ)がエントリーを忘れるというハプニングがあり、今回の参加は17名。 セクションは滑る斜面をベースに作られていて難度はとても高かった。加えてポイントが多く、1分間の持ち時間がぎりぎりとなりそう。なかなか厳しい戦いとなりそうだ。 そんな中でも、第1〜第4、第10は比較的減点数を抑えられそうな設定で、ここをいかに最小減点で抜けられるかが勝負となる。試合が始まると、しかしこの最初の数セクションで減点を出すライダーが続出。開幕戦勝利者の王者小川友幸(ホンダ)は、第4までで6点を失って、苦境に立たされる。 1ラップ目の第6までは、6点を失っていた小川友幸 前半から1ラップ目にかけて好調だったのは武田呼人(ガスガス)。武田は開幕戦を7位で終えているが、2戦目のIAS参戦でいよいよ本領発揮というところ。ただし武田は、前回開幕戦で右ひざに重症をかかえていて、逆境の中の戦いとなっている。 武田はよく減点を抑えて1ラップ目を回ったが、タイムオーバーが3点あって、1ラップ目の順位は4位。トップはやはり小川で、2位には、そろそろEVのTY-Eの初優勝の声を聞かせたい黒山健一(ヤマハ)、3位にEV1年生の氏川政哉(ヤマハ)が入って、2ラップ明光の逆転を期す。1ラップ目は、1位から8位までが10点の中にひしめく接戦だった。 4年間スペインでトライアルを学んできた武田呼人 2ラップ目、トップの小川はいよいよ好調。本人は必ずしも乗れているわけじゃないというが、小川しか抜けられないセクションがあったり、ライバルが3点で抜けることを目指す中でクリーンを出したり、なにより5点を最小限に抑える試合運びはさすが。 2ラップ目、2位のスコアをマークしたのは野崎史高(ヤマハ)だった。野崎は開幕戦同様に、1ラップ目に多くの減点を喫してしまったが、2ラップ目に修正してスコアを大幅に改善してきた。 黒山と武田の2ラップ目は同スコア。安定感はあるが、これでは優勝争いにはちょっと届かない。 2ラップを終えて、トップの小川は40点、2位の黒山に5点差。クリーンは小川が多いので、SSで小川がふたつとも5点となり、黒山がたとえばクリーンと3点ならば逆転劇となるが、SSはこれがまた難度の高い設定で、はたしてクリーンなど出るのか、いやいや走破するものが出るのかと天を仰ぎたくなる。 2位の黒山健一 しかしIASのトップ10の実力はさすがだ。まず最初のSS。2番手の野本佳章(ベータ)が3点で抜け、野崎も3点、小川毅士(ベータ)が2点と、トライが進むに従い、減点が減ってきた。そしてついに柴田暁(TRRS)がクリーンをたたき出す。しかしこのあたりから、大岩への加速ポイントの路面が崩れてきた。 柴田の次にトライした武田が5点。柴田と同点だった3位争いからいったん脱落してしまった。黒山はコンディションの悪化したこのセクションを、なんとか1点でおさめる。最後にトライした小川はあっぱれだった。むずかしいのは、滑る斜面から斜めの岩を攻略するポイントだが、9人が走って荒れた今、簡単なポイントなどどこにもない。しかし小川は、見事にここをクリーン。チャンピオンの貫録を見せつけたと同時に、黒山との点差を6点として、ここで黒山の逆転優勝の芽を摘むにいたった。小川の勝利が確定だ。 SS第2。ここはさらに厳しさを増した。3個の大岩をすべてきれいに超えていくなど、人間業ではないと思われる。しかしそれもIASの手にかかると、どこかに攻略法があるようだ。野本、久岡、野崎が3点、小川毅士がクリーンして、一転、この難セクションがクリーン必須のセクションとなった。 SS第1をクリーンして、相手次第では2位表彰台まで可能性のある柴田は、美しいライディングを披露して出口へ。しかし出口でわずかにラインを乱して5点。このあと武田がクリーンして、柴田と武田は再び同点に。クリーン数も同じで、1点の数の差で柴田は表彰台を逃すことになった。武田はIAS参戦2戦目にして3位表彰台獲得の快挙。 すでに2位が確定した黒山が1点、そして最後に登場した小川もまた、優勝が決まっている。開幕戦では、こういう情況でSSを失敗して、優勝しながら悔しい思いをひきずることになった。今回は、見事なクリーン。開幕2連勝を飾るとともに、今度こそSSで有終の美を飾り、まず完璧な勝利となった。 国際A級スーパー表彰式。左より2位黒山建一、優勝小川友幸、3位武田呼人、4位柴田暁、5位小川毅士、6位氏川政哉 2024_R2_IAS_resultsダウンロード 国際A級 開幕戦で勝利した平田貴裕(スコルパ)が第1セクションで3点、第2セクションで5点と意外な滑り出し。こんな中、1ラップ目にトップとなったのは若い宮澤陽斗(ベータ)だった。大ベテランの全日本チャンピオン、成田匠(EM)を3点引き離す堂々たるスコアだった。さらに宮澤、成田に続いて、3位につけたのが髙橋寛冴(シェルコ)。関東の若手が、いよいよトップ争いに駒を進めてきた。 2ラップ目、戦況はほとんど変わらず、減点15点から20点少々の間での接戦の優勝争いだ。こんな中、減点14で2ラップ目のトップスコアをマークしたのが成田だった。 成田匠により、全日本EV初勝利。 成田が乗るのはフランス製のEM。トライアルEVのパイオニアだ。全日本でのEV初勝利記録は、ヤマハに先んじて、成田とEMが刻むことになった。弟の成田亮も4位に入賞、二人は開幕戦でも好調だったが、今回は人車それぞれの実力を遺憾なく披露した。 …

小川友幸、安定の開幕戦勝利!R1愛知・岡崎

2024年3月31日 愛知県岡崎市キョウセイドライバーランド 動員数:2,631人 2024年全日本トライアル選手権開幕戦。会場は昨年同様キョウセイドライバーランド。いいお天気で、たいへん快適なトライアル日和となった。 国際A級スーパー 黒山陣(シェルコ)、浦山瑞希(ホンダ)の2名の10代ライダーのIAS入り、スペイン修業から帰ってきた武田呼人(ガスガス)のIAS初登場と、新しい顔ぶれでにぎわう今年の全日本選手権、そして大トピックは、氏川政哉(ヤマハ)がメーカーとチームを変えての登場だった。 ホンダのワークスマシンに乗るのは、昨年に続き小川友幸(ホンダ)。13回の全日本チャンピオンは、今年もこのマシンで連覇更新を狙う。そして氏川が加入したヤマハは、黒山健一、野﨑史高の先輩を含めて3人が電動マシン、TY-E2.2に乗る布陣。18人の参加者中、3人が電動という新時代の幕開けとなった。TY-Eのデビューは昨年のここでの開幕戦だったから、この1年間の真価が発揮されることになる。 シーズン初戦から強さを見せつけた小川友幸 最年長王者は、開幕戦は勝てないというジンクスがある。しかし今回は、序盤から試合の主導権を握った。ミスはあった。一瞬リードを奪われることもあった。しかし5点がない戦いぶりは圧巻。1ラップ目の減点はわずか5点で、最も大きな減点が第4セクションでの2点と、その安定感は圧巻だった。 小川にはやや離されたが、1ラップ目に2位につけたのが氏川。エンジンマシンから電動マシンへ、チームもなにもまったく環境が変わった開幕戦で、堂々たる優勝争いをするのは、若さゆえの順能力か。 ヤマハへ移籍、初めての電動。新しいチャレンジをする氏川政哉の初戦は3位 電動での全日本挑戦プロジェクトを推進してきた黒山は、勝利は自分の手でつかみたい。1ラップ目は氏川に1点差の3位につける。 2ラップ目、小川の好調は変わらない。6つのセクションで減点をしたものの、減点はいずれも1点で、このラップを6点で終えた。クリーン数こそ最多とはならなかったが、2ラップを11点で終えて、SSを待つ。 小川を追いつめ、逆転を図りたかった氏川は、逆に減点を増やしてしまって黒山に逆転され、2ラップトータル24点。SSでの逆転勝利の可能性もなくなっていた。2ラップ目の黒山は5点なしで追い上げたが、小川には届かず。2ラップトータル20点で、小川とは11点差の2位。残るSSで、かろうじて逆転勝利の可能性が残るという戦況だ。 電動マシンを操る黒山健一は2位 4位の小川毅士は、すでにそのポジションが確定的となっている。5位と6位は同点で野﨑史高と武田呼人が並んだ。スペインから帰ってきて初のIAS参戦となった武田だが、トップ6に混ざっての戦いを演じる実力を証明した。7位は、らしくない失敗が相次いだ柴田暁となっている。 SSに進出するのは、8位の久岡孝二(ホンダ)、デビュー戦で堂々9位に入ってきた黒山陣、そして10位は武井誠也(ホンダ)。武井は1ラップ目の第10セクションで足を痛めていて、苦戦の中のSS進出だった。 SS進出を果たせず、ここで順位が決定するのが11位以降。オートレースの開催スケジュールと調整しながら全日本に参戦する野本佳章(ベータ)が11位、1点差で北陸の怪童、田中善弘(ホンダ)が12位、ヤマハのエンジンマシンを走らせる唯一の存在の濵邉伶が13位。平田雅裕(スコルパ)14位、岡村将敏(シェルコ)15位で、ここまでがポイント獲得圏。古傷のひざを痛めた磯谷玲(ベータ)16位、デビュー戦でIASの高い壁の洗礼を受けた浦山瑞希(ホンダ)が17位、1ラップ目第5セクションで足首を痛めた磯谷郁(ベータ)が完走を果たして18位となっている。 そしてSS。今回のSSは、ダイナミックかつ難易度も高め。SS第1は終盤に配置された180cmの真直角ステアが鬼門。その鬼門に最初に到達したのが久岡だった。次の柴田はその手前で5点となり、野﨑、武田と次々に5点。高さだけでなく、時間もぎりぎりで、余裕を持ってトライすることができない。結局黒山まで全員が5点で、最後のトライとなったのが小川。しかし小川は序盤の飛びつきで5点となってちょっと小川らしくない結末。結局このSS第1は全員が減点5となった。 SS第2は最終第12セクションを改変したものだが、距離も延び、ポイントも増えてハードな設定。沢を走り、泥斜面の登って降りるのが最初の関門、次にそびえる大岩が次の鬼門。高さはそれほどでもないが、精度が要求される3つの岩飛び、そして巨大なタンクに登って、最後は石垣を登ってフィニッシュ。最も難度が高かったのは大岩だが、どこでも失敗ができる難ポイントばかりだ。 最初に大岩を越えたのが柴田。柴田はここを1点で抜け、ようやく柴田らしいキレを見せた。続く武田は大岩の後の岩飛びで転倒。これで武田は柴田の逆転を許して7位となった。5点になれば柴田に逆転される計算の野﨑は、きっちり3点でここを抜けて5位の座をキープ。 小川毅士は大岩で2点。それ以外はスムーズにアウト。この流れだと、あるいはクリーンが見られるのではないかという期待も出てきた。氏川が3点で3位を確定した後、黒山は初めて大岩を完璧に攻略。しかしその後1点を失ってクリーンはならず。やはり期待は、最後にトライする小川に集まった。小川も、しかしクリーンはできなかった。このままきっちり走りきって勝利のゴールへ向かうと思われた矢先の巨大タンク登り。なんと登った瞬間にリヤを跳ねさせ、そのまま前転するように転倒。なんと優勝を決めてからの小川は、連続5点で試合を終了。しかし何年ぶりかという開幕戦勝利で、新しいシーズンに幸先のいいスタートを切った。 IAS表彰式。左から2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位柴田暁 2024r1_iasダウンロード 国際A級 昨年1年、負傷療養で全日本参戦をお休みしていたIASの平田貴裕(スコルパ)が今年はこのクラスに参戦。実力のある大ベテランがずらりと揃った激戦クラスとなった。 1ラップ目のトップは、ゼッケン1番の砂田真彦(ホンダ)。砂田もおととしまでIASを走っていた。砂田の減点は3点で、勝利をつかむには減点を最小限におさえる必要がある。 2ラップ目、砂田が第6セクションで3点、1点を争う展開でこの3点は厳しかったが、さらに第11セクションで5点をとって万事休す。砂田は3位に落ち着いた。 1ラップ目の3位から砂田を逆転して2位となったのが本多元治(ホンダ)。砂田とはかつて同じチームにいた先輩格の本多は最多クリーンもたたき出しての表彰台獲得となった。…

氏川政哉シーズン3勝目、タイトル獲得は小川友幸。R8 City Trial Japan大会

2023年11月12日 大阪府大阪市中央公会堂前中之島通り 観客数:5,000人 国際A級スーパー 2023年全日本トライアルシリーズが最終戦を迎えた。例年と異なり、第7戦までのランキング10位の選手のみが参戦できるシティ・トライアル・ジャパン大会が最終戦、チャンピオン争いの最後の1戦に選ばれた。トライアルの発展、よりいっそうの盛り上がりを目指して、通常の全日本とはシステムやルールを変更して、新たなスタイルを確立した画期的最終戦となった。 ランキング上位10名のIAS選手のみ出走する今年のCIty Trial Japan。スタート前の選手紹介 最初のトライはセミ・ファイナル。ランキング10位の磯谷玲と9位の田中善弘がトップトライで大会は始まる。セクションは4つ。これを往復するので8セクション。ラインを変更して、セミ・ファイナルからファイナルに向けて、難易度も変更できるようになっている。 最終戦に向けては、ランキング8位武井誠也、田中、磯谷の3人が接戦、ランキング7位の久岡のポジションが変動する可能性は低いが、ランキング5位の柴田暁、6位小川毅士も接戦だ。そしてもちろん、ハイライトは小川友幸と氏川政哉のチャンピオン争い。ライダーは、いつもとまったく異なるスタイルの戦いで最後の決戦に挑んだ。 スタート7番手以降の中では、磯谷が前半に一つ、後半に一つ3点をたたき出して、これでランキングも9位に躍り出ることになった。 しかしセミ・ファイナルの後半、2組目のトライの最中に雨が降り始めた。用意されたセクションは、板も丸太もつるつるで、雨の中でのトライは非常に危険だ。試合を中断して、セクションに加工を施す一方、途中でセクション条件が大きく異なることになり、しかもすでにトライを終えた4人とこれから走る6人との公平性などが協議され、そこまでの減点数を考慮した結果、セミ・ファイナルは4人が8セクション、6人が4セクションを走った時点で終了となり、ファイナルは6人のライダーが二人ずつ、第1と第2、第7と第8(第1と第2の逆走)の4セクションを走ることになった。雨はひとしきりセクションを濡らしたあとに上がったが、つるつるに滑るようになった部材が急速に復活する感じではない。 ファイナルはセミ・ファイナルでの結果順に走るので、一番スタートはセミ・ファイナル6位の柴田暁。勝敗はセミ・ファイナルとファイナルの減点をトータルで競われる。柴田はファイナルの4セクションを減点14点で終えている。トータルでは28点になる。 セミ・ファイナルを6位で終えた柴田暁 柴田といっしょに走った小川毅士は、5点なしの7点。トータルでは18点だった。ファイナルが始まる時点で小川の暫定順位は5位で、この順位では柴田と小川のランキングは変わらない。 小川毅士はセミ・ファイナルで5位 次を走るのは野﨑史高と黒山健一だった。野﨑はヤマハ4ストロークサウンドを響かせ、難セクションを走破していく。5点、3点、1点、そしてクリーンひとつで9点。トータル16点。しかし、セミ・ファイナルを6点で終えていて、まだ勝利の望みもあった黒山のファイナルは波乱となった。4セクション中3セクションで5点となり、15点を献上。トータル21点で、セミ・ファイナル2位から、一気に5位に転落した。これで小川毅士が4位に浮上し、ランキングも5位に上がることになった。 パワフルな4ストロークサウンドが響く。野﨑史高 唯一のモーター音。電動バイクで難セクションに挑む黒山健一 残るは小川友幸と氏川政哉の頂上対決。とはいえ、万が一彼らが4セクションすべてで5点をとると、勝利どころか4位、5位まで転落する可能性もあるという戦況だ。もちろんチャンピオン争いも重要で、氏川が勝利、小川が4位なら氏川が逆転チャンピオンとなる。勝負の行方、タイトルの行方、華々しい演出とは裏腹、緊張感あふれるファイナルの4セクションが始まった。 小川は、第1こそクリーンしたが、その後は5点を避けて確実に2位をキープする作戦。第2で3点、帰り道も1点と3点。このラップのトータル7点は小川毅士と並んでトップ、そしてトータルは12点だった。 リスクのない確実なライン取りを選ぶ小川友幸。V13獲得。 氏川は第2の入口で5点、しかしこの5点では首位は変わらない。勝負は最終セクション、ここで小川が3点となったところで、氏川の最終戦勝利が決まった。勝利が決まった氏川は、最終セクションをダニエル走法を使って華麗にクリーンしようともくろんだが、グリップがむずかしい丸太は氏川に有終の美を許さなかった。残念5点。 最終セクションを前に優勝を決めた氏川政哉 しかし氏川は、2023年シーズン、開幕戦と最終戦で勝利、大きな成長の証を残してシーズンを終えた。 左より2位小川友幸、優勝氏川政哉、3位野﨑史高、4位小川毅士、5位黒山健一、6位柴田暁

小川友幸3連勝で逆転ランキングトップに。R7 宮城・SUGO大会

2023年10月22日 宮城県柴田郡村田町菅生スポーツランドSUGO 観客数:1,200人 2023年全日本トライアルシリーズ終盤。例年最終戦となることが多い宮城・SUGO大会だが、今年は国際A級スーパー(IAS)の最終戦がCityTrialJapan大会となるため、それ以外の3クラスについて最終戦としての開催となった。 スタートしたのは全クラス合わせて131台。SUGOでの開催では過去にない盛況で、渋滞対策としてセクションは若干短めとなっていた。その施策が功を奏したか、激しい渋滞はなく、競技はスムーズに進行した。 レディース(LTR)と国際B級(IB)は8セクション2ラップ、国際A級は10セクション2ラップ、IASはこれにSSの2セクションを加えた22セクションで競われた。 国際A級スーパー 今回は全クラスがオールクリーンを目指す設定だった。トップクラスのIASも、オールクリーンはともかく、大きな減点が勝利を遠ざける可能性が大きい設定だった。 最初の難関は第3。野﨑史高(ヤマハ)、久岡孝二(ホンダ)、柴田暁(TRRS)、小川毅士(ベータ)が1点の減点を喫する。しかしここで痛恨の5点を取ってしまったのが、大接戦のチャンピオン争い展開中の氏川政哉(ホンダ)だった。2点差でランキングトップを守ってきて、ここで一気に初タイトルに向けて加速したかった氏川だが、そのもくろみに暗雲がたちこめた。 1ラップ目の第3セクションで5点。以来ペースが乱れた氏川政哉 好調だったのは黒山健一、そして小川友幸。黒山は1ラップ目をオールクリーンして、ヤマハのEVマシンの初勝利の可能性が高まってきた。逆転タイトル連覇を目指す小川は、第6セクションで1点を取ったものの、この時点でライバルにも減点が増えてきていて、優勝争いは黒山と小川の一騎打ちの様相を呈してきた。 1ラップ目をオールクリーン、電動バイクの黒山健一 1ラップ目の上位陣は、オールクリーンの黒山を始め、小川友幸1点、小川毅士6点、氏川と柴田が7点と、5人が一桁減点をマークした。 2ラップ目、小川友幸は勝利に向けて、黙々と仕事をこなしていく。逃げ切りたい黒山だが、なんと第6の岩場を抜ける際にチェーンがはずれてしまい5点となってしまった。2ラップ目は、1ラップ目に一桁減点をマークした5人に加えて久岡と野﨑も一桁減点の仲間入り。2ラップを終えて、トップは小川友幸で1点。黒山5点、小川毅士8点、氏川9点、柴田16点、久岡と野﨑が17点で、最後のSSを迎えることになった。 3連勝した、小川友幸 今回のSSはシンプルな人工セクション。第1はコンクリートブロック、第2はビッグ・タイヤが構成物となった。ひとつひとつの障害はともかく、連続技で攻めるのはむずかしい。 SS第1は、トップグループにとってはクリーン必須と思われたが、野﨑が1点、さらに黒山がなんとテープから飛び出して5点に。これで小川友幸の勝利が決まり、2位には小川毅士が、氏川が3位に浮上した。 SS第1セクションの小川毅士。2位を獲得 最後の勝負のSS第2。大きなタイヤで野﨑が5点になったが、ここもまたトップグループにはクリーン必須だった。しかしここでまた波乱が起きた。氏川が1点をつき、黒山と同点に並ばれ、クリーン数差で再び4位に後退した。最後に小川友幸が1点をついたが、これは勝敗には影響なし。2位にはSSをふたつともクリーンした小川毅士が入った。 この1戦で、シリーズの流れも大きく動いた。小川友幸が今シーズン初めて単独トップに立ち、しかも10ポイントの大量リードを築いた。最終戦はスタジアム形式でここまでのシリーズとは異なるスタイルだが、小川友幸が連覇に向けて優位を築いたのはまちがいない。 国際A級スーパー表彰式。左より2位小川毅士、優勝小川友幸、3位黒山健一、4位氏川政哉、5位柴田暁、6位久岡孝二 2023_R7_IAS_resultsダウンロード 国際A級 チャンピオンを決めたものの、前回マシントラブルで2位となった黒山陣(スコルパ)は、最終戦を勝利して有終の美を飾りたいとスタートした。 IAチャンピオン黒山陣 ところが第2セクションで5点となり、これで勝利は絶望的状況となってしまった。黒山はこのあと第9セクションでもエンストによる5点を喫して、5位を得るのが精いっぱいだった。 代わって本領を発揮したのがベテラン勢。今シーズン3回目の出場の田中裕人(ホンダ)は1ラップ目の減点が3点、2ラップ目にオールクリーンを達成して、2023年最終戦を制することになった。田中の勝利は13年ぶりで、4ストロークのRTLでの勝利はこれが初めてということだった。 国際A級最終戦を制した田中裕人 2位は砂田真彦が入り、ランキングも2位を獲得。3位に山形の15歳、浦山瑞希が入り、ランキング3位も獲得した。 国際A級表彰式。左より2位砂田真彦、1位田中裕人、3位浦山瑞希、4位森岡慎哉、5位黒山陣、6位仲里侑 2023_R7_IA_resultsダウンロード レディース 7名が参加のレディース大会。初出場、青森の木村亜紀(TRRS)にはちょっと厳しい戦いとなったが、無事に完走。そして上位5名はまさに1点を争う大接戦となった。 高校生の全日本チャンピオン。山森あゆ菜 勝利は1ラップ目も2ラップメモトップスコアをマークした楠玲美(ホンダ)。1戦を欠場したことでタイトル争いには加われなかったが、2勝と最終戦勝利をものにして、ランキングも2位に浮上、チャンピオンとしてのシーズンを締めくくった。 レディース優勝は楠玲美、ランキング2位へ浮上 2位は楠に2点差で山森あゆ菜(ベータ)。楠に20ポイント差で、初めてのタイトルを獲得した。IAクラスに続いて、10代チャンピオンの誕生だ。 レディース表彰式。左より2位山森あゆ菜、1位楠玲美、3位齋藤由美、4位清水忍、5位小玉絵里加、6位寺田智恵子 2023_R7_LTR_resultsダウンロード 国際B級 すでにタイトルを決めている村田隼(ヴェルティゴ)は、最終戦ではオールクリーンすると決めていた。そしてそのとおり、16セクションをすべてクリーンしてチャンピオンとしての最終戦を走りきった。 国際B級は前戦でチャンピオンを決めている村田隼。SUGOをオールクリーン勝利で締めくくる 2位は、これもランキング2位を決定していた小原諄也(TRRS)が入った。 3位争いは大接戦。6位までが一桁減点で、そしてIAに昇格できるランキング5位争いもまた大接戦だった。こんな中、終盤になって一気に上位を獲得するようになった神長叡摩(シェルコ)が、今回3位でランキング5位を獲得。北海道・和寒大会で勝利した本田隆史(ガスガス)は9位で、ランキング4位でIA昇格を決めた。ここまでランキング3位だった古市光(ホンダ)は今回17位でポイント獲得ならずだったが、ランキング3位を守って昇格を決めた。ランキング争いは、3位から5位までが1点差ずつの接戦だった。 国際B級表彰式。左より2位小原諄也、優勝村田隼人、3位神長叡摩、4位山田敬典、5位紙谷充紀、6位永久保圭 2023_R7_IB_resultsダウンロード シリーズチャンピオン。左から黒山陣(IAチャンピオン)、村田隼(IBチャンピオン)、山森あゆ菜(レディースチャンピオン)

小川友幸シーズン3勝目でタイトル争いは接戦に。R6広島・三次灰塚

2023年8月27日 広島県三次市吉舎町安田灰塚ダムトライアルパーク 観客数:730人 2023年全日本トライアルシリーズも終盤戦。第6戦は広島県三次市の灰塚ダムトライアルパークでの開催となる。去年は9月の開催で今年は8月開催。周囲を山に囲まれていて盆地地形の会場なので、この季節に暑くなるのはやむなしだが、薄日がさす時間が多かったこともあって、去年よりは少し暑さは和らいだか。それでも暑い厳しい戦いだったのはまちがいない。選手はもちろん、会場に集うすべての人が体調管理を気遣いながらの大会となった。 今回は全クラス合わせて135名の参加申し込みがあった。スタートしたのは129名だった。このところ、渋滞対策を念頭に、国際B級をグループ分けしてセクションを分散させる取り組みをする大会が多かったが、今回は第1セクションから一斉スタートした。最終スタートのIASとIBやレディースの2ラップ目が重なった第2から第4あたりで渋滞はあったものの、渋滞は少なめだった。今回は全体に減点数の少ないセクション設定だったが、特にIBとレディースは減点数が少なかった。スムーズにセクションをアウトできれば渋滞は起きにくい、ということかもしれない。セクションは11用意されたが、全クラス10セクション2ラップ。これに国際A級スーパーの上位10名のみ、SSの2セクションでの最終決戦をおこなういつものスタイルは変わらない。 国際A級スーパー オールクリーンが勝利を確実にする条件。そしてそれが可能な設定での戦いが始まった。オールクリーンができるとはいえ、簡単ということではない。濡れれば当然滑るし、砂のような土にグリップを奪われることもある。足をつく要素はいっぱいあるし、それが5点につながってしまうリスクは当然存在する。 第2までをクリーンしたのは9名。まずまず予想通りの展開だ。最初の鬼門は第3セクションだった。武井誠也(ホンダ)は2点で抜けたが、久岡孝二(ホンダ)、小川毅士(ベータ)、野﨑史高(ヤマハ)が5点、さらに氏川政哉(ホンダ)も5点となって厳しい戦いを強いられることになる。このセクション、小川友幸は1点、黒山健一(ヤマハ)が2点で抜けたが、柴田暁(TRRS)が唯一クリーンを叩き出している。 電動TY-Eで、好調にクリーン決める黒山健一 その後はまたクリーン合戦となるが、第5でふたつめの5点をとった野﨑が厳しい戦いとなり、柴田、黒山もクリーン連発とはいかない。こんな中、第6でアクシデント。氏川が岩からの下りで前転、首と背中を強打した。あわやリタイヤかというアクシデントだったが、氏川は試合続行を決断。痛みに顔を歪め、叫びながらのトライが続くことになった。 1ラップ目のアクシデントはあったが、試合を続行した氏川政哉 1ラップ目が終わって、トップは第3での1点のみの小川友幸、これを3点の黒山と柴田が追う。氏川は5点二つのみの10点で4位。小川毅士が同点で並ぶ。野﨑は16点、久岡は23点で7位につけている。 2ラップ目、小川友幸が第3をクリーン。黒山、氏川も1点で抜けたが、ラップオールクリーンを目指せるのは小川だけということになった。その小川が、今度は第6で5点。戦況に大きな影響があるかとも思われたが、黒山は第5で、柴田は第6で5点となっていて、その差は変わらなかった。 2ラップ目、トップスコアの1点をマークしたのは氏川だった。負傷を押して、第3での1点以外すべてのセクションをクリーンするというパフォーマンスを発揮した。10セクション2ラップを終えてみると、トップは小川の6点、続いて黒山が9点、氏川は11点で3位まで浮上してきた。柴田は氏川に遅れること2点の4位でSSを迎えることになった。 小川友幸が持つ本来のパフォーマンスを見ることができた SSは難セクション、最後の逆転劇も予見されたが、基本的に去年と同様の設定(もちろん難度は上がっている)は、トップライダーには攻略する糸口があったようだ。トップ4人はSSの二つを見事にクリーンして、順位は変わらず。小川が2連勝でシーズン3勝目をあげ、黒山が2度めの2位、氏川は今シーズン初めて、3位に甘んじることになった。 氏川が圧倒的に優位だったチャンピオン争いは、小川が一気に2ポイント差に詰め寄ってきた。残り2戦、メーカー、チームが同じ二人の大接戦が続きそうだ。 IAS表彰式。左より、2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位柴田暁、5位野﨑史高、6位小川毅士 2023_R6_IAS_resultsダウンロード 国際A級 ランキングトップでこの大会を迎えることになった黒山陣(スコルパ)だが、ランキング2位の本多元治がこの大会にエントリーをしないことが判明した時点で、早々とチャンピオンが決定。チャンピオンとして、この大会を含む残り2戦を戦うことになった。 2023国際A級チャンピオン、黒山陣。14歳 その黒山にトラブルが発生したのは第8セクション。こちらもあわやリタイヤかというマシントラブルだったが、ギヤを1速のみとすれば走れることがわかり、それで試合を続行する。これで黒山は、第8を含んで3つの5点を献上して、かなり厳しい戦いとなった。 そんな中、今シーズン3度めの出場となった小野貴史(ホンダ)が好調。第1で5点となって幸先は悪かったが、第6での5点とあわせて5点二つの10点で1ラップを終え、トップに立った。2ラップ目は減点を若干増やしたものの、黒山を含む誰にも追いつかれることなく勝利した。 国際A級は小野貴史が、黒山陣と同点クリーン数の差で勝利 トラブルに泣いた黒山はといえば、なんとその小野と同点。クリーン数の差で勝利はならず、2位表彰台獲得ということになった。結果的に、6戦を終えて3勝、2位3回という、終わってみればまずまずの結果となった。 3位には、前回大会に続き、山形の15歳、浦山瑞希が入った。ランキングも4位に浮上していて、黒山といっしょに10代のIASライダーとなる可能性も出てきた。 2023_R6_IA_resultsダウンロード レディース 7名が参加のレディースは、なかなかの神経線だった。結果的に、トップ3には5点はひとつもなしという争いになった。 1ラップ目、わずか1点のリードながらトップに立ったのは中川瑠菜(ベータ)。続いてここまで2勝しているポイントリーダーの山森あゆ菜(モンテッサ)が3点、昨年のチャンピオンであるゼッケン1番の楠玲美(ホンダ)が山森と同じく3点、クリーン数差で3位。さらに小玉絵里加(ガスガス)が4点で続く。大接戦だ。 今シーズン2勝目。中川瑠菜が勝利 2ラップ目、流れは変わらなかった。暑い中、小玉が調子を崩して減点を増やし、楠がわずかに減点を増やす間に高校生デュオは1ラップ目の調子を維持した。 中川が1ラップ目も2ラップ目も2点、計4点で勝利。今シーズン3戦目の出場で2勝をあげることになった。 山森は3点と3点で6点で2位。この2戦、ポイントリードを減らしてしまっていた山森だが、これでほぼ元通りに。リードは21ポイントとなって、最終戦で4ポイント(12位)を獲得すれば、ライバルの順位に関係なく初のタイトル決定ということになる。 レディース表彰式。左より2位山森あゆ菜、優勝中川瑠菜、3位楠玲美、4位小玉絵里加、5位寺田智恵子、6位山下実結 2023_R6_LTR_resultsダウンロード 国際B級 ポイントリーダー村田隼(ヴェルティゴ)は、ここまでランキング2位に34ポイントの大差をつけて、この1戦でチャンピオンを決定するであろうと思われていた。しかし、エントリーしていたランキング2位の小原諄也(TRRS)が欠場。この時点で村田のタイトルは決まった。 チャンピオンとしての戦いもバッチリ。1ラップ目は2点のみ、2ラップ目はオールクリーンの快挙で、総減点わずか2点での勝利だった。 シリーズチャンピオンを決めた村田隼 2位に入ったのは神長叡摩(シェルコ)。トータル4点は見事だった。3位には留学中で夏休みのみ全日本参加の辻本雄河(TRRS)が入った。6位までが、トータル一桁減点をマークした。 国際A級昇格争いは、村田と小原がランキング5位以内確定で決定。ランキング3位古市光(ホンダ・今回8位)58ポイント、4位本田隆史(ガスガス・今回25位)50ポイント、5位神長叡摩40ポイント、6位永久保圭(ベータ・今回6位)40ポイント、7位田上拓(モンテッサ・今回24位)35ポイント、8位大櫃千明(モンテッサ・今回23位)33ポイントと、最終戦でもう一波乱ありそうな展開となっている。 国際B級表彰式。左より2位神長叡摩、優勝村田隼、3位辻本雄河、4位中野禎彦、5位林大作、6位永久保圭 2023_R6_IB_resultsダウンロード

R5北海道・和寒 小川友幸シーズン2勝目は大逆転劇に

2023年7月16日 北海道上川郡和寒町わっさむサーキット 観客数:700人 全日本トライアル選手権第5戦北海道・和寒大会は、今年も旭川市の北方、和寒町のわっさむサーキットでの開催。今回は国際A級スーパー、国際A級、レディース、国際B級、オープントロフィーNAクラス、4クラス合わせて102台のエントリーがあってにぎわった。地元への事前告知の効果もあったようで、いつにも増してお客さんが多いように見受けられた。 セクションは、全クラス10セクション2ラップ。さらに国際A級スーパーの上位10名のみ、SSの2セクションでの最終決戦をおこなう。 前夜にはそこそこの量の雨が降ったが、競技当日は曇り。最後には太陽も顔を出して、暑すぎず、雨も降らずのトライアル観戦日よりとなった。ただし走る側は、雨の影響で濡れた土が大きく影響し、難度が高く、厳しい戦いとなったようだ。 国際A級スーパー 1ラップ目に好調な滑り出しを見せたのは柴田暁(TRRS)だった。第1セクションから難セクションが続き、5点を出すライダーも多い中、柴田のみが各セクションを走破し続けて1ラップ目減点28点でトップに立った。これを追うのはランキングトップを守る氏川政哉(ホンダ)で減点31点。さらに3点差で小川友幸(ホンダ)が3位で2ラップ目の追い上げを狙う。 1ラップのトップは柴田暁、キレのいい走りを見せつけた 2ラップ目、がぜん調子を上げたのが小川。1ラップ目に5点になった第1を始め、第6セクションまでクリーンを続けて一躍トップに立った。1ラップ目トップの柴田は2ラップ目には減点を増やしてしまい、トップは守れず。氏川は手堅く減点をまとめている。 2ラップ目終了時点では2位だった、小川友幸 2ラップ目後半、小川が連続5点を喫したことでトップの座が入れ替わった。2ラップを終えると、トップは氏川で51点、小川は1点差で2位につけて、SSの勝負に望みをつなげる。 20歳のIASポイントリーダー、氏川政哉 3位には、今回から新型の電動マシンTY-E 2.2を投入した黒山健一(ヤマハ)が61点。柴田は62点で、67点の野崎史高(ヤマハ)とともに3位争いにも注目が集まることになった。 黒山健一は、新型の電動「TY-E 2.2」をデビューさせ3位に 第1セクションを手直ししたSS第1と、最終セクションを手直ししたSS第2。どちらもIAS専用に作り直して難度をさらに上げている。今回は、磯谷郁(ベータ)と濵邉伶(ヤマハ)の二人が初めてSS進出を果たしている。 滑る土が岩の表面に乗ってとてのよく滑る状態だ。高く積み上げられた大岩の頂点まで上るSS第1は、ほぼ全員があえなく5点となる中、小川が見事な走破力を見せて減点1。直後にトライした氏川は、頂点まで登りきったところでリヤタイヤを滑らせ、ゲートマーカー破損で5点となってしまった。 これで小川は再び逆転。氏川に3点差でトップに立った。残るSS第2を3点以内で抜ければ、小川の勝利が決まる。 そして、このSS第2を小川は減点2で走破。氏川がSS第2をトライする前に、シーズン2勝目を決定することになった。最後の最後までしぶとく粘った小川の勝利だった。 13回目のシリーズチャンピオンを目指す小川としては、ここで勝利しないと自力チャンピオンの目を失うだけに、どうしてもほしい勝利だった。対して氏川は、16ポイントのリードを11点に縮められて、残り3戦に挑むことになった。 黒山健一が持ち込んだ電動マシンTY-E 2.2は、フレーム、モーターなど随所が新設計のものだった。結果は3位と最上位更新はならなかったが、滑るコンディションでの実戦成果を得たデビュー戦となった。 IAS表彰式。左から2位氏川政哉、優勝小川友幸、3位黒山健一、4位柴田暁、5位野崎史高 2023_R5_IAS_resultsダウンロード 国際A級 ランキングトップの黒山陣(スコルパ)が和歌山・湯浅大会に続いて2連勝、シーズン3勝目をあげてランキングのポイントリードを41点まで広げた。どうやら次の第6戦 広島・三次灰塚大会でタイトルが決まりそうだ。 14歳の黒山陣、IA優勝 黒山と優勝争いをしたのは前回に続いてフランス製電動マシンEMを走らせた成田匠。1ラップ目は1点差、2ラップ目は2点差で大接戦だったが、トータル3点差で勝利には届かずだった。 フランス製の電動マシンで参戦した成田匠、2位 黒山としては、前回大会で本多元治に勝利し、今回成田匠という往年の名選手に勝利。これがなによりの喜びだったという。 3位には、山形の15歳、浦山瑞希が入った。実力を積み上げてる浦山だが、表彰台獲得は初めてだ。 IA表彰式。左から、2位成田匠、優勝黒山陣、3位浦山瑞希、4位小野貴史(代理)5位砂田真彦、6位宮澤陽斗 2023_R5_IA_resultsダウンロード レディース 米澤ジェシカの怪我による戦線離脱で今回は3名の戦い。ランキングトップの山森あゆ菜(モンテッサ)、小玉絵里加(ガスガス)、そして前年チャンピオンの楠玲美(ホンダ)による争いだ。 …

氏川政哉がシーズン2勝目。ポイントリードは16点に広がる

2023年6月25日 和歌山県有田郡湯浅町湯浅トライアルパーク 観客数:1,200人 6月2回目の全日本選手権。世界選手権もてぎを含めると、6月には3大会のトライアルビッグイベントが開催されたことになる。今回は、醤油の町、和歌山県湯浅町での開催となる。 国際A級スーパーと国際A級、国際B級(とオープントロフィー)が10セクション(それぞれ1セクションずつ専用セクションあり)2ラップ、レディースが8セクション2ラップ。加えて国際A級スーパー上位10名にはSSでの決戦が待っている。 天気はよく、ただし林の中など湿気もあって、ライダーにも観戦者にも、ちょっと厳しいコンディションになったかもしれない。 国際A級スーパー 第3戦で勝利こそ逃したもののランキングの単独トップに立った若い氏川政哉(ホンダ)。ここでもポイントリードを広げる活躍をしたいところ。 氏川政哉が今季2勝目 しかし1ラップ目、トップ争いは大接戦だった。粘るトライを見せて5点を二つに抑えたのは、電動マシンのパフォーマンスがどんどん進化する黒山健一(ヤマハ)だったが、クリーンが多いのは小川友幸(ホンダ)。氏川はその両者にはさまれて2位で1ラップを折り返した。この3人は1点差ずつ、さらにトップから3点差で野﨑史高(ヤマハ)、柴田暁(TRRS)が並んでいる。上位5人、誰が勝ってもおかしくない戦況だ。 電動で2位獲得の快挙。黒山健一 2ラップ目、クリーン5をマークして調子を上げてきた黒山、対して2ラップ目序盤4連続クリーンから調子を崩し、最後は3連続5点、4つの5点で1ラップ目より7点減点を増やしてしまった小川友幸。柴田、野﨑も減点を増やし、追い上げがままならない。そんな中、5点二つのみ、1ラップ目より減点を4点減らしてきたのが氏川だった。 小川友幸は3位に クリーン数こそ少ないものの、減点を確実に抑えた氏川は、2ラップを36点でゴール。2位につけたのは黒山で41点。さらに3位小川友幸は45点、柴田46点、野﨑51点と、SS次第では順位が大きく動き可能性もあった。 SSは二つとも難セクションだった。それでもSS第1は、野﨑、小川友幸、黒山がクリーン。氏川は減点2。電動マシンに乗る黒山が初優勝まであと3点と迫った。そしてSS第2。今回いいところがない小川毅士がもう一歩でアウトするところまでいったものの、それ以降にトライしたライダーはことごとく5点。こうなるとそれぞれの逆転劇はならず、小川友幸、黒山の5点で、氏川の勝利も決まった。 しかし氏川の和歌山・湯浅大会はこれで終わってはいなかった。さらに集中しなおし、誰も抜けられなかったSS第2にトライ。惜しくもクリーンはならなかったが、わずか1点でここを抜けて、自身の2勝目に華を添えて第4戦は決着した。 今回の結果、氏川のポイントリードは16ポイントに広がり、2位小川友幸と3位野﨑の間も11ポイント差に広がった。 野﨑が今シーズン初勝利。4戦目にして、3人目の勝利者が出て、氏川のランキングリードは変わらないまま、シリーズ争いがより興味深いものになったもてぎ大会となった。 IAS表彰式。左から2位黒山健一、優勝氏川政哉、3位小川友幸、4位柴田暁、5位野﨑史高、6位小川毅士 2023_R4_IAS_resultsダウンロード 国際A級 第3戦に続いて本多元治(ホンダ)が参戦。初タイトルに向けてポイントを積み上げる黒山陣(スコルパ)の前に立ちはだかった。1ラップ目、本多の5点に対し黒山は3点。トップは黒山だが、わずか2点差で攻防が続く。 2ラップ目、両者は1点の足つきも許さぬ勢いでセクションを回り、結局両者は減点1点ずつ。結果、点差は1ラップ目のまま、2点差で黒山が勝利した。黒山は今シーズン2勝目だが、なにより前回敗北した本多に勝利したことが喜びだという。 黒山陣がベテランをおさえて勝利 3位に村田慎示(ホンダ)、4位に、フランスの電動マシンEMに乗る成田匠が入っている。 成田匠が電動マシン(EM)を走らせて4位 国際A級表彰式。左から2位本多元治、優勝黒山陣、3位村田慎示、4位成田匠、5位砂田真彦、6位宮澤陽斗 2023_R4_IA_resultsダウンロード レディース 7人がエントリーだったが、米澤ジェシカが負傷で戦線離脱、6名での戦いとなった。 1ラップ目は、このクラスも大接戦。トップ中川瑠菜(ベータ)が6点、2連勝した山森あゆ菜(モンテッサ)が9点、小玉絵里加(ガスガス)が11点、楠玲美(ホンダ)が12点という争いだ。 中川瑠菜がダブルスコアで勝利 2ラップ目、中川はさらに調子を上げて8セクションを4点でまとめた。トータル減点は10点。これで1年前のこの会場での近畿大会に続く自身2勝目となった。2位にダブルスコアの圧勝だった。 2位は小玉。体力的に厳しい2ラップ目に減点を減らせたのが2位獲得のポイントとなった。3連勝ならずの山森は3位。小玉とはわずか1点差だった。 チャンピオン楠は4位となっている。 レディース表彰式。左から2位小玉絵里加、優勝中川瑠菜、3位山森あゆ菜、4位楠玲美、5位寺田智恵子、6位河村真弓 2023_R4_LTR_resultsダウンロード 国際B級 3戦目にして土がついた村田隼(ヴェルティゴ)が第3戦の勝者、小原諄也(TRRS)にリベンジを果たして3勝目。小原は1ラップ目第3セクションでの5点が痛かったが、トータルでは村田にたったの1点差だった。 ランキングでは村田が小原に30ポイント差のトップ、小原もランキング3位の古市光に30ポイント近い差で2位につける。ランキング4位以下は8位までが3ポイント差という大接戦となっている。 国際B級は村田隼が3勝目 IB表彰式。左から2位小原諄也、優勝村田隼人、3位大櫃千明、4位小倉功太郎、5位滝浪猛、6位和田弘行 2023_R4_IB_resultsダウンロード

野﨑史高、3戦目にして3人目の勝者に

2023年6月4日 栃木県芳賀郡茂木町モビリティリゾートもてぎ 観客数:1,800人 全日本選手権は熊本・山鹿大会に続く第3戦。途中、世界選手権トライアル日本ラウンド「2023 Hertz FIMトライアル世界選手権第3戦 大成ロテック日本グランプリ」が開催され、その同じ会場で2週間後に全日本選手権もてぎ大会の開催となった。 国際A級スーパーと国際A級が10セクション、レディースと国際B級が8セクション2ラップ。もちろん国際A級スーパーにはその後に上位10名によるSSがある。 トップカテゴリーのセクション難度は世界選手権のTR2クラスよりむずかしい、ということだったが、トップ争いはオールクリーンに近い勝負になるのではという声もあった。 土曜日は日本列島太平洋側を襲った大雨の影響が残ってグリップは悪そう。しかし日曜日は天候が回復して暑いくらいの1日になった。遠征の選手などにとっては、悪天候の中を移動するのがまず最初のトライアルとなったもてぎ大会となった。 国際A級スーパー 1ラップ目、一桁減点で10セクションをまとめたのは野﨑史高(ヤマハ)と小川友幸(ホンダ)、二人だけだった。野﨑が5点、小川が6点。彼らの走りはほぼ完璧に近かった。 3位は氏川政哉(ホンダ)。氏川は第6セクションでテープを切って5点となったのが痛かった。 氏川政哉は1ラップ目の失点が最後まで影響してしまう 2ラップ目、野﨑の好調は変わらない。1ラップ目と同じようなペースで10セクションを走りきって、ラップ減点は4点。2ラップを通じて、本領発揮のトライアルだった。 2ラップ目に3点のベストスコアをマークしたのが氏川。氏川は2位まで追い上げたが、しかし野﨑の好調の前に、その差はまだ4点差でSSを迎えることになった。 3位で2ラップを終えたのが小川。2ラップ目の小川は細かい減点と5点があって、氏川に3点差となっている。 1ラップ終了時点では3位の小川友幸 1ラップ目の5位から、小川友幸を追う4位までポジションを進めてきたのが小川毅士(ベータ)だった。2ラップ目の毅士は5点と好スコアをマークした。毅士は小川と3点差。 小川毅士は3位を確保した さらにパワーアップしたというTY-Eを駆った黒山健一(ヤマハ)は序盤は好調だったものの、鬼門セクションがあるようで、毅士に5点差の5位で2ラップを終えている。2週間前の世界選手権ではポイントを獲得した柴田暁(TRRS)は、体調不良に苦しみ7位。久岡孝二(ホンダ)が黒山に6点差で6位につけた。 電動TY-Eを巧みに操る黒山健一 SSは厳しい設定だったが、5点もクリーンもあり。SSでの逆転劇もありそうだ。SS第1を最初に抜けたのは黒山で2点。小川毅士1点の後、なんと小川友幸が5点。これで3位が入れ替わった。氏川は1点、最後にトライした野﨑は見事なクリーンで、これで野﨑の勝利が確定的となった。 SS第2。柴田が2点で抜けるも、すでに逆転はできず。黒山はここも3点で抜けてその走破性をアピールするが、順位を上げるには至らなかった。再逆転を狙う小川友幸は、しかしここでも5点で4位が決定。小川毅士は美しいクリーンを見せたが、これも逆転には至らなかった。 今シーズン初勝利の野﨑史高 野﨑が今シーズン初勝利。3戦目にして、3人目の勝利者が出て、氏川のランキングリードは変わらないまま、シリーズ争いがより興味深いものになったもてぎ大会となった。 IAS表彰式。左から、2位氏川政哉、優勝野﨑史高、3位小川毅士、4位小川友幸、5位黒山健一、6位久岡孝二 2023_R3_IAS_resutlsダウンロード 国際A級 第2戦熊本・山鹿大会を欠場した本多元治(ホンダ)が今シーズン2度目の全日本出場。5点一つもない確実な走りで勝利を果たした。 ベテラン、本多元治の優勝 2戦を終えてダントツランキングトップの黒山陣(スコルパ)は今回は完敗と語る。しかし2ラップ目を1点で終えられたのは次回に期待ができる内容だった。…

小川友幸が2023年初勝利でランキング争いは振り出しに

2023年4月23日 熊本県山鹿市矢谷渓谷キャンプ場特設トライアル場 観客数:800人 愛知・岡崎大会に続く2023年全日本選手権第2戦は、九州の熊本・山鹿大会。昨年に続き、矢谷渓谷キャンプ場の特設トライアル場での開催となった。これまで使われていなかったエリアもセクションとして登場し、昨年とはちがう、新鮮な印象の会場配置となっていた。 天候は土曜日から気持ちのいい好天気。朝夕は肌寒かったが、日中は暑からず寒からず、絶好のトライアル観戦日よりとなった。こんなに気持ちのいいトライアルデイも、久しぶりだ。 セクションはいくつか難度の高いものがあるということだったが、雨の中での前例が多かったため、路面が乾けば意外な神経戦になるのではないかという予測もあった。いずれにしろトライアルは、始まってみなければわからない。 国際A級スーパー 序盤好調だったのは前回勝利の氏川政哉(ホンダ)と、電動マシンの成長にすべてのパワーを注ぐ黒山健一(ヤマハ)。ふたりは第3セクションまでをクリーン、第4セクションの(昨年のSSだったもの)で初めて5点となった。その第4を、唯一クリーンしたのが柴田暁(TRRS)だった。このクリーンで柴田が逆転トップ。第5で唯一黒山がクリーンして再び黒山がトップ。しかし残るセクションを5点なし、最小減点で走り抜けたのはV13のかかる小川友幸だった。 1ラップ目でトップに立った小川友幸 1ラップ目のトップは小川で14点。2位に2点差で黒山、さらに2点差で柴田。氏川は柴田に遅れること5点差で4位で試合を折り返した。 電動トライアルバイク、TY-Eで参戦する黒山健一 2ラップ目、今度は小川が好調を取り戻した。難関のヒルクライムもクリーンの快進撃だ。小川に続いて調子を上げてきたのが、1ラップ目5位の野﨑史高(ヤマハ)だった。しかし小川は、野﨑以下を寄せ付けず、2ラップ目を5点二つで切り抜けて暫定トップでSSを迎えることになった。 2ラップ目の2位は野﨑だったが、1ラップ目とトータルすると、SS前の2位は柴田だった。柴田の減点は33点。小川とは7点差。数字的には逆転の可能性はある。暫定3位は氏川。氏川は柴田に5点差で、ここにも逆転の可能性があった。しかし4位に野﨑史高が追い上げていて、氏川と野﨑は1点差。さらに野﨑に2点差で黒山が続いていた。2位から4位まで、SS次第で順位はどう変わっていくか、わからない。 キレのあるライディングを見せ続けた柴田暁 SSは、新しい試み。SS第1とSS第2が同じセクションで、第1と第2でゲート設定を変更する。セクションの見どころもそれぞれだが、ギャラリーはSS第1と第2を移動しないで観戦できるメリットがあった。 SS第1を最初に走破したのは久岡孝二(ホンダ)。9位でSS進出を果たしたが、これで逆転の目が出てきた。その後また5点が続き、次にここを走破したのが黒山だった。川の流れの音がさわやかな渓谷のキャンプ場に、電動のヒューンという動作音が響く。 黒山の後のトライは氏川。2連勝の夢はすでに断たれているが、このまま2位で終わるのか、氏川の走りは力強いものだった。クリーン! これはあとに続く柴田にも大きなプレッシャーを与えることになった。 氏川政哉は2位 そして柴田。なんとゲートを飛ばして5点。これで氏川と柴田が38点の同点となった。クリーン数は氏川の方が多く、氏川が有利な展開となった。 最後のトライの小川は勝利が決まっていてプレッシャーのない状態だったが、なんと5点となって、SS第1は終了した。 SS第2、今度は大岩が目玉となったが、SS第1より走破するライダーが増えた。磯谷玲が3点、久岡が1点、そして今日はついに本領を発揮できずに終わろうとしていた小川毅士が、見事なクリーンをたたき出した。 黒山が、再びモーター音を響かせて1点、黒山は野﨑を逆転して、4位浮上を果たした。5位が決まってしまった野﨑は5点となった。 大接戦の2位争い。最初にトライするのは、SS前に暫定3位だった氏川。ここでも氏川は気合いの入ったトライでクリーン。これで柴田のトライを待つことなく、自力で2位獲得を決めた。柴田は3点。それでも、開幕2連続表彰台獲得だ。 小川友幸は、最後に華麗なトライを見せて有終の美を飾るのが決まり手。今日も美しいトライを見せてくれるかと期待されたが、1回足が出てトータル減点32。2位氏川に6点差での勝利となった。 IAS優勝の小川友幸。左は2位の氏川政哉 2023_R2_IAS_resultsダウンロード 国際A級 開幕戦を3位で終えて、次は必ず勝つと宣言していた黒山陣(スコルパ)。第5セクションで5点となったが、他は最小減点で1ラップ目からトップ。2ラップ目は5点の一つもなく、唯一両ラップを一桁減点で走りきって勝利を決めた。2位にはちょうどダブルスコアの差をつけていた。13歳の黒山の勝利は、国際A級最年少勝利記録となった。黒山は、もちろんランキングトップにも躍り出ている。 IAクラスは13歳の黒山陣が初優勝 2位は田中裕人(ホンダ)。久々に参戦の開幕戦から、今回は勝ちに行くということだったが、黒山に差をつけられての2位となった。3位は砂田真彦(ホンダ)。 九州の徳丸新伍(ホンダ)が4位、開幕戦を欠場した小谷徹が5位で、山形から遠征、15歳の浦山瑞希が6位入賞した。 今回は勝利に自信を持っていた黒山陣 2023_R2_IA_resultsダウンロード レディース 3人のみの参加でちょっとさびしい戦いとなったが、山森あゆ菜(モンテッサ)が切れ味のいい走りで勝利。5点ひとつもなしの絶好調だった。 レディースクラスは山森あゆ菜が第2戦を勝利 いつも笑顔の米澤ジェシカ(TRRS)は山森に31点差となった。 開幕戦で勝利した小玉絵里加(ガスガス)のエンジンがかからないというトラブルが発生。パドックに戻して修理を試みるが断念。可能な限りマシンを押して申告5点でセクションを回ろうとするが、この際に他人の力を借りたという規則違反で失格となった。 ランキングトップは山森だが、山森に8点差のランキング2位が米澤、小玉が米澤に5点差、小玉に5点差で中川瑠菜と続いていて、なかなかの接戦だ。 優勝は山森あゆ菜(右)2位の米澤ジェシカ(左) 2023_R2_LADIES_resultsダウンロード 国際B級 開幕戦勝利の村田隼が2連勝。厳しい戦いだったというが、同じ中部の山田敬典に3点差で勝利した。3位は地元熊本の辰己貴俊が入り、4位に鹿児島の後藤研一、5位に11歳の永久保圭、6位に古市光と、6位までは4人の中部勢、二人の九州勢に占められた。 Vertigoを走らせるIB村田隼 IBクラス連勝、村田隼 2023_R2_IB_resultsダウンロード

2023年シーズン開幕、氏川政哉が自身2勝目

2023年4月2日 愛知県キョウセイドライバーランド 観客数:1,800人 2023年の全日本選手権は昨年同様にキョウセイドライバーランドで開幕した。去年までは中部大会とタイトルがついていたが、今年からは愛知・岡崎大会と呼ばれることになった。表彰式には中根康浩岡崎市長も臨席、地域の特産品なども紹介されて、地元岡崎市とのリレーションシップがより強固になった全日本トライアルとなった。 事前の天気予報では当日はまちがいなく雨ということで、滑るキョウセイでのサバイバルな戦いが予想されたが、当日が近づくにつれて予報も好転。朝はちょっと肌寒いながらもいいお天気。走るほうも観戦するほうも、なかなかのトライアル日和となった。しかし予報では、この地域は午後から雨雲の訪問を受けるということで、それがいつなのか、はたしてほんとうに雨が降るのか、雨雲が勝負の行方を握るのか、運を天に任せてスタートするライダーも多かったようだ。 国際A級スーパー 1ヶ月半のスペイン修業から帰ってきて、その成果をアピールしたい氏川政哉(ホンダ)、ヤマハからホンダにマシンをスイッチした久岡孝二など、新しいシーズンにふさわしい話題は多かったが、圧倒的に注目を集めたのが、黒山健一とヤマハTY-E 2.1だった。電動マシンが、初めて全日本選手権を走る記念すべき1戦となった。 初めて全日本選手権を走る電動トライアルマシン 東京モーターサイクルショーで、黒山とヤマハTY-Eが走る姿を目撃した人も多いかと思われるが、ちゃんとした実戦でこのコンビネーションを見た人はほとんどいない。黒山とTY-Eはこれまでに5戦の実績があるが、いずれも世界選手権が舞台だった。 黒山の第1セクションは5点。しかしスコアはともかく、IASでも失敗するライダーが多いポイントを美しく走破していく様を見せ、たとえ5点になっても多くの驚きと拍手を呼び込みながら、黒山は電動トライアルライダーとしてスタートを切った。 電動マシン、YAMAHA TY-E 2.1を駆る黒山健一 前日の下見では、意外に減点数は押える戦いになるのではないかという読みもあったが、第1セクションをクリーンしたのは氏川と武井誠也(ホンダ)の二人だけ。野﨑史高(ヤマハ)が3点となった以外は、みな5点という厳しい滑り出しとなった。 序盤、クリーン、1点、クリーンと好調だったのが氏川。11連覇V13を狙う小川友幸(ホンダ)は、第1セクションから5点、第3でも3点を失うなど、本来の正確なライディングができていないように見える。野﨑史高(ヤマハ)は5点が少ない代わりに細かい減点が大目、柴田暁(TRRS)、小川毅士(ベータ)は序盤2セクションで連続5点を喫して幸先が悪い。柴田はその後調子を上げていったが、小川毅士はついに調子が出ないまま1ラップを終えてしまった。 1ラップ目のトップは氏川で22点、2位につけたのはなんと電動マシンをデビューしたばかりの黒山だった。マシンもまだこれからというところも多く、ライダーもまだまだなれなければいけないことが多い。それでも、第1戦にしてエンジンマシンを相手にほぼ互角の戦いが見せられているというのは、本人には大きな収穫となったに違いない。見る者はその活躍ぶりにびっくりだ。 序盤から好調だった、氏川政哉 小川友幸は過去にない不調といいながら、氏川に5点差で1ラップ目を折り返した。 2ラップ目、氏川はわずかにライバルよりも好調をキープ。本人としてはもっと減点を減らした走りをしたかったようだが、それでも10セクション2ラップを走り終えて、2位小川友幸に8点差。SSを前に、開幕勝利が見えてきた。 2位には小川友幸が上がってきていた。氏川との点差8点は可能性はゼロではないが逆転もむずかしい点差だ。3位は黒山で、小川との点差もおなじく8点だった。 11連覇V13を狙う小川友幸 黒山以下は接戦だった。黒山と野﨑が62点で同点(クリーン数は黒山が勝る)、柴田が64点、2ラップ目に復調した小川毅士が68点。SSの結果次第では、この4人に表彰台のチャンスがあった。 SS第1はタイヤや岩を越えた後、ヒルクライムを上っていく設定。今回は第6セクションに極大ヒルクライムが用意されていたが、それよりは低くなだらかで、しかし細かいテクニックが必要そう。 このSS、しかしヒルクライム以前に玉砕するライダーが多く、抜けられたのは柴田だけだった。そんな中、黒山がタイムオーバーで5点ながら最後まで走りきって、ここでも電動マシンの可能性を見せつけた。 上位陣がそろって5点となったので、氏川の優勝はこの時点で決まった。小川友幸の2位も決まった。3位争いは柴田が黒山、野﨑を逆転。そして勝負は最後のSS第2に移った。 SS第2は、入口に巨大な岩への飛びつき、その後降りて上って降りて上って上ってアウトという設定。ダイナミックな大岩への飛びつき、細かいテクニックを要す下りや木の根の処理、最後の土の斜面と鬼門は多かった。1分半の時間内にセクションアウトできるかどうかも問題だ。 しかしここでは、3番手にトライした久岡が3点で抜けると、武井、小川毅士と3点。上位陣にはクリーンの可能性も出てきたが、同時に何人かが走ってわだちが掘れてくるなどの問題も出てくる。 柴田が2点のあと、野﨑が1点で抜けた。両者は同点で、クリーン数の差で、野﨑が再び柴田を逆転して3位争いが混とんとしてきた。続く黒山が1点以下で抜ければ、黒山が再々逆転で表彰台を得ることになる。しかし黒山は惜しくも2回の足つきを喫して、黒山は5位に。去年までの黒山なら、5位はかなり厳しい結果ということになるが、今年は大きな可能性を見せてくれての、さらに将来が楽しみな5位となった。 SSで逆点、3位の野﨑史高 そして最後の二人。まず小川友幸が美しくクリーン。さすが小川友幸というライディングが最後に発揮された。すでに氏川の勝利は決まっているが、小川のクリーンを目の当たりにして、ここで失点をするわけにもいかない。すると氏川は、今日一番の自信たっぷりの走りを見せて、自身の優勝に大きな華を添えるクリーン。開幕戦は政哉デイとなった。 開幕戦の勝利。氏川政哉 左から、2位の小川友幸、優勝氏川政哉、3位野﨑史高、4位柴田暁、5位黒山健一、6位小川毅士 2023_R1_IAS_resultsダウンロード 国際A級 古くからのトライアルファンにはなつかしい名前が目白押しのこのクラス。マシンをヴェルティゴにスイッチした加賀国光、優勝引受人の本多元治(ホンダ)、2021年IAチャンピオンの村田慎示(ホンダ)、去年まで廣畑伸哉(今年は1年間のスペイン修業に出た)のアシスタントを務めた田中裕人(ホンダ)……。大ベテランばかりで、若手には厳しい戦いだ。 優勝は加賀。1ラップ目序盤にふたつの5点を取りながらよく挽回。雨が降ってコンディションが悪化した2ラップ目に減点を減らしての勝利だった。2位は本多元治。加賀とは2点差。最終セクションの5点が2点以内だったら、本多が勝利していたかもしれなかった。 IAクラス優勝、加賀国光 3位には、若き黒山陣(スコルパ)が入った。今年はチャンピオンを目指すという黒山は、加賀から13点ほど点差をつけられたものの、並み居るベテランを押えて表彰台を得た。黒山は、昨年近畿大会以来、2度目の3位表彰台獲得だ。 10歳で国際A級に昇格した黒山家の三男の太陽(たお)は、11歳で初めての全日本IAクラス参戦、3点一つタイムオーバー2点でオール5点相当の100点ちょうど。41人中最下位の結果だった。3点でも2点でも抜ければガッツポーズと試合前に話していたが、ガッツポーズは次回にお預け。 IA表彰式。左から2位本多元治、優勝加賀国光、3位黒山陣、4位田中裕人、5位村田慎示、6位森岡慎哉 2023_R1_IA_resultsダウンロード レディース レディースクラスは大接戦。1ラップ目のトップは山森あゆ菜(モンテッサ)で15点、これに続いたのが、マシンをガスガスにスイッチした小玉絵里加で16点。チャンピオンの楠玲美(ホンダ)と中川瑠菜(ベータ)が21点でこれに続いた。 2ラップ目、IASのトライに巻き込まれて時間が押せ押せ。早周りをした楠、山森はタイムペナルティなしでゴール。楠が38点、山森はわずか1点差の39点。じっくりトライを続けている小玉と中川のスコアを見守ることになった。 最終セクションをクリーンした中川は32点。次に最終セクションをトライした小玉は5点で、トータル34点。しかし両者にはタイムペナルティがあり、中川6点、小玉4点の減点が加算された。 大接戦のレディース。クリーン差で優勝した小玉絵里加 結果、小玉、中川、楠の3人が38点で並ぶことに。勝負はクリーン差で決着がつくことになった。小玉のクリーンが7。中川が6、楠が5と、ここでも僅差だったが、2023年初の勝利は小玉に軍配。実力伯仲のレディースクラスの顔ぶれの中、ただひとり2勝したライダーとなった。 レディース表彰式。左から2位中川瑠菜、優勝小玉絵里加、3位楠玲美、4位山森あゆ菜、5位伊藤沙樹、6位米澤ジェシカ 2023_R1_LADIES_resultsダウンロード 国際B級 新しいシーズンを迎えて、今年は誰が強いのか。今回が2023年の試金石となる。 1ラップ目、ベストスコアは14点。関東選手権のチャンピオン最右翼の小原諄也(TRRS)と、同じく中部選手権のチャンピオン最右翼の村田隼(ヴェルティゴ)。2ラップ目もこの二人は好調だったが、より確実に減点を押えた村田が、全日本デビュー戦にして初優勝となった。…