2025年4月13日
愛知県キョウセイドライバーランド
動員数:1,500人
2025年全日本選手権開幕戦は、今年も愛知県岡崎市キョウセイドライバーランドでの開催。土曜日午前中はいいお天気だったが、狙いすましたように日曜日は朝から雨が降り、表彰式の頃に止んでくるという意地悪なお天気となった。
国際A級スーパー
ルーキーは2024年国際A級でランキング2位となった宮澤陽斗(ベータ)のみ。今回の参加は16名だった。ゼッケン5をつける権利もある藤波貴久はヨーロッパでの監督業に戻り、10番黒山陣は世界戦T3に出場中、14野本佳章と19藤原慎也はそれぞれオートレースやラリーに向けて欠場となっている。
雨は確実に降るということで雨設定とはなっていたが、それでもいつもよりセクションは辛口。参加人数が多いことでの時間配分と、抜けられるセクションと確実にクリーンできるセクションをしっかり走ることが必要だと、下見を終えたライダーは口々に語っていた。
第1セクションから3点か5点の攻防となった。そんな中、唯一2点でここを抜けたのが小川友幸(ホンダ)。14回の全日本チャンピオンの幸先はいい。しかし小川は負傷を抱えていて、それがまだ完治していない。どこまで走れるか、そんな状況で戦っていた。

小川と氏川政哉(ヤマハ)以外全員5点の第2セクションの後、第3では、久岡孝二(ホンダ)、野﨑史高(ヤマハ)、黒山健一(ヤマハ)がクリーンをたたき出した。雨で泥々ながら、クリーンが出せるとなると、戦い方もまた複雑になる。
今回、最もクリーンが出やすかったのは第9セクションだった。けわしい崖に点在する大岩を攻略していくもので、けっして簡単ではないのだが、雨の影響をそれほど受けないのが幸いしたようだ。

しかしそれでもミスは出るもので、氏川はここで1点を失う。1点はそれほど悪い結果ではないが、氏川はここまで一つもクリーンがない。その後の終盤セクションでも3連続5点を取って、さらに2点のタイムオーバー減点もあって、氏川の1ラップ目は5位。今年から黒山と同じくヤマハファクトリーレーシングチーム入り、最新型のTY-E3.0を託された氏川だが、ちょっとむずかしい戦いになっている。

昨シーズン、相次いでひざに大けがを負った二人、野﨑と武田呼人(ホンダ)は、対照的だった。野﨑はシーズンの半分を欠場することになるなど負傷もより深刻だったが、1ラップ目は3位だった。対して武田は、チーム三谷ホンダのメンバーとなり、小川と同じツインプラグのファクトリーマシンを手にしたものの、思うような走りができずに1ラップ目を9位としてしまった。
結局トップは小川友幸だったが、2位黒山にはわずか1点差。小川に10点差で3位野﨑、野﨑と同点で小川毅士(ベータ)、さらに1点差で氏川、さらにさらに氏川に1点差で柴田暁(TRRS)、その氏川に2点差で武田と田中善弘(ホンダ)が同点で並ぶという悪天候の中、1点を争う戦いが続いていく。

2ラップ目、わだちが深くなったり泥がこなれたり、あるいは現れたりと、コンディションにも変化が出る。調子を上げてきたのが氏川。クリーンは第1と第9、第11の3つだけだったが、確実に原点を減らして、2ラップ目だけならトップスコアをマークした。
小川友幸は、第10セクションでクラッシュ、フロントフォークのスタビライザーがちぎれて、前輪がふらふらするトラブルを抱えてしまった。それでも第11をクリーンして、やるべきことをやって結果の集計を待った。
実はこの頃、悪天候を考慮して、SSの中止が発表されていた。接戦だから逆転劇は期待できたものの、SSの性格上、ライダーのリスクも高いし、お客さんも最後の戦いを見たい半面、冷えきったからだを早く温めたい相反する思いがあったにちがいない。SSの中止は、会場のみんなにとって、まず安堵の結果となったはずだ。
黒山は最終12セクションをただ一人クリーン。もしかしたら、という思いで、やはり結果の集計を待った。2ラップ目のトップは氏川の25点だったが、続くは3人が同点の31点。小川友幸、野﨑、黒山が並んでいた。
結果、わずか1点差で、小川友幸の開幕戦勝利が決まった。開幕前の負傷、悪天候、厳しいセクション、終盤のマシントラブルなど、小川を襲ったさまざまな逆境を思うと、この結果は奇跡に近い。もともと開幕戦ではなかなか勝利できない小川だった。去年に続き、ジンクス破りのニュー小川友幸、誕生か。


2位黒山、3位氏川、4位野﨑とヤマハトリオがゼッケン順に並び、5位は小川毅士、小川毅士に同点クリーン数差で武田呼人が6位となった。
7位に田中、8位に今回は調子をくずしたままで終わってしまった柴田、9位にマシンを乗り換えた武井誠也(ベータ)、10位が久岡だった。
今回は16名の参加で、初めてのIAS参加でペース配分に戸惑ったか、1ラップ目に5点のタイムオーバー減点をとった宮澤が最下位となって、デビュー戦でのポイント獲得を逃している。

国際A級
この日の各クラスの中では、この国際A級が優勝減点の最も少ないクラスとなった。厳しいコンディションの戦いであることには変わりはなかったが、それでも1回の足つきにこだわるトライアルらしい戦いができたのが、このクラスのトップ争いだったようだ。
こういった悪天候、厳しいコンディション、しかもむずかしい時間配分などが必要な大会では、ベテラン勢が強い。ただのベテランではない。IASを戦ってきた猛者やこのクラスのチャンピオン経験者もいるのだから、若手はよほど高い技術を発揮しなければ、経験者の試合運びにかなわない。

そんな中、1ラップ目のトップは22歳、若手の高橋寛冴(シェルコ)だった。2位小野貴史(ホンダ)に4点差たった。高橋は2020年にIBランキング3位でIAに昇格してきた。今年は5年目のIAシーズンになる。昨年の九州で3位表彰台に上がったが、まだ優勝経験はない。
2ラップ目、大ベテラン、本多元治(ホンダ)が追い上げてきた。対して高橋はミスが出た。1ラップ目は見事なスコアだったが、2ラップ目は倍以上に減点を増やしてしまった。
2ラップ目、トップスコアをマークしたのは本多で、高橋は4位だった。1ラップ2ラップ目の減点をトーするすると、高橋は本多と同点、クリーン数差の勝負で、高橋の初優勝が決まった。
高橋はこの後九州大会を走ったあと、イギリスはスコットランドの伝統イベント、SSDTに参加する。自身にとって大きなトライのシーズンに、自らはずみをつけた印象だ。
IBから昇格したばかりのルーキーは、02番の永久保圭が12位に入る大金星。永久保と同い年の13歳ながらIAの先輩である黒山太陽は、2ラップ目のクラッシュでマシントラブルを起こしながら完走、8位に入っている。若いパワーの台頭も楽しみだ。

レディース
今回は9名が参戦。初出場は小学生の寺澤心結(ベータ)と清水さやか(ホンダ)。
優勝は、やはり実力が一枚上手か、中川瑠菜(ベータ)。2位に14点離して減点52でつかんだ勝利だった。小玉絵里加(TRRS)は兼田歩佳(TRRS)が初参戦を2点差で下して久々に2位を得た。兼田は初の3位入賞になる。

2位争いからは10点ほど離されたが、4位争いも接戦だった。齋藤由美(ベータ)と寺澤は1点差で齋藤の勝ち。11歳のデビュー戦は堂々たる5位入賞。第1セクションのクリーンは見事だった。
6位寺田智恵子(TRRS)と7位中澤瑛真(ベータ)、8位清水さやかも1点差ずつの勝負。それぞれの戦いがおもしろい。

国際B級
ベテラン勢がひしめくこのクラスにあって、未知の才能も毎年登場してくる。2025年は、開幕から新勢力が表彰台のワンツーを占めた。優勝は12歳の岡直樹、そして2位が15歳の木村倭。二人とも去年のトライアルGC大会でIBに昇格してきたエリートだ。GCでは木村が優勝、岡は3位だった。

岡は選手権に出るようになって3年目、木村は2年目ということで、将来が楽しみ。木村はIB昇格1年生にして、世界戦T3にスポット参戦の予定だということだ。
3位山口太一を含め、表彰台の3人は3人とも、2024年実績がない選手達となった。新しい才能は、確実に育っている。
