国際A級スーパークラス9名による全2025日本シリーズ最終戦 2025年11月2日 大阪府大阪市中央公会堂・中之島通り 動員数:7,000人 2025年全日本選手権は、今年もシティ・トライアル・ジャパン大会が最終戦となった。 IASクラスのランキング10位までの選手のみが参加資格がある特別な最終戦だ。ただし、ランキングトップ10に入っている小川友幸は負傷療養中で今回も欠場。去年も野﨑史高が負傷で欠場したが、今年も同じく9人がスタートラインに並ぶ。 昨年同様、今年も有料観客席が設けられ、無料で見られる席と、セクションを見渡しやすい有料席との棲み分けができていた。 試合の流れは去年からまた小改造がされて、最初に4セクションを全員で走り、これを予選として上位6名を選手、その6名が若干の設定変更をした4セクションを走って決勝進出の3名を決める。決勝は4つのセクションを逆からトライする。 予選のトップバッターはランキング9位の武井誠也。武井は第3セクションを3点で抜けて減点18。次の田中善弘は4セクションとも走破できずとなった。 予選第1ライダーの武井誠也大ベテラン田中善弘武田呼人は第1をクリーン、第3を1点で抜け、11点と好調。次を走った久岡孝二は第1と第3をクリーンして武田を1点上回って減点10。このあたりが予選通過のボーダーラインとなりそうだ。 インドアのセクションを得意とする久岡孝二地元大阪の柴田暁は、美しい走りを見せながら連続5点スタート。第3を1点で抜けながら、飛び降りた際に前輪スポークを折損し、この大会独自のメカニカルタイムを使って修復。しかし第4を再び5点として、減点16。予選通過はならなかった。 柴田暁は予選でミスが続き、準決勝進出ならず第7戦で自身2勝目をあげた小川毅士が第1をクリーン、第3を1点で抜けて減点11。野﨑史高が第1と第3をクリーンして減点10。氏川政哉は第1を失敗しながら第2で1点、第3をクリーンして、減点11。最後を走った黒山健一は第1と第3をクリーンして減点10。減点10が3人、減点11が3人というスコアで準決勝進出の6人が決まった。 同点の場合、クリーン数が多いものが上位は通常ルールと変わらないが、スコアが同一だった場合はタイムではなく5点となった到達位置、通過ポイントで勝負がつく。予選トップは黒山で、2位久岡とは通過ポイントも同じでセクションタイムの差となり、3位の野﨑は、この5点の場合の通過ポイントの差で順位が決まっている。同様に11点の3人は3人とも、通過ポイントの差で順位が決まっている。 予選での減点は、準決勝に入ったところでクリアされるので、予選結果は準決勝のトライ順を決めるためのもの、ということになる。 準決勝では、第3セクションのラインが変更になった。最初にトライした武田は、予選でクリーンしていた第1で5点。続けて第2も5点で、第3を1点で出たのみとなって減点16。続く小川は、第1を武田同様に5点として万事休したと思われたが、第2を2点、第3、第4を連続クリーンして減点7をマークした。第4の難ポイントは、小川が初めてクリーンしたセクションとなった。 準決勝へ、武田呼人電動マシンを走らせる野﨑史高小川に続く氏川は、武田、小川同様に第1を失敗。しかし第2、第3、第4と3連続クリーンをして減点5と、ここまでのベストスコアをマークした。 続くは野﨑。第1はクリーンしたものの、そのあとは5点、2点、5点となって減点12。3人を残して暫定3位だ。 予選2位と好調だった久岡は、しかし準決勝ではその本領を発揮できなかった。第3をクリーンして減点15となった。 最後にトライした黒山は、第1、第2、第3とクリーンしていく。氏川、小川がクリーンしている第4をクリーンすれば4セクションをオールクリーンだったが、ここで失敗。減点は氏川と同点の5点。両者は5点の場合の通過ポイントの差で、氏川が上位となった。 決勝に進むのは減点5の氏川と黒山、そして減点7の小川の3人と決まった。 決勝は、4つのセクションを逆から入る。ここまで、誰も走っていないラインを走ることになる。トライ順は、小川、黒山、氏川の順だ。3人が順番に、1セクションずつ進んでいく。 前戦で優勝した小川毅士、決勝進出最初の第5(第1の逆走)は、第1より、若干行きやすかったか。小川、氏川とクリーン。黒山が1点ついた。最終スコアは準決勝と決勝の減点をトータルするので、氏川5点、黒山6点、小川7点と僅差で次の第6(第2の逆走)へ。 第6は難関だった。小川は途中でミスをして時間がなくなってしまったが、結局途中のポイントで3人とも5点。通過ポイントも仲よく1ポイントずつとなっている。 第7は丸太を攻略するお題のセクションだった。小川が丸太の処理に苦しみながら3点で抜けると、黒山は2点。最後にトライした氏川は二人が苦戦したポイントを一気に跳びきってクリーン。これで減点は氏川10点、黒山13点、小川15点。ちょっと点差が開いてきた。…
2025年10月26日 和歌山県有田郡湯浅町・湯浅トライアルパーク 動員数:800人 天候:曇りのち雨 気温:23℃ 10人を除く、ほとんどの全日本選手権参加選手にとって、今大会が最終戦。レディースについては前戦宮城・SUGO大会でタイトルが決しているが、その他のクラスはまだ決戦の真っ最中。国際A級は1ポイント差、国際B級も6ポイント差で今大会に入った。そしてどちらも逆転チャンピオン誕生の結末となった。 雨確実の予報ではあったが、朝は曇り、ときどきぱらぱらと降られつつも、ほとんどのライダーは雨の中を走ることなくゴールした。試合終盤にちょっと雨量が増えて、表彰式前まで降った雨は、表彰式が終わると上がるという一日となった。セクションは大岩の配置や人工物に大きく手を入れられていた。 今回、会場の一角には、先日病魔に勝てずにお亡くなりになった4回の全日本チャンピオン、近藤博志さんを偲ぶコーナーが設けられた。思い出の写真や近藤さんの手作りマシン「エイリアン」が展示されていて、そこに集った近藤ファンが、故人の思い出を語りあっていた。 国際A級スーパー 難度が高いと目されていた今大会の10セクション。第1セクションを唯一クリーンしたの武田呼人(ホンダ)だった。ここはIASとIAしかトライしない激しい岩盤登りセクション。今大会は滑り出しから激しい。 武田呼人、第1セクションをただ一人クリーン。2位の氏川政哉クリーンの多かった第2セクションの後、恒例の奥の沢に入る。湯浅の勝負どころはこの沢と、後半のヒルクライム系となるのが常だ。 第3から第6までの沢セクションは5点が多かった。8人が4セクションを全部5点、7人が3つで5点。ふたつ抜け出たのが柴田暁(TRRS)、そしてただ一人、4セクション中3つを出てきたのが黒山健一(ヤマハ)だった。ここだけで黒山は、ライバルに4点以上のアドバンテージを築いた。 柴田暁らしいスピーディーな走りで各セクションを抜けていったポイントリーダー黒山健一。次週最終戦、City Trial Japanの結果に注目だ。第7セクションはいつも最終セクション(とSS)に使われている岩場で、これも難セクション。第8、第9はヒルクライム系で、第10は掘り起こした大岩と後半の人工物が肝になった。 第9セクションはふかふかの斜面の難関ぶりと時間のなさで、多くのライダーが申告5点の作戦をとり、結局全員が5点。そんな中、第8を唯一1点で抜けて、第10を唯一クリーンした小川毅士(ベータ)が、1ラップ目のトップに出た。2位は氏川政哉(ヤマハ)で、その差は3点。黒山は氏川にさらに2点差で3位につけた。黒山と同点で、黒山陣(シェルコ)が4位につけて試合を折り返す。 小川毅士の勝利。終始安定した走り。2ラップ目、小川の好調は変わらない。2ラップ目では第1セクションを唯一クリーンし、さらに難関第7セクションを唯一クリーン。この好調ぶりを、本人は知らないまま、試合を進めていた。1ラップ目にクリーンした第10セクションを1点で抜けて2ラップを終えると、小川の減点は56点。2位の氏川は54点で、勝利は決まってはいないが、かなりの大差であるのは確かだ。 そしてSS。第1は第10セクションの逆送。第2は第7を全面的に組み換えてのもの。どちらも難度は高いが、どちらかというと第1は抜けられるが失点を誘う、第2は行けるか行けないか、な感じの設定となっていた。 SS第1をクリーンしたのは柴田と武田の二人のみ。小川は人工物の上での方向転換で1点をついてアウト。ここで小川の勝利は決まった。 SS第2は5点が多かった。久岡孝二(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)、黒山陣、柴田と次々に5点。武田が1点で抜けたあと、黒山がまた5点。最後の二人、氏川と小川がようやく美しいクリーンを見せて、大会は終了した。 毅士の勝利は2014年中部大会以来の11年ぶり。ランキングも、野﨑を逆転して3位に浮上している。 国際A級スーパークラス表彰式。左から2位氏川政哉、優勝小川毅士、3位黒山健一、5位柴田暁、6位黒山陣国際A級スーパークラス/暫定リザルト 順位 選手(メーカー)減点 クリーン数 1位 小川 毅士(Beta)57 7 2位 氏川 政哉(Yamaha)65 5 3位 黒山 健一(Yamaha)70 5 4位…
2025年10月5日 宮城県柴田郡村田町スポーツランドSUGO 動員数:1,200人 いつも、10月末に開催されていたこの宮城・SUGO大会、今年は10月初めの開催となって、例年とは別世界のあたたかい気候での全日本選手権となった。セクションは、いつもの配置で10セクション。レディースと国際B級はこのうち8セクションを2ラップした。セクション配置はいつもと同じでも、大岩や大きなブロック資材の配置には変化が見られて、いつものSUGOとは雰囲気がちがうとのライダー評が多かった。 国際A級スーパー ほとんど全セクションがクリーンが可能だが、5点になるのも簡単なので、はたしてどんな試合になるのか、明けてみなければわからない試合が始まった。この大会、ランキング2位につける氏川政哉(ヤマハ)は、なにがなんでも勝ちにこだわらなければいけなかった。ここで勝つことで、氏川には自力チャンピオンの可能性が残る。黒山健一(ヤマハ)が勝てば、氏川の自力タイトル獲得の目はなくなり、黒山がタイトル獲得をぐっと引き寄せることになる。 黒山健一の優勝。ポイントランキングでは2位の氏川に17ポイントの差をつけているそのとおり、序盤の戦いは氏川と黒山のクリーン合戦だった。第5セクションで黒山が1点、氏川はクリーンで、ここで初めて氏川が単独トップに出るも、湿った深い森の勝負どころ、第6セクションでは黒山が唯一3点で抜けて氏川は5点。ここで黒山が1点リードと戦況が入れ替わった。 氏川政哉は2位に小川毅士(ベータ)らがクリーンした第9セクションで氏川、黒山ともに5点となる波乱があったが、このラップ、氏川には2点のタイムオーバー減点もあって、黒山の9点に対して氏川は12点。3点差で試合が折り返された。 2ラップ目から減点を増やした小川毅士は3位実は1ラップ目の2位は、黒山に3点差の氏川ではなく、5点ふたつのみで抑えて黒山に1点差とした小川だったのだが、しかし小川は2ラップ目に5点をふたつ、さらに1点と2点の減点を加えて、優勝争いから後退していくことになる。 2ラップ目、3点差を追い上げたい氏川だったが、鬼門の第6セクションで再び5点。黒山はここを2点で抜け、ついにこのラップ、黒山はただ一人5点なしで10セクションを走りきることになった。 結果、10セクション2ラップを終了の時点で黒山のリードは11点となり、この時点で黒山の勝利が決まった。小川が2ラップ目に大きく減点したため、氏川と小川の点差も10点となって、氏川の2位も決定。しかしその先はSSに勝負がもつれこんだ。 3位以内を目標としていた黒山陣だったが、4位に3位小川41点と4位野﨑史高(ヤマハ)は3点差、さらに世界選手権とトライアル・デ・ナシオンから帰国した黒山陣(シェルコ)が野﨑に1点差で5位につけている。黒山陣は北海道に一時帰国した際は世界選手権で戦っている125ccで参戦したが、今回は300ccでの参戦となって、戦闘力も増していた。小川、野﨑、黒山の3人が3位争い、ということになる。 前戦広島三次灰塚で優勝した野﨑は、5位6位久岡孝二(ホンダ)と7位柴田暁(TRRS)は同点クリーン数差と、ここもSSでの逆転の可能性あり。8位武田呼人(ホンダ)、9位磯谷玲(ベータ)、10位に今シーズン2度目のSS進出となるルーキーの宮澤陽斗(ベータ)が入っている。 6位に久岡孝二SSは建築資材を並べたひとつのセクションを往路復路でSS1、SS2とするものだった。ホイールベースに満たない直立したヒューム管が難関で、誰もここを攻略できずにSSは進んでいく。SS1は黒山健一が唯一3点で抜けて勝者の貫録を見せて、そして復路。今度は甥の黒山陣が最初にこのSSを3点で抜けて見せた。直後、野﨑が着地でテープ外に降りてしまう失敗で5点となって、これで逆転、野﨑の5位が決定し、黒山が3点をとったことで小川の3位も決まった。 黒山はこれが初めての4位獲得。IASにデビューして2年、8戦目にしての4位入賞だった。小川は今シーズン初めての3位表彰台獲得となった。 IAS表彰式。左から2位氏川政哉、優勝黒山健一、3位小川毅士、4位黒山陣、5位野﨑史高、6位久岡孝二第6戦SUGO大会 IASクラスリザルトダウンロード国際A級 ランキングトップ高橋寛冴(シェルコ)と平田貴裕(スコルパ)のチャンピオン争いが接戦になっている。今回は平田に軍配が上がった。1ラップ目のトップは高橋だったが、3点差で2位につけた平田は、2ラップ目に絶好調。最後にちょっと崩れて連続5点となってしまったが、高橋に5点差で今シーズン2勝目を挙げた。 優勝した平田貴裕。ポイントリーダー高橋に迫る高橋は1ラップ目トップから、2ラップ目に3つの5点で減点を増やしてしまった。タイトル争いは、これで高橋のリードがわずか1ポイント差となった。最終戦ではどちらか上位に入った方がチャンピオンを獲得する構図となりそうだ。 3位は黒山陣(シェルコ)13歳。国際A級3年目にして、大接戦の表彰台争いを制して初めての3位表彰台獲得となった。同世代の国際A級ルーキーの永久保圭(ベータ)は今回9位で、ランキングで黒山が3ポイント差で上位に出た。二人の切磋琢磨も興味深い。 IA表彰式。左から2位高橋寛冴、優勝平田貴裕、3位黒山太陽、4位中里侑、5位小椋陽、6位村田慎示第6戦SUGO大会 IAクラスリザルトダウンロードレディース 5人がスタートラインに並んだレディースクラス。ランキングトップの中川瑠菜(ベータ)は、今回完走すればチャンピオンが決まる計算だが、中川はタイトル争いより、ここまで築いてきた全勝を守ることに精力を傾けた。 1ラップ目にミスはあったが、中川瑠菜の6連覇しかし1ラップ目、最終セクションでミスをした中川は、このラップなんと3位に。トップとの点差はわずか1点ながら、神経戦ぶりにプレッシャーも大きい。1点差でトップスコアをマークしたのは、小玉絵里加(TRRS)だった。 2ラップ目、小玉がわずかに減点を増やし、中川が最少減点を守りきって、試合は3点差で中川のものとなった。 1ラップ目の2位は兼田歩佳だったが、2ラップ目に減点を減らせずに後退。3位表彰台には小学生の寺澤心結(ベータ)が乗ることになった。寺澤の3位は今シーズン2度目になる。2ラップ目はトップスコアをマークしているから、まだまだ今後に期待できる。 レディース表彰式。左から2位小玉絵里加、優勝中川瑠菜、3位寺澤心結、4位兼田歩佳、5位齋藤由美、6位中澤瑛真第6戦SUGO大会 レディースクラスリザルトダウンロード国際B級 ランキングトップの寺澤迪志(ベータ)が練習中に負傷して今回は欠場。ランキング争いのライバル、木村倭(シェルコ)は世界選手権参戦で今シーズン2戦の欠場があって、タイトル争い的には厳しかったが、この状況で戦況が変わってきた。 木村倭の優勝。2位の岡直樹と同点クリーン差だったセクションはやさしめ。今回も木村はオールクリーン勝負を想定して早回り。1ラップを終える頃には50人ほどを抜いてIBクラスのトップグループになっていた。それでいて1ラップ目は8セクションすべてをクリーンしてきていた。…
2025年9月7日 広島県三次市灰塚ダムトライアルパーク 動員数:808人 昨年は台風直撃で中止を余儀なくされたこの広島・三次灰塚大会、今年は台風の来週を想定して、万が一台風で開催ができなくなった際は、翌週に開催とあらかじめ予定を組んでの開催となった。備えあれば憂いなし、今回は台風による開催の可否の心配はなかった、といいたいところだったが、太平洋沿岸に被害を与えた台風15号ペイパーの日本接近が5日金曜日。この時期は、台風とはなにかと縁があるようだ。 国際A級スーパー トップクラスについては限りなくオールクリーンに近い少数減点で試合をまとめるのではないかと目されていた今回のセクション群。しかしそれをそのまま実行できるライダーは、ほんの一握りだった。 そして、見事最後まで崩れないままに試合を運んだのが、野﨑史高(ヤマハ)だった。野﨑の勝利は2023年もてぎ大会以来で、2年ぶりということになる。ただし野﨑は、2024年シーズンは第4戦で負傷して以後の大会を治療に専念するために欠場している。 1ラップから好調な走りを見せた野﨑史高じっくりとけがをなおして万全の体制で参加したい思いと、早く実戦に復帰して感覚を取り戻したい思い。全日本に復帰した今シーズンも、開幕戦、第2戦と表彰台には乗れずに苦しい戦いを強いられていた。第3戦で3位表彰台を獲得、早くも表彰台までは復活してきたが、今回はばっちり勝利して、完全なる復活をアピールした。 それもただの勝ちではない。ライバルが少なからずの5点を取る中、1ラップ目の野﨑にはひとつの5点もなかった。2ラップ目もそのまま絶好調で試合を進めていたが、第9セクションでわずかにミス。それが5点につながってひやりとさせたが、残る2セクションでは再び気合いの入った走りを取り戻して、SSに入る前には勝利を決めているというぶっちぎりの勝利だった。 ちなみに野﨑は、中国地方での勝利は3回目。灰塚ダムでは2022年の勝利に続いて2度目めの勝利になる。 氏川政哉は黒山をおさえて2位タイトル争いをリードしていた黒山健一(ヤマハ)は、序盤は絶好調をキープしていたが、第8セクションで5点を取るとラップ後半に失点がかさみ、さらにSSで逆転されて、3位表彰台に落ち着いた。2位表彰台を奪っていったのは、タイトル争いのライバルの氏川政哉(ヤマハ)。残り3戦、タイトル争いも、緊張感を高めつつある。 野﨑の勝利、氏川の追い上げで、ヤマハ陣営は2度目のワンツースリーフィニッシュを達成。前回は2024年もてぎ大会で、氏川、黒山、野﨑の並びだった。今回は順序を入れ替えてのワンツースリーとなった。 3位になった黒山健一、ポイントリーダーに変わりはない2ラップ目に追い上げた小川毅士(ベータ)は、SSでの失敗もあって4位。5位には、ホンダのファクトリーマシンに乗る武田呼人(ホンダ)が入った。ホンダでの最上位だ。柴田暁(TRRS)は1ラップ目の2位から6位に。SSでの転倒は腕に深い傷を負ってしまうという手痛い幕切れとなった。 4位の小川毅士。2週間後にはイタリアで開催されるデ・ナシオンに参戦する武田呼人は、4位の小川毅士と同点クリーン差で5位6位柴田暁7位に久岡孝二(ホンダ)、8位田中善弘(ホンダ)、9位武井誠也(ベータ)。SS進出の最後の1席は、何年ぶりだかわからないという岡本将敏(シェルコ)がつかんだ。 去年限りでフル参戦から退いた濵邊伶(スコルパ)が参戦、13位に入っている。 IAS表彰式。左より2位氏川政哉、優勝野崎史高、3位黒山健一、4位小川毅士、5位武田呼人、6位柴田暁(代理)2025_r5_IASダウンロード国際A級 中国地方の全日本といえば、この男の存在があなどれない。山本直樹(シェルコ)、国際B級クラスを全勝優勝して昇格、その後は地元大会に参戦するスタイルで活動を続けてきたが、今回は2ラップ目をオールクリーンして問答無用の勝者となった。 優勝した山本直樹。鳥取からの参戦チャンピオン争いの2人、高橋寛冴(シェルコ)と平田貴裕(スコルパ)も踏ん張るが、今回は高橋が2位、平田が3位となった。前回5ポイント縮まったポイント差は、今回4ポイント広がって、現在は高橋が平田を4ポイントリードして残り2戦の戦いにつなげる。 4位は本多元治(ホンダ)、5位に砂田真彦(ホンダ)、6位に小野貴史とホンダに乗るベテランライダーが並び、7位に中里侑(TRRS)、8位と9位に岡山の小椋陽(シェルコ)、尾藤正則(シェルコ)が並んだ。ルーキーの永久保圭(ベータ)は今回は10位となった。 IA表彰式。左から2位高橋寛冴、優勝山本直樹、3位平田貴裕、4位本多元治、5位砂田真彦、6位小野貴史2025_r5_IAダウンロードレディース 今シーズン、3度目の参加者5人の大会となった。愛知県から3人、奈良県からふたりと、地元と人口が多いと思われる関東からの参戦は皆無だった。 ここまで全勝の中川瑠菜結果的には、中川瑠菜(ベータ)が今シーズン土つかずの5勝目をマークした。しかし1ラップ目はわずか1点差ながら兼田歩佳(TRRS)にトップをとられるという苦境の戦いとなった。2ラップ目の中川は、セクション外にフロントタイヤを出してしまうミスを犯しながらも最小限点をマークして5点差にて逃げ切ったが、兼田の成長ぶりに中川も油断がならない戦況となってきた。 もうひとり、まだ背が小さくて足をついてマシンを引き上げるなどの場面では大ハンディを負いつつ、着実にテクニックを増しつつある寺澤心結(ベータ)の存在も輝きを増してきた。今回は2ラップ目に小玉絵里加(TRRS)がミスを連発したこともあって2度目の3位表彰台を獲得した。 レディース表彰式。左から2位兼田歩佳、優勝中川瑠菜、3位寺澤心結、4位小玉絵里加、5位寺田智恵子2025_r5_LTRダウンロード国際B級 寺澤迪志(ベータ・レディース心結選手のお兄さん)が第3戦に続くシーズン2勝目を挙げた。前戦ではオールクリーン勝負に1点をついて敗した寺澤だったが、今回はそのリベンジで、20セクションをすべてクリーン。オールクリーンでの勝利となった。ランキングのリードも31ポイントに広がって、タイトルに向けても地盤が固まってきている。 寺澤迪志がオールクリーン優勝2位は岡直樹(ベータ)。寺澤と同世代で開幕戦で勝利したが、その後負傷があって1戦を欠場、しかしその後4位、2位と手堅い戦いっぷりで戦列に復帰している。 3位表彰台は林大作(TRRS)。九州に続いて今シーズン2度目の3位表彰台獲得だ。 IB表彰式。左から2位岡直樹、優勝寺澤迪志、3位林大作、4位大櫃千明、5位甲斐秀人、6位上福浦明男2025_r5_IBダウンロード
2025年7月13日 北海道上川郡和寒町わっさむサーキット 動員数:550人 北の大地、旭川近郊の和寒町わっさむサーキットでのシーズン中盤の1戦。例年だと海の日の3連休にこの大会が組まれていたが、夏の猛暑を避けるために、まだ少しでも涼しいこの時期に前倒しされて開催となった。気温はそれほど上がらなかったが日差しは強かった。充分に暑い中での戦いとなったが、酷暑との戦いというほどではなかったように思われる。 国際A級スーパー 全体にセクションに高さがある。リスクが高いと下見をしたライダーは異口同音に語っていた中、黒山健一(ヤマハ)はこの大会が神経戦になるのではと予測していた。 全員が5点になるのではないかと思われたのは、入口に高いブロックが積み上げられた第2セクションと、正確にヒューム管の頂点に上る必要がある第5セクション。いずれも、中空の面に飛びつかなければいけない難所だ。 1ラップ目、第2セクションをクリーンした柴田暁第1セクションはクリーンが出る設定だったが、小川毅士(ベータ)、久岡孝二(ホンダ)が5点、黒山、野﨑史高(ヤマハ)が1点を失った。そして第2セクション。先にトライするライダーがことごとくブロックに跳ね返されて失敗する中、柴田暁(TRRS)がするするっとブロックのてっぺんまで登りきり、このセクションを最初にクリーン。このお手本を参考に、後続が挑戦するも、失敗が相次いだ。結局このセクションをアウトできたのは、最初にクリーンをした柴田だけだった。 そんな中、小川友幸(ホンダ)が第2のブロックに登るのを失敗して飛び降りる際に腕を強打、次のセクションにトライできないまでの危機的状況に陥った。小川は一度本部に戻って、傷めた患部をしっかりテーピングして再起を図るが、状況は厳しい。ブロックを失敗して飛び降りる際には野﨑も腰を痛めて苦痛に表情をゆがめたが、野﨑はすぐに戦列に復帰できた。 痛みをこらえながら、2ラップを走りきった小川友幸 続く難関の第5セクションでは、小川毅士、氏川政哉(ヤマハ)が丸いヒューム管に乗りかかるところまで攻略しながら走破はならず。1ラップ目は全員が5点ということになった。 2位になった氏川政哉 この後、第7セクションで久岡がトライ中に出口の岩がぐらぐらしていることが発覚。このセクションはそれまでにトライしたライダーを含めてキャンセルとなり、タイヤを踏みながら岩に飛びつく第9セクションが微妙な勝負の分かれ目となって、1ラップを終える。 今大会には、世界選手権T3(125cc)クラスに参戦している黒山陣(シェルコ)が今シーズン初めて参戦した。16歳未満の黒山は世界選手権では125ccまでのマシンにしか乗れない。全日本では300ccに乗っていた黒山だが、今大会では世界選手権で使っている仕様の125ccマシンをそのまま持ち込んでの参戦。125ccでIAS参戦は、黒山が初めてとなる。 世界選手権T3クラスに参戦中の黒山陣。初めて国際A級スーパークラスを125ccで走った 黒山は、絶対的にパワーが不足する高い壁に手を焼きながらも、上位入賞も狙える位置で戦いを続けた。2ラップ目、難関の第5セクションを3点で抜けるなど、ヨーロッパ仕込みのテクニックをしっかり披露して見せた。 2ラップ目、好調の黒山健一に対し、チームメイトの氏川が追い上げを見せた。第5セクションの難関は2点で通過していて、このセクションは黒山陣と氏川、若手ライダー二人のみがセクションを抜け出たことになる。 小川友幸は、応急処置を施して戦列に復帰したが、右手が使えない局面が多く見られて、苦しい戦いが続いた。それでも2ラップ目に4つのクリーンを絞り取るなど、最後の最後まで勝負をあきらめない姿勢を見せてくれた。2ラップを終えて、小川の減点は63点で、10位の野本とは2点差。小川が走らないSSが、この日の勝負を決することになった。 SSを前に、優勝争いは黒山健一26点、氏川28点と2点差、3位争いは柴田と小川毅士、野﨑が38点で同点、6位争いは武田呼人(ホンダ)と久岡が48点で同点、さらに51点で黒山陣が迫るという接戦。9位武井誠也(ベータ)と10位野本佳章も59点と61点で、逆転の可能性のある戦況となっていた。 強さを見せつけた黒山健一が2連勝表彰台争いをした野﨑史高だったが、5位小川毅士は4位。3位の柴田暁と同点、クリーン数で負けている SSは第1を手直ししたSS第1と、第10を手直ししたSS第2の二つ。第1は最後の大岩の攻略がむずかしかった。第2は最後のブロックの助走が厳しく制限されて、これが鬼門となった。 6位、久岡孝二 しかしこの難セクションを、上位の4人はいずれもクリーン。逆転は武田と久岡の6位争いだけで、他は大きなプレッシャーのかかる中、いずれのライダーも順位を守りきって試合は終了した。 前回、初めてSSを走った宮澤陽斗(ベータ)が第9セクションで前転して負傷、この大会はリタイヤとなった。 国際A級スーパークラス表彰式。左より、2位氏川政哉、優勝黒山健一、3位柴田暁、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位久岡孝二2025r4_IASダウンロード国際A級 2連勝した高橋寛冴(シェルコ)を筆頭に、永久保圭(ベータ)、黒山太陽(シェルコ)など若手ライダーの台頭でにぎわうこのクラスだが、今回はベテラン平田貴裕(スコルパ)が逆転勝利をもぎ取った。 ベテランの平田貴裕が若手をおさえて勝利 1ラップ目のトップは中里侑(TRRS)、中里の減点は8点で、平田は3点差で3につけた。 2ラップ目、中里が減点を増やして後退していく中、平田は5点なしの素晴らしいスコアで10セクションを回りきった。トータル15点は、2位に6点差の堂々たる勝利だった。 …
2025年6月8日 栃木県芳賀郡茂木町モビリティリゾートもてぎ 動員数:2,100人 愛知・岡崎大会、大分・玖珠大会と転戦した全日本トライアル選手権は、「モビリティリゾートもてぎ」を舞台とする第3戦を迎えた。2週間前にトライアルGPが開催されたばかりの会場だが、大雨と泥でたいへんだったトライアルGPに対して、今回はずいぶんコンディションがいい。 国際A級スーパー 世界選手権の素材をそのまま使ったセクション群は、高さのあるダイナミックな設定だった。舗装路を移動することですべての観戦が完了する、観戦者にはたいへん手厚いおもてなしがもてぎのトライアル大会の特徴。斜面に配置された大岩やブロック資材などがライダーを待ち受けた。 序盤、好調を競ったのは開幕戦、第2戦を連続2位としている黒山健一(ヤマハ)と絶対王者の小川友幸(ホンダ)。小川は古傷に加え、練習中の負傷もあって満身創痍。しかし減点を押えて試合をまとめる技はいまだ日本一。その底力には敬服するしかない。 小川友幸、もてぎ大会で2位小川は第5、第6と連続して5点となって黒山、野﨑史高(ヤマハ)に逆転を許すも、1ラップ目終盤には再び野﨑を逆転。黒山にわずか1点差で1ラップ目を終了した。手術明けでまだ本調子ではない野﨑は小川に遅れること3点で3位。 第2戦で勝利してランキングトップに出た氏川政哉(ヤマハ)は、中盤の3連続5点で1ラップ目5位。4位の柴田暁(TRRS)を5点差で追う苦しい展開となっている。 昨年のもてぎ大会で優勝している氏川、今大会は4位2ラップ目、1ラップ目の感触でライディングを修正してきたライダーが減点を減らしてくる。1ラップ目が不本意に過ぎた氏川は2ラップ目に減点を半分にまで減らして、柴田を逆転。3位野﨑と同点にまで追いついた。野﨑、小川は1ラップ目のペースをほぼ維持することになった。二人とも、2ラップ目終盤までは1ラップ目をしのぐ走りを見せていたのだが終盤に連続して5点を喫して、1ラップ目の走りを超えることができなかった。 そんな中、氏川同様に減点を半分近くまで減らしてきたのが黒山だった。黒山は、第3セクションでの5点以外、2ラップ目には5点なし、1ラップ目の自身のベストスコアを8点も減らして好調のままゴールした。 SSを前に優勝を確定していた黒山健一とTY-E3.010セクション2ラップのゴール時点で、黒山のリードは11点。黒山の勝利は確定的だ。2位小川は減点39点で、3位野﨑とは6点差、野﨑と4位氏川は同点で、この3人はSSでの逆転があり得る。 電動による3位表彰台。野﨑史高5位柴田は6位小川毅士(ベータ)と1点差。さらに小川に5点差で、前回初めて表彰台に乗った久岡孝二(ホンダ)、久岡に2点差の武田呼人(ホンダ)も、SS次第で5位までポジションを上げる可能性は残していた。 残るSS進出ライダーは、ベテラン田中善弘(ホンダ)と、IASにコマを進めてまだ3戦目の宮澤陽斗(ベータ)。宮澤の第1セクションのクリーンは素晴らしかった。 SSは、トップグループにとってはクリーンの出る設定で、確実に最少減点でそうはしながらライバルの失敗を待つ展開となった。真っ先にクリーンを出して逆転を狙った武田がSS第2で5点、久岡は両SSをクリーンして、徐々にポジションが確定していく。 1点差で5位を争う柴田と小川毅士は、その順位争いのプレッシャーが減点に直結したトライを見せた。先を走る小川が1点をつけば、直後の柴田も1点を失い、さらにSS第2でも同じように1点ずつを失って、結果両者の減点差は変わらず。柴田は開幕2戦の不調を、少し取り戻しての5位獲得となった。 5位の柴田暁6位になった小川毅士は、柴田と1点差そして同点の野﨑と氏川は、両者一歩も譲らずクリーン合戦。となると、クリーン数の多い野﨑が3位入賞となって決着。小川友幸も、ここは確実に両SSをクリーンして、上出来の結果という2位入賞の戦いを締めくくった。 5点を取ろうとも勝利が決まっている黒山だったが、SS第1で1点をついたのがちょっと悔しい。最後のSS第2は、眼下で見守っているお客さんに笑顔と華麗なクリーンを披露して勝利のゴールに飛び込んだ。 黒山の勝利は2022年シティトライアルジャパン大会以来。そして2023年以来のTY-Eでの参戦で、黒山の初勝利となった。 ランキングは黒山が10ポイントリード。小川友幸と氏川は1ポイント差でランキング2位を争っている。 国際A級スーパークラス表彰式。左より、2位小川友幸、優勝黒山健一、3位野﨑史高国際A級スーパー_SS_結果表ダウンロード国際A級 第1セクションからいきなり渋滞と、セクションの厳しさにも増してむずかしい戦いを強いられたこのクラスだが、開幕戦で勝利、そして九州と今回のインターバルでSSDTに出場してきた高橋寛冴(シェルコ)が見事2勝目を飾った。高橋は4点のタイムオーバー減点をとりながも、2位平田貴裕(スコルパ)に1点差で逃げ切った。 国際A級、今季2勝目をあげた高橋寛冴前回勝利の小野貴史(ホンダ)は今回4位で、高橋を6ポイント差で追うランキング2位につけている。 中学生ライダーの対決、前回初表彰台を獲得した永久保圭(ベータ)は今回は8位、黒山太陽(シェルコ)は10位だった。 国際A級表彰式。左から2位平田貴裕、優勝高橋寛冴、3位本多元治、4位小野貴史、5位砂田真彦、6位村田慎示国際A級_2Laps_結果表ダウンロード レディース 9名が参加。いつものレディースクラスのモノサシからすると高い高い岩がレディースラインに現れるなどして、なかなか厳しい戦いとなった。 1ラップ目、唯一20点を切ってまとめてきたのが2連勝している中川瑠菜(ベータ)。中川の減点が12点で、2位小玉絵里加(TRRS)が20点。そして3位には、小学生の寺澤心結(ベータ)が小玉に4点差で迫っていた。 レディースクラス3連勝、中川瑠菜2ラップ目、中川は1ラップ目と同じ12点。しかしこれにわずか1点差の13点で2ラップ目をまとめてきたのが小玉。1ラップ目の点差があるので優勝争いとはならなかったが、1ラップでクリーン3を記録したのは小玉だけだった。 2位の小玉絵里加寺澤はわずか1点差ながら3位を守って初めての表彰台獲得。4位は齋藤由美(ベータ)、2ラップ目に19点の好スコアをマークした兼田歩佳(TRRS)が齋藤と同点ながらの5位となった。 小学生の寺澤心結が3位にLadies_2Laps_結果表ダウンロード国際B級 開幕戦5位、第2戦で2位となっている寺澤迪志(ベータ)が、他をまったく寄せ付けずの快勝。寺澤は1ラップ目がたったの1点、2ラップ目が2点で、トータル3点。2位の大内朋幸(ヴェルティゴ)が減点10点、3位の西村健志(TRRS)が減点20点だから、寺澤の快調ぶりがわかる。 国際B級は、寺澤迪志が圧勝する寺澤はこれでランキングトップにも進出。開幕3戦にして、3人の勝者が出たこのクラス、シーズンの行方が楽しみだ。 国際B級表彰式。左から、2位大内朋幸、優勝寺澤迪志、3位西村健志国際B級_2Laps_結果表ダウンロード
2025年4月27日 大分県玖珠町玖珠トライアルヒルズ 動員数:800人 愛知県岡崎市で開幕を迎えた後、全日本選手権第2戦はその2週間後に九州での開催。昨年同様、大分県玖珠町での開催だ。開幕戦は狙い定めたような悪天候だったが、今回は土曜・日曜といいお天気で、翌日月曜日が雨になったという。 国際A級スーパー 下見をしての予想は神経戦。セクションのポイント、ひとつひとつはそれほど難度は高くないが、2025年ルール特有、ループができる、あるいはループをしなければ走れないセクション設営がしてあって、セクション走破は時間がかかるようなむずかしさがあった。他クラスのゲートマーカーに進入してはいけないというルールも、走行ラインをより限定して、最短距離を走らせてもらえない。 勝負どころは第4、第5、第8ということで、その他セクションはクリーンが必須か、少なくとも5点になってはいけないという緊迫感のもと、IASの10セクション2ラップは進んでいく。 しかしそれでも、ミスは出るものだ。1ラップ目、一つの5点もなく10セクションを走り終えたのは、黒山健一(ヤマハ)ただ一人だった。黒山の減点は第3セクションでのイージーな1点と、鬼門の第8セクションでの3点、合計4点だった。 電動TY-E 3.0でトップ争いをした黒山健一黒山とトップを争うべき面々は、いくつかの5点を献上している。小川毅士(ベータ)の5点は一つだけだったが、氏川政哉(ヤマハ)、小川友幸(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)はふたつずつ、武田呼人(ホンダ)と久岡孝二(ホンダ)は3つ、柴田暁(TRRS)に5つもの5点があった。 黒山がぶっちぎりの好成績らしい、との情報が流れてきた2ラップ目後半、黒山が第7と第9で、立て続けにゲート接触の5点をとられた。1個ならともかく2個となると、1ラップ目に7点のリードをとっている黒山にしても、戦い方が厳しくなってくる。 さらに、1ラップ目に3個の5点で6位につけていた久岡が、2ラップ目に驚異的な走りを見せた。10セクションのうち、減点したのはたったの2ヶ所だけ、久岡の2ラップ目の減点3は、この日のIASベストスコアとなった。 ベストスコアをだした久岡孝二は3位しかしさらにクリーンをたたき出しまくって追い上げを見せたのが氏川だった。氏川は2ラップ目、鬼門第8セクションで5点になった以外、9つのセクションでクリーンした。 2ラップを終えて集計を見ると、近来まれに見る接戦となっていた。優勝争いは氏川が逆転トップに出ていて、これを黒山が1点差で追う。 さらに3位争いがまた熾烈だった。3位には驚異の追い上げを見せた久岡が入っていて、久岡と同点で小川毅士、さらに1点差で野﨑、野﨑に1点差で小川友幸と続いた。久岡から小川友幸までの4人が2点差の中にひしめき合う。 4位の小川毅士SSは、どちらも建築資材を斜面に配置した人工セクション。SS第1は4つ並んだポイントを攻めて、同じところを戻ってきて隣のポイントに挑戦するという、新ルールならではの設定になっていた。トップバッターの武井誠也(ベータ)が5点、しかし次の柴田がクリーンをし、どうやらこのSSはクリーンが必須ということになった。自力で上位を逆転するのは難しいが、ミスをおかして順位を下げるのは簡単にできる。田中善弘が2点、武田呼人が1点。彼らの順位に変動はないが、僅差のトップ争い、3位争いの誰かが1点2点の減点をすれば、順位は変動する可能性がある。 ヤマハの電動TY-E 2.0の野﨑史高失敗をしたのは、チャンピオンの小川友幸だった。この日の小川は負傷して動きの悪いひざをだましながら、さっぱり練習できていない状態での大会参加だったから、苦戦するのはやむを得ない。ただその状態で前回の開幕戦では優勝していたのも事実。チャンピオンの底力、というやつだ。 不調だった小川友幸は6位小川の失敗で小川の6位は確定的となったが、その後の面々も、SS第1はきれいにクリーンを決めていく。SS第1での順位変動はなかった。 SS第2は、アウトのブロックからブロックへの飛び移りが鬼門だった。しかしトップバッターの武井がクリーン、2番手の柴田は前転をしたものの、すでにセクションを出ているということでクリーン。田中が2点を失ったが、柴田に順位を奪われることなく8位決定。 7位武田呼人以降は、様々なプレッシャーと戦いながら、それぞれ美しいクリーンを見せて試合は終わった。優勝は氏川政哉、氏川の今シーズン初勝利、TY-E3.0にとっても初勝利だ。 TY-E 3.0での優勝は初。氏川政哉またしても勝てなかった黒山は、しかしランキングでは氏川にわずか1点差の2位。小川友幸は今回の6位で黒山に5点差のランキング3位に後退している。 今シーズンのランキング争いも、厳しいものになりそうだ。 ルーキーの宮澤陽斗(ベータ)は13位で初ポイント獲得。今年はランキング10位までが翌年のIASに残留できるという厳しいルールが発表されているが、去年のルーキーの浦山瑞希(ホンダ)は現在ボーダーラインのランキング11位につけている。 IAS表彰式。左より2位黒山健一、優勝氏川政哉、3位久岡孝二、4位小川毅士、5位野﨑史高、6位小川友幸2025r2_IASダウンロード国際A級 このクラスも神経戦とは目されていたが、どれもクリーンして当然というセクションでもない。そんな中、1ラップ目のトップ3は3人が1点の中で争った。トップはルーキーの永久保圭(ベータ)、13歳! 減点は12点だった。これにベテラン平田貴裕(スコルパ)と小野貴史(ホンダ)が12点で続く。なかなかの接戦だ。 2ラップ目、永久保は1ラップ目にクリーンしていた第7セクションで5点。対して小野と平田は2ラップ目を一ケタ減点にまとめて、ベテラン勢による優勝争いとなっていった。 勝利は小野貴史。約2年ぶりの勝利だった。前回勝利の高橋寛冴(シェルコ)は6位。ランキングトップは小野が6ポイント差でトップに立っている。 小野貴史の勝利1ラップ目にトップだった永久保は、2ラップ目に原点を減らしきれず、それでも3位と、初めてのIA表彰台を獲得した。 国際A級表彰式。左より2位平田貴裕、優勝小野貴史、3位永久保圭、4位中里侑、5位黒山太陽、6位高橋寛冴2025r2_IAダウンロード レディース 5名が参戦。前回リタイヤして心配された米澤ジェシカ(TRRS)も、ちょっとひざを気にしつつ、元気な笑顔を見せてくれた。 中川瑠菜(ベータ)の強さは安定的かと思われていたが、今回光ったのは兼田歩佳(TRRS)だった。1ラップ目こそミスがあって4位に甘んじていたが、2ラップ目はただ一人一ケタ減点をマークして、このラップは中川に3点差のトップ。トータルでは中川に3点差で2位に甘んじることになったが、今後が楽しみになってきた。 中川瑠菜、今シーズン2連勝レディース表彰式。左より2位兼田歩佳、優勝中川瑠菜、3位小玉絵里加、4位米澤ジェシカ、5位齋藤由美2025r2_LTRダウンロード国際B級 前回、2位で悔しかった木村倭(シェルコ)だが、今回は会心の勝利。1ラップ目から2位の1/4の2点で他を圧倒し、2ラップ目もベストスコアタイの6点でトップを守った。…
2025年4月13日 愛知県キョウセイドライバーランド 動員数:1,500人 2025年全日本選手権開幕戦は、今年も愛知県岡崎市キョウセイドライバーランドでの開催。土曜日午前中はいいお天気だったが、狙いすましたように日曜日は朝から雨が降り、表彰式の頃に止んでくるという意地悪なお天気となった。 国際A級スーパー ルーキーは2024年国際A級でランキング2位となった宮澤陽斗(ベータ)のみ。今回の参加は16名だった。ゼッケン5をつける権利もある藤波貴久はヨーロッパでの監督業に戻り、10番黒山陣は世界戦T3に出場中、14野本佳章と19藤原慎也はそれぞれオートレースやラリーに向けて欠場となっている。 雨は確実に降るということで雨設定とはなっていたが、それでもいつもよりセクションは辛口。参加人数が多いことでの時間配分と、抜けられるセクションと確実にクリーンできるセクションをしっかり走ることが必要だと、下見を終えたライダーは口々に語っていた。 第1セクションから3点か5点の攻防となった。そんな中、唯一2点でここを抜けたのが小川友幸(ホンダ)。14回の全日本チャンピオンの幸先はいい。しかし小川は負傷を抱えていて、それがまだ完治していない。どこまで走れるか、そんな状況で戦っていた。 悪条件のなか、1点差で優勝を決めた小川友幸小川と氏川政哉(ヤマハ)以外全員5点の第2セクションの後、第3では、久岡孝二(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)、黒山健一(ヤマハ)がクリーンをたたき出した。雨で泥々ながら、クリーンが出せるとなると、戦い方もまた複雑になる。 今回、最もクリーンが出やすかったのは第9セクションだった。けわしい崖に点在する大岩を攻略していくもので、けっして簡単ではないのだが、雨の影響をそれほど受けないのが幸いしたようだ。 黒山健一自身の電動初勝利にあとわずか。2位しかしそれでもミスは出るもので、氏川はここで1点を失う。1点はそれほど悪い結果ではないが、氏川はここまで一つもクリーンがない。その後の終盤セクションでも3連続5点を取って、さらに2点のタイムオーバー減点もあって、氏川の1ラップ目は5位。今年から黒山と同じくヤマハファクトリーレーシングチーム入り、最新型のTY-E3.0を託された氏川だが、ちょっとむずかしい戦いになっている。 2ラップ目にはトップスコアを出している。氏川政哉は3位昨シーズン、相次いでひざに大けがを負った二人、野﨑と武田呼人(ホンダ)は、対照的だった。野﨑はシーズンの半分を欠場することになるなど負傷もより深刻だったが、1ラップ目は3位だった。対して武田は、チーム三谷ホンダのメンバーとなり、小川と同じツインプラグのファクトリーマシンを手にしたものの、思うような走りができずに1ラップ目を9位としてしまった。 結局トップは小川友幸だったが、2位黒山にはわずか1点差。小川に10点差で3位野﨑、野﨑と同点で小川毅士(ベータ)、さらに1点差で氏川、さらにさらに氏川に1点差で柴田暁(TRRS)、その氏川に2点差で武田と田中善弘(ホンダ)が同点で並ぶという悪天候の中、1点を争う戦いが続いていく。 野﨑史高は4位。2、3、4位とヤマハ電動が並ぶ2ラップ目、わだちが深くなったり泥がこなれたり、あるいは現れたりと、コンディションにも変化が出る。調子を上げてきたのが氏川。クリーンは第1と第9、第11の3つだけだったが、確実に原点を減らして、2ラップ目だけならトップスコアをマークした。 小川友幸は、第10セクションでクラッシュ、フロントフォークのスタビライザーがちぎれて、前輪がふらふらするトラブルを抱えてしまった。それでも第11をクリーンして、やるべきことをやって結果の集計を待った。 実はこの頃、悪天候を考慮して、SSの中止が発表されていた。接戦だから逆転劇は期待できたものの、SSの性格上、ライダーのリスクも高いし、お客さんも最後の戦いを見たい半面、冷えきったからだを早く温めたい相反する思いがあったにちがいない。SSの中止は、会場のみんなにとって、まず安堵の結果となったはずだ。 黒山は最終12セクションをただ一人クリーン。もしかしたら、という思いで、やはり結果の集計を待った。2ラップ目のトップは氏川の25点だったが、続くは3人が同点の31点。小川友幸、野﨑、黒山が並んでいた。 結果、わずか1点差で、小川友幸の開幕戦勝利が決まった。開幕前の負傷、悪天候、厳しいセクション、終盤のマシントラブルなど、小川を襲ったさまざまな逆境を思うと、この結果は奇跡に近い。もともと開幕戦ではなかなか勝利できない小川だった。去年に続き、ジンクス破りのニュー小川友幸、誕生か。 5位の小川毅士ホンダに乗る武田呼人の初戦は6位2位黒山、3位氏川、4位野﨑とヤマハトリオがゼッケン順に並び、5位は小川毅士、小川毅士に同点クリーン数差で武田呼人が6位となった。 7位に田中、8位に今回は調子をくずしたままで終わってしまった柴田、9位にマシンを乗り換えた武井誠也(ベータ)、10位が久岡だった。 今回は16名の参加で、初めてのIAS参加でペース配分に戸惑ったか、1ラップ目に5点のタイムオーバー減点をとった宮澤が最下位となって、デビュー戦でのポイント獲得を逃している。 IAS表彰式。左より2位黒山健一、優勝小川友幸、3位氏川政哉、4位野﨑史高、5位小川毅士、6位武田呼人2025r1_iasダウンロード国際A級 この日の各クラスの中では、この国際A級が優勝減点の最も少ないクラスとなった。厳しいコンディションの戦いであることには変わりはなかったが、それでも1回の足つきにこだわるトライアルらしい戦いができたのが、このクラスのトップ争いだったようだ。 こういった悪天候、厳しいコンディション、しかもむずかしい時間配分などが必要な大会では、ベテラン勢が強い。ただのベテランではない。IASを戦ってきた猛者やこのクラスのチャンピオン経験者もいるのだから、若手はよほど高い技術を発揮しなければ、経験者の試合運びにかなわない。 IA初優勝。22歳の高橋寛冴そんな中、1ラップ目のトップは22歳、若手の高橋寛冴(シェルコ)だった。2位小野貴史(ホンダ)に4点差たった。高橋は2020年にIBランキング3位でIAに昇格してきた。今年は5年目のIAシーズンになる。昨年の九州で3位表彰台に上がったが、まだ優勝経験はない。 2ラップ目、大ベテラン、本多元治(ホンダ)が追い上げてきた。対して高橋はミスが出た。1ラップ目は見事なスコアだったが、2ラップ目は倍以上に減点を増やしてしまった。 2ラップ目、トップスコアをマークしたのは本多で、高橋は4位だった。1ラップ2ラップ目の減点をトーするすると、高橋は本多と同点、クリーン数差の勝負で、高橋の初優勝が決まった。 高橋はこの後九州大会を走ったあと、イギリスはスコットランドの伝統イベント、SSDTに参加する。自身にとって大きなトライのシーズンに、自らはずみをつけた印象だ。 IBから昇格したばかりのルーキーは、02番の永久保圭が12位に入る大金星。永久保と同い年の13歳ながらIAの先輩である黒山太陽は、2ラップ目のクラッシュでマシントラブルを起こしながら完走、8位に入っている。若いパワーの台頭も楽しみだ。 IA表彰式。左より2位本多元治、優勝高橋寛冴、3位小野貴史、4位平田貴裕、5位村田慎示、6位中里侑2025r1_iaダウンロードレディース 今回は9名が参戦。初出場は小学生の寺澤心結(ベータ)と清水さやか(ホンダ)。 優勝は、やはり実力が一枚上手か、中川瑠菜(ベータ)。2位に14点離して減点52でつかんだ勝利だった。小玉絵里加(TRRS)は兼田歩佳(TRRS)が初参戦を2点差で下して久々に2位を得た。兼田は初の3位入賞になる。 レディースクラス優勝、中川瑠菜2位争いからは10点ほど離されたが、4位争いも接戦だった。齋藤由美(ベータ)と寺澤は1点差で齋藤の勝ち。11歳のデビュー戦は堂々たる5位入賞。第1セクションのクリーンは見事だった。 6位寺田智恵子(TRRS)と7位中澤瑛真(ベータ)、8位清水さやかも1点差ずつの勝負。それぞれの戦いがおもしろい。 レディース表彰式。左より2位小玉絵里加、優勝中川瑠菜、3位兼田歩佳、4位齋藤由美、5位寺澤心結、6位寺田智恵子2025r1_ltrダウンロード国際B級 ベテラン勢がひしめくこのクラスにあって、未知の才能も毎年登場してくる。2025年は、開幕から新勢力が表彰台のワンツーを占めた。優勝は12歳の岡直樹、そして2位が15歳の木村倭。二人とも去年のトライアルGC大会でIBに昇格してきたエリートだ。GCでは木村が優勝、岡は3位だった。 岡は選手権に出るようになって3年目、木村は2年目ということで、将来が楽しみ。木村はIB昇格1年生にして、世界戦T3にスポット参戦の予定だということだ。 3位山口太一を含め、表彰台の3人は3人とも、2024年実績がない選手達となった。新しい才能は、確実に育っている。…
2024年11月3日 大阪府大阪市中央公会堂・中之島通り 動員数:7,000人 2024年全日本選手権は、今年もシティ・トライアル・ジャパン大会が最終戦となった。第7戦SUGO大会が終わった時点でランキング10位までに入った選手に参加の資格がある。ランキング11位以降の選手は、第7戦時点でランキングが決定する。トップ10、そしてチャンピオン争いは、この大会が最後の勝負となる。 昨年は突然の雨で、セクション部材とした無垢の丸太がツルツルに滑り、その対処に難儀をした。今年も土曜日は台風の余波で大雨になり、昨年の二の舞いが心配されたが、しかし当日は朝から晴れ渡って、多少のグリップの悪さは残ったものの、コンディションはなかなか良好となった。今大会は、有料の観客席が設けられ、熱心なファンにはありがたい観戦環境となった。無料の立ち見席は健在だ。 セミ・ファイナル 試合のプロローグはセミ・ファイナルから。設営された4セクションを往復して全8セクションをトライしてファイナルへの進出権を争う。このスタート順は、第7戦終了時点のランキングによっている。 第7戦でシティ・トライアル・ジャパン大会への出場権を得た黒山陣、久岡孝二、そして藤波貴久の3人が最初にトライする。黒山は過去2回、少年ライダーのデモンストレーションとしてこの大会に彩りを添えていたが、今回はきっちり選手として登場となった。ファイナル進出はならなかったが、果敢なトライに観客から大きな声援が飛んでいた。 15才の中学生、黒山陣の果敢なトライ藤波はさすがのトライ。しかしその実、足のつけない戦況になることを予想して、緊張に包まれつつのトライだった。 ホンダの電動トライアルマシン、RTL ELECTRICで3連勝した藤波貴久セミファイナルは往路の4セクション、復路の4セクションで争われたが、前半のトップは藤波の1点、これを2点で小川友幸、氏川政哉、小川毅士が追う展開。しかし復路の4セクションで小川友幸と氏川が5点を喫し、小川毅士はふたつの5点で順位を落とした。代わって黒山健一が4セクションをオールクリーンして順位を上げてきた。 セミ・ファイナルの8セクションを終えて、トップ6が決まった。ファイナル進出がならなかったのは久岡孝二、黒山陣、そして華麗なライディングを披露しながら、4つの5点でスコアをまとめられなかった柴田暁。柴田はこのセミ・ファイナル敗退でランキングも6位と逆転を許した。なお、本来この大会に出場しているはずの野﨑史高は、ひざの負傷で療養中につき欠場。会場ではライディング解説役として活躍した。 レディースレース お昼休みには、山森あゆ菜、中川瑠菜、米澤ジェシカ、小玉絵里加の4人による、レディースライダーのデモンストレーション・レースが行われた。本来なら、土曜日に行われるはずだったが、悪天候の影響でこの日におこなうことになったもの。第1セクションの一部を使ってのトライは、いつもとは異なる難度の高さだったが、4人の女性陣は果敢にこれに挑戦し、熱心な観衆をわかせていた。 レディースレースに出場した4選手。左から小玉絵里加、米澤ジェシカ、中川瑠菜、山森あゆ菜2023-2024レディースチャンピオン、山森あゆ菜のライディングファイナル ファイナルは第1と第2、その逆走の第7、第8の4セクションで競われた。セクションはセミ・ファイナルから変更がなし。すでにクリーンの出ているセクションだが、足が出せない勝負にもなった。そしてまた、少しのミスで5点にもなれる設定ゆえ、まったく油断ができないファイナルの戦いとなった。 藤波が2点、小川友幸と氏川政哉が同点の7点、セミ・ファイナル後半をオールクリーンした黒山健一が8点でこれに続く。藤波に続いて、チャンピオン争いの3人がきれいに2位から4位までに並んでのファイナル開始だ。ファイナルはセミ・ファイナルの順位にしたがってトライ順が決められている。 必勝を目指す藤波、V14目前の小川友幸、そしてタイトル奪還を目指す黒山健一の集中力は見事だった。両者とも、是が非でも足をつかない気迫のトライが続く。たいして武田呼人、小川毅士、氏川にはミスが出た。武田は第1、第2を連続5点、氏川は第7で足が出て、第8ではタイムオーバーで5点となり、かろうじて可能性の残っていたタイトル争いに自ら終止符を打ってしまった。小川毅士に5点はなかったが、1点、3点と減点を重ねた。小川毅士は第8で唯一高い丸太から高い丸太に一気に飛んで会場をわかせたが、順位は5位となった。しかし小川は、これでランキング4位を獲得している。 氏川政哉は4位。シリーズランキング3位果敢なトライを見せ続けた小川毅士は5位。シリーズランキング4位勝負の焦点は、藤波とホンダの電動RTLの全日本3連覇なるか、小川友幸と黒山健一、タイトルを得るのか。先行してトライを終えた黒山は、ファイナルの4セクションをオールクリーンした。点差は1点。セミ・ファイナル終了時点でクリーン数も同一なので、小川が1回でも足をつけば、2位黒山、3位小川となる。ランキングポイントは小川が黒山に3点リード。黒山が2位、小川が3位となれば、2024年全日本チャンピオンが黒山に渡ることを意味していた。 1回も足をつけない尋常ではない緊張感の中、小川がトライする。確実、正確が身上の小川だが、さすがに乱れが出た。しかしその乱れを、足をつくことなく修正して、ファイナル4セクションをオールクリーン。小川友幸、12連覇、14回目の全日本タイトルを獲得だ。 小川友幸がIASチャンピオンを獲得最後にトライした藤波は、小川のタイトル獲得に喧騒に動じることなく、自らのトライに集中。藤波のトライも完璧ではなかったが、ライディングの乱れを足をつくことなく修正して、ついに出場3戦の全日本を全勝としてその仕事を終えた。 ホンダの電動マシンのデビューを最高のかたちで飾った藤波、1点を争うチャンピオン争いを制した小川友幸。大ベテランの集中力が、最後の最後まで客席を引きつけた最終戦となった。 左から2位小川友幸、優勝藤波貴久、3位黒山建一、4位氏川政哉、5位小川毅士、6位武田呼人小川友幸のV14を祝うチームメイトたち優勝を喜ぶ藤波貴久2024r8_ias_resultsダウンロード
2024年10月27日 宮城県柴田郡村田町スポーツランドSUGO 動員数:1,500人 2024年全日本選手権第7戦SUGO大会。トップカテゴリーのIASはこのあとシティ・トライアル・ジャパン大会が控えているが、その他のクラスはこれが最終戦となる。例年、最終戦のこの時期は寒さに震えることが多いのだが、今年は絶好のトライアル日和。体を使ってライディングするライダーには、ちょっと暑いくらいの陽気になった。 前回、和歌山・湯浅大会に続いて、今回も元世界チャンピオンの藤波貴久(Honda)が参戦。インターバルの2週間で、さらに乗り込みとセッティングを進めてきたということで、終盤戦のスポット参戦とはいえ、必勝の体制だ。ちなみに藤波が最後に全日本選手権に参戦したのは2003年最終戦のSUGO大会。21年ぶりに、藤波が世界チャンピオンとなってSUGOに戻ってきた、ということになる。 セクションは例年とほとんど変わらず。各クラスともトップライダーにとっては減点を最小限に抑えなければいけない神経戦の様相で、前回大会とはずいぶん性格が違う戦いを強いられたと、藤波も語った。IB・LTRは第5と第8を除く8セクション2ラップ、IAは10セクション2ラップ、そしてIASがこれにふたつのSSを加えての戦いとなった。 参加はIASが17名、IAが36名、LTRが9名、IBが63名、そして来日していて出場を希望したイタリアのレディースGPクラスのライダー、アレシア・ババケッタが賞典外でレディースクラスのセクションにトライする。スタートはIBとそれに続くバチェッタまでが1分に2台、それ以降は1台ずつ1分間でスタートとなった。 国際A級スーパー 神経戦の戦いと想定してのスタートだったが、開始早々の第3セクションで藤波が1点を失った。小さな石にタイヤをとられてのホッピングの失敗。これに藤波は大きな危機感を覚えていた。しかしスタート以降全セクションをクリーンしていた小川友幸(Honda)、氏川政哉(ヤマハ)が第6セクションで5点になって形勢は逆転、以後、最小限の減点でセクションを走破していく藤波には、誰もついていくことができなかった。藤波の2連勝で、ランキングポイントも50ポイントとなり、ここまでのランキングを8位として、次戦、ランキング10位までが出場権を持つシティ・トライアル・ジャパン大会にも出場が決まった。 電動トライアルバイクRTL ELECTRICで二連勝した藤波貴久一方、全日本チャンピオンを争う日本勢は、なかなかの接戦を演じた。1ラップ目、5点なしの黒山健一(ヤマハ)がトータル7点、これに小川友幸と氏川が10点で続く。小川毅士(ベータ)が12点と僅差で追うが、タイトルを争う3人は手堅い。ランキングでは黒山がトップで、これを小川友幸と氏川が4点差で追っている。今大会の勝負もランキングも、どちらも大接戦だ。この大会、黒山は新型マシンを持ち込んだ。これまでのTY-E2.2から一気に進化したTY-E3.0。詳細は明らかにされないが、モーターなどの作動音が格段に静かになったのが大きな変化。もちろん性能的にもそれ以上の変革が施されているにちがいない。 電動ヤマハTY-E3.0を走らせる黒山健一2ラップ目、3人は揃って、難関の第6セクションまではクリーンした。藤波を上回るスコアをたたき出すのはむずかしいものの、2番手を誰が奪うかでタイトル争いの流れが変わってくる。大きな勝負の分かれ目は、第9、第10だった。このふたつを、黒山、氏川ともに5点。小川友幸は両方を1点ずつで抜けた。 2ラップを終えて、小川友幸は15点、黒山が20点、氏川が25点。きっちり5点差ずつ。しかし黒山と氏川の間には、23点の小川毅士が割って入っていた。小川毅士は、第9をクリーン、第10を3点で抜けて、表彰台争いに加わってきた。 ベータの小川毅士が3位獲得SSは、建築素材のコンクリートブロックを絶妙に並べたもの。同じセクションを往復することで、SS1とSS2としてトライする。高さがあるだけでなく、セクションがコンクリートブロックの幅しかないから、ちょっとラインを乱すとセクションから飛び出してしまうリスクもある。 SSに進出する10位までには、ここまでに登場した5人の他、久岡孝二(Honda)、武田呼人(ガスガス)、黒山陣(シェルコ)、武井誠也(Honda)、そして柴田暁(TRRS)。柴田は1ラップ目後半にマシントラブルに見舞われ、そのまま修復はならず、なんとかコースを一回りして申告5点のパンチをもらってゴール。2ラップ目はオール5点だが、それでも10位に入っていた。しかしSSはトライできず。柴田のSSのスコアは5点ふたつ、ということになる。 電動ヤマハTY-E2.2の氏川政哉は5位になりランキング3番手SS1を最初に抜けたのは武田だった。武田と久岡は6位争いの渦中にいたが、負けじと久岡もSS1を3点で抜け、両者の点差は変わらず。その後、氏川が5点、小川毅士が初めて1点で抜けたあと、黒山も5点。これで黒山は小川毅士に逆転を許して4位となった。黒山のあと、小川友幸は確実に2点で走破、2位が決まった。 最後の藤波は、すでに勝利は決まっている。SSをふたつとも5点でも優勝できるのだが、藤波には課題があった。前回、SSをふたつとも5点となったのが、大きな心残りであり、悔しかった。この日は念入りに下見をし、慎重の上にも慎重に、そして渾身の集中を注いでSS1をトライした。クリーンだ。 小川友幸は今大会2位へ、ランキングトップに立った残りSS2一つとなり、順位がおおかた確定してきたものの、小川毅士と黒山の3位争いはまだ決着がついていない。その差1点で小川毅士が上位につける。まず小川毅士がトライ。クリーンすれば毅士の3位が決まる。しかしむずかしいポイントで、毅士は確実に足をついてマシンを送り出した。1点。さぁ黒山のトライだ。氏川はSS2も5点だったので、黒山の4位以上は決まっている。失うものはない。クリーンが出れば、毅士と同点、クリーン数差で黒山が3位となる。しかし黒山もまた、小川同様に足が出た。安全にマシンを運ぶにはいたしかたなかったが、それは黒山から表彰台を奪う結果となった。 残る二人、現役全日本チャンピオンと、元世界チャンピオン。二人は共に、1回の足つきもなく、この難セクションを走破した。藤波にすれば、前回大会の借りを返しての完全制覇。そして小川にすれば、中盤以降苦しんだタイトル争いで、僅差ではあるがランキングトップを取り戻した渾身のトライとなった。 泣いても笑っても残りは次週のシティ・トライアル・ジャパン1戦。最終戦は、ここまでの自然地形を相手にしたトライアルとは異なり、人工物を相手となる。そこにはまた、未知数の波乱も待ち受けている。 IAS表彰式、左から2位小川友幸、優勝藤波貴久、3位小川毅士、4位黒山健一、5位氏川政哉、6位久岡孝二2024r7_ias_resultsダウンロード国際A級 前回和歌山・湯浅大会で、成田匠(EM)のシリーズタイトルは決まっている。ホンダとヤマハの電動マシンの対決で話題沸騰の全日本トライアルだが、このクラスではフランス製EMがひと足早く栄冠をものにしている。 しかし成田は、1ラップ目に3つの5点で苦戦を強いられた。1ラップ目、トップに立ったのが、砂田真彦(Honda)だった。砂田を2点差で追うのが、今シーズンの若手のホープ、宮澤陽斗(ベータ)。表彰台の常連となって、あとはいつ初優勝を遂げるかがテーマだった。 10年ぶりの優勝。砂田真彦神経戦の中、二人の争いは接戦。2ラップ目、今度は宮澤が砂田の減点を上回った。しかしわずか1点差。トータルでは、1点差で砂田の勝ちとなった。砂田は元IASライダーだが、それ以前にIAクラスを走っていた際に1勝して以来、今回は10年ぶりの2勝目となる。 宮澤に次ぐ3位は長くIAの中堅を続けている中里侑(TRRS)が、初の3位表彰台を獲得した。成田は4位となった。 国際A級表彰式、左より2位宮澤陽斗、優勝砂田真彦、3位中里侑、4位成田匠、5位高橋寛冴、6位小野貴史国際A級の成田匠。電動トライアルバイクで初の全日本チャンピオン獲得。2024r7_ia_resultsダウンロードレディース 1ポイント差で最終戦を迎えたチャンピオン争い。中川瑠菜(ベータ)と山森あゆ菜(モンテッサ)のタイトル争いは激戦だった。序盤、試合をリードしたのは中川だった。1ラップ目、中川のリードは5点。山森は2ラップ目の巻き返しにかけた。 しかし2ラップ目、中川に異変。マシントラブルで動けない。ピットまで押して戻り、再びコースに出たときには、すでに持ち時間はぎりぎりだった。残る4セクションをすべて申告5点として、さらに6点のタイムオーバーを喫してゴール。勝利は山森のものとなったが、それでも中川は2点差で2位を確保した。 レディースクラス2連覇、山森あゆ菜同い年で地域も近く、ずっといっしょに切磋琢磨してきた二人。タイトル争いも一進一退で最終戦まで争ってきた。それが意外な結末で決着を見た。山森は、タイトル獲得の喜びを聞かれ、ライバルの脱落によるくやしい勝利だった今回を踏まえ、ちゃんと勝って、すっきりした3連覇を目指すと誓った。 3位は 齋藤由美(ベータ)だったが、ランキング3位は米澤ジェシカ(TRRS)が獲得した。 賞典外で走ったアレシア・バケッタはやはり別格の強さを見せた。レディースのマーカーを通りながら、他クラスのマーカーにもトライして、山森の1/3のスコアで全セクションを走破した。女子T2クラスのチャンピオンにして、女子GPのデビューイヤーを堅実に走って来年以降の飛躍が期待されるイタリアの新星は、やはり実力者だった。 賞典外だったが、女子GPクラスの実力を見せたイタリアのアレシア・バケッタレディース表彰式、左から2位中川瑠菜、優勝山森あゆ菜、3位齋藤由美、4位米澤ジェシカ、5位小玉絵里加、6位中澤瑛真レディースチャンピオン獲得、山森あゆ菜2024r7_ltr_resultsダウンロード国際B級 永久保圭(ベータ)が2連勝したことで、高橋淳(TRRS)に5ポイント差まで迫った最終戦。永久保が優勝すれば、高橋が2位でもタイトルは永久保となる。しかし戦況は高橋に有利だ。 国際B級は高橋淳の勝利ここ2戦、テープを切ったりの5点で勝利を逃していた高橋だが、今回は改心のトライ。2ラップ目2点、2ラップ目3点はほぼベストといっていいだろう。永久保は地元の長谷川一樹(モンテッサ)に1点差で敗れて3位。しかし堂々、ランキング2位で国際A級への昇格切符を手中にした。 国際A級への昇格を決めたのは、高橋、永久保、台湾のChen(Honda)、袋井就介(EM)、そして田上拓(モンテッサ)の5名だった。 高橋淳はシリーズチャンピオンを獲得2024r7_ib_resultsダウンロード
