2025年7月13日
北海道上川郡和寒町わっさむサーキット
動員数:550人
北の大地、旭川近郊の和寒町わっさむサーキットでのシーズン中盤の1戦。例年だと海の日の3連休にこの大会が組まれていたが、夏の猛暑を避けるために、まだ少しでも涼しいこの時期に前倒しされて開催となった。気温はそれほど上がらなかったが日差しは強かった。充分に暑い中での戦いとなったが、酷暑との戦いというほどではなかったように思われる。
国際A級スーパー
全体にセクションに高さがある。リスクが高いと下見をしたライダーは異口同音に語っていた中、黒山健一(ヤマハ)はこの大会が神経戦になるのではと予測していた。
全員が5点になるのではないかと思われたのは、入口に高いブロックが積み上げられた第2セクションと、正確にヒューム管の頂点に上る必要がある第5セクション。いずれも、中空の面に飛びつかなければいけない難所だ。

第1セクションはクリーンが出る設定だったが、小川毅士(ベータ)、久岡孝二(ホンダ)が5点、黒山、野﨑史高(ヤマハ)が1点を失った。そして第2セクション。先にトライするライダーがことごとくブロックに跳ね返されて失敗する中、柴田暁(TRRS)がするするっとブロックのてっぺんまで登りきり、このセクションを最初にクリーン。このお手本を参考に、後続が挑戦するも、失敗が相次いだ。結局このセクションをアウトできたのは、最初にクリーンをした柴田だけだった。
そんな中、小川友幸(ホンダ)が第2のブロックに登るのを失敗して飛び降りる際に腕を強打、次のセクションにトライできないまでの危機的状況に陥った。小川は一度本部に戻って、傷めた患部をしっかりテーピングして再起を図るが、状況は厳しい。ブロックを失敗して飛び降りる際には野﨑も腰を痛めて苦痛に表情をゆがめたが、野﨑はすぐに戦列に復帰できた。

続く難関の第5セクションでは、小川毅士、氏川政哉(ヤマハ)が丸いヒューム管に乗りかかるところまで攻略しながら走破はならず。1ラップ目は全員が5点ということになった。

この後、第7セクションで久岡がトライ中に出口の岩がぐらぐらしていることが発覚。このセクションはそれまでにトライしたライダーを含めてキャンセルとなり、タイヤを踏みながら岩に飛びつく第9セクションが微妙な勝負の分かれ目となって、1ラップを終える。
今大会には、世界選手権T3(125cc)クラスに参戦している黒山陣(シェルコ)が今シーズン初めて参戦した。16歳未満の黒山は世界選手権では125ccまでのマシンにしか乗れない。全日本では300ccに乗っていた黒山だが、今大会では世界選手権で使っている仕様の125ccマシンをそのまま持ち込んでの参戦。125ccでIAS参戦は、黒山が初めてとなる。

黒山は、絶対的にパワーが不足する高い壁に手を焼きながらも、上位入賞も狙える位置で戦いを続けた。2ラップ目、難関の第5セクションを3点で抜けるなど、ヨーロッパ仕込みのテクニックをしっかり披露して見せた。
2ラップ目、好調の黒山健一に対し、チームメイトの氏川が追い上げを見せた。第5セクションの難関は2点で通過していて、このセクションは黒山陣と氏川、若手ライダー二人のみがセクションを抜け出たことになる。
小川友幸は、応急処置を施して戦列に復帰したが、右手が使えない局面が多く見られて、苦しい戦いが続いた。それでも2ラップ目に4つのクリーンを絞り取るなど、最後の最後まで勝負をあきらめない姿勢を見せてくれた。2ラップを終えて、小川の減点は63点で、10位の野本とは2点差。小川が走らないSSが、この日の勝負を決することになった。
SSを前に、優勝争いは黒山健一26点、氏川28点と2点差、3位争いは柴田と小川毅士、野﨑が38点で同点、6位争いは武田呼人(ホンダ)と久岡が48点で同点、さらに51点で黒山陣が迫るという接戦。9位武井誠也(ベータ)と10位野本佳章も59点と61点で、逆転の可能性のある戦況となっていた。



SSは第1を手直ししたSS第1と、第10を手直ししたSS第2の二つ。第1は最後の大岩の攻略がむずかしかった。第2は最後のブロックの助走が厳しく制限されて、これが鬼門となった。

しかしこの難セクションを、上位の4人はいずれもクリーン。逆転は武田と久岡の6位争いだけで、他は大きなプレッシャーのかかる中、いずれのライダーも順位を守りきって試合は終了した。
前回、初めてSSを走った宮澤陽斗(ベータ)が第9セクションで前転して負傷、この大会はリタイヤとなった。

国際A級
2連勝した高橋寛冴(シェルコ)を筆頭に、永久保圭(ベータ)、黒山太陽(シェルコ)など若手ライダーの台頭でにぎわうこのクラスだが、今回はベテラン平田貴裕(スコルパ)が逆転勝利をもぎ取った。

1ラップ目のトップは中里侑(TRRS)、中里の減点は8点で、平田は3点差で3につけた。
2ラップ目、中里が減点を増やして後退していく中、平田は5点なしの素晴らしいスコアで10セクションを回りきった。トータル15点は、2位に6点差の堂々たる勝利だった。
2位に入ったのは高橋。3勝目はならなかったが、1ラップ目の4位から2ラップ目に追い上げて2位までポジションを上げ、平田の追撃をかわして再びランキングトップに躍り出ている。
1ラップ目にトップだった中里は高橋と同点ながらの3位。4位に永久保、永久保に同点の5位に黒山と、中学生コンビが入賞を果たしている。
前々回勝利、今回も1ラップ目には2位につけた小野貴史が、2ラップ目に減点を増やして6位となっている。

レディース
九州同様に5名が参戦。ここまで全戦参加を続けている4名に、東北の木村亜紀が今シーズン初登場を果たしている。

今シーズン、ここまで3連勝の中川瑠菜が今回も勝利して4勝目、4連勝。しかし今回は、このシーズンで最も厳しい戦いだったという。1ラップ目、兼田歩佳(TRRS)に3点差でトップに立った中川だったが、2ラップ目の第1セクションで5点。1点で抜けた兼田に逆転を許してしまう。その後のセクションをきっちりと攻めあげて勝利をつかんだ兼田だが、若い中川よりさらに若手の兼田がぐんぐんと実績・実力を伸ばしてきていて、この先の争いも目が離せない。

国際B級
黒山陣と同様、世界選手権T3クラスに初めて出場した木村倭(シェルコ)が帰ってきて今シーズン3度目の出場。前回もてぎ大会は世界選手権参戦のために欠場しているので、ランキングトップは寺澤迪志(ベータ)に譲っている。

この日はオールクリーン勝負だと読んだ木村は、最初からペースを上げて早回り。オールクリーンが複数人出た場合は、競技時間が短いライダーが上位を獲得する規則だからだ。これに、第3点で勝利した寺澤、開幕戦勝利の岡直樹(ベータ)がついて、3人だけがとても早いペースで10セクション2ラップを走りきった。
オールクリーンを成し遂げたのは、しかし木村一人。寺澤が1点、岡は6点。寺澤と岡の間には、小倉功太郎(ホンダ)が入り、小倉は今シーズン初の表彰台となった。

オープントロフィーNA
北海道の大会に組まれるオープントロフィーは、NAライセンスをもつライダーのクラス。セクションはゲートマーカーなし、セクション内自由だったが、今回は宮城県の二人のみがエントリーした。例年は北海道のNAライダーの元気なトライが見られたものだが、ちょっと残念。
