D.I.D全日本モトクロス選手権では、2025年からポイントスケールが大幅に変更されました。何が変わり、シリーズ争いにどんな影響を与えているのか? その変更点を抑えることで、今シーズンのレース観戦がもっと面白くなるはずです。
チャンピオンはシーズンを通した合計ポイントで決まる
D.I.D全日本モトクロス選手権では、各ヒートの順位に応じてポイントが与えられ、その合計が大会の総合順位となります。さらに、シーズンを通じて積み重ねたポイントの総数によって年間ランキングが決まり、最多獲得者がチャンピオンに輝きます。そのため、今回のポイントスケール変更はシリーズ争いを大きく左右する要素になります。
2025年から導入された新ポイントスケール、3つの変更点
2025年シーズンから、D.I.D全日本モトクロス選手権に新しいポイントスケールが導入されました。2024年と2025年を比較すると、その違いはかなり大きいことがわかります。


1. ポイント付与範囲の拡大
2024年までは1~15位までがポイント付与の対象でしたが、2025年からは1~30位にまで拡大しています。順位に関わらず、決勝を完走した全ライダーにポイントが与えられる方式になっています。
2. 優勝ポイントの引き上げ
2024年までは優勝したライダーに25ポイントが加算されていました。しかし新ポイントスケールでは、対象範囲の拡大に伴い、10ptアップの35ポイントに変更されています。
なお、リタイアした場合はポイントが0になるため、優勝者とリタイアしたライダーの差は35ポイントと、2024年よりも開くことになります。
3. ポイント差が縮小
各順位のポイント差が縮まったのも大きな変更の一つです。2024年は以下のように1〜6位の差が開いていました。
1〜2位:5ポイント差
2〜3位:4ポイント差
3〜4位:3ポイント差
4〜5位:2ポイント差
6位以降:1ポイント差
一方、2025年の新ポイントスケールでは以下のように変更されています。
1〜2位:3ポイント差
2〜6位(各位間):2ポイント差
7位以降:1ポイント差
比較すると、2025年は2024年より優勝者と2位、2位と3位が2ポイント、3位と4位の差が1ポイント少なくなっていることがわかります。これによりポイントランキングの差が開きにくくなりました。近年ではトップが連勝を重ね、最終戦を待たずしてチャンピオンが決まるという展開が多くありました。しかし、ポイントスケールが変わったことによってシーズン終盤にまでランキング争いがもつれ込むことが期待されます。
また、ランキング争いが接戦になりやすいということは、これまで以上に、着実にポイントを重ねていく”安定感”がチャンピオン獲得の鍵となります。
2025年前半のポイントランキングを見る
IA1クラス

前半戦(第1~4戦、全9ヒート)の合計ポイントを見ると、#1ジェイ・ウィルソン (YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ YZ450FM)が285ptでトップ。続いて#2横山遥希 (Honda Dream Racing LG/ホンダ CRF450R)と#4大倉由揮 (Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)が263ptで並び、ウィルソンとは僅か22pt差。まだ逆転のチャンスがある状態です。

ここで注目したいのが、2位の横山と3位の大倉が同ポイントということです。2人の戦績を見ると、横山は優勝・3位・4位・9位・11位を各1回ずつ、2位を4回という結果で終えています。一方、大倉は優勝・2位・4位・5位・9位を各1回ずつ、3位が4回という成績です。横山が2位を4回獲得したことで築いた8ポイント差を、大倉が2位と5位を獲得したことで挽回し、同ポイントに並んだということになります。
また、4位の#5能塚 智寛(Team Kawasaki R&D/カワサキ KX450-SR)が242pt、5位の#8大城魁之輔(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ450F)が1ポイント差の241ptとこちらも僅差です。
2024年まで特に差が開きやすかった2〜6位の各順位ですが、2025年では各順位2ポイント差になったことが肝となり、前半戦を終えてのランキング争いに接戦が生まれています。
IA2クラス

IA2クラスでは、#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)が303ptで首位。2位の田中淳也も276ptと迫っており、その差は27ptです。さらに3位#6 鴨田翔(Kawasaki PLAZA 東大阪/カワサキ KX250)が242pt、4位#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)が235ptで上位4名が60pt圏内と、チャンピオンシップは混戦です。

そんな中にあって、首位の中島の安定感はずば抜けており、全ヒートを2位以上でフィニッシュ。その安定感が27ポイント差につながっています。ポイント差が小さいということは、裏を返せば、開いた差を縮めるのが難しいということでもあり、確実に毎ヒート上位でポイントを重ねる重要性がわかります。
IB OPENクラス

IB OPENクラスは、#14笹谷野亜(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)が233pt、#2島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX250F)が219pt、#58名島玖龍(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)が214ptで、トップ3人の差がわずか19ポイント以内と、各ライダー1戦も落とすことのできない状況です。

さらに、同クラスは2025年よりIAクラスへの昇格枠が10位以内から5位以内へと変更されています。そのボーダーラインとなる5位と6位を見ると、#54外間大詩(T.E.SPORT/ホンダ CRF250R)が167pt、#15酢崎友哉(成田MXパーク アシタプランニング/カワサキ KX450)が162ptで5ポイント差。酢崎が3つ順位を上回ることで簡単にひっくり返るわずかな差です。新ポイントスケールと昇格枠の変更によって、IA昇格をかけたランキング争いは昨年よりもさらに熾烈なものとなり、残り3戦でどれだけポイントを獲得できるのか、その実力が試されます。
レディースクラス(LMX)


レディースクラスはディフェンディングチャンピオンの#1川井麻央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)が全勝を飾っており、頭一つ抜きん出た存在となっています。しかし2位の#6箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)とは18ポイントしか差がなく、例えば川井が1ヒート落とし、箕浦が12位以内に入れば逆転が可能です。さらに3位の#12大久保梨子(KTM TOKAI RACING with ゆめチャンネル&331/KTM 85SX)は箕浦と7ポイント差で、こちらも接戦。3〜6位までの差は14ポイント以内で、6位のライダーとトップの川井の差は39ポイント。優勝ポイントが35ということで、1戦でその順位が大きく変わる可能性もあります。
後半戦、佳境を迎えるランキング争い

ポイントスケールを知ることで、ライダーが何をかけてレースに挑んでいるのかを理解することができます。また、レース展開だけではなく、注目の選手が今誰とランキングを争っているのかを見ることで、レース観戦にさらに力が入ります。
新しいポイントスケールのもとで繰り広げられる2025シーズン、前半戦ではその接戦模様が顕著に表れ、チャンピオンシップは残り3戦にかかっています。後半戦最初の大会となる第5戦は、9月19〜20日に奈良県の名阪スポーツランドにて開催です。