2025年6月8日
栃木県芳賀郡茂木町モビリティリゾートもてぎ
動員数:2,100人

愛知・岡崎大会、大分・玖珠大会と転戦した全日本トライアル選手権は、「モビリティリゾートもてぎ」を舞台とする第3戦を迎えた。2週間前にトライアルGPが開催されたばかりの会場だが、大雨と泥でたいへんだったトライアルGPに対して、今回はずいぶんコンディションがいい。

国際A級スーパー

世界選手権の素材をそのまま使ったセクション群は、高さのあるダイナミックな設定だった。舗装路を移動することですべての観戦が完了する、観戦者にはたいへん手厚いおもてなしがもてぎのトライアル大会の特徴。斜面に配置された大岩やブロック資材などがライダーを待ち受けた。

序盤、好調を競ったのは開幕戦、第2戦を連続2位としている黒山健一(ヤマハ)と絶対王者の小川友幸(ホンダ)。小川は古傷に加え、練習中の負傷もあって満身創痍。しかし減点を押えて試合をまとめる技はいまだ日本一。その底力には敬服するしかない。

小川友幸、もてぎ大会で2位

小川は第5、第6と連続して5点となって黒山、野﨑史高(ヤマハ)に逆転を許すも、1ラップ目終盤には再び野﨑を逆転。黒山にわずか1点差で1ラップ目を終了した。手術明けでまだ本調子ではない野﨑は小川に遅れること3点で3位。

第2戦で勝利してランキングトップに出た氏川政哉(ヤマハ)は、中盤の3連続5点で1ラップ目5位。4位の柴田暁(TRRS)を5点差で追う苦しい展開となっている。

昨年のもてぎ大会で優勝している氏川、今大会は4位

2ラップ目、1ラップ目の感触でライディングを修正してきたライダーが減点を減らしてくる。1ラップ目が不本意に過ぎた氏川は2ラップ目に減点を半分にまで減らして、柴田を逆転。3位野﨑と同点にまで追いついた。野﨑、小川は1ラップ目のペースをほぼ維持することになった。二人とも、2ラップ目終盤までは1ラップ目をしのぐ走りを見せていたのだが終盤に連続して5点を喫して、1ラップ目の走りを超えることができなかった。

そんな中、氏川同様に減点を半分近くまで減らしてきたのが黒山だった。黒山は、第3セクションでの5点以外、2ラップ目には5点なし、1ラップ目の自身のベストスコアを8点も減らして好調のままゴールした。

SSを前に優勝を確定していた黒山健一とTY-E3.0

10セクション2ラップのゴール時点で、黒山のリードは11点。黒山の勝利は確定的だ。2位小川は減点39点で、3位野﨑とは6点差、野﨑と4位氏川は同点で、この3人はSSでの逆転があり得る。

電動による3位表彰台。野﨑史高

5位柴田は6位小川毅士(ベータ)と1点差。さらに小川に5点差で、前回初めて表彰台に乗った久岡孝二(ホンダ)、久岡に2点差の武田呼人(ホンダ)も、SS次第で5位までポジションを上げる可能性は残していた。

残るSS進出ライダーは、ベテラン田中善弘(ホンダ)と、IASにコマを進めてまだ3戦目の宮澤陽斗(ベータ)。宮澤の第1セクションのクリーンは素晴らしかった。

SSは、トップグループにとってはクリーンの出る設定で、確実に最少減点でそうはしながらライバルの失敗を待つ展開となった。真っ先にクリーンを出して逆転を狙った武田がSS第2で5点、久岡は両SSをクリーンして、徐々にポジションが確定していく。

1点差で5位を争う柴田と小川毅士は、その順位争いのプレッシャーが減点に直結したトライを見せた。先を走る小川が1点をつけば、直後の柴田も1点を失い、さらにSS第2でも同じように1点ずつを失って、結果両者の減点差は変わらず。柴田は開幕2戦の不調を、少し取り戻しての5位獲得となった。

5位の柴田暁
6位になった小川毅士は、柴田と1点差

そして同点の野﨑と氏川は、両者一歩も譲らずクリーン合戦。となると、クリーン数の多い野﨑が3位入賞となって決着。小川友幸も、ここは確実に両SSをクリーンして、上出来の結果という2位入賞の戦いを締めくくった。

5点を取ろうとも勝利が決まっている黒山だったが、SS第1で1点をついたのがちょっと悔しい。最後のSS第2は、眼下で見守っているお客さんに笑顔と華麗なクリーンを披露して勝利のゴールに飛び込んだ。

黒山の勝利は2022年シティトライアルジャパン大会以来。そして2023年以来のTY-Eでの参戦で、黒山の初勝利となった。

ランキングは黒山が10ポイントリード。小川友幸と氏川は1ポイント差でランキング2位を争っている。

国際A級スーパークラス表彰式。左より、2位小川友幸、優勝黒山健一、3位野﨑史高
国際A級

第1セクションからいきなり渋滞と、セクションの厳しさにも増してむずかしい戦いを強いられたこのクラスだが、開幕戦で勝利、そして九州と今回のインターバルでSSDTに出場してきた高橋寛冴(シェルコ)が見事2勝目を飾った。高橋は4点のタイムオーバー減点をとりながも、2位平田貴裕(スコルパ)に1点差で逃げ切った。

国際A級、今季2勝目をあげた高橋寛冴

前回勝利の小野貴史(ホンダ)は今回4位で、高橋を6ポイント差で追うランキング2位につけている。

中学生ライダーの対決、前回初表彰台を獲得した永久保圭(ベータ)は今回は8位、黒山太陽(シェルコ)は10位だった。

国際A級表彰式。左から2位平田貴裕、優勝高橋寛冴、3位本多元治、4位小野貴史、5位砂田真彦、6位村田慎示
 レディース

9名が参加。いつものレディースクラスのモノサシからすると高い高い岩がレディースラインに現れるなどして、なかなか厳しい戦いとなった。

1ラップ目、唯一20点を切ってまとめてきたのが2連勝している中川瑠菜(ベータ)。中川の減点が12点で、2位小玉絵里加(TRRS)が20点。そして3位には、小学生の寺澤心結(ベータ)が小玉に4点差で迫っていた。

レディースクラス3連勝、中川瑠菜

2ラップ目、中川は1ラップ目と同じ12点。しかしこれにわずか1点差の13点で2ラップ目をまとめてきたのが小玉。1ラップ目の点差があるので優勝争いとはならなかったが、1ラップでクリーン3を記録したのは小玉だけだった。

2位の小玉絵里加

寺澤はわずか1点差ながら3位を守って初めての表彰台獲得。4位は齋藤由美(ベータ)、2ラップ目に19点の好スコアをマークした兼田歩佳(TRRS)が齋藤と同点ながらの5位となった。

小学生の寺澤心結が3位に
国際B級

開幕戦5位、第2戦で2位となっている寺澤迪志(ベータ)が、他をまったく寄せ付けずの快勝。寺澤は1ラップ目がたったの1点、2ラップ目が2点で、トータル3点。2位の大内朋幸(ヴェルティゴ)が減点10点、3位の西村健志(TRRS)が減点20点だから、寺澤の快調ぶりがわかる。

国際B級は、寺澤迪志が圧勝する

寺澤はこれでランキングトップにも進出。開幕3戦にして、3人の勝者が出たこのクラス、シーズンの行方が楽しみだ。

国際B級表彰式。左から、2位大内朋幸、優勝寺澤迪志、3位西村健志

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