10月3〜5日、アメリカのインディアナ州にあるアイアンマン・レースウェイにて、モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ(MXoN)」が開催。日本代表チームは、昨年に引き続き、2年連続で参戦します。

代表ライダーの選抜理由は? チームとしての今年の目標は? ライダーがこの大会にかける思いとは? この記事では、日本代表チームをより深く知るべく、日本代表のチーム監督である熱田高輝さんや各ライダー、そしてチームマネジメントを担当しているTEAM JAPAN MX PROJECTの代表理事、元木龍幸さんにインタビューをしました。

日本代表ライダーの選抜方法とは?

そもそも日本代表として日の丸を背負うライダーはどのように選抜されているのかというと、日本モータースポーツ協会(MFJ)と、日本代表のチームマネジメントを担うTEAM JAPAN MX PROJECTによる「日本代表選考委員会」が代表メンバーの選出を行っています。

https://teamjapanmx.com/about

代表候補はシーズン前半戦の成績を元に、実力のあるライダーが選出されます。今年の日本代表ライダーは以下の通り。AMAスーパーモトクロスシリーズで活躍する下田丈選手をはじめ、D.I.D全日本モトクロス選手権IA1クラスから大倉由揮選手、IA2クラスから中島漱也選手が選ばれました。

・MXGPクラス(450cc): 大倉 由揮(おおくら ゆうき、26歳)
・MX2クラス(250cc) :中島 漱也(なかじま そうや、23歳)
・OPENクラス(排気量自由): 下田 丈(しもだ じょう、23歳)

チーム監督、熱田高輝さんが見る今年のMXoN日本代表

代表メンバーの下田選手はAMAスーパーモトクロスシリーズでチャンピオン争いを繰り広げており、世界でも認められている実力の持ち主。日本代表として出場するのは2022年以来2回目です。また、大倉選手は第4戦終了時点でIA1クラスポイントランキング3位につけており、MXoNへの出場は今回で3度目です。一方、中島選手は初参戦ではありますが、ここ数年で海外トレーニングを重ね実力を伸ばしているライダー。期待が高まるメンバー構成となっています。

熱田高輝さん(2024年MXoN参戦時)

チーム監督の熱田高輝さんは、1996年MFJスーパークロス選手権のチャンピオンであり、AMAプロモトクロス選手権にも出場経験があります。現役を引退して以降、2017年にMFJレーシングアドバイザーに、そして2018年にMXoN日本代表監督に就任。コロナ禍による開催中止や、日本代表の出場見送りなどもあり、就任してから2018・2019・2022・2024年に帯同しました。熱田さんにとって5回目となる今回、日本代表チームをどう見ているのでしょうか。

「代表候補は実力、つまりシーズン前半あたりの成績をもとに選考委員会で選んでいます。ただ、選ばれたライダーが参戦できるかどうかはまた別で、ライダーの契約状況やメーカーなどの都合が全て揃わないと出場はできません。そんな中、全てクリアして出場権を得た下田選手、大倉選手、中島選手が今年の日本代表を担っています。

下田選手は今年AMAスーパーモトクロスシリーズで優勝を重ねていて、調子の良さが目に見えてわかります。彼が走り慣れているアメリカが開催国ということで、MXoNの舞台で優勝することは夢ではないと思います。また、普段レースをしている250ccマシンではなく、450ccに乗って戦うので、どんな走りを見せてくれるのか僕自身も注目しています。実力や経験値もメンバーの中でずば抜けているので、チームを引っ張る存在になると思います。ただ、2022年に彼が出場した時は、チームとして彼1人の実力に任せすぎていた部分がありました。そのプレッシャーを本人も感じていたと思いますし、実際転倒が相次いだりとレースで彼の実力を発揮できませんでした。その反省を踏まえて今年はうまくコンタクトをとって、チームで連携をとっていきたいです。

大倉選手と中島選手はオフシーズンや夏のインターバル期間でそれぞれ海外トレーニングを積んでいます。もっと実力を伸ばしたい、もっと高みを目指すという心意気を感じますし、MXoNにかける想いを強く持つライダーが揃っていると感じます。現地では特にMXoN独特の雰囲気に飲まれてしまって、身体が硬くなってしまうライダーも多いので、2人には海外トレーニングの経験を現地で生かしてほしいと思います」(熱田さん)

2024年MXoN

また、チームとしての目標と戦略についてはこう語ります。

「チームとしての目標は決勝進出、そして過去最高位の6位を超えることです。

グリッドの順番などの戦略は現地でコースやレース状況を見ながら詰めていきます。レース前でいうと、暫定エントリーリストが確定する時にライダーの出場クラスを一部変更しました。具体的には、MXGPクラスに出場予定だった下田選手とOPENクラスの大倉選手をスイッチしました。MXGPとMX2クラスは排気量が決まっていて、各排気量のマシンで高い実力を誇るライダーをチョイスするチームが多いです。例えばMXGPクラスにはオーストラリアのジェット・ローレンス選手やアメリカのチェイス・セクストン選手がいますし、MX2クラスにはアメリカのヘイデン・ディーガン選手が出場します。一方OPENクラスは排気量自由で250ccと450ccの混走になり、予選で下田選手が上位に入る確率がより高くなると思いました」(熱田さん)

なお、日本のライダーがMXoNに出場する意味について、熱田さんは「普段全日本モトクロス選手権をメインでレースをしているライダーにとって、MXoNに出ることは自分自身を成長させるきっかけになります。世界中のトップライダーと一緒にレースをすることで、気づかないうちに周りに引っ張られてレベルが上がっていくんです。実際にMXoNを終えてから著しく成長したライダーも見てきました」と、日本のさらなるレベルアップを期待していると話しました。

中島と大倉、MXoNに向けて

中島漱也「MXoNのためにこのインターバルはアメリカへ」

「MXoNは小さい頃から見ていた舞台で、日本代表として走ることは自分の夢でもあったのですごく嬉しいです。代表に選ばれたと聴いた瞬間は、チャンピオンを獲った時よりも喜びを感じました(笑)。

第4戦が終わってからのインターバル期間は、6週間ほどアメリカに行き、トレーニングをしていました。練習場所としてアメリカを選んだのは、MXoNを意識してのことで、あえてです。会場のアイアンマン・レースウェイにも行きたいということは現地で面倒を見てくれていた方にも伝えていて、一度実際にコースを走る機会をもらいました。実際走ると映像で見ていたのとは全然印象が違って、わだちはどんどん掘れていくし、コース整備の仕方が日本と違うし……、事前に見ておくことができて本当に良かったです。

個人的には、順位などの具体的な目標はあまり決めていません。1レースごとに全力を出すことができるかが結果につながってくると思うので、目の前に集中していきたいです」

大倉由揮「今回こそはなんとしてでも決勝に」

「色んな国のライダーが集まるMXoNで経験を積めることは、自分のスキルアップにもなりますし、嬉しい気持ちもあります。一方で、これまで自分が参加している年に一度も決勝へ行けていないので、今回こそはなんとしてでも結果を出したいという責任も感じています。

ここ数年シーズンオフやインターバル期間に海外へ行ってトレーニングを重ねています。この夏のインターバルはヨーロッパへ行き、現地のサンドコースで鍛えてきました。また、ローカルレースにも積極的に出ることで経験値もさらに上がっています。アメリカはまたコースが違うと思いますが、これまで積み上げてきた経験を生かしていきたいです」

TEAM JAPAN MX PROJECT代表理事、元木龍幸さん

TEAM JAPAN MX PROJECTは、MXoN日本代表チームの派遣を実現するための協賛活動や広報活動を担っており、選考委員会としても代表候補の選出や決定に関わっています。それ以前はFIMジュニアモトクロスワールドチャンピオンシップへの派遣にも携わり、現在全日本や海外で活躍するライダーたちを、幼少期から海外の舞台へ送り出してきました。

2024年MXoN

TEAM JAPAN MX PROJECTを立ち上げた代表理事の元木龍幸さんは1990年全日本モトクロス選手権国際B級125ccクラスチャンピオンで、1993年に世界モトクロス選手権250ccクラスに出場した経歴を持ちます。そんな元木さんがMXoNにかける想いとは。‎

「私は昔、モトクロスチームBOSSレーシングでキッズライダーの育成に力を入れていました。また、FIMジュニアモトクロスワールドチャンピオンシップというキッズライダーの世界大会にも関わっていて、その当時ジュニアライダーの中で一番速かった面々を派遣しました。それこそ下田丈選手や中島漱也選手を連れて行っていたんです。私の思いは今もその頃と変わっていなくて、連れて行く場所がMXoNになっただけだと思っています。 ‎

世界を見ることによって目標も高くなるし、もっとやらないといけないということに気づくのが一番肝心だと思うんです。日本でどれだけ勝っても、世界にはもっと速いライダーがいるということを知らないといけません。さらに、今は下田選手が世界へ羽ばたき、日本人として偉業となる活躍を続けています。そんなライダーが目の前にいるのに、今MXoNで世界と戦わないというのはもったいないというのが私の思いです」(元木さん)

監督・ライダー・TEAM JAPAN MX PROJECT代表理事、それぞれに話を聞き、日本代表チームがMXoNにかける熱意、そしてMXoNの舞台で得られるものは特別だということが伝わってきます。

なお、9月21日に行われるD.I.D全日本モトクロス選手権第5戦近畿大会の会場では、お昼休みにMXoN日本代表の壮行会が行われます(※下田選手は都合により不参加)。ぜひ会場で、ライダーに直接応援の声を届けてください。

MXoN 大会情報
Monster Energy FIM Motocross of Nations
日 程:2025年 10 月 3 日(金)~5 日(日)
会 場:アメリカ/Ironman Raceway
Web サイト:https://mxonusa.com

D.I.D 全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第5戦 近畿大会情報
日程:9月20〜21日

コメントを残す