D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025はシーズン終盤の第6戦を迎え、「21Groupカップ 東福寺保雄記念大会」として、埼玉県川越市のオフロードヴィレッジにて開催された。今大会は、日本のモトクロス界のレジェンドであり、今年6月に逝去された故・東福寺保雄氏を偲ぶ記念大会となった。東福寺氏が監督を務めたT.E.SPORTの地元でもあるこの地で、多くのライダーが特別な思いを胸に戦いに臨んだ。
前日は強風に見舞われ、決勝日当日の朝も小雨がぱらつく難しいコンディションで始まった。その後は天候が回復し、風の影響で路面は急速にドライ傾向へと変化。しかし午後には再び雨が降り始め、スリッパリーなコンディションがライダーたちを苦しめた。IA1、IA2クラスは今シーズン2度目となる15分+1周の3ヒート制で争われ、短いレース時間の中でのスタートと序盤の展開、そして刻一刻と変わる路面への対応力が勝敗を大きく左右した。
日時:2025年10月18〜19日
会場:オフロードヴィレッジ(埼玉県)
天候:土曜:晴れ/くもり、日曜:くもり/雨
観客動員数:8878名
IA1
王者ジェイ・ウィルソンが2勝するも、大倉由揮が劇的逆転勝利で一矢報いる

IA1クラスは3ヒート制で行われた。早朝のタイムアタック予選では、ランキングトップの#1ジェイ・ウィルソン(YAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハ YZ450FM)がトップタイムを記録。そんな中、決勝ヒート1でホールショットを奪ったのは#8大城魁之輔(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ450F)。ウィルソンは9番手と出遅れる。レースは大城がトップを快走するが、ウィルソンが猛追。6秒以上あった差を削り取り、残り1周のボードが提示される直前の最終コーナーで大城を捉え、劇的な逆転でヒート1を制した。2位に惜しくも敗れた大城、3位には転倒から見事なリカバリーを見せた#4大倉由揮(Honda Dream Racing Bells/ホンダ CRF450R)が入った。

昼休みに散水され、さらに雨が降り始めたことで非常に滑りやすい路面となったヒート2。スタートで飛び出したのは#10内田篤基(Yogibo PIRELLI MOUNTAINRIDERS/カワサキ KX450)と#37西條悠人(KAWASAKI PURETECH Racing/カワサキ KX450)のカワサキ勢。1コーナーの混戦を抜け出しトップに立ったのは西條、2番手には#38浅井亮太(BLUCRUフライングドルフィンサイセイ/ヤマハ YZ450F)が続く。一方、ウィルソンはまたもスタートで出遅れたが、1周目から驚異的な追い上げを開始。レース序盤、浅井は転倒し後退。その後ウィルソンが2番手まで浮上し、トップを走る西條を追う。すぐにウィルソンは西條をパスしトップに立つと、そのまま独走態勢を築き、危なげなくヒート2も制した。2位にはIA1昇格後初の表彰台となる西條、3位には大倉が入った。


雨が降り続く中で行われた最終ヒート。ホールショットを決めたのは#14星野優位(レーシングチーム鷹 / star racing 166/ヤマハ YZ450F)。2番手には#15渡辺祐介(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM/ヤマハ YZ450F)、3番手にはタイからスポット参戦した#47JIRAJ WANNALAK(Honda Racing Thailand Team/ホンダ CRF450R)(※通称:ニモ)が続く。ウィルソンは5番手からのスタート。レース序盤で早くもウィルソンは渡辺、ニモをパスし2番手へ浮上。さらに星野もパスし、早々にトップに立つ。しかしレース中盤、周回遅れのライダーと接触しウィルソンがまさかの転倒。この隙にニモがトップに浮上し、星野、大倉が続く大混戦となる。終盤、2番手に上がった大倉が猛烈なプッシュを見せ、最終ラップにニモを捉えてトップを奪取。劇的な逆転で今季2勝目を飾った。2位には惜しくも敗れたニモ、3位には星野が入った。

#1 ジェイ・ウィルソン
「ヒート1は見ている方にとってはエキサイティングなレースだったと思う。ただ自分にとってはかなりタフだったね。頑張って走り切ったから、それが結果に繋がって優勝できたことはよかったし、良い走りができたと思う。オフロードヴィレッジは常に難しくて、滑りやすくてプッシュしようとしてもミスしやすい。レース中に限界を攻めるような感じで、無理に攻めることができないので、攻めのバランスに気をつけながら走ったよ。ヒート2とヒート3はヒート1よりも良いスタートができた。コーナーの攻略が上手く行かなかったけど、周回をこなしてレース運びに集中して、結果的に勝つことができてよかった。西條選手が前にいたので、タイミングを見計らいながら、でもできるだけ素早く仕掛けました。タイトな上にレース時間も短いし、早めに前に出ておかないと相手が自分の位置を把握してペースを上げたりする。追い越す際はかなりスピードも求められるから、早いタイミングでのパッシングが重要だった。時間が進むにつれてコース状況が変化して、ヒート3は一番難しいコンディションだった。先頭に立つことはできたけど、少し守りに入ってしまって、積極的に攻めることができていなかった。ミスを2回してしまい、最後には周回遅れのライダーと接触して転倒。この結果に落ち込んでいるけど、レースは良いことも悪いことも起きるものだから、気持ちを切り替えて最終戦に挑むよ。全日本にフル参戦し始めてから4度目のチャンピオンを獲得したいと思う」

#4 大倉由揮
「ヒート1は大城選手を追いかけている中で、攻めながらもパッシングポイントを探していた時に滑って転倒してしまいました。順位を下げてから3位にまで回復することができましたが、惜しいことをしました。ヒート2はスタートで少し出遅れて、前のライダーを抜かすのに時間がかかってしまいました。抜いた時点で前の2人との差は開いてしまって、さらに路面もかなり滑りやすかったので、走りが固くなってしまいました。ヒート3はもう完全にスタートでミスをして出遅れました。ほぼ最後尾で1コーナーに入ったのですが、思ったよりもするすると前に抜けることができて、3番手にまで上がることができました。前を走る星野さん(#14星野優位)は結構アグレッシブなライダーで、幅寄せが上手いので慎重にいこうとは思っていました。案の定戦っている時にコースアウトしそうなシーンもあったのですが、ここで引いたらダメだと自分を鼓舞して攻めていきました。2位に上がった時点で残り1周と出ていたのですが、いくしかないと思ってできる限りアクセルを開けてスパートをかけて、相手がミスした隙もあったので、なんとか前に出ることができました。追いつくかどうかも考える暇なく走っていましたが、タイムを見たら前の周のラップタイムから1.5秒スピードが上がっていて、ベストラップだったみたいです。優勝できてよかったです。次戦はロマン・フェーブル選手もくるので、倒しにいきたいと思います」

#37 西條悠人
「IA1にステップアップして1年目で表彰台に上がれたことはよかったですが、まだ前にいるので、素直には喜べないですね。開幕戦以降調子が悪くて、今までできていたことができなくなってしまいました。3ヶ月のインターバル期間でライディングやトレーニングを全部見つめ直して、できなかったことをまたできるようにしたことと、さらに速くなるために練習を重ねてきました。第5戦の名阪では全ヒート転んでしまいましたが、調子は悪くなくて、そこからさらに今大会に向けて乗り込んで、全日本前に行われた関東選手権にも出場しました。ライディングなどを見てもらっているトレーナーさんと改善点を話して煮詰めていった成果が出たと思います。ジェイさんに抜かされてから後ろを走っている中で、自分よりも1〜2秒速いペースだったり、セクションに対するアクセルの開け方だったりを間近で見ることができて、彼のリズムを学ぶことができました。ジェイさんのペースは速いのですが、疲れなくて、この気づきは自分にとっても収穫でした。最終戦は地元で乗り慣れているコースなので、自分の走りに集中して、ベストを尽くしたいです」

#47 JIRAJ WANNALAK
「全日本モトクロス選手権にくるのは実は初めてではありません。85ccの時に1回、2024年の最終戦に1回来ています。ただ1回目は大雨でレースが中止になって、2回目は練習走行で転倒してしまい予選に出ることができませんでした。なので、今回ついにレースができたという気持ちです。フリープラクティスとタイムアタック予選で3位以内に入るタイムを出すことができて、予想よりも自分が乗れていることに驚きました。最初の2ヒートはスタートが上手くいかず、各所でミスをしてしまって追い上げられず、10位。ヒート2もスタートで出遅れて、他のライダーと接触して17番手あたりから追い上げの展開でした。調子も上がらず、結果も良くなかったですが、ヒート3ではスタートで3番手以内に出ることができて、上位争いができました。前についていき、途中でトップが転倒したことで優勝するチャンスがきました。最終ラップまでリードを保ってたのだけど、由揮(#4 大倉由揮)が迫ってきていることに気づかず、ペースを落としてしまいました。さらにコーナーでミスをした際に抜かれて、抜き返そうとしましたが、その時点でコーナーは残り3つで、届きませんでした。すごく大きなミスをしてしまい悔しいですが、2位という結果を残せたことは嬉しいし、ホンダで1・2フィニッシュできたことはよかったと思います。最終戦も出場する予定なので、次は優勝を獲りにいきます」
IA2
ブライアン・シューと中島漱也が優勝を分け合う激闘
IA2クラスも15分+1周の3ヒート制で行われた。予選B組トップの#53ブライアン・シュー(Auto Brothers/GASGAS MC250F)と、A組トップの#1中島漱也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM TAKA/ヤマハ YZ250F)の対決に注目が集まった。

決勝ヒート1、ホールショットを奪ったのは#4田中淳也(YAMAHA BLU CRU RACING TEAM YSP浜松/ヤマハ YZ250F)。しかし2周目、ブライアンが巧みなコーナリングで田中をパスしトップに浮上すると、すぐさま後続を引き離す。レース中盤には中島が2番手、前戦の名阪で初優勝を飾った#14吉田琉雲(Bells Racing/ホンダ CRF250R)が3番手に浮上。ブライアンは終始安定した速さで独走しトップでチェッカーフラッグを受けた。今季4勝目を飾った。2位に中島、3位に吉田が入った。

雨が降り始め、滑りやすいコンディションとなったヒート2。ホールショットを決めたのは#19住友睦巳(TEAMフライングドルフィンサイセイ/ヤマハ YZ250F)。しかし、すぐに田中がトップを奪い、ブライアン、中島が続く展開。レース中盤、ブライアンが田中をパスしてトップに立つが、中島もすぐさま田中をかわしブライアンを追撃。ここからブライアンと中島による激しいトップ争いが勃発する。残り2分、中島がブライアンのミスを突きトップに浮上。ブライアンも最終ラップまで猛追するが、中島が0.3秒差で逃げ切り、ヒート2を制した。3位には田中が入った。

雨が降り続く中行われたヒート3。ホールショットを決めたのは田中。2番手に#2横澤拓夢(TKM motor sports いわて/ホンダ CRF250R)、3番手に中島が続く。しかし、トップに立った田中が序盤に転倒。これで横澤がトップに立つが、すぐに中島がパス。レース中盤、2番手に上がったブライアンが中島をパスしてトップに立つと、そこから驚異的なペースで後続を突き放す。独走態勢を築いたブライアンがこの日2勝目を飾り、中島との差を見せつけた。2位には中島、3位には転倒から追い上げた田中が入った。

#53 ブライアン・シュー(Auto Brothers)
「前大会はマシントラブルと転倒でリタイアとなってしまったけど、今回に向けてマシンを新しく用意して挑んだ。3ヒートとも異なる路面状況で、ヒート1はドライでわだちなどもなく、乗りやすい路面だった。自分の走りも調子が良くて、優勝をすることができてよかったよ。その後は雨も降り段々と滑りやすくなって、ヒート2はラインを見つけることができずスピードに乗ることができなかったね。あれが自分の最大限のスピードだったよ。ラストラップは中島選手も見えていたけど、彼も速くて2位で終わった。もっと良い走りができたと思う。ヒート3はスタート後にバランスを崩して出遅れたけど、良いラインを見つけて、追い上げられたし、総合的に良いレースだったと思う。スポーツランドSUGOは実は走ったことがなくて、昨年の映像を見てイメージを掴んでいる段階だけど、もちろん優勝を狙っていくよ」

#1 中島漱也
「モトクロス・オブ・ネイションズで世界のレベルを痛感して、なおさら日本では負けてられないと強く思ったので、結果に出てよかったです。地元ということもあって本当にたくさんの人が応援してくれて力をもらいました。次も負けないです」
IB OPEN
逆転勝利、外間大詩が悲願の優勝を果たす

シリーズランキング上位5名というIAクラスへの昇格枠をかけて競うIB OPENクラス。レースは20分+1周で行われた。上位ライダーの実力が拮抗し、その勢力図が確立されてきた同クラスだが、ヒート1では今回がデビュー戦となる#91永澤匠真(YSP浜松 with BABANASHOX/ヤマハ YZ125)がスタートでトップに立ちレースをリード。続いて、#54外間大詩(T.E.SPORT/ホンダ CRF250R)、#10鎌倉大樹(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ450F)らが後を追いかける展開。外間は徐々に永澤に迫るとレース時間5分がすぎた頃に1秒を切る僅差にまで距離を詰めると接戦を繰り広げる。一方、3番手を走行する鎌倉に#58名島玖龍(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ250F)と#57髙木碧(BLUCRUレーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)が迫ると、レース序盤でパスし順位を上げる。トップ争いが拮抗する一方、名島はレース終盤にかけてトップ2台との距離を1秒ほどにまで縮める。攻める外間、守る永澤、後方からは名島が猛追するというトップ3台の戦いは最後まで続き、結果粘り強くトップを守り続けた永澤が一度も前を譲ることなくトップでフィニッシュ。2位に外間、3位名島という順位でチェッカーを受けた。なお、レース後に永澤はMFJ国内競技規則 付則15 33-2-1(黄旗振動区間にて減速不十分な速度でジャンプを通過)に該当するとし、2順位降格のペナルティが与えられた。結果外間が1位、2位に名島、3位に永澤という順位となった。


ヒート2では鎌倉が好スタートを決めると、#2島袋樹巳 (Yogibo PIRELLI MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX250F)、#15酢崎友哉(成田MXパーク アシタプランニング/カワサキ KX450)、外間が続く。島袋がトップに立ち1周目を通過しレースをリードする一方、外間が追い上げレース序盤で3番手に浮上。さらに続けて2番手にポジションを上げ、島袋に迫っていく。また、外間の後方には#9藤本琉希亜 (ウィリー松浦 with AXIS/ヤマハ YZ250)と永澤がつき、徐々に外間との差を詰める。2〜4番手が僅差となるが、外間がペースを上げて引き離す。トップ2台が抜け出す形となる中、外間が島袋との距離を詰めて猛追。島袋が逃げきるかと思われたが、残り2周というところで転倒を喫し外間に前を譲ることとなる。島袋はすぐに復帰し追いかけるが、外間がトップを守り切りゴール。ヒート1で順位繰り上げとなり初優勝となった外間が、ヒート2では実力で勝利を掴み、見事2ヒート優勝を果たした。2位は島袋、3位には藤本が入賞。藤本は今季初表彰台を獲得した。

#54外間大詩
「ヒート1は繰り上げでの優勝となりましたが、ピンピンで終えることができました。去年の関東モトクロス選手権NAクラスの時以来の両ヒート優勝で嬉しいです。ヒート1とヒート2ともにスタートで4〜5番手以内には出ることができたので、それが勝利に繋がったと思います。ヒート1は攻めながら匠真(#91永澤匠真)がタレてきたこともわかっていたし、自分が速い部分と匠真の速いところも見えていたので、仕掛けようと思っていたのですが、タイトなコースの中で上手く仕掛けることができなくて負けてしまいました。ヒート2はそれも修正して臨みました。緊張して身体もガチガチでしたが、スタートで出られた瞬間に前を抜くことだけ考えて走りました。体力的に余裕があったので、前のライダーに後ろからプレッシャーを与えてミスを誘うなどと考える余裕もあり、結果勝つことができてよかったですし、ヒート2の雨はマディが速い東福寺さんが自分に味方してくれたと感じています。最終戦も勝ちにいきます」

#91永澤匠真
「ヒート1で勝てたのは嬉しかったですが、黄旗無視で3位に降格してしまったのは悔しいです。後方からのプレッシャーもありましたが、ロレッタリン(全米アマチュアモトクロス選手権)の経験もあり、耐えることができました。ヒート2は捨てレンズが外れなくなってしまい、視界がクリアじゃない状態のまま走ることになりました。もう少し上位に行けると思っていたので悔しい結果ですが、日本の大会はロレッタリンに向けて経験値を積むチャレンジの場として考えているので、今回の経験を来年のロレッタリンに生かしていきたいです。最終戦も出場するので、次は2ヒート優勝を目指します」

#9藤本琉希亜
「地元大会ということで気合も入っていたのですが、ヒート1は不甲斐ない走りをしてしまい、順位を大きく落としてしまいました。ヒート2で挽回して、初めて表彰台に上ることができて、支えてきてくれた方に恩返しができたかなと思います。コースは苦手意識があったのですが、地元大会で表彰台に上りたいという思いがあったし、応援してくれる人も多くいたので、いつも以上にアクセルを回せたと思います。次は優勝を狙います」

#58名島玖龍
「開幕戦ぶりに2ヒート上位でまとめることができてよかったです。ヒート1は序盤ペースをなかなか上げることができず、もっと全体的なペースが速ければ前に追いついて抜けたのかなと思います。ヒート2は予想以上に雨が降っていて、だいぶ滑る路面で、自分的にもあまり好きじゃないコンディションになってしまい、スタートで出遅れて追い上げの展開でした。ヒート2も表彰台に上りたかったです。スポーツランドSUGOで行われた第2戦ではボコボコに負けてしまったので、同じ会場で開催する最終戦ではやり返してやろうと思います」

#2島袋樹巳
「ヒート1はスタートで出遅れて追い上げたのですが、その途中で2回転倒してしまって、順位を上げきれませんでした。ヒート2はずっとトップを走っていたのですが、終盤タレてペースが上がらず、抜かれてしまいました。そこから前との距離が少し離れて、守りに入りました。雨も降って滑る路面になって苦戦してしまいました。ただ、2位でレースを終えて、ポイントランキング的にも詰めることができました。スポーツランドSUGOは相性も良いので、最終戦チャンピオン狙って頑張ります」
LMX
川井麻央、激闘を制し地元で開幕6連勝を飾る
レディースクラスでは、#1川井麻央(T.E.SPORT/ホンダ CRF150RⅡ)の連勝を誰が止めるかに注目が集まった。タイムアタック予選では、前戦で怪我から復帰した#3川上真花(BLU CRU YSP大阪箕面/ヤマハ YZ85LW)が、川井を約2.8秒引き離す圧巻の走りでトップタイムを記録し、決勝への期待が高まった。

決勝レース、スタートを決めたのは川井。イン側のグリッドから完璧なスタートでホールショットを奪う。2番手には#4楠本菜月(TEAM HAMMER/ホンダ CRF150R)、3番手には#12大久保梨子(KTM TOKAI RACING with ゆめチャンネル&331/KTM 85SX)が続く。一方、予選トップの川上は出遅れてしまう。レース序盤、2番手を走行していた楠本が転倒で後退。代わって#6箕浦未夢(TEAM ITOMO/ホンダ CRF150RⅡ)が2番手に浮上する。さらに、後方から追い上げてきた川上が楠本をパスして3番手につけると、驚異的なペースでトップ2台を猛追。レース中盤、ついに川井、箕浦、川上の3台による三つ巴のトップ争いが勃発する。

まず仕掛けたのは箕浦。ジャンプセクションで川井をパスし、一時トップに立つ。しかし川井もすぐさま抜き返し、激しいサイドバイサイドのバトルを展開。この攻防の隙を突き、川上が2番手に浮上する。その後、箕浦がミスで後退し、トップ争いは川井と川上の2人に絞られた。レース終盤、川上が川井の背後にぴったりとつき、何度もプレッシャーをかけるが、川井も巧みなライン取りでブロック。残り2分、川上が痛恨のミスでわずかに遅れると、その差が決定打となり、最後までトップを守り切った川井麻央が、チーム監督だった故・東福寺保雄氏を追悼する記念大会という特別な地元レースで勝利。開幕からの連勝を「6」に伸ばした。2位には川上、3位には箕浦が入った。

#1 川井麻央
「フリープラクティスで大きく転倒してしまって、マシンも身体もボロボロな状態でした。決勝も走行中も痛くて、途中で手が痺れてきてしまって、握っているのがやっとな感じでした。今回は自分のスピードに限界があった分、メンタル勝負でした。後ろから箕浦選手が迫ってきているのはわかっていて、コーナーでインをついてきたのは見えていたので、抜かしにくると思っていました。抜かれたとしてもまた前に出ることができるという自信があったので、抜かれた後は1周後ろからラインを見ようと考えて、ついていきました。ダートフリークジャンプの前のコーナーで箕浦選手がアウトに行った時に、ラインの出口が重なることがわかっていたので、インに入ってトップに立ったかたちです。その後川上選手も後ろにいましたが、突つかれるような距離ではなかったし、抜きどころもそんなにないコースだとわかっていたので、ペースを維持して距離を保っておくことで、焦ってミスするだろうなと思いました。かなり我慢のレースでしたが、地元、そして東福寺さんの記念大会で優勝できてよかったです。SUGOはすでに事前練習に行って調子も良かったので、残り1戦、チャンピオン狙って頑張ります」
JX(ジュニアクロス)
地元・外間匠が今季2勝目をあげる

ジュニアクロスでは#25伊良皆龍翔(GASGAS MC85)がスタートで前に出ると、#8外間匠 (T.E.SPORT Jr./ホンダ CRF150RⅡ)と#15浅井 大翔(フライングドルフィンレーシングメイト/ヤマハ YZ85LW)が追いかける。伊良皆がレースをリードし、外間との差を拡大すると、トップ3台の距離は開きそれぞれが単独走行となっていく。しかしレース終盤、トップの伊良皆が転倒。これにより外間がポジションを上げトップを奪取。伊良皆はすぐに復帰するも外間が差を開いてトップでゴール。伊良皆が2位となり、3位には最後までポジションを守り切った浅井が入賞を果たした。
K65(キッズ65)
阿部哲昇が安定感のある速さで勝利

キッズ65クラスは#488佐藤心弥(YSP浜松 with BABANASHOX/ヤマハ YZ65)が好スタートを決め先頭に立つ。しかしその後方から#94阿部哲昇(Yogibo Pirelli MOUNTAIN RIDERS/カワサキ KX65)が追いかけ、1周目にトップに浮上。阿部、佐藤、#365高城零(YSP浜松 with BABANASHOX/ヤマハ YZ65)の順でトップ3台が抜け出し、各ライダー
1秒ほどの差でレースが進行する。僅差ではあるものの、順位は変わらないままレースは終盤へ入り、このままゴールかと思われたが、6周目あたりで高城が転倒。佐藤も最後まで追いかけるも距離は縮まらず、結果、1位阿部、2位佐藤、3位には高城の転倒により順位を上げた#222髙梨煌喜(WaveFactoryRT with KTM川崎中央/KTM 65SX)が入賞しレースを終えた。
CX(チャイルドクロス)
混戦を抜け出した松本がトップチェッカー

チャイルドクロスは排気量50cc以下の国産4ストロークエンジンバイクで競うAクラスと、外国メーカーの2ストロークエンジン車両に加えていくつかの許可された電動モトクロッサーで走るBクラスが設定されている。今大会はBクラスに該当するライダーの参戦はなく、Aクラスのみの開催となった。
好スタートを決めたのは#61菊池朗以(Team NFS with BIVOUAC OSAKA/スズキ DR-Z50)。続いて#8髙橋優牙(スズキ DR-Z50)、23松本有生(T.E.SPORT Jr./ホンダ CRF50F)が後を追いかける。トップ争いは1周目から混戦となり、接戦の中で松本が抜け出しトップに立つ。松本はその後もスムーズな走りでトップを譲ることなくゴールを果たした。一方2番手争いは拮抗し、菊池、#25齋藤光志(株式会社TKS&カモン小池レーシング/スズキ DR-Z50)、髙橋の3台による接戦が繰り広げられる。全員ポジションを譲らない攻めた走りで競う中、齋藤が菊池をかわしてポジションアップ。最後まで1秒差と僅差であったが、2位に齋藤、3位に菊池が入賞しゴール。
ファンバイククラス
佐藤がスタートから逃げ切り優勝を果たす

モトクロスの入門用として人気の高い小排気量マシン、いわゆる「ファンバイク」でレースを行うファンバイククラスは、#129佐藤由也(TEAMモト部&PITシマユウ/ヤマハ TT-R125LWE)がスタートから前に出てレースをリード。続いて#519島田優(PITシマユウ/ヤマハ TT-R125)と#237玉井勇太(TEAMモト部&PITシマユウ/ヤマハ TT-R125LWE)が追いかける展開。トップ2台はベストラップが1分6秒台と他のライダーより2秒以上速く、徐々に後続を引き離す。レース残り2周というところでトップの佐藤と島田の差が5秒ほど開く中、終盤に島田が粘りの追_上げを見せてその距離を詰めるも佐藤が逃げ切り優勝を獲得。2位に島田、3位に玉井が入賞した。
Honda CRF125カップ
赤塚が序盤から後続を引き離す速さを示す

全30台が出場したHonda CRF125クラスでは、#64赤塚輝斗(T.E.SPORT Jr./ホンダ CRF125F)がトップで1周目を通過。#95塩畑達之(ProjectCarFactory/ホンダ CRF125F)、#16万木大夢(T.E.SPORT 陸上競技部/ホンダ CRF125F)が続く。赤塚は他のライダーより1秒ほど速いペースで周回し、徐々に後続との距離を拡大し単独走行へと持ち込む。一方2周目に2番手の塩畑が後退し、万木が2番手に浮上する。さらに、レース中盤には7番手あたりから#97荻原羚大(ElGanador97/ホンダ CRF125F)が追い上げ、3番手争いを展開。接戦となる中、荻原が制して3位に立ち後方を引き離す。結果、序盤で差を築いた赤塚が優勝を獲得。2位万木、3位荻原という順位でフィニッシュ。
Yamaha YZ125 BLU CRU Cup
清宮が2戦目に続く勝利を収める
若手ライダーの育成を目的に日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)とヤマハ発動機株式会社が企画した「Yamaha YZ125 BLU CRU Cup(ブルークルーカップ)」。2025年シーズンは全3戦が予定されており、今回最終戦となる第3戦目が行われた。

第1戦目で優勝を果たした#88杉本大駕(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)がスタートで前に出ると、#22清宮伊織(レーシングチーム鷹/ヤマハ YZ125)、#122安孫子直樹(ヤマハ YZ125)が続く。清宮は杉本を捉えると、2周目にパス。しかし杉本も負けじと清宮を追って横並びになる接戦を繰り広げる。一方、#35五十嵐有梨(Team Mickey with 広島高潤/ヤマハ YZ125)が安孫子に迫り、3番手争いを展開。僅差のバトルとなるが、五十嵐が隙をついて3位に浮上する。レースは清宮、杉本、五十嵐の順で進行。終盤にかけてそれぞれ間隔が開き、清宮が独走状態に持ち込み優勝を獲得した。2位杉本、3位五十嵐という順位でゴール。清宮は第2戦に続く2勝目を獲得し、シーズンを通してその強さを示した。
盛り上がる特別イベント

今大会は「東福寺保雄記念」として、会場に福寺保雄氏を追悼する展示ブースが設けられた。また、土曜のお昼休みには東福寺氏とともに競い合った福本敏夫氏や伊田井佐夫氏、チーム員の大塚忠和氏、そして宮内隆行氏が集まりトークショーを行い、思い出話に花を咲かせた。


さらに、今大会には2025年のAMAスーパーモトクロス(SMX)250クラスにて日本初のチャンピオンを獲得した下田丈選手が来場。日曜にD.I.Dブースとホンダブースにてサイン会を開催。さらにモトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ」の日本代表凱旋セレモニーが行われ、代表ライダーの大倉由揮選手・中島漱也選手・下田丈選手、チーム監督の熱田高輝氏が登壇した。さらに下田選手のタイトル獲得記念トークショーを行い、多くのファンが集まった。
次戦は11月1〜2日、宮城県にあるスポーツランドSUGOにて開催される。ついに最終戦となる次戦を前に、ポイントランキングは各クラス拮抗している。チャンピオンが決定する瞬間をぜひ会場で目の当たりにしてほしい。また、海外から2025モトクロス世界選手権チャンピオン、ロマン・フェーブル選手がIA1クラスに参戦する。世界チャンピオンの走りにも注目だ。