9月20〜21日、D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025第5戦近畿大会が奈良県にある名阪スポーツランドにて行われる。第4戦でシーズン前半が終わり、約3ヶ月のインターバル期間を経て迎える今大会、多くのライダーがこのインターバルでトレーニングを積み、成長を遂げてくる。また、シーズンは残り3戦となり、チャンピオンシップ争いも佳境を迎えていくため、ライダーにとって後半戦を勢いづける重要な一戦となる。
名阪スポーツランドはサンド質の路面が特徴で、レースが進むにつれてわだちやギャップができるなどコース状況が変化しやすい。そのためライダーには柔軟な対応力と、荒れた路面でマシンをコントロールする高度なスキルが欠かせない。さらに、起伏の激しいレイアウトに加え、タイトなコーナーが多いのも特徴の一つ。コース幅が比較的狭く、追い抜くチャンスは限られているため、ライダー同士の緊迫した接近戦が見どころとなる。
開催クラスはIA1・IA2・レディース・IB OPENという公認クラス4つに加え、承認クラスのジュニアクロス(JX)・キッズ65(K65)・チャイルドクロス(CX)と2st125クラス、さらに今季2戦目となるYamaha YZ125 BLU CRU Cup(ブルークルーカップ)が併催される。
土曜日は予選と公認クラス以外の決勝レースが行われ、日曜日にはIA1・IA2・レディース・IB OPENの決勝が開催される。また、日曜日のお昼休みには、名阪スポーツランド40周年を記念したイベントや、モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ(MXoN)」に出場する日本代表の壮行会が行われる。レースもイベントも盛りだくさんな2日間を、ぜひ会場で楽しんでほしい。
IA1
最初にトップに立つのは誰か、上位争いが混戦
IA1クラスは今回15分+1周の3ヒート制。2020年にこのフォーマットが採用されて以来、名阪スポーツランドで行われるのは初めてだ。


第4戦を振り返ると、#4大倉由揮(Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)と#8大城魁之輔(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ450F)が各ヒートで今季初優勝を獲得。両者ともにスタートから前に出て、30分+1周というレース時間の中、常にリードし続ける実力を見せた。

一方、ディフェンディングチャンピオンであり現在ポイントランキングトップに立つ#1ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ YZ450FM)は、第4戦直前に負った怪我や当日の転倒の影響もあり、ヒート1で8位、ヒート2で5位という結果でレースを終えている。ウィルソンは第4戦終了時に「3ヶ月間のインターバルで怪我をしっかりと治したい」とコメント。インターバル期間中はヨーロッパでトレーニングを積んでおり、第5戦に向けて調子を整えてくるだろう。

また、第3戦で今季初優勝を獲得した#2横山遥希(Honda Dream Racing LG/ホンダ CRF450R)も、第4戦ではヒート1で9位、ヒート2で4位という結果となった。インターバル期間中にインタビューをした際、「前半戦はうまくいかないなと思うことが多かったのですが、これまでの経験を通して自分の課題に気づきました。今は基本に返って、基礎練習を重ねています」と話している。さらに、2024年を振り返ると、名阪スポーツランドで行われた第6戦で横山がウィルソンとの接戦を制して優勝を飾っている。後半戦で最初に優勝を手にするのは誰か、各ライダーの走りに注目だ。
なお、ポイントランキングを見ると、285ptのウィルソンに続き、横山と大倉が263ptで並んでいる。さらに、4位の#5能塚智寛(Team Kawasaki R&D/カワサキ KX450-SR)と5位の大城の差はわずか1ポイントであり、こちらも接戦となっている。第5戦でランキングがどう動くのかも見逃せない。
IA2
安定感のある中島、層の厚い上位陣

IA2クラスは通常の30分+1周というレースフォーマットで行われる。同クラスでは#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)がポイントランキングをリード。開幕戦から第4戦までの全ヒートを2位以上で終えており、その安定感は群を抜いている。夏のインターバル期間は6週間ほどアメリカへ行き、乗り込みを重ねてきた。中島は「現地のライダーと一緒に走り、実力差を感じながら日々練習していました」と振り返り、さらに高みを目指して実力を伸ばしている。

そんな中島のライバルとなるのが、#53ブライアン・シュー(Auto Brothers/GASGAS MC250F)だ。今季を振り返ると、第2・3戦は都合により欠場となったが、開幕戦で2連勝、第4戦ではヒート1で6位、ヒート2で1位を獲得している。特に第4戦では、ヒート1はマシントラブルにより最後尾から、ヒート2はスタートで出遅れ9番手以降からの追い上げを強いられた。しかし、各順位にまで追い上げるそのスピードは他のライダーを圧倒するもので、中島とのベストラップタイムを比べると2秒ほど速い。次戦ではその差が縮まるのか、トップ争いに期待がかかる。

また、ランキング2位の#4田中淳也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ250F)は第3戦で自身初のIA2クラス優勝を果たした。第2戦以降も全ヒートで表彰台に登り、中島とトップ争いを繰り広げている田中は、クラス内でも存在感を強めている。さらに、ランキング3位につけている#6鴨田翔(Kawasaki PLAZA 東大阪/カワサキ KX250)や、ランキング4位であり、昨年の名阪スポーツランドで優勝経験がある#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)など、上位陣の層は厚く、バトルは混戦を極めるだろう。
IB OPENクラス
笹谷が一歩リード、油断ならない上位争い
IA昇格をかけて競い合うIB OPENクラス。エントリーリストを見ると参加台数は58台で、今季最多となる出場者数だ。

第4戦までを振り返ると、各大会で初優勝のライダーが誕生し、これまでに全6名が表彰台の一番上に立っている。各ライダーの実力がかなり拮抗している中、クラス最多の3勝をあげているのが#57髙木碧(BLUCRUレーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)だ。250ccや450ccの4ストロークマシンで走るライダーが多い中で2ストローク125ccマシンを駆り、トップ争いを繰り広げるそのスピードとテクニックは目を見張るものがあり、後半戦も優勝候補として存在感を示している。

一方、ポイントランキングトップにつけているのが#14笹谷野亜(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)だ。これまでの優勝数は1回のみだが、8ヒート中5ヒートにおいて表彰台圏内でゴールしている。前半戦での成長ぶりは顕著で、レースを重ねるごとに上位に入る回数が増えていき、クラスの中で最も多く表彰台に登っている。

また、ポイントランキング2位の#2島袋樹巳(Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX250F)は、前半戦でスタート後の追い上げと粘り強さを発揮し、毎戦一度は表彰台に登っている。さらに、第4戦では自身の課題としているスタートを決め、初優勝を獲得した。第5戦の会場となる名阪スポーツランドは島袋が所属するチーム「Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS」の地元であり、自身にとっても乗り慣れているコースだという。優勝を経て迎える地元大会、トップ争いでの活躍が期待される。
なお、第4戦までを見ると両ヒートともに表彰台に乗っているライダーは少なく、チャンピオンシップがさらに接戦となるであろう後半戦は、いかに両ヒートを上位でまとめるか、その安定性が鍵となってくる。
LMX
川井が名阪スポーツランドでの初優勝なるか

レディースクラスは第4戦まで#1川井麻央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)が連勝を重ねている。ディフェンディングチャンピオンとしてその強さを発揮してきた川井だが、実は名阪スポーツランドで優勝したことがないという。第5戦に向けてコメントを聞くと、「これまで、チャンピオンを獲った年でさえも名阪スポーツランドで優勝したことがないんです。今年こそは勝ちたいと思って、かなり乗り込んでいます」とのこと。調整を重ね、万全の状態で迎える第5戦での走りに注目が集まる。

一方、前半戦で川井とトップ争いを繰り広げた#6箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)は、全4ヒート中3ヒートで2位に入賞している。箕浦の強みであるスタートが発揮されるレースも多く、第4戦でもスタート後にレースをリードする展開が見られた。しかし、そのレース後に話を聞くと、2位という結果に悔しさを滲ませており、「このインターバルで練習を重ねてもっと速くなります」とコメント。悔しさを糧にした箕浦の走りに期待がかかる。

また、第4戦では#12大久保梨子(KTM TOKAI RACING with ゆめチャンネル&331/KTM 85SX)が3位、#4楠本菜月(TEAM HAMMER/ホンダ CRF150R)が4位でフィニッシュを果たしている。さらに、開幕戦前の怪我により欠場していた#3川上真花(BLU CRU YSP大阪箕面/ヤマハ YZ85LW)が、第5戦から復帰を予定している。川上は2024年で表彰台の常連となった実力の高いライダー。9月7日に行われた近畿モトクロス選手権レディースクラスでは、第5戦エントリー予定のレディースライダーが多く出場する中で優勝を飾り、好調を示した。各ライダーがどんなバトルを展開するのか、その行方は最後まで目が離せない。
第5戦(9/20〜21)
◾️D.I.D 全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第5戦 近畿大会情報