2024年10月4〜6日、イギリス・マターリーベイジンにてモトクロスの国別対抗戦「Monster Energy FIM Motocross of Nations(モトクロス・オブ・ネイションズ)」が行われた。日本代表チームは横⼭遥希(MX2クラス)、⼤倉由揮(MX Openクラス)、そして怪我で欠場となった⼤城魁之輔に代わって渡辺祐介(MXGPクラス)の3名で挑んだ

グリッド選びのオーダーは2番。好条件で予選に挑む

4日金曜日にはオープニングセレモニーや各国のパレード、予選のスターティンググリッドを選ぶ順番を決めるくじ引きが行われた。1レースにつき約40台が出走するMXoNで予選を通過するには、スタートでいかに前に出ることができるかが勝負の分かれ目となる。くじ引きによって決定されたゲートピック、なんと日本は2番目。運が味方につき、予選に挑んだ。

予選日となる5日土曜日の天気は晴れ。コースコンディションはドライに見えたが、柔らかい土質で、周回するごとにコースは荒れ、深くて長いわだちができていく。日本代表メンバーに聞くと「難しい」「経験したことのないテクニカルな路面」とコメント。各予選、トップを走るライダーですら荒れた路面に苦戦している様子で、その難易度の高さが伝わってくる。

最初の予選はMXGPクラス。渡辺祐介はスタートで8番手あたりにつける反応の良さを見せ、1周目を12番手で戻ってくる。その後14番手を走るが、転倒しポジションを大きく落としてしまい、結果31位でフィニッシュを果たした。

予選2組目はMX2クラスだ。横⼭遥希はスタートこそ出遅れたが、1コーナーの処理が上手くいき、1周目で7番手につける。好調な滑り出しであったが、途中で転倒し、結果は14位となった。

最後の予選はMX Openクラス。日本チームのこれまでの結果を見ると、渡辺が31位/横山が14位で、日本は合計44ポイントであった。MXoNの予選はチームの3人のうち最低順位の1名を除いた順位を合計し、一番合計ポイントが少ないチームから1位、2位と順位が振られていく。予選を通過するには、大倉が渡辺を上回りジャンプアップする必要がある。

大倉は練習時にわだちや荒れた路面にかなり苦戦していた。何箇所か飛んでいないジャンプも見られたが、予選では路面を攻略し、ジャンプも全てクリア。練習時と比べて10秒以上ラップタイムを上げて予選を走行した。1周目で18番手につけ、その後も順位を落とすことなくレースを進め、序盤から1つ順位を上げ17位でチェッカーとなった。

予選を終え、日本は31ポイント(横山14位+大倉17位)を獲得。エストニアと同点で、どちらかが予選通過ラインとなる19位になるという状況であったが、ポイントに加算しなかった1レースの順位がエストニアよりも下位だったため、日本は20位。あと一歩というところでA決勝への進出は逃した。なお、日本チームはB決勝へと駒を進め、A決勝進出ができる1枠(B決勝優勝)をかけて競うこととなった。

波乱の幕開け。追い上げのB決勝は8位で終える

決勝日となる6日、日曜日、日本チームはウォームアップ(公式練習)を終えてB決勝に挑んだ。コースは一度整備され、全面にできていたわだちが平らになっていたが、練習の時点でわだちが再び掘られていた。

B決勝には、予選を通過できなかったチーム全員で出場しチーム内上位2名の合計順位で競う。排気量の差は関係なく、レースで良い結果を残したチームがA決勝へと進むことができる。日本は20位と、B決勝に進んだチームの中では予選でトップの成績を出している。しかし、全体の予選結果を見ると、日本と1ポイント差でニュージーランド、5ポイント差でスウェーデン、6ポイント差でラトビアがつけており、A決勝への1枠をかけたバトルは激戦となった。

日本チームの目標は「スタートから前に出て、A決勝に進む」こと。グリッドはチームで話し合った結果、一番予選の順位が良い横山がイン側、大倉が真ん中、そして渡辺がアウト側の位置につけてスタートした。

スタート直後、横山は少し出遅れるが、1コーナーで抜け出し1周目を10番手で走行する。渡辺も後に続き18番手につくが、1周目に他者との接触で転倒し順位を落としてしまう。

一方、大倉はスタート直後の1コーナーで前を走るライダーのリヤタイヤに引っかかり転倒を喫する。身体を強く打ちつけたことで再スタートはならず、そのままリタイヤとなる。これにより、決勝進出するには横山と渡辺がどこまで追い上げることができるかが鍵となった。

荒れた路面に転倒するライダーも多い中、横山は安定感のある走りでポジションをアップし6位。渡辺は転倒時の影響でハンドルが曲がり、上手く追い上げることができず27位でゴールを果たした。日本は合計33ポイントで8位。A決勝へ進出することは叶わなかったが、悔しさや他国との差、日本の今の現状を知ることができた大会となった。チームとライダーたちはすでに来年に目を向けている。これからさらに強くなっていく日本チームに、今後も注目していてほしい。

横⼭遥希

「B決勝、結果から言うと僕は6位で、大倉選手がスタートでクラッシュしてリタイア。渡辺選手は27位で、A決勝に進むことはできませんでした。個人としては、全ての力を出し切った、悔いの残らないレースでしたが、欲を言えばトップ5に入りたかったです。スタートは1番イン側を選んだのですが少し出遅れてしまって、1周目10番手くらいで戻ってきました。追い上げる中でパッシングポイントはあまり決めていなかったです。ただコーナーにあるわだちの中にフックのある、引っかかりやすいラインがあったので、そこをどう避けてスムーズに乗るかということに集中して走りました。自分の走りに点数をつけるとしたら……75点ですかね。力を出し切れましたが、予選では転倒してしまって順位を落として、自分のミスでA決勝に進めなかったなという気持ちもあるので、残りの25点は次にクリアしたい部分です。

応援してくださった皆さん、ありがとうございました。今回もA決勝に進むことはできませんでしたが、良い部分も悪い部分も受け止めてまた来年挑戦したいと思いますので、引き続き応援よろしくお願いします」

⼤倉由揮

「スタートで前に出て決勝に進むんだ、と強い気持ちを持って挑みましたが、スタート直後に前にいるライダーのリヤタイヤに引っかかってクラッシュしてしまいました。その時に地面に叩きつけられたことで再スタートもできず、レースを終えて、率直に言うと悔しいです。もっと走りたかったですし、僕がスタート決めて頑張れば決勝に行ける可能性もあったと思うので、そのチャンスを台無しにしてしまったなと感じています。

今回ネイションズに向けてメッセージをくれたり、日本からイギリスに来て直接応援してくれた方々も多くて、その皆さんの応援があったからここまで頑張れました。しかし、それを決勝に繋げられなかったのは申し訳なく思います。今回の参戦を通して自分なりに得られたものはたくさんありますし、とにかく悔しいという気持ちが今は強いので、もっともっとレベルアップして、もう一度この舞台に立たせてもらえる時には、決勝で最高の走りをできるように頑張っていきます。これからも応援よろしくお願いします」

渡辺祐介

「急遽の参戦で、身体の調子も整い切れていない中での参戦でした。横山選手と大倉選手が良い結果を残す中、僕ももっと貢献できたらという思いが残っています。最終的にB決勝で終えることとなり、チームジャパンとしては総合27位。多くの方に応援していただいたのに、その期待に応えることができず申し訳ないです。ただ、今回出場させていただいたことで、世界の壁の厚さを思い知り、自分にとってもチームにとっても成長できる大会になりました。来年はしっかり予選通過できるように、世界で戦えるように、成長していきます。帰国後は全日本モトクロス選手権最終戦が控えています。会場でぜひ応援よろしくお願いします」

なお、A決勝は3ヒート行われ、レース1(MXGPとMX2)ではティム・ガイザーが独走状態に持ち込み優勝。レース2(MX2+MX OPEN)では、序盤でトップに立ったジェット・ローレンスが勝利を飾った。最後のヒートとなるレース3(MXGP+MX OPEN)では、序盤こそイーライ・トマックがトップを守っていくが、ガイザーが前に出ると、さらにレース終盤にはジェットがトップに浮上。しかし最終ラップ、チェッカーを受ける直前にガイザーがジェットを抜き去り優勝を獲得。最後まで油断のできない白熱したバトルが繰り広げられた。A決勝を見事制したのはMXoN初優勝となるチームオーストラリア。世界のトップライダーたちによる対抗戦は2日間の幕を閉じた。

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