4月13日、D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025が開幕する。2024年シーズンが10月に閉幕してから、約6ヶ月のシーズンオフ期間を経て迎える開幕戦。今年はどんなレースが繰り広げられるのか、この記事では各クラスの見どころを紹介する。なお、今大会は観戦無料。モトクロスを好きな方はもちろん、知らない方も気軽に観戦できるチャンスであるため、この記事を参考にぜひ観戦を楽しんでほしい。
全日本モトクロス選手権は、通常土曜日が予選日、日曜日が決勝日と2日間にわたって行われるが、開幕戦は予選と決勝を1日で行う1DAY開催となる。当日は4つの公認クラスのレースが開催され、IA1・IA2クラスは30分+1周の2ヒート制、レディースクラスは15分+1周の1ヒート制、IB OPENクラスは20分+1周の2ヒート制で行われる。
また、予選は公式練習兼タイムアタック形式で実施され、指定時間内に計測されたタイムの早い順に決勝進出の可否、及びスターティンググリッドの順位が決まる。ライダーたちは時間内であれば自分の好きなタイミングでコースインすることができ、ライバルのタイムを見ながらアタックをするその駆け引きも見どころとなっている。
会場は熊本空港から車で約30分ほどの場所に位置しているHSR九州。広大な土地を生かしたレイアウトが特徴で、ハイスピードでバトルが展開されるその迫力を間近で感じることができるのが魅力の一つだ。また、コース担当者に聞いたところ、レイアウト自体は昨年とほとんど変わっていないが、セクションが数ケ所変更されているという。6番ポストからフジヤマと呼ばれるビッグジャンプまでのウェーブセクションが上り坂になっており、昨年よりもハイスピードに仕上がっている。また、14番ポストにあるフープスセクションはコブの数が3つ増え、11番ポストから続いていた6連ジャンプは、テーブルトップが3つ続くかたちに変更された。担当者いわく特に11番ポストからのセクションは難易度が高く、まだ調整中とのことだが、テーブルトップを1つずつ飛ぶライダーもいれば、テーブルトップの上だけをつないで走るライダーもいるということで、テクニックの差が出やすくなっている。各ライダーのセクション攻略方法にもぜひ注目して見ていただきたい。
IA1
接戦が予想されるIA1クラス、最初に勝利を手にするのは誰か

全日本モトクロス選手権の中で最高峰となるIA1クラス。各メーカーのチーム体制を見ると、ヤマハのファクトリーチーム「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」からはオーストラリア出身の#1ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ YZ450FM)が参戦する。2023・2024年と2年連続でシリーズチャンピオンを獲得した王者で、今年は3連覇を狙う。また、ウィルソンはレース参戦に加えてマシン開発や若手育成にも力を入れており、このシーズンオフ期間にはYAMAHA BLU CRU RACINGに所属するIA2ライダー#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)と#4⽥中淳也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ250F)とともにニュージーランドでトレーニングを重ねたという。開幕戦に向けて話を聞くと、「若いライダーたちのエネルギーに刺激を受けて、良い形で練習ができました。メンタル面も安定していて、フィジカルも好調です。レースが始まるのが待ち遠しいです」とコメント。チャンピオン争いの筆頭となるであろう彼の走りは見逃せない。

また、ヤマハのセカンドチームとして発足したYAMAHA BLU CRU RACINGからは#15渡辺祐介(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM/ヤマハ YZ450F)と#8⼤城魁之輔(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ450F)が参戦する。渡辺は昨年の怪我を乗り越え、完全復活した状態で開幕戦を迎える。また、大城は開幕戦前にHSR九州で行われた九州モトクロス選手権第1戦でウィルソンを上回るラップタイムを記録するなど、調子の良さがうかがえる。両者ともに王者であるウィルソンをライバルとして意識しており、開幕戦でのトップ争いに注目が集まる。


一方、Honda Dream Racing LGからは#2横⼭遥希(Honda Dream Racing LG/ホンダ CRF450R)が、Honda Dream Racing Bellsからは#4⼤倉由揮(Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)が参戦する。2024年を振り返ると、⼤倉が自身初のIA1クラス優勝を獲得。さらに、横⼭は王者ウィルソンと接戦を繰り広げ、シーズンを通して2勝をあげるなどその勢いは日本人ライダーの中でも一際目を引くものがある。さらにこのシーズンオフで、大倉はイタリアやスペインなどのヨーロッパを中心に、横山はオーストラリアとニュージーランドを拠点に数ヶ月間の海外トレーニングに励んだ。さらに成長したであろう2人の走りは見逃せない。

また、T.E.SPORTから参戦する#6⼤塚豪太(T.E.SPORT/ホンダ CRF450R)は、このシーズンオフにアメリカで練習を重ねてきたという。ローカルレースなどを通して自分の課題である瞬発力を鍛えてきたとのことだ。シーズンオフで積み重ねた練習の成果が開幕戦でどう生かされるのか、こちらも注目だ。

カワサキのファクトリーチームTeam Kawasaki R&Dからは2024年シリーズランキング4位の#4能塚智寛(Team Kawasaki R&D/カワサキ KX450-SR)が出場。開幕戦に向けては日本国内で練習を重ね、クロスカントリーレースJNCCやハードエンデューロレースのCGCなど、他種目のレースにも積極的に参加し、スピードのみならずライディングスキルをさらに向上させている。
2025年のビッグニュースとして、AutoBrothersよりイタリア出身の#42ジュゼッペ・トロぺぺ(AutoBrothers/GASGAS MC450F)が参戦することが挙げられる。日本でのレース経験はなく、実力は未知数であるが、これまでイタリアモトクロス選手権やFIMモトクロス世界選手権(MXGP)へ出場してきており、2024年に参戦したMXGPクラスでは最高17位という結果を残している。彼の参戦によりチャンピオン争いがどのように動くのか、目が離せない。

さらに、今シーズンから新たにIA1クラスにステップアップしたライダーも多く、IA2クラスからは2024年IA2クラスランキング3位の#37西條悠人(Kawasaki PURETECH Racing/カワサキ KX450)や、2024年IA2クラスランキング7位の#38浅井亮太(BLUCRUフライングドルフィンサイセイ/ヤマハ YZ450F)らがエントリー。さらに、IB OPENクラスから昇格した#01松岡力翔(BLU CRU SP忠男広島/ヤマハ YZ450F)と#010齋藤啓太(Team Pitin/ヤマハ YZ450F)はマシンを450ccに乗り換え、IAルーキーとして挑む。勢いのある若手ライダーがどんな活躍を見せるのか、期待がかかる。
IA2
タイトル防衛に挑む中島、ブライアン・シューの参戦で混戦極まる

IA2クラスでは、2024年シリーズチャンピオンに輝いた#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)がディフェンディングチャンピオンとして2連覇を狙う。シーズンオフには2月から3月にかけて全4戦行われたニュージーランドモトクロス選手権に出場し、その第2戦では強豪がいる中2位表彰台を獲得するなど活躍を見せた。海外で得た経験を全日本の舞台でも発揮するだろう。

また、昨年中島とチャンピオン争いを繰り広げた#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)も出場。2023・2024年でランキング2位という悔しい結果に終わった横澤だが、シーズンオフにはチームメイトの#5柳瀬⼤河(TKM motor sport いわて/ホンダ CRF250R)とともにアメリカに渡り修練を積んできた。さらに、AutoBrothersより、ドイツ出身の#53ブライアン・シュー(AutoBrothers/GASGAS MC250F)が参戦する。シューは2014年のヨーロッパ選手権EMX125クラスチャンピオンで、2023年には全日本モトクロス選手権第8戦にスポット参戦し総合優勝を果たした。彼の参戦によりチャンピオン争いはさらに混迷を極めるだろう。

また、IA2クラスには毎年IB OPENクラスなどからルーキーライダーが昇格する。今年は、2024年IB OPENクラスランキング4位の#04守大夢(Kawasaki PURE TECH Racing/カワサキ KX250)をはじめ5人がエントリーしている。さらに2024年11月にHSR九州で開催された2024MFJモトクロス全国大会のナショナルクラスで優勝し、特別昇格を果たした#38臺琉斗(★MOTION RACING★/ホンダ CRF250R)も出場する。彼らが開幕戦からどんな活躍を見せてくれるかも見どころの一つだ。
IB OPENクラス
各地方の強豪が勢揃い、その勢力図はいかに
IB OPENクラスはIAクラスへの登竜門と呼ばれるクラスである。これまで全日本モトクロス選手権におけるIA昇格枠は年間ランキング上位10位までとされていたが、今年から年間ランキング1位〜5位に変更され、IAクラスへの昇格はさらに狭き門となった。

IB OPENクラスには、毎年昨シーズンから継続して参戦しているライダーに加えて、地方選手権から昇格したライダーも多く参戦し、毎年その勢力図は開幕してからでないとわからない。今年のエントリーリストを見ると、昨年から継続して出場する#1當真弦樹(YSP浜松 BOSS RACING/ヤマハ YZ250F)と#2島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAINRIDERS/カワサキ KX250F)は、2024年に2位表彰台を獲得した実力を持つ。また、今年ステップアップしてきたライダーとしては、各地方選手権のナショナルクラスチャンピオンをはじめ、2024MFJモトクロス全国大会のノービスクラスで優勝し特別昇格を果たした#58名島玖龍(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)や#44佐藤太亮(ホンダ CRF450R)、さらにジュニアクロスからの特別昇格を果たした#57髙木碧(BLUCRUレーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)など、各地方の名だたる面子が揃っている。また、2019年レディースクラスチャンピオンの#33本田七海(BLU CRU TEAM KOH-Z/ヤマハ YZ250F)がフルサイズマシンに乗り換えて参戦する。海外レースへの挑戦と並行してIB OPENクラスチャンピオンを狙うという。今年は誰が最初に勝利を掴むのか。わずか5つの昇格枠をかけた熱いバトルをぜひ現地で見ていただきたい。
LMX
勝利への想いがぶつかり合う開幕戦

レディースクラスは、#1川井⿇央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)が2023年に続いて2024年もチャンピオンに輝き、自身4度目のタイトルを獲得した。2025年は3連覇、そして自身5度目のタイトル獲得を目指す。一方、チャンピオン争い候補の1人であった#3川上真花(BLU CRU YSP大阪箕面/ヤマハ YZ85LW)は怪我により開幕戦欠場を余儀なくされた。川井をはじめ、2024年シリーズランキング4位の#4楠本菜月(TEAM HAMMER/ホンダ CRF150R)や#6箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)らがどんなバトルを見せるのか注目が集まる。さらに、#8穗苅愛香(TOMOレーシング&美蔵withCONNECT/ヤマハ YZ85LW)はシーズンオフにアメリカでトレーニングを積んできているという。開幕戦で誰が最初に優勝を飾るのか、レースの行方は見逃せない。
開幕戦(4/13)
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