4月21日(日)、D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2024第3戦が熊本県にあるHSR九州で開催された。第3戦に予定されていた中国大会が中止になったことにより、大会は4月20日に第2戦、21日に第3戦と2日間連続で行われた。そのため大会は1day開催となり、IA1・IA2・IB OPEN・LMXの4つのクラスのみが開催された。
前日の降雨の影響が残る中、大会当日は午前中から雨が降り始める。午後にはさらに雨足が強まり、コースコンディションは稀に見るハードマディとなった。特に大雨の影響を受けたヒート2では各所でスタックが相次ぐ展開で、大きな番狂せが起きた大会となった。
D.I.D JMX 2024 R3 HSR九州大会
日時:2024年4月21日(日)
会場:HSR九州(熊本)
天気:雨
観客動員数:1375名
IA1
大倉・横山が混戦のマディレースを制す
IA1クラスは、開幕戦・第2戦と#1ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM/ヤマハ YZ450FM)が全ヒートで優勝し5連勝を記録。今大会もウィルソンがレースを制するのか、それとも他のライダーが勝利を収めるのか。
ヒート1でホールショットを取ったのは好スタートを切った#41横⼭遥希(Honda Dream Racing LG/ホンダ CRF450R)、2番手には#2⼤倉由揮(Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)、3番手にウィルソンが続いていく。
1周目からウィルソンと大倉の激しい2番手争いが繰り広げられ、何度も順位を入れ替えながらレースは進行していく。攻防戦が繰り広げられる中、4周目にウィルソンが転倒。横山、大倉、ウィルソンという順番になり、横山が単独逃げ切りを狙う形となった。レース中盤は上位3名が2分11〜13秒というハイペースで4位以下を大きく引き離していく。そのまま横山がトップを死守していくかと思った矢先、12周目に転倒で3番手にまで後退。トップに大倉、2番手にウィルソンがポジションを上げた。その後ウィルソンが大倉に迫ろうというところで転倒。横山がウィルソンをパスして2番手に躍り出る。最終ラップで横山が大倉の背後まで迫るも、大倉が逃げ切りトップでフィニッシュ。1位大倉、2位横山、3位ウィルソンという結果で、大倉が自身初優勝を飾った。
午後に入りさらに路面コンディションが悪化したヒート2。ホールショットを獲ったのは横山だ。一方、第1コーナーでは複数台が転倒。ヒート1で優勝を果たした大倉も転倒し最下位近くからのスタートとなる。オープニングラップ終わりには横山、#33ビクトル・アロンソ(AutoBrothers GASGAS JAPAN/GASGAS MC450F)、ウィルソン、#7能塚智寛(Team Kawasaki R&D/カワサキ KX450-SR)の4名がトップ集団を形成しレースが進行していく。2周目に入った直後、4コーナーでウィルソンがスタック。なかなか再スタートできず大幅に順位を落としてしまう。その後、中盤に順位が大きく変動し、ビクトルがトップに浮上したかと思いきや、ウィルソンと同じく4コーナーでスタックし戦線離脱を余儀なくされた。荒れたレース展開となる中、能塚がトップを走る横山に接近。ジャンプで横並びになり横山を抜くかと思われたが、その直後に転倒してしまう。上位陣が激しく入れ替わる中、生き残りをかけたサバイバルのようなレースとなった結果は、トップを守り切った横山、2位に安原志(⼋尾カワサキ with ANNEX CLUB/カワサキ KX450)、3位に#13池⾕優太(TEAM HAMMER/ホンダ CRF450R)となった。
#2 ⼤倉由揮
「優勝、めちゃくちゃ気持ち良いです!IA2クラスから全然勝てなくて、勝てないままIA1クラスに上がって。そこからも優勝できない日々が続いて苦しかったのですが、3年目でようやく勝つことができました。めちゃくちゃ嬉しいです。前半トップとの差が開いていて遠いなと思っていたのですが、相手がミスした隙を突いてトップに立つことができて、ラッキーだったんですけど、なんとか勝てたことは次に繋がると思います。初優勝だけで終わらないように、これからも実力で勝てるように頑張ります」
#41 横⼭遥希
「やっと優勝できてとてもほっとしてます。自分のミスで勝てないレースが続いていたのでフラストレーションも溜まっていて、メンタルは結構ズタズタだったのですが、なんとか切り替えて、優勝することができて嬉しいです。まだまだレースは続くので、引き続き応援よろしくお願いします」
#1 ジェイ・ウィルソン
「今回のようなレースや結果は日本に来てからしたことがなくて、すごくチャレンジングなレースだったよ。ただ自分にとってもこの結果を見れたことは身になるものだと思ってる。今回はスタートから前に出ることができなくて転倒も多くて、焦ってしまったことが結果に繋がったのだと思う。今シーズンは連勝がここで止まってしまったけど、これからは自分の走りに集中して、自分の乗り方やレースの組み立て方などを一から見直していこうと思う。トップ2人の存在は僕にとってもすごく刺激になっていて、自分を高める良いきっかけになっているよ。」
IA2
横澤が冷静かつ安定感のある強さを示す
IA2クラスは第2戦で#3中島漱也(bLU cRU レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)が完全勝利を収め、その存在感を示した。しかし依然として拮抗するトップ争い、今大会は誰がレースを制するのだろうか。
ヒート1、第1コーナーを抜けトップに立ったのは#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)、その後ろに#5池⽥凌(Yogibo MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX250)、#13阿久根芳仁(Yogibo MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX250)、#4鴨⽥翔(Kawasaki Plaza 東⼤阪/カワサキ KX250)と続く。第3コーナーでは前日に両ヒート優勝を果たした中島がクラッシュに巻き込まれ、大きく順位を落としてしまう。4周目14コーナー終わりで池田がミス、鴨田が2位へ浮上する。レース開始10分を経過する頃には横澤、鴨田、池田の順となり、それを柳瀬が追う展開。レース中盤以降、トップを走る横澤は後続を着実に引き離し独走状態へ。3位争いが激しくなったレース後半には池田の僅かなタイムロスの隙をついて柳瀬が3位に浮上。最終ラップまで3番手争いが続くが順位は入れ替わらず、1位横澤、2位鴨田、3位柳瀬でフィニッシュした。
ヒート2、路面コンディションが悪化している中、ホールショットを獲ったのは#15佐々⽊麗(Kawasaki PURETECH Racing/カワサキ KX250)。周回を重ねるごとに順位が入れ替わる展開となる中、横澤がトップに立つ。3周目には第3〜4コーナーでスタックする選手が出始める。トップグループもそれを逃れられず、2番手につけていた佐々木がスタック。うまく難所を抜けた池田が2位へ上がるものの、4周目に転倒し順位を下げてしまう。その後は横澤が慎重かつ冷静な走りでトップを死守。その後方につけていた#10⽥中淳也(bLU cRU YSP浜松BOSS RACING/ヤマハ YZ250F)が2位、#7浅井亮太(bLUcRUフライングドルフィンサイセイ/ヤマハ YZ250F)が3位でフィニッシュを果たした。なお、今大会で横澤はパーフェクトウィンを飾った。
#2 横澤拓夢
「ヒート1は30分が本当に長く感じて、後ろから鴨田選手が追いかけてきてプレッシャーも感じていたのですが、ホンダのコースで負けるわけにはいかないという気持ちで走りました。自分のCRFも良い動きをしてくれて、自信を持って走ることができました。ヒート2も難しいコンディションでしたが、冷静に走りました。ラスト3周は勝ちを意識してにやけてしまいましたが、勝ちきれて良かったです」
IB OPEN
榊が追い上げ初優勝を獲得
IB OPENクラスは第2戦で#53箕浦来輝(TEAMITOMO/ホンダ CRF250R)と#5松岡力翔(SP忠男広島/ヤマハ YZ250F)が初優勝を獲得し、HSR九州での強さを見せつけた。大荒れのマディコンディションとなった第3戦で実力を見せるのは誰か、今回もトップ争いに注目が集まった。
レースは15分+1周で行われた。ヒート1では#22長崎有優(TSFレーシング/カワサキ KX250)がスタートで飛び出すと、#2當真弦樹(YSP浜松 BOSS RACING/ヤマハ YZ250F)が続いていく。しかし荒れた路面はライダーたちを翻弄し、長崎はポジションダウン。序盤から當真がトップを走行し、#1飯塚翼(三恵技研工業 アシタプランニングMS/ホンダ CRF250R)が追いかける展開となった。飯塚は荒れた路面を安定して乗りこなし當真に迫ると、2人でトップ争いを繰り広げる。一方、その後ろには#13榊流星(WAKI Racing with BAMFY/ホンダ CRF250R)、#18高橋生真(TEAM HAMMER/ホンダ CRF250R)、#5松岡力翔(SP忠男広島/ヤマハ YZ250F)が追い上げてくる。最後まで混戦を極める中、ラストラップには榊がトップを走る當真に迫り攻防戦を展開。結果は1位榊、2位當真、3位飯塚という順位でフィニッシュ。榊は自身初優勝を獲得した。
ヒート2、路面状況がさらに悪化し各所でスタックが起きる中を抜け出したのは高橋。続いて松岡が追いかけていく。松岡は序盤で高橋をパスしてトップへ浮上するとそのまま後方との差を広げていく。一方2番手には高橋が、3番手には#57宮下寛汰(Team NFS with BIVOUAC OSAKA/GASGAS MC250F)がついてレースは進行。松岡は最後まで落ち着いた走りでトップを守り切りゴール。自身2度目の優勝を掴んだ。一方3番手を走る宮下に箕浦が迫り、レース中盤でポジションをアップ。結果1位松岡、2位高橋、3位箕浦という順位でレースを終えた。
#13 榊流星
「朝から調子は良くなくて、マディコンディションは苦手なのでスタートするまでは結構心配してました。スタートも全然出られなかったのですが、思ったより体もよく動いて速く走れていたので追い上げることができました。走っている間サインボードでは順位を出さずにタイムだけを見せてくれていて、自分はもうひたすら前のライダーを抜かすことに集中していました。最後は追いつけるポイントが見えていたのでそこを狙って抜けたらいいなという気持ちで攻めました。初優勝できて嬉しいです」
#5 松岡力翔
「なかなかハードでしたが、転ばないように慎重に走ったことで優勝できました。元々マディコンディションが苦手だったのですが、今回優勝することができて自信にも繋がりました。次戦も優勝目指して頑張ります」
#2 當真弦樹
「最後の最後に抜かれてしまってとても悔しいです。ただ、第1戦・第2戦と全然うまくいかない結果が続いていて、そんな中表彰台に登ることができたので、これからは上り調子でもっと上を目指して頑張ります」
#1 飯塚翼
「淡々と走ることを意識していたのですが、淡々と走りすぎて攻めきれなかったなと思います。自分は常に落ち着いて走ることを意識していて、それが転倒しない走りに繋がっていると思いますし、今回のコンディションでもミスすることなく走れました。基本みんなが転倒する場所で抜いていけたのは良かったと思います。一瞬トップに立てたのですが前2人が速くて、優勝することができなかったので、次は1位を獲りたいと思います」
LMX
川井がマディコンディションでの速さも見せる
レディースクラスは、第2戦で#1川井麻央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)が優勝を獲得。今大会はレース前にかなりの大雨が降り、コンディションがかなり荒れた中でのレースとなった。
雨足が強くなる中で始まったレースでホールショットを獲ったのは#3箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)。それに川井と#2本田七海(LUTZ with 中西建設(株)NH/ホンダ CRF150R)が続いていく。11コーナーで箕浦がアウト側に膨らんだ隙をつき川井がトップに、本田が2番手に順位を上げ、2人がトップ争いをする展開となった。3番手には#5瀬尾柚姫(TEAM HAMMER/ホンダ CRF150RⅡ)がつけていたが、転倒やスタックなども相次ぎ大混戦の模様となる。最終順位は1位川井、2位本田、3位には混戦を制した楠本が入った。
#1 川井麻央
「最高です。マディのレースがこれまでなかったので、周りのライダーがどれだけ走れるのかわからない中、レース前にいきなり雨が強くなってかなりのマディコンディションになりました。ただ、自分はビビることなくこのコンディションでもいけるなという自信がありました。スタートから前の方に出れて、1周目でトップに立ってからは転倒しないように走ろうと気をつけました。第2戦から2連勝できて、誰が見てもやっぱり速いんだということを結果で示すことができたのでとても嬉しいです」
#2 本田七海
「今大会に向けては、開幕戦前にした怪我も良くなってきていたので4ストロークマシンに慣れるために乗り込みをしてきました。レースでも走る度に調子が戻ってきていることを実感することができていただけに、優勝したかったです。悔しいレースとなりました。次戦までは少し期間が開くので、調子を100%にしてレースに挑み、優勝します」
#10 楠本菜月
「ドライコンディションよりもマディの方が好きなので、正直雨が降ってくれて嬉しかったです。5番手くらいから追い上げている中でゴーグルを外してしまったので、視界の悪さと雨と戦っていました。ラインを外しすぎないように、ベストラインを落ち着いて走ったことが3位に繋がったと思います。表彰台は1年半くらいぶりで、マシンを乗り換えてから初めてだったので嬉しいです」
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SUGO大会
次戦は約1ヶ月のインターバルが空いた6月1(土)〜2日(日)、宮城県にあるスポーツランドSUGOで開催される。大波乱となった今大会を終え、次戦はどんなレースとなるのか。ぜひ会場でその戦いを見ていただきたい。
第4戦(6/1〜6/2)
◾️D.I.D 全日本モトクロス選手権シリーズ2024 第4戦SUGO大会 大会情報
https://mspro.jp/jmx/2024r4
◾️D.I.D 全日本モトクロス選手権シリーズ2024 第4戦SUGO大会 チケット発売中
https://mspro.jp/product-category/shop/ticket/jmx-ticket