D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025第1戦HSR九州大会が、4月13日(日)に熊本県にあるHSR九州オフロードコースにて行われた。今大会は予選と決勝が1日で行われる1DAY開催。前日夜から降った雨の影響で、朝方は水分の多いマディコンディションとなったが、日中は青空が広がり、風が強く吹いた影響で徐々にコースは乾いていった。

2025年シリーズの幕開けとなる今大会では、ライダーの実力や各クラスの勢力図が明らかになる。誰が最初に優勝を獲得するのか、開幕戦ならではの緊張感が漂った。また、IA1クラスにはイタリアから#42ジュゼッペ・トロペペ(AutoBrothers/GASGAS MC450F)が、IA2クラスにはドイツ出身の#53ブライアン・シュー(AutoBrothers/GASGAS MC250F)がスポット参戦し、各クラスで熱い戦いが繰り広げられた。

D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ 2025第1戦HSR九州大会
日時:2025年4月13日(日)
会場:HSR九州オフロードコース(熊本県)
天気:雨のち晴れ
観客動員数:2297名

IA1

ジェイ・ウィルソン、タイトル連覇に向け好発進

IA1クラスは30分+1周の2ヒート制で行われた。タイムアタック予選ではイタリアからスポット参戦した#42ジュゼッペ・トロペペ(AutoBrothers/GASGAS MC450F)が2分14秒台でトップタイムを記録。一方、2023・2024年チャンピオンの#1ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ YZ450FM)が2分16秒台で2番手と両者の間に2秒の差がつき、トップ争いは混戦が予想された。

ヒート1のスタートでは、#2横山遥希(Honda Dream Racing LG/ホンダ CRF450R)が好スタートを決めてホールショットを獲得。その後ろには#10内田篤基(Yogibo PIRELLI MOUNTAINRIDERS/カワサキ KX450)、ウィルソン、#4大倉由揮(Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)らが続く。トロペペはやや出遅れ、8番手あたりから追い上げる展開となった。レース序盤、横山がレースをリードする中、内田とウィルソンが後方から差を詰める。ウィルソンは素早く順位を上げ、内田と横山を抜いてトップに浮上。さらに内田が横山をかわし、ウィルソン、内田、横山という順位でレースが進んだ。

トロペペは序盤の遅れを取り戻すべく猛追。優れたライン取りとテクニックで次々とポジションを上げていき、レース中盤には横山を抜いて3番手に浮上。さらにその勢いのまま内田に迫り、バトルを制して2番手に上がると、ウィルソンとの差も一気に詰める。トップ争いではウィルソンが抑えにかかるも、トロペペが隙をついて前に出る。しかしその直後にマシンからスモークが出始め、コース場で止まってしまう事態に。結局、復帰することはできず、そのままリタイアを余儀なくされた。これによりウィルソンが再びトップに返り咲き、そのままチェッカー。2位には内田、3位には横山が入った。なお、4位には#8大城魁之輔(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ450F)、5位には大倉が、6位にはIA2からステップアップしてきた#37西條悠人(Kawasaki PURETECH Racing/カワサキ KX450)が好走し、デビュー戦ながら上位に食い込んだ。

ヒート2、トロペペは出走することができず、彼が不在の中でレースが行われた。ウィルソンが好スタートを決めて序盤からレースをリード。2番手には横山、3番手には大城が続いた。トップ3台の間隔は開いていき、順位は変わることなくレースが進行していたが、レース終盤に4番手の内田が勢いのある走りで追い上げ大城をパス。また、横山がウィルソンとの差を縮める場面もあったが、ウィルソンもペースを上げて対抗。最後まで諦めない走りを見せた横山だが、惜しくも届かず、ウィルソンがトップチェッカーを受けた。2位には横山、3位には内田が入賞。総合順位はウィルソン、横山、内田という結果となり、ディフェンディングチャンピオンが開幕戦から強さを見せつけた。

#1ジェイ・ウィルソン
「シーズンオフ期間で他のライダーがどれだけ成長してきているのかわからないから、毎回開幕戦は緊張するね。ヒート1は終盤にはトロペペが追い上げてきて、途中トップを譲る形になってしまった。自分にとっても刺激を受けた良いレースだった。トロペペがマシントラブルでリタイアしたのは後になってから知って、彼にとって残念な結果に終わってしまったと思う。ヒート2はスタートが決まって、スムーズにレースを進めることができた。コースコンディションはテクニカルでとても難しかったし、どんなレースになるか予想がつかなかったけど、2ヒートともに優勝できて嬉しいよ」

#2横山遥希
「ヒート1はスタートが決まって一瞬リードしたのですが、そこから自分の走りを見失ってしまって、情けない走りで終わってしまいました。ただ、自分の走りができたら勝てると思うので、次戦も優勝を狙って頑張ります」

#10内田篤基
「去年は散々なシーズンだったので、今年はしっかり準備してやってきました。今年はいろんな方がサポートをしてくれて、マシンも良い仕上がりで開幕戦を迎えることができました。今年からピレリのタイヤを使用しているのですが、これがすごく調子良くて、スタートも前に出ることができました。1位を獲ることができなくて悔しいですが、ヒート1から表彰台に登ることができて嬉しいです」

IA2

中島とブライアン・シューの激しいトップ争い

IA2クラスも30分+1周の2ヒート制で行われた。タイムアタック予選はA組とB組に分かれて行われ、A組では#4田中淳也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ250F)が2分30秒491、B組では#14吉田琉雲(Bells Racing/ホンダ CRF250R)が2分33秒158でトップとなった。2024年チャンピオンの#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)はA組2番手、#53ブライアン・シュー(AutoBrothers/GASGAS MC250F)はA組3番手となり、決勝での接戦が予想された。

ヒート1、中島が好スタートを決めると、その後ろには#28村上洸太(Honda緑陽会熊本レーシング/ホンダ CRF250R)とシューが続く。2024年ランキング2位の#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)はスタートで出遅れ、後方からの追い上げを強いられた。レース序盤、シューがすぐに村上をパスし2番手に上がると、中島をロックオン。両者のトップ争いが繰り広げられるが、中島も負けじとトップを守る走りを見せる。路面が荒れてラインが限られる中、レース中盤にシューが一気に中島との差を詰めてトップを奪取。徐々に後続との差を広げ、独走状態でトップチェッカーを受けた。2位には中島、3位には田中との接戦を制した鴨田という順位でフィニッシュ。しかし、レース後に鴨田や田中らはMFJ国内競技規則付則15 4-1-1に該当したとして2順位降格のペナルティが科されたため、正式結果では横澤が3位となった。

ヒート2では、#47道脇右京(バイカーズステーション金沢 レーシング with MOTUL/ヤマハ YZ250F)がホールショットを獲得。その後ろには吉田と中島が続き、シューはスタートでやや出遅れる形となった。道脇、吉田、中島によるトップ3の争いが繰り広げられるが、吉田が転倒し後退。中島がトップに立ち、後続を引き離す。一方、好スタートを決めた横澤が道脇をかわし2番手に浮上。3番手には後方から追い上げたシューがつくと、徐々に横澤との差を縮め、レース中盤に2番手にポジションを上げた。終盤には中島との差を1秒以内まで詰め激しい攻防戦を展開。中島が最後まで粘り強くトップを守るが、一瞬の隙をついてシューがトップに浮上。劇的な逆転優勝を飾った。2位には中島、3位には横澤が入賞。総合順位はシュー、中島、横澤という結果でレースを終えた。

#53 ブライアン・シュー
「2ヒートともに順調にレースを進められたと思う。路面がかなり荒れていて難しかったけど、荒れている方がテクニカルで頭を使う、僕にとっては嬉しいコンディションだったよ。ヒート1は自分のペースで走ることができて、中島もパスすることができた。かなり良いスピードで走れていたと思う。ヒート2はスタートを失敗して中盤あたりからの追い上げだった。ラインも少なくて、前のライダーを抜かすことが難しかったけど、なんとか終盤でトップの中島に追いつくことができた。プッシュしていったら、彼もまたペースを上げてきて、最後にようやく前に出ることができた。彼とのバトルはとても楽しかったし良いレースができてよかったよ」

LMX

川井麻央が女王の強さを示す、表彰台争いは接戦に

レディースクラスは15分+1周の1ヒートで行われた。タイムアタック予選では#8穗苅愛香(TOMOレーシング&美蔵withCONNECT/ヤマハ YZ85LW)がトップタイムを記録。昨年のチャンピオン#1川井麻央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)を抑えての予選通過となり、決勝での活躍にも期待がかかった。

スタートでは#6箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)が好スタートを切り、序盤からレースをリード。2番手には川井、3番手には#10松木紗子(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX85)が続いた。レース中盤、川井は箕浦との差を詰めると、箕浦の様子をうかがいつつ、後方からプレッシャーをかけていく。レース終盤、川井がジャンプセクションでトップに浮上。その後も冷静かつ安定した走りで川井は単独走行へと持ち込み、そのまま優勝を飾った。一方、後方では2〜4番手までの差が縮まり、2番手を走る箕浦に3番手を走る#4楠本菜月(TEAM HAMMER/ホンダ CRF150R)と穂苅が迫る。最終ラップでは楠本と穂苅が3位表彰台をかけて横並びになるバトルを展開。楠本が粘るも、穂苅が隙をついて3番手に浮上。結果、川井が優勝を獲得し、2位にはポジションを守り切った箕浦、3位には穂苅が入賞した。なお、穂苅にとっては今回が初表彰台となった。

#1 川井 麻央
「今日はわだちがすごくて、走れるラインが限られていたので、様子を見ながら差を詰めていきました。ペースもなかなか上げ切れなくて、前にいきたいのにいけないという感じで難しかったです。ジャンプで抜かせたのですが、元々そこは飛ばずに舐めて走っていました。ただ、レースしてる中で飛べるんじゃないかと思ってチャレンジしたら成功して、トップに出ることができました。今シーズンは、自分がミスをしなければ勝てると思うので、ミスなくベストを尽くして戦って、全勝してチャンピオン獲れるように頑張ります」

IB OPEN

混戦のトップ争い。髙木と名島、1年目の若手ライダーが実力を発揮

IAクラスへの登竜門となるIB OPENクラスでは、タイムアタック予選A組で#15酢崎友哉 (成田MXパーク アシタプランニング/カワサキ KX450)が、B組で#2島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAINRIDERS/カワサキ KX250F)がマディコンディションへの適応力の高さを発揮しトップタイムを記録。存在感を示した。

決勝ヒート1は酢崎がホールショットを獲得。しかし同じく好スタートを決めた#57髙木碧(BLUCRUレーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)が酢崎をかわして前に出ると、後方との差を広げていく。髙木、酢崎と続き、3番手には#6宮下寛汰(Team NFS with BIVOUAC OSAKA/GASGAS MC250F)がつけてレースは進行。酢崎が安定した走りで追い上げを図るも、その差を縮めることはできず、トップ3の差は徐々に開いていく。結果、髙木が後方を20秒以上引き離して優勝を獲得。IB OPENクラスでのデビューウィンを飾った。なお、髙木はジュニアクロスから特別昇格した15歳。4ストロークマシンを駆るライダーが多いIB OPENで唯一2ストロークのヤマハYZ125に乗って出場して勝利を収める、その実力の高さは目を見張るものがあった。

2位は酢崎、3位宮下という順位でチェッカーを受けたが、宮下はその後の音量測定で音量オーバーとなり、5順位降格。#18笹島勇気 (Crazy Racing with B/カワサキ KX250)が3位を獲得した。

ヒート2は#44佐藤太亮(ホンダ CRF450R)が好スタートを決めレースをリードする。続いて、#59豊丸良(トヨオカレーシングwithFree/ホンダ CRF450R)、#58名島玖龍(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)らが追いかける展開。ヒート1で優勝した髙木は序盤ミスにより後方からの追い上げを強いられた。佐藤がリードする中、名島が徐々に追い上げレース中盤にトップに浮上。そのまま後方を引き離すと思われたが、レース終盤に8番手あたりから追い上げた島袋が名島を猛追する。2秒差まで追い詰めるも、単独で転倒しその差が開くこととなる。一方3番手には、同じく凄まじい追い上げをみせた髙木がつき、混戦となった3番手争いから抜け出す。島袋との差を縮めるも、タイムアップとなり、1位名島、2位島袋、3位髙木という順でフィニッシュした。

#57 髙木 碧 (BLUCRUレーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)
「今シーズンからIB OPENクラスに上がって、自分だけ2スト125ccマシンで戦うということで、厳しいシーズンになるかなと思っていました。スタートが重要になってくる中で、自分で思っていたよりも前に出ることができて、ヒート1は2番手ぐらいでした。路面もすごく荒れていて、滑る上にギャップもあって難しかったです。初めてのIB OPENのレースだったので、とりあえず焦らないように、自分に集中して丁寧に走っていました。優勝できて嬉しいです」

#58名島玖龍(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)
「スタート出遅れて追い上げのレースでした。路面も荒れていて前のライダーを抜くのがかなり難しかったのですが、ラインを外して走ったら割と良いペースで走ることができました。1ヒート目優勝できなくて悔しかったので、ヒート2で勝てて本当に嬉しいです。今シーズンの目標はチャンピオン獲得です。同じチームの髙木くんも速いですが、負けないように頑張ります」

#15 酢崎 友哉 (成田MXパーク アシタプランニング/カワサキ KX450)
「僕は千葉県の成田モトクロスパークをホームコースとしてるのですが、九州は遠くて事前練習にはこれませんでした。この先も事前練習に行ける予定はほとんどないんですけど、シーズンオフに成田モトクロスパークでずっと乗り込みをして、その成果がいきなり出たので、やっぱりどんなコースでもしっかり練習することが一番重要なんだなと思いました。これからも頑張っていきます」

#2島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAINRIDERS/カワサキ KX250F)
「予選から調子良くてトップタイムで通過できたのですが、ヒート1はスタート出遅れたり転倒もあって悔しい結果になりました。ヒート2は気持ちを切り換えて挑んで、スタート出遅れたけどトップが目の前に来るところまで追い上げることができました。ただ、その後に転倒してトップとまた差が開いてしまって、悔いが残ります。次戦は優勝できるように頑張ります」

次戦は2週間後の4月26〜27日、宮城県にあるスポーツランドSUGOで行われる。今大会の結果を踏まえ、各ライダーはさらに調整をしてくるだろう。シーズンはまだ始まったばかり。各クラスのトップ争いの行方は今後も注目だ。

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