2024年6月2日
栃木県芳賀郡茂木町 モビリティリゾートもてぎ
動員数:3,000人
2024年全日本選手権第3戦は、トライアルGP日本大会の余韻もさめやらぬ栃木県モビリティリゾートもてぎでの「もてぎ大会」として開催された。前日の土曜日は暑いくらいの陽気だったが、当日の天気予報は雨。しかし夜半から降り始めた雨は朝方には止んで、昼間は日差しも出るほどになった。とはいえ、午後の降雨は避けられそうにない。
セクションは、基本的にトライアルGPで使われた部材を利用していて、厳しさもトライアルGP並か。朝まで雨が降っていたから、滑る滑ると評判のもてぎの地形ゆえ、その難度はGPを超えていたかもしれない。GPを走ることがないクラスは、一目瞭然にむずかし目の設定となった。
スタートは全日本の通常より30分遅い8時ちょうど。国際A級と国際B級は1分に2台ずつ、国際A級スーパーとレディースは1分ずつスタートで、レディースと国際A級の間に1時間15分ほどのインターバルが置かれていた。国際A級スーパーと国際A級は第1セクションと第9セクションをのぞく10セクション2ラップ、レディースと国際B級は第6と第11をのぞく10セクション2ラップ、これを4時間半で回る戦いが始まった。
国際A級スーパー
今回も参加は17名。ここまで2連勝を飾っているディフェンディングチャンピオンの小川友幸(ホンダ)は、最初のトライとなる第2セクションで失敗。いつもの小川なら、ここから建て直してきっちり優勝するか、せめて表彰台まで順位を戻してくるのだが、今回はなかなかペースが戻らない。
こんな中、2週間前に2日間にわたって2ラップを走っているライバルは、難セクションに果敢にチャレンジしていく。1ラップ目、2位以下に5点差をつけてトップに立ったのは今年から体制をがらりと変えて全日本を戦う氏川政哉(ヤマハ)。氏川も小川同様に第2セクションで5点となっているが、その後の巻き返しが見事にきいた。
2位は同点で二人。野崎史高と黒山健一、氏川と同じヤマハTY-Eに乗るベテランが並んだ。この二人に2点差で小川毅士(ベータ)、小川友幸は小川毅士に4点差の5位で試合を折り返した。
2ラップ目、氏川の好調は変わらない。1ラップ目の失敗を修正したり、細かいミスを出したりしながら、トータル減点は1ラップ目と変わらず21点。2ラップのトータルを42点とした。これに続くは黒山。しかしその差は7点に開いていて、SSで逆転劇を演出するには、ちょっと点差が大きい。
野崎も2ラップ目に少し減点を増やしていて、クリーン数で勝ってはいるものの、減点53点、小川毅士と同点でSSを迎えた。小川友幸は59点と、計算上は逆転の目はあるが、上位進出はむずかしそうだ。
SSは、これもトライアルGPの最終セクションを使って行われた。2ラップ目の終盤から、予定通り雨が降り始めて、SSが始まる頃には本降りに。濡れた丸太の安全性が危惧されて、一部設定を変更してSSが始まった。この変更もあいまってSSの難度は若干さがり、大きな逆転劇の可能性も下がった。
SS第1、最後にトライした氏川が1点を失ったものの、トップグループはおおむねクリーン。この時点で、氏川のリードは7点となり、氏川の今シーズン初優勝、そしてヤマハTY-Eの初優勝が決まった。
SS第2は終盤の高い板への飛びつきとそこからどうやって降りるかが難関。久岡孝二(ホンダ)が前輪から落ちて肝を冷やすこととなったが、トップ5は上手に足を着きながらこの難関を克服していく。
小川友幸は3点で5位をキープ、小川毅士はここで2点を失って、表彰台争いのライバルの野崎のトライを待つことになった。果たして野崎は1点。これで黒山のトライを待つことなく、ヤマハTY-Eの表彰台独占が決まった。第2戦で、国際A級の成田匠とEMによる、全日本選手権初のEV勝利があったが、今回はトップカテゴリーでのEV勝利。それも1位2位3位独占の快挙となった。
ランキングでは、開幕2連勝を飾った小川友幸が依然としてトップをキープした。しかし3戦連続で2位入賞を果たした黒山が1ポイント差でこれに続く。ランキングでもヤマハ勢の巻き返しが始まっている。
国際A級
第2戦で勝利したEMの成田匠が、今回も好調。ほぼ全員が5点となった第3と第12以外を最小限点にまとめて、全日本2連勝を飾った。IASの表彰台独占とともに、全日本でも一気にEV化の波が押し寄せてきた印象だ。
成田に遅れること9点で2位となったのが、これもベテランの本多元治(ホンダ)。奇しくも、成田も本多も世界選手権のセクションづくりに奔走した重要スタッフだが、成田は自分で構成したセクション群を、参加者として走るのはこれが初めてだった。
3位に、第2戦に続いて連続表彰台となった宮澤陽斗(ベータ)。ランキングでも、成田と、去年までIASだった平田貴裕(スコルパ)に続き、3位をキープしている。平田は今回4位、5位に、成田の弟で、やはりGPのセクション設営に尽力した亮が入っている。
今回はベテラン勢が上位を独占していて、若手は3位の宮澤が一人気を吐いた結果となった。
レディース
参加は8名。第1戦第2戦と1位2位をわけあった山森あゆ菜(モンテッサ)と中川瑠菜(ベータ)の勝負の行方が注目される。
今回は難度も高め。大岩を越えていかなければ先に行けない設定のセクションも多く、加えて2ラップ目はIASやIAの1ラップ目の大群に追いついて、先の見えない渋滞と闘わなければいけなかった。
それでも、タイムコントロールはトライアルの戦いのエッセンスの一つ。申告5点も視野に入れながら、減点を少しでも減らしてゴールすべく、戦いは続いた。
結果は7点差で山森の勝利。山森はこれでランキングトップの座を確固たるものにした。2位はソアレス米澤・ジェシカ(TRRS)。日本人離れしたライディングが魅力の米澤が、ついに女子大生コンビの間に割って入った。中川は米澤に1点差の3位だった。
2ラップ目に2位で追い上げた小玉絵里加(TRRS)が4位、清水忍(TRRS)、齋藤由美(ベータ)が5位、6位となった。
国際B級
開幕2連勝を飾っている髙橋淳(TRRS)が、今回も勝利を飾った。絶好調。高橋は、1ラップ目をクリーン6の減点6でまとめて2位の中学生、永久保圭(ベータ)にダブルスコア以上の差をつけた。
ところが2ラップ目、髙橋が戦わなければいけなかったのは渋滞だった。申告5点で先を急がざるを得ず、1ラップ目の減点6から一気に減点22まで増やしてしまった。それでも、2位のチェン・ウェンマオ(今回からホンダに乗る)に5点差で、開幕3連勝を飾ったのだった。
ランキングは、上位3人が安泰。髙橋、永久保、チェンの順に並ぶ。髙橋と永久保のポイントギャップは、すでに19ポイントまで広がっている。