2023年8月27日
広島県三次市吉舎町安田灰塚ダムトライアルパーク
観客数:730人
2023年全日本トライアルシリーズも終盤戦。第6戦は広島県三次市の灰塚ダムトライアルパークでの開催となる。去年は9月の開催で今年は8月開催。周囲を山に囲まれていて盆地地形の会場なので、この季節に暑くなるのはやむなしだが、薄日がさす時間が多かったこともあって、去年よりは少し暑さは和らいだか。それでも暑い厳しい戦いだったのはまちがいない。選手はもちろん、会場に集うすべての人が体調管理を気遣いながらの大会となった。
今回は全クラス合わせて135名の参加申し込みがあった。スタートしたのは129名だった。このところ、渋滞対策を念頭に、国際B級をグループ分けしてセクションを分散させる取り組みをする大会が多かったが、今回は第1セクションから一斉スタートした。最終スタートのIASとIBやレディースの2ラップ目が重なった第2から第4あたりで渋滞はあったものの、渋滞は少なめだった。今回は全体に減点数の少ないセクション設定だったが、特にIBとレディースは減点数が少なかった。スムーズにセクションをアウトできれば渋滞は起きにくい、ということかもしれない。セクションは11用意されたが、全クラス10セクション2ラップ。これに国際A級スーパーの上位10名のみ、SSの2セクションでの最終決戦をおこなういつものスタイルは変わらない。
国際A級スーパー
オールクリーンが勝利を確実にする条件。そしてそれが可能な設定での戦いが始まった。オールクリーンができるとはいえ、簡単ということではない。濡れれば当然滑るし、砂のような土にグリップを奪われることもある。足をつく要素はいっぱいあるし、それが5点につながってしまうリスクは当然存在する。
第2までをクリーンしたのは9名。まずまず予想通りの展開だ。最初の鬼門は第3セクションだった。武井誠也(ホンダ)は2点で抜けたが、久岡孝二(ホンダ)、小川毅士(ベータ)、野﨑史高(ヤマハ)が5点、さらに氏川政哉(ホンダ)も5点となって厳しい戦いを強いられることになる。このセクション、小川友幸は1点、黒山健一(ヤマハ)が2点で抜けたが、柴田暁(TRRS)が唯一クリーンを叩き出している。
その後はまたクリーン合戦となるが、第5でふたつめの5点をとった野﨑が厳しい戦いとなり、柴田、黒山もクリーン連発とはいかない。こんな中、第6でアクシデント。氏川が岩からの下りで前転、首と背中を強打した。あわやリタイヤかというアクシデントだったが、氏川は試合続行を決断。痛みに顔を歪め、叫びながらのトライが続くことになった。
1ラップ目が終わって、トップは第3での1点のみの小川友幸、これを3点の黒山と柴田が追う。氏川は5点二つのみの10点で4位。小川毅士が同点で並ぶ。野﨑は16点、久岡は23点で7位につけている。
2ラップ目、小川友幸が第3をクリーン。黒山、氏川も1点で抜けたが、ラップオールクリーンを目指せるのは小川だけということになった。その小川が、今度は第6で5点。戦況に大きな影響があるかとも思われたが、黒山は第5で、柴田は第6で5点となっていて、その差は変わらなかった。
2ラップ目、トップスコアの1点をマークしたのは氏川だった。負傷を押して、第3での1点以外すべてのセクションをクリーンするというパフォーマンスを発揮した。10セクション2ラップを終えてみると、トップは小川の6点、続いて黒山が9点、氏川は11点で3位まで浮上してきた。柴田は氏川に遅れること2点の4位でSSを迎えることになった。
SSは難セクション、最後の逆転劇も予見されたが、基本的に去年と同様の設定(もちろん難度は上がっている)は、トップライダーには攻略する糸口があったようだ。トップ4人はSSの二つを見事にクリーンして、順位は変わらず。小川が2連勝でシーズン3勝目をあげ、黒山が2度めの2位、氏川は今シーズン初めて、3位に甘んじることになった。
氏川が圧倒的に優位だったチャンピオン争いは、小川が一気に2ポイント差に詰め寄ってきた。残り2戦、メーカー、チームが同じ二人の大接戦が続きそうだ。
国際A級
ランキングトップでこの大会を迎えることになった黒山陣(スコルパ)だが、ランキング2位の本多元治がこの大会にエントリーをしないことが判明した時点で、早々とチャンピオンが決定。チャンピオンとして、この大会を含む残り2戦を戦うことになった。
その黒山にトラブルが発生したのは第8セクション。こちらもあわやリタイヤかというマシントラブルだったが、ギヤを1速のみとすれば走れることがわかり、それで試合を続行する。これで黒山は、第8を含んで3つの5点を献上して、かなり厳しい戦いとなった。
そんな中、今シーズン3度めの出場となった小野貴史(ホンダ)が好調。第1で5点となって幸先は悪かったが、第6での5点とあわせて5点二つの10点で1ラップを終え、トップに立った。2ラップ目は減点を若干増やしたものの、黒山を含む誰にも追いつかれることなく勝利した。
トラブルに泣いた黒山はといえば、なんとその小野と同点。クリーン数の差で勝利はならず、2位表彰台獲得ということになった。結果的に、6戦を終えて3勝、2位3回という、終わってみればまずまずの結果となった。
3位には、前回大会に続き、山形の15歳、浦山瑞希が入った。ランキングも4位に浮上していて、黒山といっしょに10代のIASライダーとなる可能性も出てきた。
レディース
7名が参加のレディースは、なかなかの神経線だった。結果的に、トップ3には5点はひとつもなしという争いになった。
1ラップ目、わずか1点のリードながらトップに立ったのは中川瑠菜(ベータ)。続いてここまで2勝しているポイントリーダーの山森あゆ菜(モンテッサ)が3点、昨年のチャンピオンであるゼッケン1番の楠玲美(ホンダ)が山森と同じく3点、クリーン数差で3位。さらに小玉絵里加(ガスガス)が4点で続く。大接戦だ。
2ラップ目、流れは変わらなかった。暑い中、小玉が調子を崩して減点を増やし、楠がわずかに減点を増やす間に高校生デュオは1ラップ目の調子を維持した。
中川が1ラップ目も2ラップ目も2点、計4点で勝利。今シーズン3戦目の出場で2勝をあげることになった。
山森は3点と3点で6点で2位。この2戦、ポイントリードを減らしてしまっていた山森だが、これでほぼ元通りに。リードは21ポイントとなって、最終戦で4ポイント(12位)を獲得すれば、ライバルの順位に関係なく初のタイトル決定ということになる。
国際B級
ポイントリーダー村田隼(ヴェルティゴ)は、ここまでランキング2位に34ポイントの大差をつけて、この1戦でチャンピオンを決定するであろうと思われていた。しかし、エントリーしていたランキング2位の小原諄也(TRRS)が欠場。この時点で村田のタイトルは決まった。
チャンピオンとしての戦いもバッチリ。1ラップ目は2点のみ、2ラップ目はオールクリーンの快挙で、総減点わずか2点での勝利だった。
2位に入ったのは神長叡摩(シェルコ)。トータル4点は見事だった。3位には留学中で夏休みのみ全日本参加の辻本雄河(TRRS)が入った。6位までが、トータル一桁減点をマークした。
国際A級昇格争いは、村田と小原がランキング5位以内確定で決定。ランキング3位古市光(ホンダ・今回8位)58ポイント、4位本田隆史(ガスガス・今回25位)50ポイント、5位神長叡摩40ポイント、6位永久保圭(ベータ・今回6位)40ポイント、7位田上拓(モンテッサ・今回24位)35ポイント、8位大櫃千明(モンテッサ・今回23位)33ポイントと、最終戦でもう一波乱ありそうな展開となっている。