D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2022 第5戦 HSR九州大会が10月8日(土)、9日(日)の2日間にわたって開催された。国内最高峰クラスのIA-1クラスは15分3Heat制が取り入れられ、超スプリントレースが会場に詰め掛けた多くのファンを熱狂させた。またIA-2クラスでは、残り2戦を残して年間チャンピオンの可能性が出てきた#16ジェイ・ウィルソンの走りに注目が集まった。チャンピオン争いの行方からますます目が離せなくなったLMXクラスなど、各クラスのレースを振り返ってみよう。

D.I.D JMX 2022 R5 HSR九州観戦情報

IA-1

Heat1 #2富田俊樹が危なげない走りで今季5勝目

イン側のグリッドから上々のスタートを決めた#2富田俊樹

ホールショットを奪ったのはケガで前戦を欠場した#22大城魁之輔(Honda Dream Racing Bells / ホンダ CRF450R)。#2富田俊樹(YAMAHA FACTORY RACING TEAM / ヤマハ YZ450FM)が2番手、#25内田篤基(マウンテンライダーズ / カワサキ KX450)が3番手に続く。ポイントランキング2番手の#3能塚智寛(Team Kawasaki R&D / カワサキKX450-SR)はスタート直後、他車とからんで転倒し、大きくポジションを落としてしまった。大城の直後を走る富田は13番ポストでアウトから大城を一気に抜き去ってオープニングラップをトップで通過。2番手に大城、3番手は#4渡辺祐介(YAMAHA FACTORY RACING / ヤマハ YZ450FM)。トップに躍り出た富田は安定した走りで大城との差を徐々に開いていく。その後方では大城と渡辺が接近するも、大城はレース終盤に再び渡辺をを引き離し、さらに富田との差を詰めていく。しかしそんな大城の動きをしっかりと把握していた富田は大城との差を再び開いてHeat1を制した。大城は富田には敗れたものの、ケガからの復帰1戦目で2位表彰台を獲得し、存在感をしっかりとアピールした。3位は渡辺、4位は#8星野優位(bLU cRU RACING TEAM TAKA / STAR RACING 166 / ヤマハ YZ450F)という結果となった。

Heat2 YAMAHA FACTORY RACINGが今期3度目のワンツーフィニッシュ

速さのみならず、クレバーさも光る#2富田俊樹

Heat1同様、絶妙なスタートを決めた富田が1周目からトップに躍り出る。2番手にはチームメイトの渡辺、3番手には星野が続いた。Heat1で8位に沈んだ能塚はまたもやスタートで遅れ、追い上げのレースが強いられる。富田はHeat1同様ハイペースながらもミスのない安定した走りで後続との差を広げて独走状態となり、渡辺も2番手を単独で走行する。その後方では能塚が猛然と追い上げ、5周目に星野をかわして3位にまで浮上する。その間富田は危なげない走りで渡辺に大量のギャップを築き上げると、渡辺を7秒近く引き離して堂々の独走優勝。渡辺が2位に入ったことでYAMAHA FACTORY RACING TEAMがワンツーフィニッシュを決めた。能塚は追い上げかなわず3位となった。

Heat3 念願のトリプルクラウンを決めた#2富田俊樹

一時はチームメイトの#4渡辺祐介に迫られるが、#2富田俊樹は冷静な走りでトップをキープした

ホールショットを奪った渡辺が序盤から積極的に飛ばすものの、その後方につけた富田は2周目の11番ポストで渡辺のインをついてトップに浮上する。3番手には#23大倉由揮(Honda Dream Racing Bells / ホンダ CRF450R)が続くが、能塚が大倉をかわして3番手を奪った。富田、渡辺、能塚は後続を引き離してハイペースなレースを展開するが、富田は渡辺につけ入る隙を与えない。能塚も渡辺との距離を縮めるものの、やはりパッシングにまでは至らない。Heat1、Heat2同様堂々とした走りを見せた富田が見事にトリプルクラウンを決め、ポイント数をさらに伸ばしてチャンピオンの栄冠をさらに引き寄せた。ポイントランキング2番手の能塚は渡辺をパスするべく最終ラップに激しくプッシュするが、14番ポストで転倒し、表彰台を獲り逃してしまった。「今回は3Heatとも冷静に走ることができました。体もマシンも仕上がっていましたし、コースもすごく面白かったです。ところどころワダチもできていましたが、うまく攻略することができました。IA-1クラスでは初めてのトリプルクラウンですが、ずっと狙っていた結果でしたのでうれしいですね」(富田選手)

IA-2

Heat1 #16ジェイ・ウィルソンが10勝目を挙げてシリーズチャンピオンに王手

序盤にトップに躍り出て、一気に後続を引き離すのが#16ジェイ・ウィルソンの勝利の方程式だ

#9鈴村英喜(TEAM HAMMER / ホンダ CRF250R)が絶妙なスタートを決めてトップで1コーナーに飛び込む。今回2Heatを制すると2022年のチャンピオンが確定する#16ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM / ヤマハ YZ250F)は5番手に位置付ける。ポイントランキング2番手の#21浅井亮太はスタートで出遅れ、1周目を7番手で通過する。ウィルソンは1周目に3番手にまで上がると、2周目には2番手、そして3周目にトップに立つと、レース序盤から独走状態を築きにかかる。2番手に下がった鈴村の後方からは#7西條悠人(ピュアテックレーシング / カワサキ KX250)、#5中島漱也(bLU cRU レーシングチーム鷹 / ヤマハ YZ250F)、#4鳥谷部晃太(bLU cRU TEAM エムFACTORY by NCXX / ヤマハ YZ250F)が2番手グループを形成する。鳥谷部は7周目にこのグループを抜け出して単独で2番手を走行する。また浅井も徐々に順位を回復し、レース中盤には4番手にまでポジションアップ。その間ウィルソンは序盤に広げたリードをキープして10連勝を決めた。2位は鳥谷部。浅井、中島の追い上げをしのいだ西條が3位となった。

Heat2 怒涛の11連勝!残り2戦を残して#16ジェイ・ウィルソンがチャンピオンに

シリーズを振り返り、困難なレースもあったと心情を吐露した#16ジェイ・ウィルソン

ホールショットは西條が奪うが、ウィルソンは4番ポストですぐさまトップを奪う。西條もウィルソンを追撃するが、その差は徐々に開いていく。ランキング2番手の浅井はスタートで出遅れ、9番手からの追い上げとなった。ウィルソンは安定したペースで完全な独走状態を築き上げると、圧巻の11連勝を飾り、2022シーズンのチャンピオンが確定した。チャンピオンジャージを着用して表彰台に登壇したウィルソンは、ファンやスポンサーに向けて日本語で感謝の意を表し、会場に詰めかけたファンを大いに沸かせていた。独走するウィルソンの後方では激しいバトルが繰り広げられた。西條、#36横澤拓夢(TKM motor sports いわて / ヤマハ YZ250F)、鈴村、#10柳瀬大河(Bells Racing / ホンダ CRF250R)、中島、鴨田翔(BLITZ / カワサキ KX250)、そして浅井、鳥谷部がポジションを激しく入れ替えた。2位は柳瀬、そして3位浅井という結果となった。
「チャンピオンがかかったレースということで今日は少しナーバスでした。とはいえトラックはとてもいいコンディションで、今年の中でも一番いいコンディションでしたし、バイクのセッティングも良くて、とても乗りやすかったです。私にとっては毎レースがチャレンジでしたが、ここまで勝ち続けられて本当に良かったです。今は肩の荷が下りた感じですね。オーストラリアから家族で移住してきて、自分はもちろんですが、家族にとってもプレッシャーがあったと思います。チャンピオンを取ることで家族はもちろん、自分を信じて機会を与えてくれたヤマハにも恩返しが出来ました。残り2戦も全力を尽くします」(ウィルソン選手)

IB-OPEN

Heat1 #13西岡蒼志が今期3勝目を飾り、王座にさらに近づいた

序盤で遅れるものの、猛然と追い上げてトップに立った#13西岡蒼志

スタート直後の1コーナーで#23千葉蓮希(T.E.SPORT / ホンダ CRF250R)が他車と絡んで転倒。ポイントリーダーで、予選ヒートでも圧倒的な速さを見せた#13西岡蒼志(讃岐白馬会with NEUTRAL / ヤマハ YZ250F)はスタートを失敗して中段グループに埋もれてしまう。レース序盤トップに立ったのは#2平塚豪(城北ライダースwith634MX / カワサキ KX250)。だが2周目、後方から追い上げてきた#20鈴木颯(TEAM鈴木兄弟商会 / スズキ RM-Z250)が10コーナーで平塚からトップを奪う。スタートで出遅れた西岡だったが、中段グループから抜け出すと猛然と追い上げ、4周目にははやくも2番手にまで浮上。トップを走る鈴木との距離はみるみる縮まり、6周目の3コーナーで鈴木をも捉えてトップに立った。西岡はそのまま鈴木を引き離して今季3勝目。鈴木が2位、3位には#33松木悠(マウンテンライダーズ / カワサキ KX250)が続いた。やはり序盤で遅れた#1有山大輝(レーシングチーム鷹 / ヤマハ YZ250F)も猛然と追い上げるが、表彰台にはあと一歩及ばず4位となった。「スタートでワダチにタイヤを取られてしまいましたが、そこからは順調に追い上げることができました。今回のコースは自分が得意としている小さなコーナーが多く、自信をもって走ることができました」(西岡選手)

Heat2 #1有山大輝が開幕戦で勝利したHSR九州で今期2勝目を挙げた

激しく追い上げるHeat1勝者の西岡蒼志を振り切った#1有山大輝

ホールショットを奪ったのは#16桒垣 竜斗(Team NFS / ガスガス MC450F)。有山が2番手で続き、Heat1を制した西岡が3番手に位置づけた。2周目には有山と西岡が立て続けに桒垣をかわすが、西岡はその後ミスをし、再度桒垣に先行を許してしまう。4周目、西岡が再び2番手にポジションをアップすると有山を追撃。レース中盤から終盤にかけて双方の差は接近することはあったが、このレースでの西岡は各ポイントでミスが多く、その差はなかなか狭まらない。最終ラップ、西岡は有山の背後にピタリとつけてプレッシャーをかけていくが、有山は冷静さを保って西岡のアタックをしのぎ切り、開幕戦以来となる勝利を手にした。3位は#9溝口寿希也(With T-factor / カワサキ KX250)。「(西岡選手の)プレッシャーはありましたが、勝ちたいという気持ちを強く持って最後まで頑張りました。後半は疲れてしまって、自分自身との戦いでしたね。次戦のオフロードビレッジは地元ですので、それまでにもっと練習して勝ちを狙います」(有山選手)

LMX

最終ラップにまでもつれたトップ争い。ポイント争いもヒートアップ

#3久保まなと#1川井麻央の手に汗握る接近戦に会場は大盛り上がり

#3久保まな(TEAM HAMMER / ホンダ CRF150R)がホールショットを奪い、1周目から一気に逃げにかかる。2番手には#27畑尾樹璃(TEAMHAMMER / ホンダ CRF150)、3番手に#9濱村いぶき(T.E.SPORT / ホンダ CRF150R II)が続く。だが畑尾、濱村は2周目の7番ポスト手前で転倒してしまった。これにより2番手は#1川井麻央(T.E.SPORT / ホンダ CRF150)、3番手#4小野彩葉(T.E.SPORT / ホンダ CRF150R II)に変わる。前戦Heat2で優勝した#2本田七海(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with 秀光ビルド / ヤマハ YZ85LW)は1周目に転倒し、さらに3周目にも転倒してポジションを10番手にまで下げてしまう。久保は序盤からハイペースをキープして独走状態を築いたが、レース中盤、川井が追い上げてその差を縮め、レース終盤には両者の差はほぼなくなった。勝負の行方は最終ラップにまでもつれ込んだが、久保は最後まで川井に前を走らせずに今季2勝目を飾り、小野を抜いてポイントリーダーに浮上した。そして2度の転倒を喫しながらも猛然と追い上げた本田がラストラップで小野と#5楠本菜月(actionracing with alphathree / ハスクバーナ TC85)をパスして3位表彰台を獲得した。「序盤で独走状態を築けましたが、これまでのレースでトップを独走したことはあまりなく、ペースをうまくキープできませんでした。でも川井選手に追いつかれることで、逆に自分の走りの悪いところに気づくことができました。追いつかれても焦りはありませんでした。最後まで落ち着いて走ることができました」(久保選手)

JX

快進撃を続ける #10吉田琉雲。今回も独走で優勝

#10吉田琉雲は現在14歳。非凡な速さでライバルを圧倒

インの寄りグリッドから好スタートを決めたのは#55高木碧(レーシングチーム鷹 / ヤマハ YZ85)。予選ヒートでぶっちぎりのレースを見せた#10吉田琉雲(MX-build / ガスガス MC85)が続き、1周目で早くも高木をかわしてトップに浮上する。その後方には#15箕浦来輝(TEAM ITOMO / ホンダ CRF150R II)が続くが、2周目の11コーナーで転倒して上位争いから脱落する。吉田と高木はハイペースでトップ争いを繰り広げ、2番手以降との差はみるみる開いていく。当初は吉田のペースに果敢に食らいついた高木だったが、両者の差は周ごとに開き始めていき、レース中盤以降は吉田が独走状態を築きあげた。高木も単独の2番手となり、3番手には#58名島玖龍(KAZU Racing Project / ホンダ CRF150R)が続いた。その後方では#81脊戸貴弘(TAKA Racing / ホンダ CRF150R II)、LMXとダブルエントリーの#42川上真花(bLU cRU YSP大阪箕面 / ヤマハ YZ85LW)、#80水野零埜(ヤマハ YZ85)らが接近戦を展開する。
吉田はただひとり2分0秒台という圧倒的なベストラップを記録し、2位の高木に28秒以上もの差をつけて今季4勝目をマーク。3位は名島。4位争いは川上が制している。

CX

子供たちの元気いっぱいの走りに観客から声援が飛んだ

今回のレースには25人のキッズが参加した

25台がエントリーしたチャイルドクロスでは、ホームストレートやフィニッシュジャンプなど、HSR九州の本格セクションを含む特設コースが使用された。心配された雨も降らず、予定されていたコースをフルに使用することができて、キッズらも大満足のレースとなった。スタートで飛び出したのはEクラスの#82矢木杏奈(FMT’s ヒラタ自動車@ハスクバーナ / ハスクバーナ EE-5)だったが、#72森近那津(あまくちレーシング / スズキ DR-Z50)がすぐさまトップに浮上し、8分+1周のレースを一度もトップを譲ることなく総合優勝を決めた。2位は#32松崎貴祐(Neoザクスピード+槐 / ホンダ CRF50F)。ホールショットを奪った矢木は総合でも3位と大健闘。

Next JMX

次戦D.I.D JMX 2022 R6は関東大会 埼玉トヨペットCUP
2022/10/29-30 オフロードヴィレッジ(埼玉県)にて。
>第6戦 関東大会の観戦情報はこちらから
>MFJ Webサイト内大会概要ページ

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