2025年6月8日、全日本モトクロス選手権国際A級クラスにて9度チャンピオンに輝いたレジェンドライダー、東福寺保雄さんが逝去されました。
東福寺さんは1972年にレース活動を始め、全日本モトクロス選手権国際A級クラスでは1980〜82年/1984年/1986〜88年/1990年(2クラス)の計9回、前人未到の「V9」を達成。1992年に現役を引退された後は、埼玉県を拠点としたモトクロスチーム「T.E.SPORT」の監督として後進の育成に力を尽くすなど、モトクロス界に多大なる貢献をされました。
そして今回、10月18〜19日に行われるD.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第6戦の大会名が当初の「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第6戦 オフロードヴィレッジ大会」から変更され、「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第6戦 21Groupカップ 東福寺保雄記念」と名付けられました。
大会名の変更にはどんな思いが込められているのでしょうか。主催者である福本高大さんと、東福寺さんと同世代のライバルであり、第6戦の会場となるオフロードヴィレッジを運営する福本敏夫さんにお話をうかがいました。

「誕生日が開催日、運命を感じました」。主催・福本高大が込める想い
福本高大さん(以下:高大さん)は埼玉モトクロス部会の会長であり、第6戦の主催者として大会の運営を行っています。今回の大会名変更も高大さんが発案したとのこと。どんな想いを持って大会名を付けたのでしょうか。

「東福寺さんはモトクロス界における偉大なライダーです。東福寺さんを追悼する場として、公にお別れ会も開かれていましたが、東福寺さんが活躍していた全日本モトクロス選手権という舞台でもそういう場を作りたいと考えました。
僕自身の東福寺さんとの出会いは生まれてすぐの時まで遡ります。父(福本敏夫さん)が1981年のチャンピオンで東福寺さんと競い合っていて、僕が1982年生まれなので、記憶はないですが、赤ちゃんの時から会場で会っていたそうです。僕がレース運営に関わるようになってからは、関東モトクロス選手権をうち(うず潮レーシング)とモトショップ鷹、T.E.SPORTで運営をしていることもあって、東福寺さんにはよく大会の相談をしていました。そこでの繋がりが一番大きいです」(高大さん)
全日本モトクロス選手権という場を通して何かしたいと動いた高大さん。進めていく上で、大会の開催日にある運命を感じたと言います。
「実は、第6戦が開催される10月18日は東福寺さんの誕生日なんです。365日のうち1日が被るなんて、運命的だなと思います。当日は会場で展示を行おうかと考えています。もちろん選手権がメインですが、彼が存在していたこと、その軌跡をぜひ見て帰ってほしいです。全日本モトクロス選手権は2日間あるので、そこに集まった方とともにじっくり話すこともできますし、お別れ会に参加できなかったという方や、東福寺さんのことを知らない人にも、彼の存在を知ってもらえる機会になると思っています」(高大さん)

なお、東福寺さんが亡くなる前、5月17〜18日に行われた第3戦では、Honda Dream戸田美女木の観客スタンドに、東福寺さんのマシンやウエアの展示が行われました。第6戦でもこのような展示が見られる予定です。
「ここまでモトクロス界に貢献した彼のことを知ってほしい」。同年代のライバル、福本敏夫の思い
福本敏夫さん(以下:敏夫さん)は1981年の全日本モトクロス選手権国際A級125ccクラスのチャンピオン。東福寺さんとは同じクラスでトップ争いを繰り広げたライバルです。現在は有限会社うず潮レーシング代表取締役として、全日本モトクロス選手権の舞台でもあるオフロードヴィレッジを運営しています。

「東福寺は引退後にT.E.SPORTというレーシングチームを立ち上げてライダー育成の場を作っていました。僕もうず潮レーシングを立ち上げた後、走る場所が必要だと思いオフロードヴィレッジを作りました」(敏夫さん)
また、東福寺さんと全日本モトクロス選手権でチャンピオン争いをした当時を振り返り、こう語ります。
「東福寺とはB級からA級に一緒に昇格した仲で、ずっとライバルでした。思い返すと、彼は怪我が多いライダーでしたが、怪我をして走れない時はビデオカメラで他のライダーの走りを撮影して研究している、研究熱心な人でした。また、研究といえば、メカニックをしていた小野くんのサポートがあったことも大きいと思います。
マシンテストで走る日はもちろん、休みの日にまで2人で集まって、サスペンションをセッティングしていた姿が印象的でした。セッティングを何度も繰り返し試して、良いバイクを作ろうと熱心に取り組んでいて……。もちろん僕らもテストの日は同じように試しますが、休みの日にまで集まって行うのは、メカニックの都合とかもあるからそうできることじゃなかったんですよ。2人のバイクづくりに対する研究熱心なところは、当時見ていても秀でていたと思いますし、それが東福寺の結果や強さにつながっていたと思います。振り返ればたくさん思い出はありますし、語りきれませんね」(敏夫さん)
優勝をかけて東福寺さんとともに競い合ってきた敏夫さんにも第6戦への思いをうかがいました。
「モトクロス業界にここまで貢献した人を、なるべくみんなに知ってもらいたいという思いがあります。彼のことを知らない人も、この大会をきっかけに知ってほしいです。日本のモトクロスの歴史を作ってきた人がいるから今があるということ、今までの歴史を受け継いでこれからのモトクロスを盛り上げていきたい、そんな思いが繋がるような大会になるといいなと思います」(敏夫さん)
大会当日の詳細はこれから随時発表していきます。JMX Promotionの公式サイトやSNSで、第6戦の情報をチェックしておきましょう。
大会概要
D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025 第6戦 21Groupカップ 東福寺保雄記念
開催日:10月18〜19日
会場:オフロードヴィレッジ(埼玉県)