6/24(土)-6/25(日)、D.I.D 全日本モトクロス選手権シリーズ 2023 第4戦が広島県世羅グリーンパーク弘楽園で2年ぶりに開催

2021年最終戦以来、2年ぶりに開催された広島県世羅グリーンパーク弘楽園の全日本モトクロス。この地方特有の、表面に砂の浮いた硬い路面(ハードパック)はとてもスリッパリーでライダー達を苦しめる。また初夏ということもあって土日ともに気温はぐんぐん上昇。爽やかな風が気持ちいいものの、暑さに耐える体力も試されるラウンドとなった。

D.I.D JMX 2023 R4 中国大会 観戦情報

IA1

ジェイ・ウィルソンとの距離は近づいたか。富田、内田が気を吐く2ヒート

開幕戦から3戦続けて3ヒート制フォーマットがとられたIA1クラスだが、この第4戦では今季初めて2ヒート制フォーマットで行われた。時間は30分+1周、初夏の気温の高さにはこたえる長丁場である。レースの駆け引きは時間の短い3ヒート制より複雑になり、前半の勢いと後半まで繋げていくレースの組み立て方のセンスが問われることになる。なお、開幕・第2戦で負傷を負ってしまったトップランカー#3渡辺祐介(YAMAHA FACTORY RACING TEAM / ヤマハ YZ450FM)、#2能塚智寛(Team Kawasaki R&D / カワサキ KX450-SR)、#5小方誠(TEAM HAMMER / ホンダ CRF450R)は今戦も欠場している。

ヒート1、スタートを飛び出したのは#24道脇白龍(TEAM KOSAKA with CARVEK / ホンダ CRF450R)と#6大倉由揮(Honda Dream Racing Bells / ホンダ CRF450R)。ここまで9ヒート連勝を続けている#27ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM / ヤマハ YZ450FM)はトップスタートこそ逃すものの、すかさず前を奪ってオープニングラップからレースをリードしていく。同じく上がってきた#4大城魁之輔(Honda Dream Racing Bells / ホンダ CRF450R)、#1富田俊樹(YAMAHA FACTORY RACING TEAM / ヤマハ YZ450FM)らを含めた2番手集団がウィルソンを必死に追う序盤の展開。ここから最初に離脱したのは大城で、コース後半のロングコーナーで激しく転倒してしまう。大倉と#8内田篤基(Yogibo マウンテンライダーズ / カワサキ KX450)が激しく2番手争いを演じる中、少しずつ内田が大倉を引き離していく。レース中盤には富田が大倉を捉え、3番手へ浮上。11周目に富田は内田をも視界に捉え、一気に勝負を仕掛けていく。内田は序盤に勢いを集中させすぎたか、富田の猛プッシュにこらえきれずパスされると、少しずつその差は離れていった。富田はウィルソンの背中を追うものの捕らえることはできず、ウィルソンが10勝目をマークした。

続いてヒート2では内田がホールショットを奪い、大倉、ウィルソンを伴った3つ巴の展開に。内田がウィルソンらを揺さぶるブロックラインを展開していくが、ウィルソンの思いきったラインどりに敵わず後退。ウィルソンはオープニングラップから単独トップへ浮上し、勝ちパターンに持ち込んだ。2番手争いは内田が一歩リード。一時富田が内田の前を走るシーンがあるものの、内田が刺してこちらも単独走行へ。3番手を走る富田には大倉が迫り、長丁場でプレッシャーをかけていくが、大きく仕掛ける場面はなかなか現れずタイムアップ。富田は辛くも3位を守り切った。

#27ジェイ・ウィルソン
「僕にとっては初めての広島大会で、日曜のレースは午前中こそとてもいいコンディションだったけど、午後は硬い路面がむき出しになっていて難しくなった。僕自身はパーフェクトウィンができてとても嬉しいが、チームメイトの町田旺郷には辛いレースとなってしまったね。彼はスピードも上がってきていてうまくかみ合わないようだった。何度も言っているが、僕の仕事はヤマハの他のライダーの実力と、日本人ライダーの実力を底上げすることだから、この広島ではみんな成長が見えて嬉しい。僕のレースは大変になってしまうけどね!」

#8内田篤基
「ヒート2はホールショットが獲れて、ジェイさんとやり合っている間にトッチくん(富田俊樹)も入ってきて、3人でバトルできました。見る方も面白い展開になったんじゃないかと思います。ただその辺で、プッシュしたことが後半に少し響いたところがありました。ジェイさんを逃してからは、トッチ君に抜かれて再度抜き返して……。自分の走りに集中できた結果、トッチ君との差を拡げることができたと思います。1位への壁はデカイんですが、レースごとに近づいている感触があります。ジェイさんも僕のことを気にしてくれているとは思うんで、プレッシャーかけて崩していければチャンスも見えてくるのかなと思います」

#1富田俊樹
「ジェイはもちろん速いんですけど、内田選手や大倉選手がここのところ速いですね。大倉選手はヒート2でずっとプッシュしてきていて、途中接触して転倒してしまったんですけど、レース中は惑わされました。次戦北海道までは時間が少し空くのですが、事前練習もしっかり積んで次こそおもしろいレースをします!」

IA2

池田凌が自身初優勝「すべてが噛み合い実力が出せた」

このクラスではレースを追う毎にスペインからの刺客である#58ビクトル・アロンソ(Auto Brothers / ヤマハ YZ250F)がキレを増していき、第2戦、第3戦とパーフェクトウィンを飾っている。スペインの路面はハードパックが多いこともあり、どちらかと言えば広島はさらにアロンソ有利と言えるかもしれないが、ヒート1はアロンソが久々の苦戦を強いられた。

日曜日、最初の決勝ヒートとなったヒート1は、スタートからアロンソが多重クラッシュに巻き込まれほぼ最後尾からの追い上げを強いられる。ここで気を吐いたのは、Yogibo MOUNTAIN RIDERSの面々だ。スタートから#18池田凌(Yogibo マウンテンライダーズ / カワサキ KX250)、#11阿久根芳仁(Yogibo マウンテンライダーズ / カワサキ KX250)、そして#17田中淳也(YSP浜松BOSS RACING / ヤマハ YZ250F)のオーダーで若手同士のデッドヒートが繰り広げられていく。しかし、前半から池田の勢いは止まらず、ぐいぐいと2番手以降を引き離して単独走行へ持ち込んでいく。田中が2番手、その後ろに阿久根というオーダーだったが、#5横澤拓夢(TKM motor sports いわて / ホンダ CRF250R)がこれを追撃。阿久根をかわして3番手へ浮上し、田中を睨む好走を見せる。10周目、ついに横澤が田中をパス。アロンソは7番手まで追い上げるが、30分ものレース時間でも表彰台には届かず悔しいレースとなった。オープニングから独走状態を築いた池田は、自身初表彰台であり初優勝。また、久方ぶりの北海道出身ライダーによるIA2優勝となった。

ヒート2、スタートから#2浅井亮太(bLU cRU フライングドルフィンサイセイ / ヤマハ YZ250F)が単独トップに躍り出て、アロンソは10番手ほどからの追い上げレースとなった。浅井は安定感のある走りで後続を引き離していくが、1周につき1〜2台をパスして怒濤の追い上げを試みるアロンソが、中盤でついに浅井を捉えることに成功。様子を見ながらじっくりと浅井を追い詰めて攻略する。アロンソはトップに立ってから浅井を引き離して単独走行へ。1位アロンソ、2位浅井、3位にはヒート1でも活躍した横澤が入った。池田は転倒で順位を落としてしまったが、5位まで追い上げて総合優勝を勝ち取った。

#18池田凌
「これまでもチャンスはあったし元々勝てると思っていたのですが、去年はジェイがいて、今年はアロンソがいて、なかなか表彰台を獲るところまでいけませんでした。今日はうまくチャンスをものにできて嬉しいですね。いつも追い上げ展開なので、展開的に言うと追われるって言うのが新鮮でした。個人的には目標意識が持てる追い上げのほうが得意です。とにかく後半まで気を緩めたらこけてしまうし、体力の心配をせずにプッシュし続けました。徐々に調子が戻ってきた感があるので、安定させたいと思います」

#58ビクトル・アロンソ
「ヒート1で単独転倒をしてしまい腕を少し痛めてしまったんですが、ヒート2では開幕戦に落としてしまった分も取り戻したいと思いながら必死に頑張りました。広島のコースはハイスピードで、欧州にも似ていて難しかったですね」

#5横澤拓夢
「ヒート1は池田(凌)くんが速かったですね。僕は2位に上がった時にあまりに離れすぎてたんで、自分が1位だと思っていたんですよ。ところがサインボードで前にいけと指示を出されて、嘘だろ? って……。見たら池田くんがいてマジかよって思いました。追い上げで疲れちゃって最後まで追い詰めることができませんでした。僕はここ広島で2019年に大けがをしてしまったんですが、広島のみなさんに助けられてこうやってここに立てています。本当にありがとうございます」

#2浅井亮太
「ヒート2のスタートでホールショットを獲ることができて、レース中盤くらいまでトップを走っていたんですけど、後ろからものすごい勢いでビクトル選手が追い上げてきて、2位となりました。レース後半は自分の体力が落ちてしまって、前と離れて、後ろの拓夢くんに差を縮められるレースになって、満足はいってないです。本当に勝ちたいので、次の北海道に向けて全力で頑張ります」

IB OPEN

今季圧倒的な強さを誇る住友がパーフェクトウィン

土曜日・日曜日にまたがって決勝レースがおこなわれるIBオープン。土曜のヒート1ではスタートで赤旗中断があったものの、仕切り直して強豪#53住友睦巳(bLUcRUフライングドルフィンサイセイ / ヤマハ YZ250F)がオープニングラップからトップを走行していく。2番手争いは#9鈴村絆(バイカーズステーション金沢レーシング with MOTUL / ホンダ CRF250R)と#63藤井武(TEAM HAMMER / ホンダ CRF250R)で展開されるが、序盤のうちに藤井が鈴村をかわして単独2番手へ。住友は藤井に15秒差をつけてトップでチェッカー受けた。

ヒート2ではベテランで33歳の#40榎田諒介(Bamboo Riders with KOHSAKA / ホンダ CRF450R)がホールショットを獲得。オープニングラップをトップで走行するものの次第に遅れをとる展開に。序盤で住友がチャージをかけて単独トップに立つと、早々に勝ちパターンに持ち込んでいく。一方、レース後半には2番手を走行する鈴村に、スタートで後れを取り追い上げレースを強いられていた#8佐野壮太(ジュニアライダース・フリーダムナナ / カワサキKX250)が迫る。佐野が追い続けるも、鈴村が逃げ切りゴール。佐野は今季初表彰台を飾った。

#53住友睦巳
「予選から調子がよくて、ヒート1もスタートからしっかりいい走りができてよかったです。ヒート2はスタートでミスしてしまったんですが、落ち着いて冷静に走って勝つことが出来ました。次の名阪まで期間が開くのですが、しっかり気を抜かずに準備してきたいと思います」

#63藤井武
「今回スタートもそこそこ前に出れたんですけど、気持ち的にも住友選手に負けてしまって、ライディングも良くなかったなと思います。次も1位目指して頑張るので、応援よろしくお願いします」

#9鈴村絆
「今回は1ヒート目も2ヒート目も上位に入り込めて、表彰台を獲得できたので良かったです。次の大会に向けてもしっかり準備をしていきます!」

#8佐野壮太
「去年から調子は良かったんですけど、なかなか噛み合わなくて表彰台にも上ることができなかったので、今回表彰台に立てて嬉しいです。まだまだ3位じゃ物足りないので、次は1位を獲れるように頑張ります」

LMX

本田・川井で分け合う勝利。若手の勢いやまぬレースが続く

通常1ヒートのみのレディースクラスは、今大会2ヒート制で行われた。IBオープン同様に土日にまたがって開催される方式で、両ヒートとも15分+1周。土曜のヒート1は、スタートから波乱であった。

#2川井麻央(T.E.SPORT / ホンダ CRF150RⅡ)がクラッシュしほぼ最後尾からの追い上げを強いられる中、トップは#9箕浦未夢(TEAM ITOMO / ホンダ CRF150RⅡ)、その後ろに#17濱村いぶき(T.E.SPORT / ホンダ CRF150RⅡ)がつき、若手の勢いが目立つ序盤となった。タイトル経験者の#4本田七海(bLU cRU TEAM KOH-Z LUTZ with 秀光ビルド / ヤマハ YZ85LW)も接触で若干出遅れてオープニングラップは6番手となったが、こちらは早々に順位を回復する。箕浦は転倒により順位を落とし、濱村がトップへ浮上。追い上げを続ける本田が中盤に濱村を捉えてパスすると、少しずつ差を拡げてトップでチェッカーを受けた。

ヒート2は好スタートを切った川井がオープニングラップから一度もゆずることなく、貫禄の勝利。2番手争いは#8瀬尾柚姫(TEAM HAMMER / ホンダ CRF150RⅡ)とスタートで出遅れ追い上げを強いられた本田の戦いだったが、序盤で本田が2番手へ。本田は最終ラップでクラス内唯一の1分59秒台を叩き出す勢いをも見せたが、負けじと後半でペースを上げた川井が逃げ切る形となった。

#4本田七海
「練習走行から予選も調子がよくて、決勝も自分の走りをしようという気持ちでいました。ヒート1はスタートで前に出れなくてうまく乗れていなかったんですけど、冷静に走ることを心がけて走ったことで自然とトップに上がることができました。ヒート2は2位で、調子が良かっただけにピンピンを獲ることができなくて悔しいです。ただ、大きく順位を落とすことなく、スタートで出遅れたけどこうやって2位まで追い上げることができて良かったと思います。次戦の名阪は絶対に勝ちます!」

#2川井麻央
「昨日のヒート1は自分のミスで転倒してしまって優勝できなかったんですけど、優勝できなくても色んな人が声をかけてくれて、たくさんの人たちの協力によってマシンを直してもらって、レースすることができました。最高の形で昨日(ヒート1)の恩を返せたと思います。チャンピオンに向けて残りのヒートも絶対に勝つので、応援よろしくお願いします」

#17濱村いぶき
「自分の地元である九州に近いコースということで、九州の方が応援に来てくれていて、地元のみなさんの前で良い成績を残すことができてよかったなと思います。もちろん2位で満足はしていないので、これからもっともっとトップの2人についていけるように頑張っていきます」

#5瀬尾柚姫
「地元のコースで両ヒートとも表彰台に立つことができて良かったです。ただ、自分の体力不足で後半はどうしても垂れてしまうので、そこを改善して、次戦の名阪は本田選手と川井選手に絡んでいけるように頑張ります」

CX

最後まで続いたAクラスの接戦

お昼休み前のCXは、ショートカットコースながら広島特有の起伏に富んだ難易度の高いレイアウトで開催。Aクラスはレースを通じて#94阿部哲昇(MOUTAIN RIDERS / スズキ DR-Z50)、#39和田優馬(TSKレーシング / スズキ DR-Z50)、#51福家理仁(Team5R with GRIFFON / スズキ DR-Z50)の接戦が繰り広げられ、最後まで目が離せないレースとなった。特に阿部、和田は0.5秒弱の差でチェッカーを受けるというドラマチックな展開。阿部、和田、福家の順でレースを終えた。Bクラスは#59広野康輝(LMX365 / KTM SX-E5)のみの参戦。Aクラスとあわせても単独トップを走行し、最速ラップを刻み続けた。

2st125

SUGOに続き平山力が圧勝

各ライダー、プロクラス並にマシンやウエアを着飾って登場した2スト125クラス。予選で上位16名が振り分けられたA組では、SUGOに引き続き#931平山力(TeamCARRY TSF / ヤマハYZ125)がオープニングラップからトップをゆずらず勝利。一方、B組では1周目で転倒を喫した#3菊川竜哉(TSKレーシング / ヤマハYZ125)がじわじわ追い上げ、ラストラップで2番手#86髙橋尚史(ホンダCR125R)を下してトップチェッカーを受けた。

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次戦は約1ヶ月のインターバルが開いた7/30(日)に、北海道の新千歳モーターランドにて行われる。北海道での開催は10年ぶり。このラウンドはIAクラスのみで行われ、IA1とIA2ともに、予選はタイムアタック方式、決勝は25分+1周と15分+1周の変則2ヒート制を予定している。今シーズンの折り返し地点と言える第5戦。10年ぶりの地で一体どんなバトルが生まれるのか、ぜひその目に焼き付けてほしい。



D.I.D JMX 2023 R5 北海道大会 観戦情報

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