大量の雨と一時の晴れ間。
ワイルドなコンディションとなったIA限定R7 HSR九州大会をレポート!

第7戦はIAクラスのみの1DAY開催で行われた。会場のHSR九州はアップダウンが少なく、コース幅が広いのが特徴。今大会はIA限定開催ということもあってコースのレイアウトがハイレベル向けに変更され、30m級のジャンプやリズムセクションが新設されるなど、ハイスピードかつアグレッシブな走りが見どころとなった。当日は朝から雨が降り、コースはマディコンディション。路面は滑りやすく、走行ラインを間違えるとぬかるみにはまりスピードを落としてしまうこともあるため、ベストラインを見極めてスムーズに走るテクニックと、路面に囚われすぎないメンタルの強さが、勝敗を分けるポイントとなった。また、今大会では各クラス総合15位以内に入ったライダーのみが出場できるIA-OPENクラスが開催。IA1クラスとIA2クラスのライダーによるバトルにも注目が集まった。

なお、今回はスペシャルゲストとして、AMAスーパークロス・プロモトクロス・スーパーモトクロスの舞台で活躍を続ける下田丈が来場。サイン会やトークショー、抽選会などが行われた。

D.I.D JMX 2023 R7 HSR九州大会 観戦情報


IA1

圧倒的強さでジェイ・ウィルソンがチャンピオンを獲得

1DAY開催ということで、予選は20分のタイムアタック形式、決勝は20分+1周の2ヒート制で行われた。今大会は、#27ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM / ヤマハ YZ450FM)の年間チャンピオン獲得がかかった大事な一戦となる。さらに、開幕戦で負傷し欠場していた#3渡辺祐介(YAMAHA FACTORY RACING TEAM / ヤマハ YZ450FM)と、事前の練習で怪我を負い前戦を欠場した#5小方誠(TEAM HAMMER / ホンダ CRF450R)が復帰するということで、トップ争いの行方に注目が集まった。

予選ではウィルソンがトップタイムを記録するも、終盤で激しく転倒。このダメージが心配されたが、ヒート1では1周目からトップに立ち、転倒の影響を見せない軽快な走りで後方との差を広げていく。一方、2番手には好スタートを決めた#4大城魁之輔(Honda Dream Racing Bells / ホンダ CRF450R)、3番手には小方がつけていたが、1周目で#2能塚智寛(Team Kawasaki R&D / カワサキ KX450-SR)が小方をパスし3番手に浮上した。レース前半でウィルソンは後方と約11秒の差をつけ単独走行へ。大城と能塚の差も徐々に開き、トップ3の間隔が空いた状態でレースが進んでいった結果、1位ウィルソン、2位大城、3位能塚という順位でフィニッシュ。

ヒート2では小方がスタートからトップに立つと、その後ろに大城とウィルソンが続いていく。ウィルソンが大城をパスし2番手に浮上すると、その勢いのまま小方を猛追。しかし、小方も譲らずウィルソンを抑え、1周目をトップで通過する。両者の攻防戦が続く2周目、ウィルソンがトップに浮上。小方も食らいついていくが、その差は徐々に開いていった。一方、3番手を走っていた大城は1周目で順位を落とし、3番手に#8内田篤基(Yogibo MOUNTAIN RIDERS / カワサキ KX450)、4番手には能塚がいる。能塚は内田との距離を徐々に詰めていき、レース前半で3番手に浮上。ウィルソンがリードを保った状態でレースは進み、結果はウィルソン、小方、能塚という順位でゴール。ウィルソンは無敗の17連勝で、見事IA1クラスの年間チャンピオンを獲得した。

#27ジェイ・ウィルソン
「雨がたくさん降ってマディコンディションになって、難しいレースだったね。予選ではクラッシュしてしまったりと、今季は怪我も多くて、簡単なシーズンではなかった。そんな中で全勝することができて、IA1のチャンピオンにもなれて本当に良かったと思う。レースだけじゃなく、マシン開発やコーチング、チームマネジメントなどいろんな仕事をする機会をくれたヤマハに、IA1チャンピオンを贈ることができて嬉しいよ。また、チャンピオン獲得は、オーストラリアを離れて日本についてきてくれた妻と娘にも贈りたいと思う。毎戦彼女たちに支えられてこの結果があるから、とても感謝している。残り2戦も勝てるように頑張っていくよ」

#2能塚智寛
「スタートがどれも良くはなくて、追い上げのペースもヒートごとにばらつきがあったのでそこが課題かなと思います。コースは抜きどころがなかなかなかったけど、自分の地元コースなので、マディの時の雰囲気やコース状況は理解できました。あとは地元だったのもあって、楽しく走れましたね。ただ、結果には結びつかなかったので、次戦も優勝目指して頑張ります」

#4大城魁之輔
「ヒート1でジャンプの着地で足を痛めてしまいました。その後はジャンプをあまり飛ばない方向で走っていたのですが、スピードもそこまで落ちず、なんとか2位になれました。ヒート2・ヒート3は自分のミスが多くて不甲斐ない走りをしてしまいました。めちゃくちゃ悔しいです。勝ちたいです!」

#5小方誠
「マディは得意だし、マディだと全体的にペースが落ちたり、身体にかかる負荷が少なくなるということもあって、復帰戦の状況としては良かったなと思います。スタートは最近調子良いですね。チームメイトの鈴村選手に前のレースの状態などを聞いたりして調整できたのも良かったのかなと思います。表彰台に乗りたいという気持ちがあったので、今回の復帰戦で表彰台を獲得できて嬉しいです」

IA2

中島、池田が今季2勝目を飾る

IA2クラスも予選は20分のタイムアタック形式、決勝は20分+1周の2ヒート制で行われた。前戦でポイントリーダーの#58ビクトル・アロンソ(Auto Brothers / ヤマハ YZ250F)と、ポイントランキング2位につける#5横澤拓夢(TKM motor sports いわて / ホンダ CRF250R)の差が17ポイントにまで縮まり、結果によってはポイントランキングが変動する、チャンピオン争いに関わる大事な一戦となった。

ヒート1は、#9鴨田翔(Kawasaki PLAZA 東⼤阪/カワサキ KX250)がホールショットを決めると、#7鈴村英喜(TEAM HAMMER/ホンダ CRF250R)、#4中島漱也(bLU cRUレーシングチーム鷹 / ヤマハ YZ250F)、横澤が続いていく。ポイントリーダーのビクトルはスタートで出遅れ、13番手からの追い上げを強いられた。走行ラインの選択肢が絞られるマディコンディションの中、中島は鈴村をかわすと、ラインを変えながら鴨田に迫り、2周目でトップに浮上。徐々に鴨田との差を広げ、単独走行に持ち込んだ。一方、3番手以降は鈴村、横澤、#18池田凌(Yogibo MOUNTAIN RIDERS / カワサキ KX250)が続く。レース後半に池田が横澤をパスし4番手に上がると、そのまま鈴村をとらえ3番手に浮上。中島、鴨田、池田という順位でフィニッシュし、中島が開幕戦以来2度目の優勝を飾った。

ヒート2は、好スタートを決めた#17田中淳也(YSP浜松BOSS RACING / ヤマハ YZ250F)がトップに立つと、池田、横澤、中島が追いかけていく。ビクトルはスタートで出遅れ、序盤で8番手まで追い上げるも、転倒し15番手に順位を落とす。レース前半、トップを快走していく田中だが、ミスによりスピードダウン。すると、2番手につける池田がすかさず仕掛け、トップに浮上。そのまま後方との差を広げていった。一方、3番手を走る横澤を中島がパスすると、そのまま田中にも迫っていき、レース中盤で2番手にポジションアップ。結果、1位池田、2位中島、3位田中という順位でチェッカーを受け、池田が今季2勝目を獲得した。

#4中島漱也
「マディは得意だし、HSR九州も相性が良いコースなので、朝から調子良く乗れていました。欲張らずに自分の走りをすれば勝てると思っていたので、自分の走りに集中して、優勝することができました。ヒート2は追い上げになったのですが、ヒート1で優勝したことでより自信もついていたので、そこまで焦らず走ることができました。1日を通して自信を持って走れましたね」

#18池田凌
「ヒート1はスタートで出遅れましたが、ペースは良かったので、時間がある限り追い上げていこうという気持ちで走っていました。2番手も見えていましたが、通常より10分短い20分ということもあって追い上げ切れませんでした。2ヒート目もスタートはよくなかったのですが、スタートから2コーナー行くまでの間で上手く抜けることができましたね。前に田中選手がいましたが、気持ちは落ち着いていて、後ろにつきながら抜くタイミングを見極めていけたのが、優勝につながったのかなと思います」

#17田中淳也
「ヒート1はスタートが上手くいかず、ペースも上がらなくて、改善点が多いレースだったので、その改善点を踏まえてヒート2に挑みました。スタートも練習どおりに上手く決まって、前に出ることができました。3位に下がってはしまいましたが、転倒などもなく、レース内容としてはよかったと思います」

#9鴨田翔
「今回は雨ということで、スタートが大事なレースだったのですが、無事にスタートを決めることができて、前に出ることができました。トップを走っていたのですが、いつも一緒に練習をしている中島選手に抜かれて、離れてしまったので、めちゃくちゃ悔しいです。次もスタート決めて、誰の泥も浴びないように1位で終わりたいと思います」

IA-OPEN

IA1ジェイ・ウィルソンが完勝。IA2浅井が5位で健闘

今大会最後のレースとして、IA1クラスとIA2クラス、各クラスの総合15位以内に入ったライダーが参加できるIA-OPENクラスが開催された。レース時間は15分+1周と超スプリントレース。普段は競うことのないIA1ライダーとIA2ライダーによるバトルがどのように繰り広げられるのか、多くの注目が集まった。

スタートで前に出たのは小方誠。続いて、ウィルソン、大城、大倉、富田、能塚といった、IA1ライダーが上位を独占。パワーのある450cc勢がスタートから前に立つ展開となった。オープニングラップでウィルソンがトップに浮上。一方、2番手以降は激しい接戦となる。小方がミスによりタイムロスし、その間に距離を縮めた大倉がパス、続いて能塚も順位を上げていく。能塚が大倉に迫るも、エンジンが止まったことにより大倉がリードを保ち、さらに小方と富田がポジションアップ。しかし能塚は復帰後すぐに追い上げ、富田と小方をパス。レース前半でウィルソン、大倉、能塚、小方というオーダーになった。

レース中盤、大倉が転倒し、能塚が2番手に、小方が3番手に浮上。さらに後方では、5番手を走る池谷を中島と浅井がパス。さらに、浅井が中島をかわし、IA2ライダー最上位となる5番手に浮上した。能塚はクラス内トップタイムの2分10秒を叩き出し、ウィルソンを追いかけていくが、順位は変わらない状態でタイムアップ。1位ウィルソン、2位能塚、3位小方、続いて大倉、浅井、中島という順位でレースを終えた。なお、IA2クラスのポイントリーダーであるビクトルは9位でフィニッシュ。スタートから上位につけていた大城は序盤で転倒し、リタイアとなった。

#27ジェイ・ウィルソン
「後ろから能塚選手が来ていることはわかっていたから、そこまで余裕のあるレースではなかった。彼も速いので、差を広げていこうと頑張ったよ。トップを守り切れてよかった。天候が悪い中、応援してくれたファンのおかげでIA-OPENクラスのレースも頑張ることができたよ。また、いつもサポートしてくれる妻と娘、ヤマハ関係者の方々に感謝します」

#2能塚智寛
「一回エンストして追い上げのレースでした。走りとしては悪くなかったんですけど、追いつくことができず、負けてしまいました。この寒い中、雨の中、僕たちの泥遊びに付き合ってくれた観客の方に感謝したいです。僕の地元である九州の方々が熱い応援してくれたおかげでこのレースも頑張れました。ありがとうございました」

#5小方誠
「もう少し前に行きたかったのですが、ジェイ選手も能塚選手も速くて3位になってしまいました。ただ、今回は復帰戦ということで、表彰台に登れたことはそこそこ満足という感じです。今回実力が足りなかったので、次のレースに向けて練習を重ねていきます」

SPECIAL

下田丈来場、サイン会にトークショーで盛り上がる

AMAスーパークロス・プロモトクロス・スーパーモトクロス、今季全てのレースを終えた下田丈が、今大会に来場した。当日はさまざまなイベントが予定され、下田はまずIA1クラスヒート1の動画配信にゲストコメンテーターとして登場。AMAの舞台で活躍を続ける下田目線によるコメントでレースを盛り上げた。また、お昼休みには本部横のテントでサイン会を実施。ファンの方はサインを受け取る際に応援の声を届けることができたのではないだろうか。さらに、IA-OPENクラス決勝の前には本部前ステージにてトークショーと抽選会を開催。今季の振り返りや来年に向けた抱負など、下田の話を直接聞く貴重な機会となった。


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次戦は3週後10/28(土)- 29(日)、埼玉県川越市 オフロードヴィレッジにて開催。
今回まさかのストレートで決定したIA1クラスを除く公認3クラスのチャンピオン争いは激化。
さらに、全日本コースと見守るファンの声援を体感できるたのしい承認クラスとの混合フォーマット。
交通アクセスも便利な埼玉トヨペットCUPへぜひお越しください。


D.I.D JMX 2023 R8 埼玉トヨペットCUP 観戦情報

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